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チアノーゼの看護|症状・原因からみる効果的な対処法(2016/04/19)

公開日: : 最終更新日:2017/12/09 北海道 看護用語 全科共通 

チアノーゼの看護

さまざまな疾患や症状の変化に伴って現れるチアノーゼ。一症状であり、ほとんどは原疾患に起因しているため、通常は経過観察で問題はありません。しかしながら、長期的な発症により合併症を引き起こすことも多々ありますので、軽視すべきではありません。

今回は、概要から対処までチアノーゼについて詳しく解説しますので、チアノーゼ患者の看護に関して不安がある方は、ぜひ最後までしっかりお読みいただき参考にしてください。

 

1、チアノーゼとは

チアノーゼとは、血中の還元ヘモグロビンや非酸化ヘモグロビンが総量で5g/d以上に増加し、皮膚や粘膜が紫色~暗紫色になる状態のことを言います。

血中の酸素量(血中酸素飽和度)は、健常者の場合、動脈血酸素飽和度が100%、静脈血酸素飽和度が70%、毛細血管内血液酸素飽和度が70%ですが、これらのうちのすべて、あるいはいずれかが低下することで、赤血球中のヘモグロビンが通常時の赤色から紫色~暗紫色へと変化します。

要するに、チアノーゼは酸素が欠乏した時に起こり、皮膚上からみえる紫色~暗紫色の色調はヘモグロビンの色なのです。毛細血管が多い、表皮が薄いなどの理由から、多くは口唇、口腔粘膜、鼻尖、耳朶、指先、爪床などに発症しますが、チアノーゼを引き起こす原因疾患の種類によっては全身にみられるものもあるなど、ひとえにチアノーゼと言っても発現部位や原疾患の種類は多岐に渡ります。

チアノーゼは一症状であり軽度なものが多いため、通常は経過観察で様子をみますが、長期化することで呼吸困難意識障害、場合によっては重篤な合併症を引き起こすこともあります。特に小児高齢者においては重篤化する傾向が強いので、軽視すべきではありません。

チアノーゼによる合併症の発症を防ぐためには、原因となる疾患の有無、随伴症状の有無など、患者情報を細かく把握した上で綿密な観察が必要不可欠。また、チアノーゼに関する知識も非常に重要ですので、適切な看護を行うにあたって、深い知識を有しておいてください。

 

2、チアノーゼの種類と原因疾患

チアノーゼは、大きく分けて「中枢性チアノーゼ」「末梢性チアノーゼ」「血液性チアノーゼ」の3つに分類されます。

 

■中枢性チアノーゼ

中枢性チアノーゼは、動脈血酸素飽和度、静脈血酸素飽和度、毛細血管内血液酸素飽和度のすべてが低下した全身性のチアノーゼのことで、呼吸機能障害や左右シャント、肺胞内酸素分圧低下の3つが主な原因。中でも呼吸機能障害(特に小児)が原因となることが多いのが実情です。

 

■末梢性チアノーゼ

末梢性チアノーゼの場合には動脈血酸素飽和度は正常で、静脈血酸素飽和度と毛細血管内血液酸素飽和が低下する場合に該当します。また、中枢性チアノーゼとは異なり、末梢性チアノーゼの多くは指尖や鼻尖などの末端部に症状が現れ、末梢循環不全や動脈・静脈閉塞性疾患が主な原因で、新生児にみられる低血糖の一症状として発現することもあります。

 

■血液性チアノーゼ

血液性チアノーゼは、酸素親和性の低いメトヘモグロビンが関与しており、血中のメトヘモグロビンの含有量は正常であれば2%未満ですが、これが15%以上となるとチアノーゼの症状に加え、頭痛倦怠感など他の症状が併発します。原因は主にヘモグロビンの異常によるもので、乳児に多くみられます。

1、中枢性チアノーゼ
 1)呼吸機能障害
 ①肺胞低換気
  中枢性低換気 泣き入りひきつけ、脳圧亢進、髄膜炎、神経筋疾患
  末梢性低換気 呼吸窮迫症候群、新生児一過性多呼吸、胎便吸引症候群、横隔膜へルニア肺水腫、新生児遷延性肺高血圧、重症肺炎重症喘息、気道異物、クループ、間質性肺炎、cystic fibrosis
 ②換気血流比不均等
 ③拡散障害
 2)右左シャント
 ①先天性心疾患 チアノーゼ性心疾患(Fallot四徴、両大血管右室起始、完全大血管転位、総肺静脈環流異常、肺動脈閉鎖、三尖弁閉鎖、総動脈幹、単心室左心低形成など)、アイゼンメンゲル症候群
 ②先天性肺血管異常 肺動静脈瘻
 3)肺胞内酸素分圧低下 高地環境
2、末梢性チアノーゼ
 1) 末梢循環不全 低心拍出症候群、低血糖、寒冷曝露、赤血球増多症、レイノー現象
2)動脈閉塞性疾患 血栓性動脈炎、動脈性塞栓症、閉塞性動脈硬化症
3)静脈閉塞性疾患 血栓性静脈炎、静脈瘤
3、血液性チアノーゼ

(ヘモグロビンの異常)

先天性メトヘモグロビン血症、二次性メトヘモグロビン血症(フェナセチン、硝酸剤、一酸化窒素吸入)、ヘムグロビンM血症、スルホヘモグロビン血症、乳児メトヘモグロビン血症

 

3、チアノーゼによる全身合併症

呼吸器に関わる疾患が原因でチアノーゼを呈する場合には、おおむね酸素投与などにより短期的に改善を図ることができますが、その他の多くの疾患が起因している場合には酸素投与では改善されず、原因となる疾患自体を治さなければいけません。

また、チアノーゼの症状が継続的にみられる場合には、さまざまな全身合併症を発症することがあり、場合によっては死に直結することもありますので、長期にわたってチアノーゼが持続する場合には合併症の管理が非常に重要となります。

長期的なチアノーゼによる全身合併症
血液学的異常 赤血球増多、過粘稠度症候群
末梢血管異常 血管新生、血管拡張
出血傾向 血小板減少、凝固能低下
ビリルビン代謝異常 胆石、胆嚢炎
尿酸代謝異常 高尿酸血症、痛風
肺血管障害 肺出血、肺動静脈瘻、肺血栓
脳血管障害 脳梗塞
腎臓合併症 蛋白尿、腎不全ネフローゼ症候群
四肢・長管骨の異常 ばち状指、肥厚性骨関節症
感染性心内膜炎

 

①血液学的異常

慢性的な低酸素血症によるエリスロポイエチンの増加に伴い、赤血球が増加します。また、血液粘稠度の上昇による過粘稠度症候群では、頭痛、めまい、耳鳴り、疲労、倦怠感、失神、複視、視野欠損、指尖・口唇の感覚異常、筋肉痛、筋力低下などの症状を呈し、多くはヘマトクリット値が65%以上になるとこれらの症状が発現します。

 

②末梢血管異常

血液粘稠度増加に伴うずり応力(shear stress)により、血管内皮から一酸化窒素が放出され、血管の拡張・蛇行が出現します。また、慢性的な低酸素状態では、末梢血管や毛細血管が新生あるいは増生します。

 

③出血傾向

ヴォン・ヴィレブランド因子をはじめとする凝固因子の低下、血小板の減少・機能異常に伴い、出血傾向を示し、末梢血管の増生も相まって、鼻出血、歯肉出血、月経過多などがよくみられます。出血傾向を示すと、手術時に大量出血をきたすことがあるため、注意が必要です。

 

④ビリルビン代謝異常

赤血球の増多に伴いビリルビン代謝は亢進しますが、肝臓での処理が追いつかなくなると解毒作用が働かなくなり、グルクロン酸抱合されない間接ビリルビンが胆汁に排泄されるようになります。その結果、間接ビリルビンはカルシウムと結合し、ビリルビンカルシウム結石が生成されます。また、胆嚢炎などの重篤な感染症を引き起こすことも少なくありません。

 

⑤尿酸代謝異常

尿細管における尿酸再吸収増加、赤血球破壊に伴う尿酸産生により、血液中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症や痛風を引き起こすことがあります。

 

⑥肺血管障害

出血傾向や、肺動静脈瘻、肺塞栓、肺動脈瘤破裂、肺内新生血管、体肺側副血行路などの肺血管の異常が原因となり、時に致命的となることがあります。喀血や肺出血においては成人期においても比較的多く認められ、気管支鏡検査では多量の出血を伴うこともあるため注意が必要です。

 

⑦肺血管障害

脳血栓の発症率は多くはありませんが、頭部CT・MRI検査において無症候性陳旧性脳梗塞を認めることは少なくありません。

 

⑧腎臓合併症

糸球体の肥大、糸球体毛細管の増生と拡張、メサンギウム基質の増加、メサンギウム細胞増殖、メサンギウム融解、傍糸球体細胞の増殖、輸入細動脈の拡張、糸球体病変などの病理学的変化に伴い、チアノーゼ腎症をきたします。

 

⑨四肢・長管骨の異常

毛細血管内の血流の著しい低下、酸素放出量増加に伴う酸素飽和度の低下が継続化すると、爪の付け根が肥大し、爪の先が手の平側に曲がって大きくなる“ばち状指”となり、多くは幼児期以降に出現します。

 

⑩感染性心内膜炎

チアノーゼ性心疾患に起因し、多くは術後(姑息術後)にチアノーゼが残存する時期に発症し、時に重篤化することもあるため注意が必要な合併症です。

 

4、チアノーゼの看護

チアノーゼというのは症状であり病気ではありません。「2、チアノーゼの種類と原因疾患」に記載してあるように、チアノーゼを引き起こす原因疾患は多岐に渡り、これら原因疾患を改善させることでチアノーゼが消失します。

しかしながら、治療中において体温の低下や吸気量の減少など、副次的に起こる症状によりチアノーゼが出現することも多々あり、この場合には“チアノーゼの出現=患者状態の悪化”と捉えることができるため、治療中におけるチアノーゼの発現に起因する原因を改善することが大切です。

 

4-1、観察とアセスメント

まずは、出現しているチアノーゼが「中枢性チアノーゼ」なのか、「末梢性チアノーゼ」なのかを確認してください。「中枢性チアノーゼ」であれば症状が全身に認められ、「末梢性チアノーゼ」であれば口唇や四肢末端など局所的に認められます。

分類を把握することで、それが背景疾患に起因しているものなのか、入院環境や患者状態の悪化によるものなのかを判断することができます。なお、チアノーゼのみを主訴とすることは稀であり、多くはチアノーゼとともに何らかの症状が発現します。

起因する疾患の有無 呼吸器疾患・心疾患などの有無、気管支喘息、異物混入、服薬歴など
状態・発現部位 症状の程度、急性・慢性の確認、発現の時期、部位(全身性か局所性か)、活動・動作(安静時・入浴・運動・哺乳・排便)との関連
随伴症状 呼吸状態、意識状態、けいれん、気分、食欲、脱水症状浮腫、心音(心雑音の有無・性状・ギャロップ)の有無
全身状態 体温、上下肢の血圧差、抹消冷感、四肢における脈拍触知状態、血中酸素飽和度、活気

 

4-2、症状出現時の対処

背景疾患が起因している場合には、その疾患を改善させることでチアノーゼが消失するため、ひとまず経過観察で問題ありません。ただし、体温の低下や吸気量の減少、激しい体動など背景疾患と深く結びつかない場合には、それらの原因を取り除き、積極的な対処を行ってください。

 

①保温

体温の低下に伴い、チアノーゼが発現する場合には、患者の体全体を温めてください。口唇や手足末端など局所的に発現している場合でも、体全体の血流を良くするために毛布を一枚増やすなど工夫しましょう。マッサージや手足湯などを行うことでも効果が得られます。

 

②安静な体位の維持

チアノーゼ発現時には安静な体位を維持するとともに、呼吸困難感が同時にみられる場合には上半身への血流を確保する目的で、体を折りたたむように膝を胸につける体位(膝胸位)をとらせてください。この際、衣類や寝具の圧迫除去にも努めてください。また、患者本人で安静な体位の維持・膝胸位が困難な場合がありますので、患者家族への説明と協力を仰ぎましょう。

 

③酸素の投与

チアノーゼと酸素量は密接な関わりがあります。酸素を投与することで血中酸素飽和度が上昇し、チアノーゼ症状は瞬く間に消失します。呼吸困難感がある場合には気道確保の上、積極的に酸素投与を行い、酸素チューブ離脱の有無など継続的に投与ができているかを適宜確認し、必要に応じて吸痰を行ってください。

 

④薬物の投与

薬物によりチアノーゼを改善させることは難しく、またチアノーゼ自体は軽度な症状であることから通常は薬物治療を行わず、①保温、②安静な体位の維持、③酸素の投与、の3つの方法で改善を図ります。留意点として、有する疾患の治療薬の副作用としてチアノーゼが発現することがあります。

通常、程度が弱ければ継続投薬を行いますが、程度が強くチアノーゼに加え他の症状が発現し患者の負担が大きい場合には、薬物の変更を行います。ただし、薬物の変更は医師の判断ですので医師に報告の上、指示を仰いでください。

 

まとめ

チアノーゼの原因の多くは背景疾患に起因しており、背景疾患の改善によりチアノーゼ症状は消失するため、通常は経過観察で問題ありません。

しかしながら、背景疾患に起因しておらず、環境や行動などによりチアノーゼが発現する場合には、「4-2、症状出現時の対処」で記載した各項目を積極的に行っていってください。また、これらは背景疾患と起因している場合でも、改善がみられる場合が多々ありますので、必要があれば実践してください。

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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