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看護コミュニケーション|目的と意義、不安時の信頼獲得のための看護計画(2016/02/24)

公開日: : 最終更新日:2017/11/25 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

看護のコミュニケーション

看護師の業務の1つとも言える患者とのコミュニケーションは実に奥が深く、場面場面でどのように対応したらいいのか、どのような話題を投げかければいいのか、多くの看護師が悩み考えることでしょう。

コミュニケーション能力を向上させるためには、慣れや長い経験を通した試行錯誤が必要不可欠ですが、「コツ」を知ることで、コミュニケーション能力を劇的に向上させることができます。

患者とのコミュニケーションが苦手な看護学生や看護師の方に向けて、当ページではコミュニケーションの重要性や目的などの一般知識に加え、能力向上のためのノウハウをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

1、不安時の看護計画とそのコミュニケーション

看護業務の1つとして、患者とのコミュニケーションがあり、セミナーや論文でもコミュニケーションの重要性が広く取り上げられていますが、なぜコミュニケーションはそれほど重要なのでしょうか。

これを理解するためにはまず、患者の精神的・心理的状態を理解しなくてはなりません。患者は疾患を患い、来院ならびに入院しますが、全ての人が疾患を有することにより不安を呈します。

不安に感じるのは、疾患に対して、苦痛に対して、治療に対して、環境の変化に対して、経済的負担に対して、家族(育児など)への負担に対して、仕事に対して(休暇のため)など、原因は多岐に渡り人それぞれです。

これら不安は程度の大小に関わらず、すべての患者が持つもので、自身の力だけで改善を図ることは非常に難しいのが実情です。また、社会的に権力を持つ人であっても、疾患を有することや入院に際して、自信の喪失がみられます。つまり、いかなる人であっても、このような状況下では医師や看護師など医療関係者に頼らざるを得ないのです。

さらに、入院に際しては多くの時間を1人で過ごし、疾患など不安要素について考えてしまうことで、ますます不安が増大してしまいます。

そこで重要となるのが看護師によるコミュニケーションであり、“適切なコミュニケーション”は患者の不安を軽減するとともに、治療が円滑になるなど、さまざまな好影響をもたらすのです。

 

2、不安解消とコミュニケーションの目的と意義

上述のように、コミュニケーションは患者の不安の軽減や、信頼構築により治療を円滑に進められるという利点が存在します。

外来・入院問わず、すべての患者が頼りにする存在、それは医師や看護師など医療従事者です。患者のほとんどは自身の疾患や治療における知識を有していないため、医療従事者を頼りにするほかありません。

信頼のおける医療従事者が側にいることで、不安軽減はもちろんのこと、治療に向けた意欲向上や自己決定の促進など、治療を円滑に行うための“働き”を与えることができます。

また、看護を提供する際、患者が抱える問題を解決するために看護過程を遂行しますが、信頼のおける良好な関係を構築することで、それまで見えなかった(訴えなかった)情報を取得することができ、細やかな問題解決へ導くことができるのです。

このことにより、治療期間・入院期間が短縮され、患者の財政的な問題だけでなく、運営的な側面において医療施設にとっても良い結果がもたらされるのです。

 

3、看護師の実際

しかしながら、患者に対するコミュニケーションを苦手とする看護師が多いのが実情です。特に、臨床経験の少ない看護師や、ICUオペ室など特別な場所で働いている看護師は、患者に対してどのようにコミュニケーションを図ればよいのか分からないでしょう。看護学生であれば尚更です。

また、ターミナル期の患者に対してや、対応が難しい質問を投げかけられた時、精神不安により配慮のない罵声を浴びせられた時など、臨床経験の長い看護師にとっても、しばしば悩まされることがあり、看護におけるコミュニケーションは一生を通して学び続ける必要があるのです。

 

対応困難の場面例

  • 症状が思い通りに改善しない患者に対する対応
  • 幻聴・幻覚の出現時の患者への対応
  • 治療に対する患者―家族間の考えの相違時における対応
  • 思い通りにならない状況により、要求がだんだんエスカレートする時の対処
  • 介助を必要としない患者が、甘えのためにナースコールを頻回に鳴らすことに対する対応
  • 精神的に不安定な患者の訴えの真偽が分からない
  • 死を間近に迎える患者の家族に対して、どうフォローすればよいのか
  • 死を間近に迎える患者の家族から、あと何日持つのかと尋ねられた時
  • 死を間近に迎える患者から、「絶対治るよね」と言われた時
  • 退院決定の後、患者家族に「家に帰ってきて欲しくない」と退院延期を要求された時
  • 経済的理由などにより、患者家族が患者の前で「早く死んでくれたらいいのに」と言った時
  • 病識の乏しい患者に幾度も病気について尋ねられたり、入院の不安を詰め寄られた時
  • 疾患や疾患・入院などによる精神的不安から、暴力を振るわれたり罵声を浴びせられた時
  • 「本当の病名は何か」と疑いの目で幾度も詰め寄られた時
  • 薬剤の内服が必要にも関わらず、拒否される時

このように、さまざまな場面で難しい対応が迫られ、何も答えられず沈黙したり、返答を間違うことで患者の不安を増大させてしまったり、時には怒鳴りつけられることもあるなど、この困難さが看護学生や看護師を苦悩させているのです。

 

4、コミュニケーション力向上に向けた取り組み

コミュニケーション力を根本から向上させるためには、日頃から批判的な思考(クリティカルシンキング)を働かせ、一連のプロセスに沿ってリフレクションを実施する必要があり、習得には長年の臨床経験(患者との関わり)が不可欠です。

しかしながら、ポイントを抑えることで、今のコミュニケーション能力を劇的に向上させることが可能です。以下に、患者からの信頼獲得のために重要となる接し方のポイントを、心理的要素を踏まえてご紹介します。

 

4-1、コミュニケーションの基本

常に笑顔で接すること

笑顔というのは人の心を癒すのに最も効果的な方法です。“もらい笑い”という言葉が存在するように、笑顔の人を見ると自然と心が穏やかになり、不安が取り除かれるだけでなく、前向きな考えに移行します。反対に、強張った表情や険悪な表情はマイナスの作用を相手に伝えてしまい、気分の低下や消極性を生み出してしまいます。それゆえ、常に笑顔で接することが大切です。

 

穏やかな声で話すこと

もらい笑顔と同様に、声の調子も相手に作用し、声が高いと快活、声が低いと陰鬱な印象を与えます。また、話すスピードが早いと興奮、話すスピードが遅いと冷静な印象を与えます。声が相手の耳に居心地よく入るよう、声の高低が丁度よい穏やかな調子で、ゆっくりと話すよう心掛けてください。

 

親身になって傾聴すること

親身になって傾聴することで、相手は「ちゃんと自分の話を聞いてくれている」と安心します。傾聴は患者情報の取得にも役立つため、多忙であっても可能な限り注意深く傾聴するようにしましょう。

 

いかなる事にも冷静に

人は仕草や表情の変化、声の調子などに敏感で、無意識的に反応します。患者本人や患者の周りで緊急を要する事態が発生した際に、慌てた行動をみせてしまうと、患者は不安な状態に陥ります。いかなる事、いかなる場面においても冷静に行動するよう心掛けてください。

 

十分に説明をすること

疾患や治療の方針など、患者に対して十分に説明することも非常に大切です。上で述べたように、患者は疾病や治療について知識がなく、入院時には特に医療従事者を頼りにせざるを得ません。納得のいく説明がなければ、患者は医療従事者に対して不信感を抱き、不安はますます募ってしまいます。コミュニケーションを円滑に図るためにも、可能な範囲で十分に説明を行ってください。また、専門用語を多用せず、患者に分かりやすく説明することが大切です。

 

4-2、抑えておくべきテクニック

目を見て話す

時には威圧的にとられてしまうことがありますが、それは表情が強張っていたり、批判的な態度で接している場合のみです。通常、目を見て話すことで「話をちゃんと聞いていますよ」、「あなたに好感を持っていますよ」というように、好意シグナルが伝わります。特に社会的に権力を持つ人や高齢者の中には、“無礼”として、目を合わせないことに不快を感じる人がいます。笑顔に加えて、目を見て話すよう心掛けましょう。

 

目線を同一にする

日本語には「目上」「目下」という表現があるように、社会的にも心理的にも目の高さは上下関係を表しています。多くの人は受容していますが、中には上から話されることに不快を感じる人もいるため、出来るだけ目線を同じにして話すよう心掛けてください。ただし、何時も目線を同一にする必要はありません。車椅子の移乗を介助する時など、可能な時だけ意識的に行いましょう。

 

距離を確保する

人は無意識的にテリトリー(パーソナルスペース)を形成しており、ある一定の範囲に他人が入ってくると不快を感じます。好感を持っているほど、信頼が厚いほど、この受容の距離は短いため、特に初対面の時には患者のパーソナルスペース内に入らないよう注意する必要があります。なお、人によって距離は異なりますが、1mくらいの距離は確保しておきましょう。

 

相槌を打つ

相槌は「話を聞いていますよ」というサインを相手に伝え、相手は心地よく自分の話をすることができます。相手の話に合わせて、「はい」「ええ」「そうなんですか」などと短い言葉で返しましょう。「ハイハイ」「うんうん」など、忙しい時にやりがちな小刻みな相槌は逆効果です。相手の話に合わせてゆっくり相槌を打つのがポイントです。

 

オウム返しをする

相手が言ったことをそのまま返すオウム返しは、「あなたの話を理解しています」という気持ちを伝えることができます。「今日は寒いわね」に対して「今日は本当に寒いですねー」というように繰り返しましょう。ただし、多用しすぎると、逆効果になるため、要所要所で使うようにしてください。

 

オープンクエスションを使う

YESやNOまたはAかBかの択一でしか返答できないクローズドクエスションではなく、「どう思いますか?」「どうしてですか?」「どうでしたか?」のように相手が自由に返答できるオープンクエスションを使うことで、話しが長続きするだけでなく、相手は気持ちよく話すことができ満足度が格段に向上します。

 

話すスピードを合わせる

話すスピードは人によって大きく異なります。自分のスピードは最も居心地が良いもので、話すスピードが遅い人は相手に速く話されると不快を感じる時があります。また、早口は理解しにくいという一面もあります。話すスピードが早い人は相手に遅く話されてもそれほど不快を感じることはないため、特に話すスピードが遅い人には遅く話すよう心掛けてください。

 

話題に同調する

同調とは、いわゆる共感です。人は、共感の気持ちを示された相手に好感を抱きます。なんでもかんでも同調するのは考えものですが、同調できる話題に対しては「私も好きなんですよ!」というように積極的に同調してみましょう。

 

ボディランゲージを駆使する

ボディランゲージは古くから会話の1つの手段として用いられてきました。人は動くものに無意識的に反応するため、ボディランゲージを用いることで、相手が自分に対してより興味を持つようになります。

 

開放的な姿勢をとる

人は無意識のうちに相手の姿勢に対して好感・嫌悪感を抱きます。腕を胸のあたりで組んだり、後ろで手を組んだり、いわゆる体の一部を隠す姿勢は防衛的・拒否的な印象を与えてしまいます。また、爪や手の平を隠す(手をグーにする)行為も、防衛的・拒否的な印象を与える可能性があるため、これらの行為には気をつけ、開放的な姿勢をとるよう心掛けましょう。

※初対面時には必ずこちらから“あいさつ”と“自己紹介”を!

人間関係において、“あいさつ”は基本中の基本です。これは、日常やビジネスだけでなく、医療従事者―患者間でも非常に大切です。また、第一印象は今後の信頼関係に大きく影響します。それゆえ、初対面時には看護師が先に笑顔であいさつしてください。

また、自己紹介も忘れてはなりません。社会的地位の高い人や高齢者の中には、自己紹介がないこと、先に名乗らないことに対して、非常に不快に感じる人がいます。必ず、看護師の方から自己紹介をしてください。

 

5、研修・セミナーのススメ

円滑にコミュニケーションを行うためのポイントをご紹介しましたが、やはり文面のみで完全に理解するのは容易ではありません。また、コミュニケーション術をマスターするためには、長年の実践経験が必要不可欠です。

コミュニケーションの基礎を習得したいという方は、研修やセミナーに参加し、実践を通しながら学ぶことが非常に効率的です。

なお、研修やセミナーに参加することで、コミュニケーションの大切さや、即座に使える技術の習得、自信の獲得、新たな発見など、さまざまな利点がありますので、この機会に参加してみてはいかがでしょうか。

 

研修・セミナーによる学び・気づき

対象との関係の形成
  • 非言語的コミュニケーションの意義
  • コミュニケーションの援助的関わり
  • 対象のペースや待つことの重要性
  • 受容・傾聴・共感の重要性
  • 基本的コミュニケーション技術の向上
  • 患者理解の重要性
  • 信頼関係形成のための基盤づくり
  • 意図的な関わり合いの重要性
  • 観察の重要性と観察による患者情報の取得
  • 個別性のあるコミュニケーション技術の向上
自身の成長の変化
  • 自己分析・自己洞察力の向上
  • リラックスした関わり合い、関係の構築
  • コミュニケーションにおける自己課題の発見
  • 自己表現力の向上、自身の不安軽減
自己のコミュニケーションに対する気づき(反省点)
  • 自己中心的、一方的なコミュニケーション
  • 受動的、消極的なコミュニケーション
  • 言語的会話を重視するコミュニケーション手段
  • 不信感を与える無意識的なコミュニケーション
  • 非尊重的なコミュニケーション

 

6、医療従事者間のコミュニケーションも忘れてはならない

これまで患者を対象としたコミュニケーションについて述べてきましたが、患者だけでなく、病棟やチーム内の他の看護師、医師、その他医療従事者とのコミュニケーションも忘れてはいけません。

昨今、医療従事者間の患者情報の共有不足が嘆かれており、情報の共有不足によるインシデントが多発しています。特に、1人の看護師に対して受け持ち患者数の多い医療施設でのインシデント発生数が多いのが実情です。

インシデントを最小限に抑えるため、また病棟やチーム内の良好な雰囲気作りのため、特に中堅看護師や看護管理者は積極的にコミュニケーションを図るよう努めてください。

 

まとめ

患者とのコミュニケーションは、看護師が抱えるストレスの最も大きな要因の1つであり、多くの看護師が苦手意識を持っていることでしょう。

コミュニケーション能力を根本から向上するのは容易ではありませんが、まずは「4、コミュニケーション力向上に向けた取り組み」を実践し、効果を実感してください。継続的に実践し効果を実感できれば、自信がつき、コミュニケーション能力は瞬く間に向上していくはずです。ぜひ意識的に実践していってください。

なお、「3、看護師の実際」の対応困難例に対して上手く返答するためには、クリティカルシンキングにより思慮し、リフレクションにより幾度となく振り返る必要がありますので、返答方法について習熟したいという方は、クリティカルシンキングとリフレクションについてしっかり学んでおきましょう。

 

クリティカルシンキングを用いた看護過程の展開・問題の解決

看護リフレクション|プロセスに沿った実施方法と事例

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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