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MRIの看護|原理や時間と造影剤、CTとの違い、検査の注意事項と役割(2017/08/23)

公開日: : 最終更新日:2020/06/20 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

MRIの看護

MRIは磁石と電波を用いて、体のあらゆる角度から断面を撮影する検査方法になります。検査の痛みはなく、放射線被曝もないですが、強い磁場が発生するため禁忌の患者がいます。看護師はMRI禁忌の患者ではないかを確認しなければいけません。

また、MRI検査に不安を持つ患者も少なくないので、精神的なケアを行うようにしましょう。

MRIの基礎知識や原理・時間、造影剤、CTとの違い、検査の注意事項、看護師の役割をまとめました。

 

1、MRI検査とは

出典:岡山済生会総合病院

 

MRI検査(MRI=Magnetic Resonanece Imaging)とは、磁気共鳴画像診断装置を用いた検査のことです。

MRI検査は超電導磁石が埋め込まれた筒状の検査機器に体を入れることで、非常に強い磁石と電波を利用して、人体のあらゆる断面を撮影し、画像にすることができます。

MRI検査は全身の様々な病巣を発見することができますが、特に脳や脊椎、四肢、骨盤内臓器には高い検査能力を持っていることが特徴です。

MRIで検査すると有効な疾患の一例をご紹介します。

脳神経外科脳腫瘍、脳血管疾患、脳外傷

整形外科=頚椎症、胸椎・腰椎のヘルニア、骨軟部腫瘍、関節の靭帯損傷、半月板損傷

婦人科=子宮・卵巣の異常や疾患

泌尿器科=腎臓・尿管・膀胱の異常や疾患

このほか、小児科疾患や耳鼻咽喉科眼科疾患の検査にも使用されることが多くなっています。

MRI検査は放射線被曝がないこと、画像のコントラストがCT検査よりも優れていること、造影剤がなくても血管造影ができることなどがメリットになります。

 

2、MRIの原理・時間

MRI検査は磁石と電波を用いて、体内の状態を画像化します。MRI検査の装置にはコイルが巻いてあり、このコイルに電流を流すことで、磁場と磁力を発生させます。

発生した磁力がコイルを振動させるため、MRI特有の「ガンガン」という工事中のような音がします。しかも、検査中は、磁場を発生させるためのスイッチのオンオフを高速で繰り返しているので、MRI検査中はずっと音が聞こえているのです。

出典:MRI(核磁気共鳴画像法)(中通歯科診療所)

 

体内にはプロトン(水素原子核)が存在しています。磁石の力で、バラバラに向いていたプロトンを整列させます。

そして、そこに電磁波を加えることで、プロトンの軸を変えて、核磁気共鳴という現象を起こすことを利用して画像化します。

MRIの原理は詳しく説明すると、とても専門的で難しいので、看護師は「磁石と電波を使って、体の中の水分を同じ方向に整列させることで画像化する」と覚えておくと良いでしょう。

MRI検査は20~40分前後かかります。これは、CT検査やX線検査の時間に比べるとかなり長いことが特徴です。これは、プロトン(水素原子核)を整列させるのに時間がかかるからです。

人体は70%が水分できています。この70%の水分を整列させて、その情報を画像化するには時間がかかります。しかも、MRIは撮影条件や撮影部位・方向を変えながら行いますので、さらに時間が必要になります。だから、MRI検査は長時間かかるのです。

 

3、造影剤を用いてのMRI検査(造影MRI検査)

MRI検査では、CT検査と同様に造影剤を投与してから検査を行うことがあります。MRI検査ではガドリニウムDTPAという造影剤を静脈から投与することが一般的です。

造影剤を用いてMRI検査を行うことで、腫瘍がほかの組織とは違った信号を出すなど、血管の状態や臓器の血流状態などがわかり、より正確に診断できるようになります。

造影剤は基本的には安全ですが、まれに副作用が出ることがあります。副作用には次のようなものがあります。

 

・悪心や嘔吐

・熱感

・皮膚の発赤や掻痒感、蕁麻疹

・咳やくしゃみ

倦怠感

めまい

・冷感

血圧低下

呼吸困難

 

造影剤の副作用は一過性のものですが、血圧低下や呼吸困難などの重篤な副作用が出ることもあるため、造影MRI検査を行う時は、副作用の出現に注意が必要です。

また、次のような人は造影MRI検査を行えないことがあります。

・今までに造影剤の副作用が出たことがある

・喘息がある

・アレルギー体質

・肝機能や腎機能が低下している

このような人は副作用が出やすいので、特に注意しなければいけません。また、授乳中の女性は母乳を介して、子どもに造影剤の成分が移行するリスクがありますので、造影MRI検査は避けたほうが無難です。

 

4、MRIとCTとの違い

MRI検査はCT検査と一見よく似た検査に思えます。でも、それぞれ特徴があり、メリットやデメリットが違う検査なのです。それぞれの特徴やメリット、デメリットの違いをまとめました。

 

■撮影方法

・CT=放射線を利用

・MRI=磁石と電波を使用

 

■撮影時間

・CT=10分前後

・MRI=20~40分前後

 

■撮影が得意な部位

・CT=脳や肺、腹部、骨

・MRI=脳や脊髄、関節、骨盤内臓器

 

■画像

・CT=空気や骨の影響を受け、骨は白く、空気は黒く映る。基本は横断面。

・MRI=CTよりもコントラストに優れていて、骨や空気の影響を受けにくい。あらゆる角度の断面を画像化できる。

 

■メリット

・CT=撮影時間が短い。出血に対する診断力が高く、救急での初期診断に優れている。骨の診断も可能。

・MRI=放射線被曝がない。あらゆる角度からの断層像を得られる。造影剤なしで血管の画像が得られる。細かい部分の画像診断に優れている。

 

■デメリット

・CT=放射線被曝がある

・MRI=検査に長時間を要する。体内に金属が入っている人は検査を受けられない。狭いところに長時間閉じ込められる。騒音がある。

 

5、MRI検査の注意事項

MRI検査中はMRI検査室内で強い磁場が発生していますので、磁石に引き付けられたリ、破損したりする可能性があるものは取り外さなければいけません。取り外せない時には、検査を受けることができません。

 

■検査を受けられない人

・心臓ペースメーカーや刺激電極を装着している

・金属製の心臓人工弁を入れている

・脳動脈瘤の手術で金属クリップを入れている

これらの人は、MRI検査中に体内の金属が磁石に引き付けられて動いてしまう可能性があるので、検査を受けることができません。

 

■検査を受けられないかもしれない人

・人工関節を入れている人

・人工内耳を埋め込んでいる人

・可動型義眼を装着している人

・妊娠している人、または可能性がある人

・タトゥーを入れている人

・閉所恐怖症の人

小児(狭いところでじっとしていられない)

これらの人は、MRI検査を受けられない可能性があります。

 

■検査前の注意事項

検査前には金属製のもの、磁気に影響するものなどはすべて外して、MRI室に持ち込まないようにしなければいけません。

キャッシュカードやクレジットカード、定期券、診察券、スマホ、補聴器などは、すべてMRI室の外に置いてもらいます。

また、時計やメガネ、入れ歯、アクセサリー類、ヘアピン、カラーコンタクトなどもすべて外してもらいます。女性の場合はマスカラやアイシャドウに金属が含まれていることがありますので、アイメイクはせずに来院してもらう、もしくはその場でしっかり落としてもらう必要があります。

基本的には、検査着に着替えてからMRI検査を行います。この時、女性はブラジャーをとってもらうように注意しなければいけません。

 

5、MRI検査での看護師の役割

MRI検査での看護師の役割を説明していきます。

 

■患者への説明と不安の軽減

MRI検査は、先ほど説明したような注意事項がありますので、その患者が検査を受けられるか、ペースメーカーなどが入っていないかどうかを確認しなければいけません。

また、MRI検査は長時間狭い中で動かずにいて、さらにMRI特有の大きな音がしますので、看護師が事前にきちんと説明して、患者の不安を軽減しておく必要があります。

造影剤を使う時には、アレルギー体質ではないかなどを確認し、造影剤を使用することへの同意書に記入してもらっているかをチェックしておきましょう。

 

■MRI室への持ち込みチェック

先ほども説明しましたが、MRI室へは金属製のものや磁気の影響を受けるものなどを持ち込むことはできません。

一度説明しても、ヘアピンや入れ歯、ブラジャー、マスカラなどはうっかり忘れてしまう患者が多いので、看護師がもう一度確認してから、検査を受けてもらうようにします。

 

■副作用や異常の早期発見

検査中は狭いところが苦手な人、閉所恐怖症の人にはつらい時間になり、人によってはパニックを起こす可能性があります。

また、造影剤を使ってのMRI検査では造影剤の副作用が出るリスクがあります。看護師は異常がないか、副作用は出ていないかを観察しなければいけません。

 

■検査後

MRI検査後は、特に安静にする必要もなく、すぐに日常生活に戻ることが可能です。ただ、造影MRIを行った患者は、造影剤の排出のために、飲水を促しておく必要があります。

 

まとめ

MRI検査は磁石と電波を用いて画像にする検査のことです。MRI検査は痛みはないのですが、長時間狭い中で動いてはいけないこと、検査中は大きな音が響くことで、不安を持つ患者がたくさんいますので、きちんと説明をして、不安の軽減に努めましょう。

また、金属製のものはMRI室に持ち込めないことはもちろんですが、ペースメーカーを入れている人も検査を受けることができませんので、看護師はMRI禁忌の患者ではないか、身につけていた金属類はすべてMRI室の外に置いているかを確認してから、検査を受けてもらうようにしてください。

 

参考文献

CTとMRIの違い(医療法人早仁会 久喜メディカルクリニック|)

MRI検査とは(AIC八重洲クリニック)

代表的な検査について「MRI検査」(大阪大学医学部附属病院放射線部)

MRI の2つの疑問 ◇うるさい音と長い検査時間について◇(メディカルコラム|医療法人社団創進会 みつわ台総合病院|2016年6月10日)

画像診断・放射線治療について(愛知医科大学病院)

CTとMRIの違いは?(医療法人社団 めぐみ会|2008年)

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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