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意識障害の看護|原因、意識レベルの分類・評価と看護目標、看護計画(2017/04/25)

公開日: : 最終更新日:2018/01/27 看護計画 東京都 全科共通 

意識障害看護

意識障害とは、外界からの刺激に反応がなかったり、周囲の状況を正しく理解できない状態のことです。

意識障害の患者は診療科を問わずたくさんいますので、看護師はその患者に合わせた看護を提供しなければいけません。

意識障害の基礎知識や原因、分類・評価方法、看護目標・看護計画をまとめました。意識障害の患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、意識障害とは

意識障害とは意識が混濁していて、覚醒か認知のどちらか、もしくは両方に障害が起こっている状態のことです。

意識は覚醒と認知の2つで構成されています。外界からの刺激や呼びかけに反応がない、もしくは鈍い場合は、覚醒に障害が起こっています。また、周囲の状況を正しく認識できない状態は、認知に障害が起こっています。

つまり、意識障害は外界からの刺激に反応が悪かったり、周囲の状況を正しく認識できていない状態と言えるでしょう。

 

1-1、意識障害の種類

意識障害は「意識レベルの低下」と「意識内容の変化」の2つの種類があります。

 

■意識レベルの低下

意識レベルの低下は外界からの刺激に対する反応の低下であり、4つに分類されます。

・昏睡=自発運動が全くなく、痛覚刺激にも反応しない

・半昏睡=自発運動はほとんどなく、痛み刺激には頭皮反応を示す

・混迷=自発運動があり、刺激に対して振り払うなどの動作がある

・傾眠=刺激をすれば覚醒し、指示に従うことができるが、刺激がなくなると眠ってしまう

 

■意識内容の変化

意識内容の変化は、周囲の状況を認識できずに、興奮したり、歩き回ったり、異常な言動がある状態のことです。代表的なものはせん妄になります。

 

2、意識障害の原因

意識障害は、神経系の疾患が原因で起こります。似たような状態に意識消失がありますが、意識消失は失神した状態であり、脳の血流が一時的に減少することで起こりますので、心血管系の疾患が原因になります。

それに対して、意識障害は神経系の疾患が原因です。覚醒は脳幹、認知は大脳皮質が担っていますので、脳幹か大脳皮質に障害があると、意識障害が起こるのです。

救急の現場では、意識障害の原因は「アイウエオチップス」で覚えることになっています。アイウエオチップスは救急現場で用いられるものですが、幅広く意識障害の原因を押さえていますので、救急現場だけでなく、病棟外来でも使うことが可能です。

A Alcohol、Acidosis(アルコール、アシドーシス 急性アルコール中毒、アルコール離脱症候群、アシドーシス
I Insulin(インスリン) 低血糖高血糖抗浸透圧症候群、糖尿病性ケトアシドーシス
U Uremia(尿毒症 尿毒症
E Encephalopathy、Endocrine、Electrolytes(脳症、内分泌、電解質 肝性脳症高血圧性脳症、ウェルニッケ脳症、甲状腺疾患、副腎疾患、電解質異常(Na、K、Ca、Mg)
O Overdose、Oxygen(薬物過剰摂取、酸素) 薬物中毒、低酸素血症、CO2ナルコーシス
T Trauma、Temperature、 Tumor(外傷、体温、腫瘍) 頭蓋内血腫、脳挫傷、低体温、脳腫瘍
I Infection(感染 髄膜炎、脳炎
P Psychiatric(精神疾患) ヒステリー
S Stroke、Seizure、Shock(脳卒中、てんかん、ショック) くも膜下出血脳出血脳梗塞、けいれん、てんかん、ショック(循環不全)

このアイウエオチップスは、意識障害の原因を網羅していますので、覚えておくようにしましょう。これを覚えておくと、意識障害の患者の原因を簡単に効率よく絞り込むことができます。

 

3、意識障害の分類・評価

意識障害の分類・評価方法には、ジャパンコーマスケール(JCS)とグラスゴーコーマスケール(GCS)の2種類があります。

どちらも臨床現場で使われるものですので、2つとも瞬時に使えるように、しっかり暗記・理解しておきましょう。

 

3-1、ジャパンコーマスケール(JCS)

ジャパンコーマスケール(JCS)は、3-3-9度方式とも呼ばれていて、数値が大きくなるほど重症になります。

短時間で簡単に意識レベルを評価でき、脳ヘルニアなど間脳・中脳・延髄への侵襲の目安を判定しやすいというメリットがあります。

Ⅰ=刺激しないでも覚醒している状態
0 意識清明
1 だいたい意識清明だが、いまいちハッキリしない
2 見当識障害がある
3 自分の名前や生年月日が言えない
Ⅱ=刺激をすると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
10 普通の呼びかけで容易に開眼する
20 大きな声やゆさぶりで開眼する
30 痛み刺激と声かけを繰り返すとかろうじて開眼する
Ⅲ=刺激しても覚醒しない状態
100 痛み刺激に対して払いのけるような動作をする
200 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
300 痛み刺激に反応しない

ジャパンコマスケール(JCS)はⅠ-3、Ⅱ-10、Ⅲ-300のような表記をします。また、緊急時は「意識レベル3桁です」のように伝えることもあります。

 

3-2、グラスゴーコーマスケール(GCS)

グラスゴーコーマスケールは世界的に広く使われている意識障害の分類・評価法で、JCSよりはやや複雑になります。グラスゴーコーマスケールは開眼、最良言語反応、最良運動反応の3つで意識レベルを評価し、数値が小さいほど意識レベルが悪いことになります。

E=開眼(Eye Opening)
4 自発的に開眼
3 呼びかけにより開眼
2 痛み刺激による開眼
1 開眼しない
V=最良言語反応(Best Verval Response)
5 見当識あり
4 混乱した会話
3 不適当な発語
2 理解不明の音声
1 なし
M=最良運動反応(Best Motor Response)
6 指示に従うことができる
5 痛み刺激を払いのける
4 痛み刺激に対して四肢をひっこめる(逃避行動)
3 痛み刺激に対して異常屈曲反応(除皮質姿勢)
2 痛み刺激に対して異常伸展反応(除脳姿勢)
1 反応なし

グラスゴーコーマスケールはE4V5M6のように表記します。また、気管挿管や気管切開をしていて発声できない場合は、E1VTM1のように「VT」と表記しますので、気を付けてください。

 

4、意識障害の看護目標

意識障害のある患者の看護をする時には、急性期慢性期かで、看護目標は異なります。

意識障害の患者の急性期は、まずは生命の危機的状況を脱するための看護を行います。そのため、急性期の患者の看護目標は、「異常の早期発見ができ、生命の危険を脱するための的確な治療が受けられる」になります。

次に慢性期の看護目標です。慢性期に入ると、褥創や誤嚥、拘縮予防などの廃用症候群予防やADLをアップさせることが主な看護目標になります。

ただ、褥創や誤嚥、拘縮予防のための看護は急性期から行われるべきですので、急性期から看護問題として看護計画を立案して、安静度などに配慮しつつ、できる範囲で看護介入していきましょう。

 

5、意識障害の看護計画

意識障害の患者の看護計画を、先ほどの看護目標に沿って、立案していきましょう。

 

■生命の危機的状態にある患者への看護計画

看護目標 異常の早期発見ができ、生命の危険を脱するための的確な治療が受けられる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・意識レベル(JCS、GCS)

・瞳孔、眼球運動

・麻痺の有無

・髄膜刺激症状の有無

・けいれんの有無

・吐気、嘔吐の有無

・検査データ(血液データ、血ガス、レントゲン、CT)

TP(ケア項目) モニターの装着

・適切な酸素投与

・指示に基づいた与薬

・処置や検査の介助

・せん妄出現時の危険防止

EP(教育項目) ・家族への説明

 

■意識障害により体動ができないことで褥創のリスクがある患者への看護計画

看護目標 皮膚を清潔に保ち、褥創ができない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・意識レベル

・皮膚の状態

・栄養状態

血液検査データ

TP(ケア項目) ・清拭やシャワー浴介助

・陰部洗浄

体位交換と適切な除圧

・エアマットの使用

・オムツ交換を頻回に行い、皮膚の乾燥を保つ

EP(教育項目) ・清潔ケアの必要性の説明

・皮膚の清潔や乾燥を保つことの重要性の説明

 

■意識障害により誤嚥のリスクがある患者への看護計画

看護目標 状況に応じた栄養管理で、良好な栄養状態を保つことできる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・意識レベル

嚥下障害の程度

・麻痺の有無

咳嗽反射の有無や程度

・血液データ(WBC、CRP)

・胸部レントゲン

TP(ケア項目) ・適切な食事の種類の選択

・口腔内を清潔に保つ

・体位の工夫

・とろみをつける

・食事前のアイスマッサージ

経管栄養の場合は、体位や注入速度に注意する

・むせ込みがある時には食事を中止する

・食形態が合わない時は、医師に変更を検討してもらう

EP(教育項目) ・ゆっくり少量ずつ摂取するように指導する

意識障害による嚥下障害の看護は、「嚥下障害のある患者の看護|看護目標と看護計画(OP・TP・EP)」を参考にしてください。

 

■意識障害により拘縮のリスクがある患者への看護計画

看護目標 拘縮が起こらない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・意識レベル

・麻痺の有無

関節可動域

TP(ケア項目) 体位変換やケアを行う時には四肢の屈伸運動を行う

・良肢位の保持

・足底刺激

EP(教育項目) ・家族に拘縮のリスクを説明し、機能訓練の方法を指導する

意識障害による拘縮のリスクがある患者への看護は「拘縮の看護|原因と種類ごとの特徴および介助者が可能な援助」を参考にしてください。

 

まとめ

意識障害の基礎知識や原因、意識レベルの分類・評価方法、看護目標や看護計画をまとめました。意識障害の原因はたくさんあります。その原因や意識障害の程度によって、看護目標や計画は異なりますので、その患者の状況をしっかりアセスメントして、看護目標や看護計画を立てるようにしましょう。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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