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看護師が悩む発熱時のクーリングの効果と実施の可否について(2015/11/27)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護用語 東京都 全科共通 

クーリング看護

発熱時における患者への看護技術の1つであるクーリング。解熱を目的とし、多くの医療機関が実施していますが、クーリングの効果や程度、必要性においては未だ実証されていません。

しかしながら、クーリングは絶大な“安楽効果”をもたらすため、発熱時の患者に対する重要な看護技術と言えます。ただし、クーリングを正しく実施するためには、発熱のメカニズムや原因、注意点など包括的に把握しておく必要があります。

 

1、クーリングとは

クーリングとは、発熱・高熱時に体温を下げるために、後頭部、鼠径部、腋窩、頸部、背部といった体幹付近または表在性に大きな動脈のある部位を冷却する看護技術のことです。

クーリングは、解熱だけでなく患者の安楽のためにも有効ですが、効果のほどは未だ根拠がなく、今でも議論が起こっており、病院によって(または人によって)、実施の可否が検討されています。それゆえ、どのような状況になればクーリングを行うべきか、そもそもクーリングはすべきではないのか、など看護師の多くが悩みを抱えているはずです。

未だ効果の有無に関する議論の渦中にあるクーリングですが、患者の安楽のための看護を提供するのなら、効果の有無に目を向けるのではなく、弊害事項(逆効果)について考慮しなければいけません。まずは、さまざまな状況における発熱のメカニズムを正しく理解しましょう。

 

2、発熱のメカニズム

ヒトの体は、常に一定の体温(37℃)を調節する機能が備わっています。この働きのことをセットポイントと言い、ウイルスなどの微生物の侵入により防衛機能が反応すると、侵入した微生物の増殖を抑えるため、また、免疫系の活性化を促すために、セットポイントが引き上げられます。

セットポイントが引き上げられると、体内の熱が外に逃げないよう血管収縮が起こり、血流量が減少し、時には骨格筋を収縮することで震えを起こし、熱の産生を促します。こうした過程を経て体温が上昇し、侵入した微生物の増殖抑制・死滅へと導きます。

そして、発熱の原因が取り除かれると、セットポイントが通常の37℃まで引き下げられ、血管の膨張とともに血流量の増加・皮膚表面温度の上昇が起こり、発汗によって体温が低下(元に戻る)していきます。

つまり、①セットポイントの上昇→②発熱→③原因の除去→④セットポイントの低下→⑤体温の低下、という流れにより体温が変化します。

 

体温が上昇するのは、細菌などの侵入により体を守るための体の防衛機能であるため、クーリングなどにより人為的に体温の低下を図ることで、体の防衛機能の低下を招いてしまい、治癒を遅らせるだけでなく、熱の産出量増加に伴い、余計な体力を消耗させてしまうのです。

なお、発熱の原因は細菌といった感染症だけでなく、炎症、アレルギー反応、心理ストレスなどさまざまあり、こうした原因特定の難しさもクーリングの必要性に議論が巻き起こっているのです。

 

3、発熱の種類

上述したようなウイルスなど病的要因による発熱のほか、「うつ熱」と呼ばれる外的環境要因による発熱も存在します。うつ熱は、高温・多湿・無風といった体外環境により起こる体内の滞熱状態のことで、熱射病が代表に挙げられます。

通常、外気温が上昇すると、血流量の増加・皮膚表面温度の上昇に伴う発汗により、体内の熱を外へ排出するよう働きますが、高温・多湿・無風といった環境下では、この放熱機能が追い付かず、滞熱していきます。特に放熱機能が低い幼児や高齢者はうつ熱に罹りやすく、低栄養など免疫力が低下している時には、外気温が高温でなくても放熱機能が上手く働かないことで、うつ熱を発症することがあります。

また、感染症以外の「病的要因」、心理ストレスによる「ストレス要因」、手術に伴う炎症による「侵襲要因」によっても発熱をきたすことがあります。

このように、発熱の原因は主に「感染要因」、「外的環境要因」、「病的要因」、「ストレス要因」、「侵襲要因」の5種類あり、それぞれ体の変化に違いが存在します。

中枢

深部

体温

抹消

深部

体温

手足の

温度

発汗の

有無

セット

ポイント

の上昇

クーリング

実施の可否

感染要因

(感染症)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

外的環境要因

(うつ熱)

病的要因

脳梗塞など)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

ストレス要因

(心理的負担)

(※)

(※)

(※)

(※)

侵襲要因

(術後)

発熱時(→)

解熱時(↑)

発熱時(×)

解熱時(○)

※ストレスによる発熱(心因性発熱)のメカニズムは未だ解明されていない。

 

4、状況別にみるクーリングの実施の可否

発熱の原因は上図のように、主に「感染要因」、「外的環境要因」、「病的要因」、「ストレス要因」、「侵襲要因」の5つに分類されますが、現状でクーリングの有効性が実証されているのは、「外的環境要因」と「ストレス要因」のみであり、「感染要因」・「病的要因」・「侵襲要因」においては未だクーリングの有効性が疑問視されています。

当項では、発熱の5つの原因のメカニズムとクーリングの有効性・弊害についてご説明します。

 

4-1、感染要因(感染症)

ウイルスといった細菌が体内に侵入すると免疫システムが反応して、侵入した細菌を特定して、キラーT細胞といった攻撃する能力を持つ物質や因子を生成します。また、抗体を生成することもあり、抗体は細菌に結合することで増殖を抑え、細菌を死滅へと追いやります。

こうした物質・因子・抗体は体内温度が高いほど活発化するため、体温を調節している脳内の視床下部が血管の収縮・血液量を減少させ、セットポイントを引き上げます。

クーリングなどにより体温の下げるよう働きかけると、細菌を攻撃する物質・因子・抗体の活発化を妨げ、治癒を遅らせてしまいます。また、体温上昇時において生じるシバリング(悪寒戦慄)の悪化を招きます。よって、クーリングを行う際は、目的を“安楽”に定め、頭部または頸部にのみ短期的に行うのが効果的と言えます。

 

4-2、外的環境要因(うつ熱)

外気温が高温になることで発症するうつ熱は、セットポイントが上がらず、体内温度のみが上昇します。これは、高温環境に晒され続けることで、体の放熱機能が追い付かず、熱が体内に停滞し、時には40℃を超える高熱をきたします。

また、免疫力や放熱機能が低い幼児・高齢者は、高温環境化にいなくてもうつ熱をきたすことがあります。うつ熱を発症した際には、セットポイントが上昇しないことから、クーリングが最も有効な解熱法であるため、体温が37℃前後になるまで頭部・頸部・腋窩などを積極的に冷却してください。

 

4-3、病的要因(脳梗塞など)

疾患の症状としても発熱をきたすことがあり、原因となる疾患は下表のように多岐に渡ります。

中枢神経系 脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血
循環器系 心筋梗塞、心外脳炎
呼吸器系 肺梗塞、無気肺、急性呼吸促迫症候群
消化器系 虚血性腸炎、消化管出血膵炎、肝炎、肝硬変、副腎不全
血管系 深部静脈血栓
その他 悪性腫瘍、薬剤アレルギーなど

疾患の種類によって発熱のメカニズムはさまざまですが、たとえば脳梗塞においては、視床下部がダメージを受けることで体温調節に異常をきたし発熱する場合や、肺炎などの感染症(合併症)により発熱をきたします。

また、薬剤アレルギーによる発熱(薬剤熱)も忘れてはいけません。薬剤熱は投与後1~2週間で発症することが多く、一般的には38~40℃程度で原因薬剤の投与中止後2~3日程度で治まります。これは、薬剤による敏感反応(アレルギー反応)のほか、体温調節中枢への作用、薬物に含まれる壊死物質や毒素などにより起こるとされていますが、発現機序は不明な点が多いのが実情です。

疾患または治療における発熱の原因はさまざまであり、原因の特定が難しいため、病的要因による発熱時に冷却を目的としてクーリングを行うのは適切でないとされています。よって、クーリングを行う際は“安楽”を目的とし、短時間に補佐的に行うようにしてください。

 

4-4、ストレス要因(心理的負担)

入院においては、生活環境の変化や手術に対する不安など緊張状態が続くことでストレスが蓄積し、発熱をきたすことがあります。これを心因性発熱と言い、ストレスにより脳神経が異常な刺激を受け、セットポイントが高く設定され、交感神経の働きが活発になることで体温が上昇します。

心因性発熱は、原因となるストレス要因を特定・排除するのが第一目標となりますが、心の問題であるため早期の改善は困難です。ゆえに、心をリラックスさせ安眠・精神安定を図るために、クーリングが非常に高い効果を示します。

クーリングによる直接的な解熱効果はあまり期待できないものの、安楽効果により解熱を促すことができます。心因性発熱をきたしている状態では、主に頭部に熱を感じることが多いため、頭部または頸部の冷却が有効です。

 

4-5、侵襲要因(術後)

手術の侵襲による局所の炎症、ストレス、創痛、創感染、細胞の損傷、細胞内の出血、壊死組織の分解産物の吸収などにより、術後に発熱をきたすことがあります。これを生体防衛反応と言ったり術後合併症と言ったりさまざまですが、疾患によって原因は異なります。

多くの場合、術後早期に発症し1~2日で自然治癒するため軽視されがちです。ストレスによる発熱の場合には安楽を目的としたクーリングは非常に有効ですが、術後発熱の原因は多岐に渡り、特定が困難であることから、クーリング実施の可否が検討されています。

おおむね、細胞の修復・細菌への攻撃などのためにセットポイントが引き上げられるため、解熱を目的としたクーリングは治癒を遅らせ、シバリングの増悪を促すとし、逆効果であるという見解が多いのが現状です。

それゆえ、安楽を目的としてクーリングを行う際には、体温の上昇時ではなく解熱時に行い、短期的に冷却してください。なお、創部に直接クーリングを行うのは疼痛・腫脹の軽減、炎症の抑制に効果があると言われていますが、創感染を招くこともあるため、必ず創部の清潔管理を徹底してください。

 

5、クーリングの実施に際する注意点

最後に、クーリング実施における注意点をご説明します。上記の通り、発熱の原因によってクーリング実施の可否が検討されますが、多くの場合、解熱することで自然治癒力の低下を招き、シバリングを増悪させてしまいます。

そのため、解熱を図るのではなく「安楽」を目的とし、基本的には「解熱時」に行います。また、脳疾患患者に対する「頭部クーリング」は、症状の増悪に繋がる“可能性”があるため、禁忌であると考えておきましょう。

 

①安楽を目的とすること

発熱の多くはセットポイント上昇に伴い深部体温が上昇し、表面の皮膚温度においてはそれほど上昇がみられません。クーリングを行うことで皮膚温度の低下を図ることはできますが、深部体温の低下はあまり期待できないといった見解が多数あり、解熱効果の程度は不明のままです。

しかしながら、少なくとも確実にクーリングによる解熱効果はあります。ただし、多くの場合、治癒力の低下・シバリングの増悪を招くため、解熱を目的とするのではなく、安楽を目的にクーリングを行うことを心掛け、常に患者の状態変化を観察しておかなければいけません。

 

②体温上昇時は避け解熱時に行うこと

セットポイント上昇に伴う体温上昇時の多くはシバリングが発生します。シバリングは熱を産生するための生理現象であり、セットポイントが下がり解熱期に入ると、シバリングはなくなります。クーリングを行うことでシバリングの増悪を招き、さらに自然治癒力の低下を招くことから、体温上昇時には反対に保温に努めることが大切です。基本、解熱時に行うこととし、体温上昇時に行う際には体全体を保温しながら局所的に安楽を目的として頭部・頸部など冷却しましょう。

 

③頭部クーリングの実施は疾患別に考えること

脳梗塞や脳出血といった脳疾患を患っている患者、または既往歴のある患者に対して、頭部クーリングを行うのは禁忌とされています。頭部クーリングを行うと、脳血管が収縮し血流阻害の危険性があるため、症状を増悪させる恐れがあります。

頭部を冷却しても血管収縮が起こらないという見解もありますが、症状増悪の“可能性”を完全に否定することはできないため、特に急性期における脳疾患患者に対する頭部クーリングは避けた方が良いでしょう。安楽を目的として行う際には、鼠径部や腋窩を冷却しましょう。

 

まとめ

クーリングは冷却により解熱を促しますが、解熱効果や程度など詳細は未だ実証されていません。また、クーリングを行うことで症状を増悪させる危険性があるため、医療機関によってはクーリングを一切禁止しているところもあるほどです。

確かに、クーリングを解熱目的として実施する際には、自然治癒力の低下やシバリングの増悪など、看護という観点から逆効果を生む危険性が存在するため、行わない方が良いという見解も理解できます。

しかしながら、クーリングは“安楽効果”に優れており、倦怠感の除去や安眠促進に役立ちますので、クーリングは必要な看護技術と言え、積極的に行うべきです。ただし、クーリングによる“副作用”が多々存在するため、患者の状態変化を見逃さないよう頻回に観察を行ってください。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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