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【2023年最新】授乳の看護|目標や姿勢、観察項目と看護ポイント(2023/07/03)

公開日: : 看護師 宮城県 看護技術 産婦人科 

授乳看護

産科病棟で勤務している看護師は、出産後の母親の授乳の看護ケアを担当することが多いと思います。ただ、授乳の看護はなかなか思うように進まないことがあります。

授乳の適切なケアができるように、授乳の目標や姿勢の指導方法、観察項目、看護のポイントを説明していきます。

 

1、授乳とは

授乳の看護

引用:出産後の支援 | ご利用案内|日鋼記念病院

授乳とは新生児・乳児にミルクを与えることです。母乳を与えることだけではなく、調整粉乳(粉ミルク)による栄養(ミルク)を与えることも授乳に含まれます。

厚生労働省は授乳を次のように定義しています。

授乳とは、乳汁(母乳又は育児用ミルク5)を子どもに与えることであり、授乳は子どもに栄養素等を与えるとともに、母子・親子の絆を深め、子どもの心身の健やかな成長・発達を促す上で極めて重要である。1)

 

授乳はただ単に栄養を与えるだけでなく、母子関係・親子関係を構築し、子供の健やかな成長を促すことができる行為と言えるでしょう。

 

1-1、産褥期は母乳育児が推進される理由

赤ちゃんの成長・発達において、授乳は母乳でなければいけないわけではありません。

人工乳でも、育児には特別な問題は生じません。

しかし、出産直後に産科病棟に入院している間は、何らかの理由で母乳育児が不可能という場合を除き、母乳育児が推進されています。

産褥期に母乳育児が推進される理由には、次の6つがあります。

1.免疫学的感染防御作用がある

2.成分組成が乳児に最適であり、代謝負担が少ない

3.アレルギーが起こりにくい

4.出産後の母体の回復を早める

5.母子相互関係に良好な関係を築きやすい

6.経済的・衛生的に手間がかからない

引用:厚生労働省「母乳育児も、バランスのよい食生活の中で

 

産褥期では、特に「1.免疫学的感染防御作用がある」と「4.出産後の母体の回復を早める」が大切です。

出産直後から出産10日目くらいまでは、母乳に免疫グロブリンIgAが含まれているので、赤ちゃんにママの免疫を渡すことができます。

また、赤ちゃんの吸引刺激によって、オキシトシンが分泌され、子宮の収縮を促し、母体の回復を早める作用もあります。

 

2、授乳の目標

授乳の基本的な目標は、母親が赤ちゃんに母乳を与えることができることです。

ただ、前述のように授乳は必ず母乳でなければいけないわけではありません。

母乳の分泌には個人差がありますし、様々な理由で母乳ではなく粉ミルクを選択する人もいます。

また、授乳は栄養を与えるだけではなく母子関係を築いていくなどの目的があります。

そのため、産褥期の授乳の目標は、母親が自立して自信を持って育児を行えることとして、看護師は授乳の目的を母親に伝えて、それを援助していくようにしましょう。

 

3、授乳の姿勢

授乳をうまく進められるかどうかは、授乳の姿勢も大きく関係しています。

授乳の姿勢には、横抱き・縦抱き・フットボール抱きなどがありますが、看護師はその母親が自分に合った授乳の姿勢を見つけられるように援助をする必要があります。

 

<授乳の姿勢>

・母親がリラックスできる姿勢であること

・安定した姿勢を保てること

・赤ちゃんの頭と体がねじれていないこと

・母親の背筋は真っすぐ(前かがみにならない)

 

横抱きが基本的にな授乳の姿勢になりますが、帝王切開でお腹に傷がある場合は、腹部に負担がかからないようにフットボール抱きが適していることもあります。

しっかり安定した姿勢で赤ちゃんを抱いてあげることで、タッチングの効果も期待できます。

授乳に慣れるまでは授乳の姿勢が安定せず、母親はいろいろと試行錯誤しますし、うまくいかないことに落ち込むことも多いです。

看護師は母親の自立性・自主性を促す意味でも見守るようにし、必要な時だけアドバイス・支援をするようにしましょう。

また、試行錯誤すること自体を肯定し、それを母親に伝えてあげるようにして下さい。肯定的な態度で接することが重要です。

 

4、授乳の観察項目

母親が授乳する時には、看護師は目を離すことなく、次のようことを観察するようにしましょう。

母親だけでなく、児も観察してください。

<母親に関する観察項目>

・母親は母乳育児に意欲があるか

・授乳時の姿勢、抱き方

・乳頭の状態(形や亀裂の有無医)

・乳房の緊満の程度

・乳管の開通状態

・乳汁分泌量

・授乳回数や時間

・母親の全身状態や疲労の有無

・表情や言動

・母親は児を見つめているか(アイコンタクトはあるか)

・母親は声をかけているか

 

<児に関する観察項目>

・児に哺乳意欲があるか

・児の呼吸状態

嘔吐の有無

 

授乳時の観察では、きちんと母乳が分泌されているかを確認するだけでなく、母親の表情や言動を観察して、母体の回復状況や母乳育児に関する意欲・考え方、疲労度などを観察し、ケアに生かしていくようにしましょう。

 

5、授乳の看護ポイント

授乳の看護のポイントを確認していきます。看護のポイントを押さえて、日々のケアを行っていきましょう。

 

■母親に寄り添った看護をする

授乳は最初は誰でも上手にできないものです。

しかし、母親は「母親になれば誰でも自然に母乳が出て、授乳できるものだ」と思っている人も少なくありません。

そのため、授乳がうまくいかないと、「私は母親失格なのでは?」、「母性がないのか?」と思い悩む人もいます。

看護師は母親の思い、辛さ、悩みなどを吐露できる環境を整え、そのような関係性作りを意識していきましょう。

また、産褥期は母乳分泌量が少ないために、看護師は授乳回数を制限せずに頻回に授乳を行うように援助していきますが、母親の表情・言動などを観察し、疲労が濃いようであれば、母体の回復を優先させる判断も必要になります。

 

 

■自主性をはぐくむ

母親が産科病棟に入院しているのは、基本的には1週間以内です。

退院後は医療者やおらず、母親と家族が赤ちゃんのお世話をしていく必要があります。

沐浴やオムツ交換などはほかの家族に任せることができても、母乳育児をする場合は授乳は母親にしかできないものです。

そのため、看護師は入院中から母親の自主性を大切にし、必要な点だけをサポート・ケアするようにしましょう。

特に、GCUの赤ちゃんに初めて自分で授乳する母親は精神的に不安になっていることも多いので、看護師はしっかり寄り添って母親の自主性をはぐくむ方向でケアをしてください。

 

■家族への正しい情報提供

看護師は家族への正しい情報提供をすることも大切です。

母乳の分泌は個人差がありますし、母乳育児をしたくてもそれが難しいこともあります。

それなのに父親や家族が母親に対して、母乳育児をすることを強制しようとしてくることもあります。

そして、そのことで母親がプレッシャーに感じて精神的に追い込まれることもあるのです。

あくまで母親の意思・都合を優先し、父親や家族は母親に過度な負担を与えないように、授乳について家族内で共通した理解を持てるように情報提供・指導していきましょう。

 

■退院後もフォローできる体制を紹介する

授乳は産科病棟を退院した後も、離乳時期までずっと続いていきます。

退院まではスムーズに授乳できていても、いろいろとトラブルが起こる可能性があります。

<授乳中のトラブルの代表例>

・母乳量の不足

・乳房の痛みやしこり

・疲労感

・乳頭の亀裂や出血

・母乳過多

 

これらのトラブルやほかの悩みなどが起こった時に、どうすれば良いのか?どこに相談し、受診すれば良いかなどを伝えておくと良いでしょう。

 

まとめ

授乳の看護の目標や姿勢、観察項目、看護ケアのポイントなどをまとめました。授乳は母乳の分泌量、母乳育児への考え方など1人1人違いますので、母親1人1人に寄り添った看護ができるように心掛けていきましょう。

 

参考文献

1)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
授乳の支援のポイント
前原邦江、森恵美「産褥早期の授乳場面において看護職者が母親役割行動の観察から行ったアセスメントの内容」千葉看会誌 VOL.14 No.1 2008.6

山下佳代 看護師

1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。

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