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アシドーシス・アルカローシスの症状と原因、カリウムとの関係性(2016/07/19)

公開日: : 最終更新日:2017/12/11 看護用語 静岡県 全科共通 

アシドーシス・アルカローシス

人間の血液は中性ですが、何かしらの原因によって酸性またはアルカリ性に傾くことがあり、この値はpH(ペーハー)によって示されています。

血液が酸性に傾いた状態を「アシドーシス」、アルカリ性に傾いた状態を「アルカローシス」と言い、さまざまな原因によって引き起こされます。

pHの値は血液検査のデータなどで見る機会が非常に多いため、看護師として従事している方や、看護師を目指している方は、「アシドーシス」と「アルカローシス」について熟知しておいてください。

 

1、アシドーシス・アルカローシスとは

通常、人間の体液のpH(水素イオン濃度)は、常に7.4±0.05(7.35~7.45)に保たれており、これを酸塩基平衡と呼びます。7.4±0.05(7.35~7.45)の範囲にあれば、正常であると判断されますが、何かしらの原因によってpHのバランスが崩れ、血液が酸性側に、またはアルカリ性側に傾くことがあります。

pHが7.35未満になった状態(酸性)を「アシドーシス」、反対に7.45以上になった状態(アルカリ性)を「アルカローシス」と言い、この酸塩基平衡における異常には、大きく分けて「呼吸性」と「代謝性」の2つのパターンに分類されます。

分類 主な変化 pH
呼吸性 アシドーシス 二酸化炭素分圧(PaCO2)↑ ↓(酸性)
アルカローシス 二酸化炭素分圧(PaCO2)↓ ↑(アルカリ性)
代謝性 アシドーシス 重炭酸イオン(HCO3-)の減少

水素イオン(H+)の増加

↓(酸性)
アルカローシス 重炭酸イオン(HCO3-)の増加

水素イオン(H+)の減少

↑(アルカリ性)

「呼吸性アシドーシス」は、主に呼吸数の減少に伴う酸素量の減少(二酸化炭素量の増加)によってpHが酸性側に傾き、反対に「呼吸性アルカローシス」は、主に呼吸数の増加に伴う酸素量の増加(二酸化炭素量の減少)によってpHがアルカリ性に傾きます。

「代謝性アシドーシス」は、主に体内の重炭酸イオン(HCO3-)が減少または水素イオン(H+)の増加によってpHが酸性側に傾き、反対に「代謝性アルカローシス」は、体内の重炭酸イオン(HCO3-)が増加または水素イオン(H+)の減少によってpHがアルカリ性側に傾きます。

このように、それぞれで原因は大きく異なりますので、機序とともにしっかりと理解しておく必要があります。

 

2、アシドーシス・アルカローシスの原因

上記のように、「呼吸性」は主に“呼吸数(換気量)”に起因しており、また「代謝性」は主に“重酸素イオン”や”水素イオン“に起因しています。

分類 原因となる病態
呼吸性 アシドーシス COPD(慢性肺気腫など)、呼吸筋の障害、呼吸不全
アルカローシス 過換気症候群、一時的な肺機能の低下
代謝性 アシドーシス 腎不全下痢などによる腸液の喪失、ケトアシドーシス
アルカローシス 反復性嘔吐(肥厚性幽門狭窄症)、原発性アルドステロン症

 

呼吸性アシドーシスでは、呼吸数(換気量)の減少が起因し、それに伴う呼吸器系のさまざまな疾患が原因となるため、どのような疾患が起因しているのかを正確に判断する必要があります。

呼吸性アルカローシスでは、基本的に精神的不安などによる過換気症候群が原因ですが、肺機能の低下(主に一時的)などによって起こることもありますので、同様に原因の正確な判断が不可欠です。

また、代謝性アシドーシス・アルカローシスにおいても、起因する疾患はさまざまであり、治療法は原疾患の改善が第一であることから、pHの値だけでなく、動脈二酸化炭素分圧(PaCO2)や重炭酸イオン(HCO3-)など、さまざまなデータを多角的に評価するとともに、付随する症状においても正確に把握し、原疾患を早急に特定することが必要となります。

 

2-1、呼吸性アシドーシスの機序

呼吸数(換気量)が減少すると、血中の酸素量が減少し、二酸化炭素量(CO2)が増加します。二酸化炭素が水(H2O)に溶けると炭酸(H2CO3)に変化し、二酸化炭素量が増加すると炭酸の量も増加します。炭酸は水素イオン(H+)を放出し、水素イオンは酸性を示すため、

CO2(増) → H2CO3(増) → H+(増) → 酸性

というように、二酸化炭素量の増加に伴う炭酸の増加、炭酸の増加に伴う水素イオンの増加によって、pHが酸性に傾きます。代謝性アシドーシスも水素イオンの増加によるものですが、発生機序によって呼吸性なのか代謝性なのか診断されます。

 

2-2、呼吸性アルカローシスの機序

呼吸数(換気量)が増加すると、血中の酸素量が増加し、二酸化炭素量(CO2)が減少します。二酸化炭素量が減少すると炭酸(H2CO3)の量が通常よりも少なくなり、それに伴って水素イオン(H+)の量も減少します。

CO2(減) → H2CO3(減) → H+(減) → アルカリ性

同様に、代謝性アルカローシスも水素イオンの減少によって起こるものですが、呼吸数の増加に伴う二酸化炭素量の減少によるものなのか、腎臓などの消化器官の異常に伴うものなのか、その発生機序によって呼吸性・代謝性が診断されます。

 

2-3、代謝性アシドーシスの機序

代謝性アシドーシスの主な原因は、「重炭酸イオン(HCO3-)の減少」、または「水素イオン(H+)の増加」によるものです。

重炭素イオンはもともと、アルカリ性物質であり、二酸化炭素と水素イオンに反応して変化し、pHを酸性に傾きすぎないように調整しています。しかし、腎不全などにより腎臓で再吸収されなくなった場合や、下痢などにより消化管から体外に過剰排泄された場合には、重炭素イオンが欠乏し、酸性への移行を制御できずに酸性へと傾きます。

また、エネルギーを作り出すためには、細胞に酸素を供給する必要がありますが、酸素が十分に供給されなくなると、酸素は水素イオンと結合するために、余った水素イオンが大量に放出されるようになります。

水素イオンはもともと、酸性物質であることから、大量に放出されることで、pHが酸性へと傾くようになるのです。腎臓は水素イオンを排出する機能を持っていますが、腎不全の状態では水素イオンの排出が正常に行われず、蓄積してくことでpHが酸性へと傾きます。

 

2-4、代謝性アルカローシスの機序

代謝性アルカローシスの原因は主に、「重炭酸イオン(HCO3-)の増加」、または「水素イオン(H+)の減少」によるものです。

重炭酸イオンが増加する原因には、体内への過剰流入または体外への過剰排出があり、重炭酸イオンが含まれる輸血や補液が過剰に投与されてしまった場合、利尿薬などの重炭酸イオンの再吸収を促す薬物を摂取した場合には、アルカリ性物質である重炭酸イオンの量が過剰となり、pHがアルカリ性へと傾くようになります。

また、胃液には水素イオンが多量に含まれていますが、嘔吐などによって胃液が体外に排出されてしまった場合には、酸性物質である水素イオン量が減少することで、pHがアルカリ性へと傾きます。

 

2-5、カリウムとの関係性

アシドーシス・アルカローシスともに、カリウムと大きく関係しており、アシドーシスになると高カリウム血症を発症、アルカローシスになると低カリウム血症を発症することがあります。

分類 病因
高カリウム血症

(アシドーシスに起因)

5.5mEq/L~ 体内の総カリウム貯蔵量の過剰、カリウムの細胞外への異常な移動、腎排泄障害、コントロールされていない糖尿病など
低カリウム血症

(アルカローシスに起因)

~3.5mEq/L 体内の総カリウム貯蔵量の不足、カリウムの細胞内への異常な移動、腎臓・消化管からの過剰喪失など

 

アシドーシスは水素イオンの増加が原因となって起こり、水素イオンが細胞内に入ることで、マグネシウムとともにカリウムが細胞外へ排出されます。これにより、体内のカリウム濃度が高くなり、高カリウム血症(5.5mEq/L以上)になります。

反対に、アルカローシスの場合には、水素イオンが減少しているために、細胞内のカリウムが不足し、それを補おうと体内にあるカリウムが細胞内に取り込まれることで、体内のカリウム濃度が低くなり、低カリウム血症(3.5mEq/L以下)になります。

また、アシドーシスの原因となる“腎不全”や、アルカローシスの原因となる“原発性アルドステロン症”などに起因してカリウム濃度が変化し、高カリウム血症または低カリウム血症を引き起こします。

 

3、アシドーシス・アルカローシスの症状

pHの低下・上昇の程度がそれほどない場合には、症状が発現しないこともありますが、程度が大きい場合には、さまざまな身体的症状が発現します。

これはアシドーシス・アルカローシスともに言えることであり、高カリウム血症・低カリウム血症などが相まって重症化すると、突然死することもあるため、発症時には綿密な観察と迅速な対処が不可欠となります。

分類 主な症状
呼吸性 アシドーシス 【急性の場合】

吐き気、頭痛、疲労感、錯乱、不安、抑うつなど

【緩徐に発症する場合】

睡眠障害、日中の過度な眠気、記憶喪失(まれ)など

アルカローシス 【急性の場合】

浮遊感、錯乱、末梢および口周辺の異常感覚、痙攣、失神など

【緩徐に発症する場合】

通常は無症状

代謝性 アシドーシス 【軽度】

通常は無症状

【重度】

悪心、嘔吐、倦怠感など

アルカローシス 【軽度】

通常は無症状

【重度】

頭痛、痙攣、筋肉のひきつり、嗜眠など

アシドーシスならびにアルカローシス自体によって引き起こされる症状は少なく、また程度は軽いものばかりです。ゆえに、一見して鑑別するのが難しいのが実情です。

 

4、アシドーシス・アルカローシスの治療

治療はそれぞれの基礎にある原因に対して行う必要があります。呼吸性の場合は、呼吸数(換気量)が関係しているため、酸素量の減少に起因するアシドーシスでは、十分な換気を提供することが第一となります。酸素量の増加に起因するアルカローシスでは、吸気中の二酸化炭素を再呼吸によって増加させる方法が一般的です。ただし、生命を脅かすことはありませんので、多くはpHを低下させるための介入は不要となります。

代謝性の場合は、主に原因となる疾患の治療を優先させることが先決であり、一般的にpHを変動させるための処置は行いませんが、場合によっては、起因する重炭酸イオンや水素イオンの補液などによって調整したり、血液濾過や血液透析が行われることもあります。

分類 一般的な治療法
呼吸性 アシドーシス 呼吸性アシドーシスは酸素量の減少、二酸化炭素量の増加によって起こるため、酸素の投与が第一となる。換気障害が高度の場合には、気道確保や換気の救急処置が必要。
アルカローシス ペーパーパックなどによる再呼吸、精神不安が起因している場合にはセルシンやフェノバールを筋注。
代謝性 アシドーシス 原疾患の治療を第一とする。補助として、補液の静注、重度の場合には輸液による重炭酸塩の投与。
アルカローシス 原疾患の治療を第一となる。補助として、水分と電解質(ナトリウムとカリウム)の投与、重度の場合には薄めた酸を静注。

代謝性の場合には、原因となる疾患の迅速な対処が不可欠となりますが、カリウム濃度の高低など、さまざまな要素が絡み合ってくるため、一概に原疾患の治療法に準じるのではなく、より安全な治療法を選択する必要があります。

 

まとめ

アシドーシス・アルカローシスの概要や原因、機序、症状、治療法など、包括的に解説してきましたが、当ページでの解説は基礎中の基礎であり、全体のほんの一部にすぎません。

しかしながら、基礎をしっかりと理解しておくだけで、看護の幅が大きく広がりますので、熟知できるまで2度3度と読み返しておきましょう。そして、今後の看護にお役立ていただければ幸いです。

佐藤良子 看護師

1965年生まれ、静岡県静岡市在住。スタッフナース歴11年、看護師長歴2年。静岡県内の大学で教育を学び、卒業後は小学校教諭として勤務。後に看護師の道に目覚め、看護学校へ入学し、同県内の総合病院(循環器科)へ就職。現在はイベントナースやツアーナース、被災地へのボランティアなど、幅広い分野で活躍している。

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