脳梗塞の看護|急性期と慢性期における看護計画とは(2015/12/18)
脳疾患には、脳血管疾患、脳腫瘍・頭部外傷・炎症・変性疾患・奇形などさまざまなものがあります。脳神経外科を理解していく上で、脳梗塞は代表的な疾患の一つです。
脳を大きく分けると、大脳・間脳・小脳・脳幹に分けられます。大脳をさらに分けると、前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉となります。
各々が障害されると、一例としては
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などの障害を抱えることになります。
当ページでは、脳梗塞を発症してしまった患者さんに対して、どのような看護計画を立案し、看護過程を展開していくのかを詳しく紹介していきます。脳神経外科の経験がない、または経験が浅く自信がない方は特に、しっかりお読み頂き、確かな知識を得て日々の看護ケアに活かしてください。
目次
1、脳梗塞とは
脳の血管が詰まり、何らかの原因で脳の血のめぐりが、正常の5分の1から10分の1くらいに低下し、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥ることを言います。この状態がある程度の時間続くと、血液が流れないのでその部位の組織が壊死してしまいます。
脳梗塞と言っても、様々な病態がありここでは大きく分けて3つに分類します。
■アテローム血栓性脳梗塞
脳や頸部の比較的太い血管の動脈硬化が原因で引き起こされます。動脈硬化は、加齢・高血圧・糖尿病・脂質異常症、いわゆる生活習慣病と言われているものが原因としています。その部位の血管が詰まる、血流が悪くなる、またはそこにできた血栓がはがれて流れていき、脳の血管に詰まってしまう状態をいいます。
■心原性脳塞栓症
心房細動や心臓弁膜症、心筋梗塞などのために心臓のなかに血栓ができて、それが脳に流れてしまい、詰まってしまう状態をいいます。
■ラクナ梗塞
加齢や高血圧が原因で、脳の深部にある直径が1mmの、半分~1/3の細い血管が詰まり、その結果直径15mm以下の小さな脳梗塞ができた状態をいいます。
脳卒中の3/4は脳梗塞で、現在の日本ではアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症の増加が見られています。
2、脳梗塞の症状
具体的な初期症状は、体の一部が麻痺する、重いめまい、手足に力が入らない、強い頭痛がする、言葉がもつれる、言葉が出てこない、などがあります。このような一時的な症状をまとめて、一過性虚血発作といいます。
このような初期症状を見逃してしまうと、意識障害・片麻痺・四肢麻痺・片側の手足や顔面の感覚障害、言語障害、失語症などが発症してしまいます。病状によっては、健忘症・同名性半盲・複視・ふらつき・嚥下障害などだけの場合もあります。
3、脳梗塞の検査方法
検査は、血液検査などの臨床検査、心電図、内科的な神経学的な診察を行いますが、脳梗塞の診断においては、頭部のCT・MRIの撮影、胸部のX線撮影などの画像検査が重要となります。特にCTとMRIは非常に有用です。
3-1、脳疾患におけるCT
CTの画像検査では、骨は白く、水は黒く、脳はその中間の色々な濃さの灰色に見えます。この検査が最も威力を発揮するのは、脳出血、くも膜下出血などの出血がある場合です。新しい出血はCTでは白く見えるため、はっきりとわかりやすいのが特徴です。
脳梗塞の場合は、血管が詰まり、その先の脳細胞が死んでしまう状態なので、脳組織は黒く見えます。CTでわかるようになるまでには、少なくとも数時間はかかります。
具体的な例を挙げると、半身の麻痺が起こり1時間後に、病院でCT検査をして何もなければ、臨床症状からも脳梗塞の可能性が高いという診断になります。
脳出血や脳梗塞はどちらも、起こって数時間後から、頭の周りが次第に脳浮腫となり、CTでは黒く見えます。脳梗塞の場合は、どちらも黒く見えるので、病巣全体が大きくなって見えます。そのため、経過を見るために入院中に度々CT検査をしていくことになります。
3-2、脳疾患におけるMRI
CTと同じように頭の中の構造を見る検査ですが、X線の変わりに磁場を使います。強い磁力をあてると、人間の体の細胞を作っている分子に、微妙な変化が起きるので、その変化を断層写真にします。
MRIのデメリットは、磁場を利用しているので金属を身につけることができない、ペースメーカーを埋め込んでいる場合は絶対に使用できないことがあります。また検査自体の時間が長いため、患者の負担感が強いことが挙げられます。
MRIのメリットは、骨の影響を受けないことがあります。小脳や脳幹は、厚い骨に囲まれているので、X線の乱れが起こりCTでははっきりしないことが、MRIでは病変がよくわかります。
CTでは古い脳出血や脳梗塞は同じように黒くなりますが、MRIでは脳梗塞をより強調してとることができるので、はっきり区別することができるようになります。
4、脳梗塞の食事
脳梗塞後の食事療法は、生活習慣病予防、メタボリックシンドローム症候群予防、動脈硬化を防ぐこと、が大事となります。そのためには、血液を綺麗にする食品をすることが重要となります。
具体的には、
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脳梗塞の食事といっても基本的には、規則正しい食生活、ストレスを溜めない、十分な休息、水分をしっかり摂ることが大事です。
5、脳梗塞の看護計画
看護計画を立案する前に、急性期看護と慢性期看護は各々を別の視点で考えなければいけません。治療や観察ポイントで各々見てみましょう。
急性期は全身状態が不安定です。発症からどの程度の時間が経過しているかが非常に重要です。発症から6時間以内では、血流の再開によって脳の機能が回復する可能性があるので、内科的外科的な血行再建が試みられます。さらに3時間以内では、血栓の溶解をはかる方法が有効的なため、治療が行われる場合もあります。
発症6時間後の血行再開は、著名な脳浮腫や出血性脳梗塞の原因となります。この時期は、側副血行の改善・脳浮腫の軽減・全身状態の安定を図ることが大事です。
一方慢性期は、再発予防・基礎疾患の治療(高血圧・糖尿病・高脂血症・不整脈)・リハビリテーションが大事になります。再発予防としては、抗凝固剤(ワーファリンなど)や抗血小板剤(塩酸チクロビシンなど)、脳循環改善剤などが投与されます。
5-1、脳梗塞の急性期における看護計画
広範な脳梗塞や自然再開例では、脳浮腫や出血性梗塞によって、頭蓋内圧の亢進を認めます。その結果、意識障害を伴うことが多いです。そのため、呼吸・循環などのバイタルサインを観察および看護が重要となります。
病期・病態によって、治療方法は異なりますが、急性期の基本は虚血脳に関する血行の改善と脳浮腫に対して、頭蓋内圧亢進の治療です。したがって、命の危険がある状態なので、異常の早期発見をできることが看護師にとって大変重要となります。
看護問題としては、「脳浮腫や出血性梗塞による生命に危険が生じる状態」とあげることができるでしょう。
5-2、脳梗塞の慢性期における看護計画
リハビリテーションが中心となる時期になります。急性期を脱したので、早期ADL自立と早期社会復帰を目指します。
最も多い看護問題としては、「運動障害に関連したADL自立の困難、転倒リスク状態」とあげることが多いでしょう。その他に、病状によって認知機能に関連した問題、言語障害、嚥下困難などがあげられます。
5-3、脳梗塞における観察ポイント
観察する項目は色々ありますが、大事なのは正常な状態を正しく把握することです。ここが抜けてしまうと、異常の早期発見はできません。一つ一つみていきましょう。
1)意識障害の有無
状態が悪化すると、意識消失や意識障害、混迷状態、認知症様の言動や行動が見られるようになります。意識レベルの評価としては、JCSやGCSを使用します。入院中の意識レベルから現在がどのような状態に変化したのかを的確に捉えることが大事です。
■JCS指標
Ⅰ.覚醒している(1桁の点数で表現) |
0 意識清明
1 見当識は保たれているが意識清明ではない 2 見当識障害がある 3 自分の名前・生年月日が言えない |
Ⅱ.刺激に応じて一時的に覚醒する(2桁の点数で表現) |
10 普通の呼びかけで開眼する
20 大声で呼びかけたり、強く揺するなどで開眼する 30 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼する |
Ⅲ.刺激しても覚醒しない(3桁の点数で表現) |
100 痛みに対して払いのけるなどの動作をする
200 痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめたりする 300 痛み刺激に対し全く反応しない |
■GCS指標
開眼機能(Eye opening)「E」 |
4点:自発的に、またはふつうの呼びかけで開眼
3点:強く呼びかけると開眼 2点:痛み刺激で開眼 1点:痛み刺激でも開眼しない |
言語機能(Verbal response)「V」 |
5点:見当識が保たれている
4点:会話は成立するが見当識が混乱 3点:発語はみられるが会話は成立しない 2点:意味のない発声 1点:発語みられず |
運動機能(Motor response)「M」 |
6点:命令に従って四肢を動かす
5点:痛み刺激に対して手で払いのける 4点:指への痛み刺激に対して四肢を引っ込める 3点:痛み刺激に対して緩徐な屈曲運動(除皮質姿勢) 2点:痛み刺激に対して緩徐な伸展運動(除脳姿勢) 1点:運動みられず |
2)瞳孔の評価
正常の瞳孔径は2.5mm~4.0mm、左右の大きさは同じ、丸い形をしている、瞳孔の位置は中央となります。脳に異常が起きた場合は、以下のような症状が現れます。
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3)四肢麻痺の程度、麻痺の場所
四肢の動きを観察し、完全麻痺か不完全麻痺かを判断します。
4)血圧管理
脳梗塞に関しては、脳に血液や酸素を送らなければならないため、血圧を高く保たれます。基本は下げないと覚えておきましょう。
5)体温管理
38度以上の高熱を出す場合があります。クーリングや解熱剤を使用し、体温を下げるようにします。
6)呼吸管理
呼吸回数、リズム、性状、四肢や末端の色、チアノーゼの有無等の観察を行い、異常があり酸素飽和度が低下すると、医師に確認し酸素投与が必要となります。
6、ヘンダーソンについて
看護師としてアセスメントをする上で、指標を参考にすることは大変有用です。情報を整理し、正しく看護過程ができるように、今回はヘンダーソンを例にあげていきます。
ヘンダーソンの14の基本的欲求とは |
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となります。脳梗塞が発症し、どこが異常になるかによって援助方法は様々になります。
6-1.脳梗塞における看護ケア・看護ポイント・関連図について
上記に記載したヘンダーソンを元に看護ケアや観察ポイントをまとめてみたので、参考にしてください。
脳梗塞の場合、上記のように症状が見られます。どこが障害され、看護を必要としているかは様々になります。そこで病態関連図を記載することで、問題がどこにあるかを把握しやすくなります。最初は大変かもしれませんが、ヘンダーソンを例にあげると一つ一つの呼吸や飲食などの項目に対して、正常なのか異常なのかを見極めていくことで、書いていくことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。脳梗塞の看護については、急性期と慢性期に時期によって、看護計画や目標は大きく変わります。急性期は命に関わるため全身状態の管理が必要です。慢性期はリハビリテーションが主となり、早期ADL回復を目指します。
どちらの時期にも共通することは、異常の早期発見ができることです。早期発見ができるように、知識を深めて、日々の看護ケアに活かし実践していってください。
東京都出身、千葉県在住。高校卒業後、一般企業に就職。父が脳梗塞で倒れたのをキッカケに、脳血管障害を有する人の治療に携わりたいと思うようになり、看護師の道を志す。看護学校へ入学、看護師国家試験に合格の後、千葉県内の市立病院(脳神経外科)に就職。父の介護が必要になったことで5年の勤務を経て離職。現在は介護の傍ら、ライターとして活動中。同時に、介護の在り方や技術などにおける勉強も行っている。
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