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構音障害・失語症の看護|観察項目とコミュニケーションに関するケア・指導(2016/12/09)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護師 看護計画 千葉県 脳神経外科 

構音障害の看護

病気が原因で、言葉が不明瞭になったり、会話のリズムが乱れたりするのを「構音障害」といい、のどや呼吸器、舌、あご、唇など発語、発音器官が麻痺してスムーズに動かせなくなる運動機能の障害で、脳卒中(脳梗塞脳出血)の後遺症が典型です。

脳卒中は日本人の死因の第4位を占め、一昔前より死亡率は下がっていますが、厚生労働省が2016年4月に発表した「平成26年(2014)患者調査の概況」によると、患者数は117万9000人で後遺症に悩む人が多いのが現状です。

歌手の西城秀樹さんは、「月刊文藝春秋」2016年12月号で自身の脳梗塞(ラクナ梗塞)の後起きた構音障害のため、「言葉がでにくく、うまくしゃべることができなくなった」という体験を語っています。

 

1、構音障害・失語症とは

言葉を作る機能は、肺から送られてきた呼気が声帯を通過する時に声帯を振動させる「発声」、のど(咽頭)から口、鼻までの空間の形を変化させる「共鳴」、そしてのどから唇、鼻の穴までの通路の形を狭めたり閉じたりしながら言語に変える「構音」に分かれます。

人体の器官でいえば、肺とのどが「発声器官」、声道(声帯から唇までの声の通る道)を取り巻くものが「構音器官」です。

構音障害は、その構音器官、あるいは発声器官の損傷や麻痺によって言葉がうまく話せない状態をいいます。脳卒中が原因となってその後遺症で、発声、構音器官のどこかに運動麻痺が残るとか、舌癌の治療で舌や口腔内の一部を切除したために起こる障害です。

構音障害の多くは、運動性構音障害であり、運動神経が麻痺して呂律が回りにくくなることが多いため、「運動性」を冠しているのです。

よく似た症状に失語症や音声障害(発声障害)があります。構音障害と音声障害は言語知識に問題はなく発声に関する筋肉、神経が障害された状態ですが、失語症は「大脳の病変」によって得た言語知識が障害された状態を指し、話す、書く、読む、聞く、の4つの側面すべてにおいて障害が現れます。

 

1-1、構音障害と失語症の違い

以下のように構音障害と失語症は明確な違いが存在します。

言語障害
構音障害 失語症
・  発声に関する筋肉群の協調運動が障害され、正しい発音ができない

・  脳神経、小脳の障害により、構音の筋肉が障害を受けた可能性がある

・  大脳の言語中枢が障害され、言語の理解も、言語を発することも障害される

・  運動性失語、感覚性失語、全失語などいくつかの種類がある

共通点=コミュニケーション障害としてあらわれる

原因は異なりますが共通点としては、①言葉が不明瞭になる、②声の大きさや高さが一様となって発話が単調に聞こえる、③発話速度の変化やリズムの乱れが生じる、などがあります。

 

2、構音障害患者に対する看護目標

・  患者が、話す意欲を失わず、コミュニケーションに関する欲求不満を減らせるよう援助すること

・  リハビリの意欲がわくように努めること

看護師の仕事は、ほとんどのコミュニケーションを言葉で行います。構音障害の患者に対しても言葉で説明しようという思いが先走りがちで、患者の方はそれに対して「言いたいことがうまく伝わらない」という「もどかしさ」「ふがいなさ」「いらいら感」を感じることがよくあります。

脳卒中の後遺症の場合は、身体の不自由さも伴い、発症前には普通にできていた動作ができなくなり、日頃からストレスを感じやすくなっている上に、なにげない言葉であっても本人が傷つく内容、例えば励ますつもりで「しっかりして」と投げかけられると、患者は逆にますますストレスがかかってしまい、人との関わりを避ける方向になってしまう可能性が高くなります。

また、うつの亢進や、場合によると認知症を招くきっかけになる可能性もあります。そのため、構音障害患者に対して看護を行う場合には、ほかの疾病の看護とは違う側面があるということを知っておかねばなりません。

 

3、構音障害における観察項目

1、コミュニケーションの不自由さの程度を測る

・声の大きさ、強さはどの程度か、しっかりした話し方かどうか

・話し方の調子、発話速度や抑揚、リズムはどうか

・発する音の誤りがあるか。母音と子音でどのような傾向か

・全体として発話の明瞭度はどうか

2、 言葉を出す能力、受容に影響する身体障害、特に声帯の麻痺、口の奇形、変形や奇形の有無、程度。難聴かどうか視覚障害がないかどうか

3、 発話に伴うストレスがある様子かどうか

4、 会話だけでなく、他の人とのコミュニケーションの状態はどうか

構音障害が失語症と異なる点は、発語に障害に出ても言葉を聞いて理解することについては問題がないということです。そこを観察することで、失語症なのか、構音障害なのかを間接的に判断する材料にもなります。

 

4、構音障害患者への看護の取り組みと指導

基本的な対処方法として、患者自身が「喋りにくい」と感じている心情を理解してあげることが必要です。喋りにくいと訴える人の気持ちが、「気にする必要はない」という方向に傾くように支援します。

 

■短く、ゆっくり話してもらうように促す

患者が感じるほどには、周りはなんとも思っていないことを告げて、安心して話せる環境を作りましょう。

 

■姿勢を安定させて話してもらう

お腹から空気をゆっくり出すような姿勢をして声を出すと、本人が思っている以上に、声は大きくなります。そうなったら、「大きい声になった」、ということを患者本人にも告げてあげましょう。

 

■静かな環境のもとで話を聞く

テレビの音量を下げる、扉を閉めるなど、ゆっくりと話せる雰囲気を作ることで、患者自身の気持ちも落ち着きます。

 

■「イエス、ノー質問」を使う

言いたいことが話せない、と思っている患者に対しては「イエス、ノー質問」(質問して、「はい」「いいえ」だけを答えてもらう)を使って話題を絞っていきます。

 

■道具を用いた他のコミュニケーションの実践

重い症状の患者の場合は、他のコミュニケーション手段、例えば、ノートを使った筆談、五十音表などの文字盤を使って指を指して会話してもらいます。

 

※避ける方が良いこと

・  患者を「◯◯ちゃん」などと呼んで赤ちゃん、幼児扱いしてはいけません。自分が赤ん坊扱いされていると感じることでプライドを傷つけられ、落ち込んでしまいがちです。

・  分かったふりをしてはいけません。誤解につながり、あとあとにその間違いを引きずってしまいます。

 

5、構音障害のリハビリテーション

構音障害のリハビリの基本は、脳卒中(脳梗塞、脳出血)の再発の防止、日常生活での機能障害からの回復を通じて、生活の質(クオリティオブライフ)の向上を図ることにあります。

治療を始めてできるだけ早期に、看護師と理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士ら専門家によるチームを立ち上げリハビリを開始します。先の西条秀樹さんは、あごの筋トレ、舌のストレッチ、風船の膨らませの訓練を繰り返し「歌を取り戻した」と話しています。

看護師は、最も早い段階から患者と接しているわけなので、退院後のリハビリに協力してもらう役割の家族の状況も含め、詳しい説明が求められます。

 

5-1、リハビリの3つの段階

リハビリは、発症直後から3週間位までの「急性期」、病状安定後から3〜6か月程度までの「回復期」、それ以降の「維持期」の3段階に分けられます。

一般的には、急性期のリハビリは病院で、回復期のリハビリはリハビリ病棟や専門施設で行えれば良いのですが、地域によってはリハビリ施設の不足気味のとこもあります。患者家族とも協力して、適切なところを選ぶようにしたいところです。

 

■急性期リハビリ

急性期のリハビリは、病後の廃用症候群の予防が目的となります。廃用症候群は筋力が衰えたり、関節が固まることで、肺炎や認知症の二次的障害を起こすリスクも高まりますから、残存機能を活性化する必要があります。

一方、患者が体力的にも精神的にも不安定な時期なので、運動による血圧の急変を避ける必要もあります。医師やリハビリの専門家の指導のもと、慎重に行う必要があります。

 

■回復期リハビリ

回復期リハビリは、日常生活で必要な食事、歩行、排泄などの身体機能の回復に力点を置き、さまざまな訓練が行われます。脳梗塞を例にとると保険治療上、上限180日です(例外はあります)が、大部分の人はこの期間内に日常生活を営める程度に回復します。

 

■在宅リハビリ

回復期の日数を経過すれば、主に自宅を中心に身体的機能の維持が目的となります。一旦失った身体的機能は脳機能に原因がある場合、一度死んでしまった脳神経細胞自体は再生できないものの、リハビリを続けることで、その近くにある脳細胞が新しくネットワークを形づくり、ある程度まで肩代わりできることが分かってきています。

脳梗塞の場合、発症の時の症状と、障害の程度で後遺症からの回復がどの程度見込めるか、という「あるべきゴール」の目安がつきます。そのゴールを目指して、リハビリを行うことになります。

 

まとめ

構音障害は、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症が典型です。患者にとっては、日頃、当たり前にできた会話が不自由になるのでストレスが高まります。看護に当たっては病状の観察とともに、患者がこのストレスにうまく対処できるように働きかけ、リハビリへの流れを作っていくことが必要です。

 

脳梗塞の看護|急性期と慢性期における看護計画とは

脳出血の急性期、慢性期におけるポイントと看護計画

高田典明 看護師

東京都出身、千葉県在住。高校卒業後、一般企業に就職。父が脳梗塞で倒れたのをキッカケに、脳血管障害を有する人の治療に携わりたいと思うようになり、看護師の道を志す。看護学校へ入学、看護師国家試験に合格の後、千葉県内の市立病院(脳神経外科)に就職。父の介護が必要になったことで5年の勤務を経て離職。現在は介護の傍ら、ライターとして活動中。同時に、介護の在り方や技術などにおける勉強も行っている。

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