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糖尿病の看護、看護の視点とアプローチをする方法とは(2015/12/07)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 北海道 看護計画 内科 

糖尿病

内科を理解していく上で、糖尿病は必須と言ってよいぐらい代表的な疾患です。糖尿病は世界で約4億人に近づく、大変有名な疾患です。世界ランキングの中で日本は第6位で、約1000万人の方が糖尿病を患っています。10人に1人が糖尿病を発症している計算になります。

当ページでは、糖尿病の患者様に関わる際の、看護問題看護計画、看護過程について様々な情報を詳しく紹介していきますので、糖尿病の患者さんへの看護に自信がない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識を得て日々の看護に活かせるようにしてください。

 

1、糖尿病とは

膵臓から分泌されるインスリン作用の不足により、慢性的に高血糖状態を引き起こす代謝疾患を言います。

通常、空腹時の血糖値は110mgdl以下であり、食事をして血糖値が上昇したとしても、膵臓からインスリンが分泌され、2時間後には空腹時の血糖値に戻ります。しかし、糖尿病を発症すると、食後の血糖値が上昇し、空腹時の血糖値も上昇してきてしまいます。

 

1-1、糖尿病の原因

糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。

 

■1型糖尿病

1型糖尿病とは、自己免疫異常でインスリンを合成する膵臓のβ細胞が破壊されてしまい、インスリンが絶対的に足りなくなってしまい、高血糖になります。8~12歳の思春期に発症が多いと言われていますが、幼児や、最近では成人にも発症のケースもあります。日本の発症率は1万人に約1人です。

 

■2型糖尿病

2型糖尿病とは、糖尿病の98%以上を占め、40歳以降に起こりやすいタイプになります。インスリン分泌の低下もしくはインスリン抵抗性が見られ、糖の利用が悪くなった結果、高血糖が起こります。2型糖尿病は多因子遺伝で、家族性に起こります。日本での患者数は急激に増えています。

 

1-2、糖尿病の治療

糖尿病は、別名「サイレントキラー」といわれているように、自覚症状がないことが多いです。その結果、なかなか治療がうまくいかないケースはあります。代表的な治療方法は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つで行います。

 

1)食事療法

体が処理できないような糖分や栄養の過剰摂取は、糖尿病の進行に拍車をかけてしまいます。基本的には、カロリー制限をするように医師から指導されます。通常は、1日の摂取カロリーを1600kcal以下にするように指導します。日本糖尿病学会が出している、食品交換表を利用することが効果的です。

しかし、今までの食生活の習慣がありますので、途中で挫折をすることも多いのが現状です。自分一人では難しい部分があるので、家族の協力も必要です。自覚症状が乏しいので、治すという強い気持ちを維持することが大事になります。

 

2)運動療法

運動によって、インスリンの働きが活発になり働きが良くなります。適度な運動は、予防や治療の意味でとても有効です。しかし、慣れない急激な運動は危険です。激しい運動によって、膝や足腰などを痛めてしまうことも多いようです。結果、運動をしなくなってしまうと、運動療法を始める前より身体に悪影響を与えてしまいます。

基本的には、1日30分~1時間程度のウォーキングをお勧めします。自分の体調にあった方法が良いので、まずはウォーキングを継続して行ってもらい、慣れてくればジョギングなどの負荷をかけてもらうようにしましょう。

 

3)薬物療法

食事療法や運動療法を行っても改善しない、かなりの高血糖の場合には、薬物療法が選択されます。薬の種類には大きく分けて次の3つに分類されます。

薬剤 効果
α―グルコシターゼ阻害薬 食後の血糖値の上昇を抑える
スルフォニル尿素薬 膵臓を刺激してインスリンの分泌を高めようとする
インスリン抵抗性改善薬 インスリンの効きが悪いのを改善する

どの治療方法も糖尿病の根本治療ではないので、血糖値の上昇を抑えることが主な目的です。止めてしまうと、また高血糖になってしまうので、継続できるかがポイントとなります。

 

1-3、糖尿病の高血糖・低血糖時の症状

糖尿病の自覚症状は乏しいですが、高血糖や低血糖で著しく変化している場合には、各々で症状の出現があります。

高血糖の場合には、

  • 異常に喉が渇き、よく水を飲む
  • 夜中に何度もトイレへ行く
  • 全身倦怠感が常にあり、疲れやすい
  • 食事をしても体重が減る

などが挙げられます。さらにケトアシドーシスになり悪化すると、意識障害を起こし改善が見られない場合は、死に至る場合もあります。

低血糖の場合には、

  • 異常な空腹感がある
  • 脱力感
  • 手指のふるえ
  • 冷汗や動機
  • 生あくびが出る

などが挙げられます。さらに悪化すると、昏睡状態となり対処をしないと死に至る場合もあります。症状が頻繁に続く場合には、早めに医療機関を受診し対処することが大事になっていきます。

 

2、糖尿病を患っている患者様への看護問題

糖尿病の患者様は通常、退院後に自分でコントロールしていくための方法を会得しているかがポイントになります。インスリンの自己注射や血糖自己測定がそれにあたります。在宅に戻ってから自分でできることが目標となります。

そのため、入院中の看護問題としては「糖尿病管理に関連した血糖不安定リスク状態」と挙げることができます。

また、低血糖時の対処について知識をつけること、高血糖が続く場合には早めに医療機関に連絡し対処することなど、在宅に退院してから、知識を持って行動できるようにすることも大事になります。

そのため、「知識不足に関連した糖尿病管理」と挙げる事もできます。糖尿病を患っている患者様の、個々の理解力に沿って看護問題をあげることが大切になります。

理論をもとにした看護問題の書き方(明確化・優先順位)

 

3、糖尿病の患者様への看護計画

上記に挙げた、各々の看護問題の看護計画について考えていきましょう。

 

  • 糖尿病に関連した血糖不安定リスク状態

この看護問題の目標は、血糖コントロールがつき高血糖や低血糖が起きず、意識障害である昏睡にならず、日常生活を送ることをできるが目標になります。OPとしては、

  • 血糖コントロール値
  • 食前と食後2時間の血糖値
  • 高血糖と低血糖時の自覚症状の有無

これらが挙げられます。また、個々によって食事療法・運動療法・薬物療法を取り入れていますので、食事摂取量や運動を取り入れた後の血糖値の推移、薬剤の使用量を観察します。

 

次に、TPとしては、高血糖時にはインスリン投与、症状改善のための輸液管理、食事や運動、薬物療法の援助が挙げられます。

 

自宅に退院される患者様の場合、EPである指導が大事になります。

  • 食事、運動、薬物療法の個々にあった自己管理指導
  • 血糖コントロール不良時の原因について説明し、高血糖・低血糖時の対処について指導
  • 家族や周りのサポートがある場合には、血糖コントロール不良の原因を説明し、客観的に観察してもらうように指導

これらが看護計画となります。

 

  • 知識不足に関連した糖尿病管理

この看護問題の目標は、糖尿病に対しての疾患や治療の理解、自己管理に関する正しい知識を持ち、日常生活に取り込むことができるのが目標となります。OPとしては、

  • 症状の理解(口渇・多飲・多尿・体重減少)
  • 食事や運動、薬物療法の方法と留意点の理解
  • 検査データの理解
  • 自己管理への意欲

などが挙げられます。

 

次にTPとしては、自己管理方法取得への援助と各療法の援助となります。

  • パンフレットやビデオなどを用いて、目に見える形でアプローチする
  • 日々の血糖値の記入を促す
  • 食事療法の場合、家族と一緒に指導を行い、管理栄養士と協力する
  • 運動療法の場合、食後30分~1時間の間に声をかけ、運動を促す
  • 薬物療法の場合、インスリン自己注射導入時にはビデオなど目に見える教材を使用する。血糖測定の方法を段階を踏んで、本人ができるように促す

などが挙げられます。

 

EPとしては、患者様の理解度によって指導内容は大きく変わります。

  • 糖尿病の病態、治療方法、合併症についての説明
  • 食事療法の目的、摂取量、食品交換表の活用方法、標準体重とBMIなどの説明
  • 運動療法の目的、運動量、時間、指示された運動療法の内容を説明
  • 薬物療法の目的、インスリン使用時の作用と注意点の説明
  • インスリン自己注射の説明
  • 血糖自己測定の説明
  • 低血糖時の対処方法について説明

などが挙げられます。

 

4、糖尿病に対しての看護過程

看護過程は、基本的には看護アセスメント看護診断・看護計画・看護介入・看護評価の5つからなります。

アセスメントの視点は、

  • 現病歴と既往歴、日常生活習慣、食生活などの患者背景
  • 自覚症状(口渇・多飲・多尿・体重減少・全身倦怠感)などの全身状態
  • 疾患や治療に対しての知識の有無
  • 自己管理意欲の有無
  • 家族の協力体制

これらを一つ一つ考えて不足している点がないかを見ていきます。

看護診断や計画については、上記に記載した内容から個々にあったものを選択し作成していきます。その後、看護介入を行います。

具体的には、食事や運動療法についての説明、インスリン自己注射と血糖自己測定などの指導を介入することが多くなると思います。介入後に評価を行い、必要あれば看護計画を修正し、再度介入する形になります。

看護過程の1つ「アセスメント」ゴードン等の書き方と事例

 

5、日本糖尿病教育看護学会とは

糖尿病の患者様が増えている現状があり、知識を深めたいと思う方も多いことと思います。患者様の教育を質、量ともに向上させる必要があります。

日本糖尿病教育看護学会は、糖尿病教育・看護の専門家として実践に応用できる研究を推進しています。糖尿病教育に関する研究者の発表の場、または実践者の実践報告の場、情報交換の場でもあります。

糖尿病教育の向上に貢献することを目的としている団体です。学会に参加し、知識を深めたい方は是非一度調べてみると良いでしょう。

 

6、糖尿病認定看護師の役割

糖尿病は放置すると、様々な合併症を引き起こしてしまいます。

糖尿病認定看護師の役割は、糖尿病の発症を事前に予防すること、患者様本人と家族に対して、合併症を防ぎ健康的な生活を遅れるように支援することになります。そのため、糖尿病患者様に対しての幅広い知識と理解が求められます。

糖尿病認定看護師には、必要とされる3つの項目があります。

  • 血糖パターンマネジメント
  • フットケア
  • 糖尿病ケアシステム立案

一つ一つ具体的に説明していきましょう。

 

■血糖パターンマネジメント

血糖パターンマネジメントは、インスリン注射や食事、運動療法といったことだけで決まるわけではありません。心理状態や職種など、日々の生活に全て影響があります。個々の患者様に対してアセスメントし、血糖管理に向けての支援を患者様と一緒に行う能力が求められます。

 

■フットケア

フットケアは、糖尿病足病変予防のための自己管理への指導能力が求められます。単に足をケアするだけではなく、自分自身でケアをできることを支援することが重要となります。

 

■糖尿病ケアシステム立案

糖尿病ケアシステム立案は、施設や地域で必要な糖尿病一次、二次、三次予防を目指し、糖尿病ケアシステムの構築能力が求められます。特に地域における糖尿病一次予防行動は、あらゆる背景の国民全てを対象とし、糖尿病発症予防に向けての支援を行う能力が求められます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。糖尿病の看護過程を展開していくためには、基本的な患者背景や全身状態などの観察をし、看護問題や看護計画を立案していく必要があります。しかし、個々の患者様によって日常生活習慣や考え方に差がかなりあります。

同じような指導をしても、うまく患者様に理解を得てもらえない場合や行動につながらないこともあります。患者様の日常背景を把握し、個別性のあった指導が必要となります。管理栄養士や医師といった他職種との連携や家族の協力が必須となります。

当ページで記載した基本的な知識をつけて、日々の看護実践の場で活用していただければと思います。

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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