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回復期の特徴|回復期の看護問題と看護計画、看護師の役割について(2017/03/30)

公開日: : 最終更新日:2018/01/18 看護計画 東京都 全科共通 

回復期看護

あらゆる疾病になった場合の人間の健康状態の経過において、身体機能の安定した状態を「健康レベルが高い」とみなします。あらゆる疾病に対する健康レベルの経過は、「急性期(手術や急変など))」「回復期」「慢性期」「終末期」の4つに分けて考えることができ、これらの段階によって分けた看護を経過別看護とよびます。ここでは「回復期」について説明していきたいと思います。

 

1,回復期の看護

■回復期看護の特徴について

・身体機能の回復傾向は明らかであるが、何らかの機能障害が残るリスクがある

・機能回復への不安や機能障害の受容困難に陥りやすい

・運動機能、脳昨日、呼吸機能、循環機能などの医学的リハビリが必要になる

・機能障害の程度により生活の再構築が必要

・身体機能の促進と機能障害拡大の予防、残存機能の活用、残存機能の活用、生活行動の自立支援、障害受容の支援、社会的支持の獲得支援が必要となる

ただし、実際の患者の看護においては急性期の状態と見ることも終末期の状態としてみることができたり、慢性期における急性期ということもあり得るのが看護の難しさでもあったりしますので臨機応変にケアを行っていくことが必要です。

また回復期リハ病棟では、急性期病棟より手のかかる患者が選択的に入院してくる病棟でもあります。というのも単に介護するだけではなく、急性期病棟で行った手術の合併症の見落としを予防したり、今後の自宅への生活に向けて自立支援を行っていく必要が求められるからです。

しかしながら、手術や急性期を脱した患者が、どのように自宅に帰っていくのかを知ることができ、ゆっくりした時間の中で患者と向き合うことができるのは、回復期病棟で働く魅力でもあります。

回復期の特徴

出典:ナーシング・グラフィカ成人看護学①(株式会社メディカ出版 2013年1月20日  安酸史子、鈴木純恵、吉田澄恵 著)

 

2、回復期の看護問題看護計画

回復期病棟での看護問題は、整形術後、脳梗塞後、呼吸器術後など何の疾患かによって、また個人や年齢、家族構成によって大きく異なります。今回は、回復期病棟に多い脳卒中による片麻痺がある患者の看護計画を紹介します。

 

■皮膚統合性障害

リスク状態:寝たきり状態

看護目標:褥瘡を発生させない

観察項目

・スキントラブルの有無

・検査データ(ALB、TP)

・食事摂取量

・適当なマットレスが使用されているか

・一日の活動状況

・便失禁、尿失禁の有無

・発汗の有無

 

ケアプラン

・2、3時間に1回は体位変換を行う

・適当なクッションを用い除圧する

・日中離床介助

・食事時は車いすに座り食事摂取促し

 

指導項目

・便失禁、尿失禁があった場合はナースコールで知らせるよう説明する

■転倒

リスク状態:片麻痺がある

看護目標:転倒しない

観察項目

・履物のサイズ、テープで留められるものか

・ベッドの高さ

・4点柵はなされているか

・患者のベッド周囲やテーブルの上は整理整頓されているか

・車いすの位置は妥当か

・車いす移動中のスピードは適当か

・病棟廊下は整理整頓されているか

 

ケアプラン

・ベッドの高さは最下に徹底する

・4点柵実施

・車いすの定期点検実施

 

指導項目

・テープ付きの靴を購入してもらうよう家族に説明する

・車いすの使い方を家族に説明する

・トイレに行く際はナースコールで知らせるよう説明する

 

■関節拘縮

リスク状態:片麻痺がある

看護目標:関節拘縮を起こさない

観察項目

・ベッドの固さ、布団の重さは適当か

・しびれの有無

関節可動域の確認

疼痛の程度

 

■関節可動域について

関節可動域について

出典:リハビリ(関節可動域改善・筋肉増強訓練)|オリエンタルメディスン

 

ケアプラン

・良肢位を保つ

・適宜必要なクッションを使用する

・セラピストからの助言に準じたリハビリを行う

 

指導項目

・どのようなリハビリを行うか、事前に患者に説明し不安を取り除く

 

■嚥下困難

状態:脳卒中後遺症

看護目標:栄養状態維持、窒息に対する恐怖の緩和

観察項目

・嚥下にかかる時間

・むせの有無、G音

・1回量は適切か

・患者の好み

・検査データ(ALB、TP)

 

ケアプラン

・少量ずつ頻回摂取する

・1回に口の中に入れる量を少なくする

・適宜とろみをつける

・必要に応じてきざみ食にする

 

指導項目

・家族に食事介助の方法を指導する

・食事摂取がうまくいかないときは患者が好きなものを買ってきてもらう

・食事中エプロンを着用し、こぼれても衣服が汚れないようにする

 

■失語

状態:脳卒中後遺症

看護目標:家族や医療スタッフとコミュニケーションがとれる

観察項目

・患者の表情、言動

 

ケアプラン

・ジェスチャーを使用する

・短い文で話しかける

・わかりにくいときは繰り返し言う

 

3、回復期の看護師の役割

回復期の看護師は、様々な医療スタッフと密にかかわりながら、患者の自宅への退院を支援していく重要な役割を担っています。回復期の看護師の主な役割を以下にまとめます。

 

■連絡調整

院内外の医療スタッフや業者それぞれが時間と場所と対象者を共有し、スムーズに活動するにはスケジュール管理が必要です。そのため、部署内の組織体制や勤務予定、患者のスケジュール(他科受診、入浴時間、検査、外出や面会)を明確に看護師が管理し調整します。日々の患者のバイタルサインや状態把握をみて、適宜スケジュールを変更します。

 

■記録-情報の活用

医療スタッフと密にかかわると、多すぎる情報量や重複した記録のため整理が追い付かないときがあります。そのような場合は、看護計画に盛り込んで日常のケアに生かしたり、皆が見える掲示板にまとめたりして情報の簡素化に努めます。

 

ADL評価

回復期の看護師は、セラピストからの専門的なアドバイスを看護計画に取り入れて実施し、その様子やADLを評価したものをセラピストにフィードバックする役割も担っています。他職種カンファレンスを開いて口頭で情報共有したり、評価表を用い他職種が見えるように工夫をします。

 

■自立支援

患者にとって大切なことは、入院生活の中で提供されるケアが専門性に基づき、効果が期待できることであり、そしてケアの大半は看護師が実施しています。つまり各職種が専門的にかかわるためには、看護師が実施できる具体的な方法を提示する必要があります。患者が自立していけるよう、セラピストからの助言を看護計画に組み込むときは、初めてその計画を見た看護師も実施できるように具体的に示します。(例えば「歩行訓練を行う」であれば、「自室と食堂を歩行器で移動する」と具体性を持たせるとケアが行いやすいですね。)

 

■環境づくり

病室や食堂では、患者の生活や安全、能力向上に向けたベッドの高さ、テーブルや椅子の配置にします。「たかが環境整備」と思うかもしれませんが、環境の正しい理解がADL評価や患者の能力に応じた環境調整、院外生活における問題点の考察など自立支援の視点になるため環境整備は重要です。ベッドやマットレス、車いすやクッションなど様々な物品の使用目的や特性も把握する必要があります。看護師は、環境に敏感であり、病棟環境は自分で作り上げるという自覚を持ち、あるべきものがあるべき場所に整理整頓されているよう、無駄のない環境づくりができるよう意識しなければいけません。

 

■家族とのかかわり

ケアの対象者は患者本人だけではなく、家族も対象者に含まれます。時には入院中の洗濯を家族にお願いしたり、患者の意欲を高めるために家族に面会を依頼する必要もあります。日々のリハビリを自宅での生活に置き換えて指導することも回復期の看護師の役割でもあるため、家族に指導を行い、外出外泊など地域生活への復帰の機会を徐々に作り上げていきます。

 

まとめ

急性期よりは状態が安定しているとはいえ、様々な身体の問題を抱えている患者、その家族を自宅や施設での生活していけるように看護を行っていくのが回復期の難しさでもあります。しかし、他職種で連携していくスケジュール管理能力を身に着けることができたり、患者の自宅での生活がより鮮明に見えるようになったり、回復期で働くメリットは多々あります。これから回復期で働きたい看護師の方や、今回復期で働いているが看護に自信がない方はぜひこれらを参考にして、日々のケアに生かしてください。

 

参考文献

ナーシング・グラフィカ成人看護学①:株式会社メディカ出版(安酸史子、鈴木純恵、吉田澄恵 著)

新しいシステムと運営の仕方:回復期リハビリテーション病棟(有限責任中間法人日本リハビリテーション病院・施設協会)

看護に必要なリハビリテーションの知識と技術:株式会社医学書院(石田肇)

オリエンタルメディスン:関節可動域改善・筋肉増強訓練について

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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