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「急変時の対応」に必要な看護師の知識や観察力とは(2015/11/09)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護師 看護技術 全科共通 

看護師の緊急時の対応

急変は、臨床看護師のほとんどが遭遇するといわれている病院内最大のアクシデントになります。急変といっても様々な定義がありますが、突然の意識障害や呼吸停止、さらに心停止となり、何らかの原因によって患者様が、突然に生命の危機的状況に陥った状況を指しています。また、痙攣発作や喘息発作、アナフィラキシー症状のように、患者様の病態に変化があり、早急な治療が求められている状況は急変に相当します。

急変発生時に一番の問題となるのが、対応ができずに躊躇してしまい、生命に関わる重篤な状況に陥ってしまうことにあります。このため看護師は、患者の急変を

  • 既に生命維持が厳しい状態の緊急事態
  • この病態を放置していると、生命の危機的状況に陥る状態

この2点について、理解しておく必要があります。患者の急変は、重症度と緊急度レベルがあるので、状況を理解し判断する力が求められることになります。

当ページでは、急変時の対応について、急変を見抜く力について、急変時の事例などを交えながら、ご紹介していきます。看護師という仕事をする上で、ほとんどの方が直面することなので、是非参考にしていただき、急変時の対応できるスキルを身につけられたらと思います。

 

1、生命維持が厳しい状態での一次救命処置とは

患者様に声をかけて、生命兆候の有無を確認するところから始まります。患者様の応答がなく、意識障害があるなどの危機的状況の場合には、まず応援を呼ぶ必要があります。心停止を疑う状況の場合には、できるだけすみやかに胸骨圧迫を行うことが望ましいです。生命の兆候を確認するためには、呼吸の観察と同時に頸動脈を触知し、脈が触れるかどうかを確認することが非常に重要となります。

大事になってくるのは、判断がつかない呼吸状態や頸動脈の触知が不能な状態のときに、対応を躊躇してしまうことがないようにすることです。最悪の状態を想定し、胸骨圧迫を1分間に100回の速さで開始してください。人工呼吸はその後に2回行いますが、重要なのは絶え間ない胸骨圧迫が非常に予後を左右します。

AEDが到着したら胸骨圧迫を継続しながらAEDを装着します。適応があれば、音声案内に従いショックを与えます。これらを、蘇生チームが到着し二次救命処置を行うまで継続するようにします。

 

2、生命維持が厳しい状態での二次救命処置とは

二次救命処置は、医師や十分な経験と知識を兼ね備えた看護師が、医師の指示で医療器具を用いた蘇生を行う行為です。一次救命処置で回復が見込めない場合には、早急に二次救命処置に移行することが重要となります。一次救命処置と同様に、胸骨圧迫を継続し中断時間は10秒以内にします。呼吸管理や循環管理に必要な処置を行い、同時に原因は何かを検討しながら治療を進めていきます。

呼吸管理では、気道確保が不十分な場合には気管挿管を行い、人工呼吸を実施します。場合によっては呼吸器を装着することもありえます。

循環管理では、抹消静脈ラインを確保し、輸液投与と同時に血管収縮薬や抗不整脈薬などの治療薬が使用されます。心停止をしている場合に良く使われる第一選択薬は、アドレナリンです。致死的不整脈が見られる場合には、除細動を行います。

このように、患者様の全身状態に合わせて動脈血の採取やレントゲン写真、CT画像などの検査が随時行われます。その結果で、医師からは次の治療方針が次々に提案されていきます。看護師も医師同様に患者様の容態を把握し、次を想定していなければ迅速に行動ができないので、豊富な経験と知識が要求されます。

 

3、全身状態を観察し、急変を見つけるポイント

急変をする患者様を見つけるポイントには、以下の4つのサインに分けてみました。

  • 誰が見ても、異常な状態
  • 注意深く観察しても、サインや症状がないもの
  • 注意深く観察すれば、サインや症状があるもの
  • 意図的に観察すれば、容易にわかるもの

注意深く観察してもわからないものは、突発的に出現するものなので、防ぐことは難しいでしょう。しかし、後の3つに関して看護師の力量によっては、未然に防ぐことができるのです。ちなみに私は、よくこの急変を見つけては忙しくなっている日々です。

急変状態やその前駆症状の早期発見には、意図的に出会うことから始まります。つまり患者様が発信している異常なサインや症状は、医療者が異常だと感じなければ、ただのデータとなってしまいます。したがって、急変を見つけるポイントは、常に異常な状態を想定した行動が必要であり、異常と正常を見極める知識力が必要となります。

 

3-1、急変を見逃さない呼吸器の観察ポイント

最も大切なポイントは、呼吸の速さ・深さを把握することになります。その後、発声できるか、胸部の動きや胸鎖乳突筋に異常がないのか、呼吸パターンが不規則ではないのか、さらに重篤な症状である舌根沈下やいびき様の症状がないかを確認していくことが大切です。したがって、聴診はもちろん大切ですが、目で確かめる視診が非常な重要なポイントとなります。

  • 発声ができれば、完全な気道閉塞を否定できます
  • 胸鎖乳突筋が発達し、胸部の動きに異常があれば、いずれ疲労し十分な換気量が得られなくなる可能性が高く、呼吸補助が必要になる場合があります
  • 呼吸パターンに異常があれば、何らかの息が吐きにくい異常があると判断できます
  • 舌根沈下などが見られる場合には、生命の危機に直面していることが判断できます

 

3-2、急変を見逃さない脳外科の観察ポイント

意識障害は、急激に出現するものと徐々に進行するものに大きく分かれます。急激な意識障害は、緊急度・重症度いずれも高い場合が多く、呼吸・循環異常を併発するため、救命処置が必要になります。

軽度の意識障害は、一見して異常が感じられない場合があります。その場合、患者様へ様々な質問をしていき、何かおかしいと感じることができれば、神経学的な異常はないか、アセスメントを進めていきます。もし、家族が付き添っている場合には情報収集をするのも良いでしょう。

刺激に対して反応がない、かろうじて開眼するなどの重度の意識障害では、生命の危機的状況に陥っていないかの判断を迅速に行います。呼吸・循環を安定化することを優先します。特に、頭蓋内圧亢進症状に注意をしながら観察していきます。

 

3-3、急変を見逃さない循環器の観察ポイント

急変サインは、胸痛、呼吸困難、失神、チアノーゼ浮腫などがあります。特に、胸痛と呼吸困難が急激に出現した場合には、緊急性が高いため迅速な対応が必要です。

胸痛で重要なのは、生命の危機につながるものか否かを判断することです。突然の激しい胸痛の場合には、緊急処置を要する場合が多く、病状把握が大変重要となります。激しい胸痛の場合に疑わなくてはいけない病態は、急性心筋梗塞と急性大動脈解離の2つになります。

呼吸困難も胸痛と同様に、様々な疾患から発症します。酸素不足状態で、呼吸運動を活発にしても補いきれない時に症状として出現します。ショック症状が見られないかどうかを観察しながら、同時に酸素投与などの処置も必要となります。

 

3-4、急変を見逃さない消化器の観察ポイント

発熱や下痢を伴う激しい腹痛が急激に発症した場合、腹部症状が持続または増強している場合、ショックを引き起こす誘因となる吐血下血は、急変をする可能性が高く、注意が必要となります。

腹部症状は、健常者の日常生活の中でも発生しやすい症状の一つです。しかし、入院中の患者様が腹痛を訴えた場合には、原疾患によるものなのか、突発的に出現した別な症状であるのかを判断しなければいけません。そのため、患者様の主訴をしっかり確認し、緊急度や重症度を考えることが大切になります。

特に急性腹症には注意が必要です。突然発症した激しい腹痛に、発熱や下痢などの症状を伴い、ショックになってしまうことをいいます。急性腹症の場合には、緊急手術を行うケースもあるため、的確な観察・アセスメントが求められます。急変時の大事なポイントは、重症度と緊急度の判断ができ、その後の的確な対応ができることが重要です。

重症度を判断するには、侵襲が少ない順番で、問診→視診→聴診→触診→打診の順でフィジカルアセスメントを行うようにしてください。ショックを伴っているか否かで対応は大きく変わりますので、特にバイタルサインには気をつけるようにしましょう。医師に指示を仰ぎ、適切な処置が素早く施されるような配慮が予後を左右します。

 

3-5、急変を見逃さない代謝・内分泌の観察ポイント

急変で最も多い症状は、意識障害と呼吸パターンの変調になります。この症状が出現した時に、入眠状態と間違えないように判断することが大変重要となります。最も緊急度が高いのは低血糖といわれています。

低血糖時には、交感神経緊張と中枢神経障害が出現します。特に中枢神経障害が起きると、致死的となってしまうので早期に発することが大切です。リスクがある患者様には、食事摂取や投薬状況を頭に入れておくことが、異常の発見につながります。

 

4、急変時の事例と対応について

では、実際に事例を交えながら対応について記載していきます。

 

≪ベッドから転落した数時間後、患者様の意識が消失した事例≫

2日前からめまいがあり、検査目的で入院していた66歳の男性。「トイレへ行こうと起き上がったら、ベッドから落ちた」と本人からナースコールがあった。訪室時には、意識レベルクリア。左後頭部に挫創はあったが、他に外傷はなく、明らかな四肢の運動障害もない。瞳孔3mmで左右差なし。血圧140代、SPO2=98% 呼吸・脈拍共に正常値。症状を確認すると「頭が少し痛い」と話していた。主治医へ報告し、頭部CTを撮影した。出血所見はないため、経過観察となった。約4時間後、訪室した時にはいびきをかいて入眠していたため、声をかけなかった。翌朝、声をかけたが反応しないため、意識がないことに気づき、主治医へコールした。

まず何が起こっているのでしょうか。

頭部CTでは、受傷直後の超急性期の場合、明らかにならない場合があります。その場合、数時間~数日かけて頭蓋内血腫として症状が出る場合があります。この場合少なくとも24時間は、意識レベルや神経学的所見を注意深く観察する必要があったと考えられます。

いびきをかいて入眠していたというのが、今回の重要なサインです。これを見逃してしまったのが、最大の観察不足であり迅速な対応が遅れてしまったことになります。脳卒中では、治療開始が早ければ早いほど損傷部位を拡大させず、予後も良好であるとされています。いびき様の呼吸時に早期発見ができていた場合には、生命の危機的状況を脱するために呼吸・循環管理を行うことになるでしょう。

このように、異常時の対応が適切にできないと、対応が遅れてしまい、結果として患者様の予後に大きく影響が出てしまいます。常に異常な場合を想定して行動することが、異常発見の一つの手段として考えてよいでしょう。そのためには、十分な異常時の知識が必要となります。

 

まとめ

急変時の対応は、十分な経験と知識がないと最初は判断に困る部分はあるでしょう。経験は事前に得ることはできませんが、知識は各看護師の努力次第で付ける事は十分に可能です。ポイントは、正常な状態と異常な状態を見極める知識と観察力です。とにかく、異常な状態を見極めることができれば、その後の対応は経験豊富な看護師に相談し、早期対応ができるようになります。

早期に異常発見し対応することが、患者様一人一人の生命予後や後遺症に大きく影響します。常にこの患者様が、一番重篤な症状が出た時どのような症状が出現するか、これを想定することができれば、急変している患者様をいち早く発見することができるでしょう。是非、知識と観察力をつけていただき、一人でも多くの患者様を助けられるようにしましょう。

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