敗血症の看護、観察するべきポイントと看護計画とは(2015/12/04)
感染症の中でも、全身感染を引き起こす重症症状の一つとして敗血症があります。基本的には、背景として悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、肝・腎疾患、膠原病(こうげんびょう)などの基礎疾患がある場合に発症しやすいです。
または化学療法や放射線治療を受けて白血球数が低下している、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対しての抵抗力が低下している場合も、敗血症を起こしやすいので注意とされています。
当ページでは、敗血症発症後の看護、看護計画について様々な情報を詳しく紹介していきますので、敗血症の患者さんへの看護に自信がない方は特に、しっかりお読みいただき、確かな知識を得て日々の看護に活かせるようにしてください。
目次
1、感染症とは
敗血症は感染症のため、感染についてまずは知識をつけましょう。
感染症とは、環境中(大気、水、土壌、動物など)に存在する病原性の微生物が、人の体内に侵入し、引き起こされる疾患です。私たちには通常見えない、多くの微生物(細菌、ウイルス、真菌が存在します。その中で、感染症を引き起こす微生物を病原体といいます。
感染は、病原体が人間の体内に侵入、定着し、増殖、この全てが成り立つことで成立します。感染したとしても、症状が現れる場合(顕性感染)と,はっきりとした症状が現れない場合(不顕性感染)があります。
まずは、目に見えない病原体や寄生虫が、どこから(感染源)、どのように侵入するのか(感染経路)を知ることが大切となります。感染源は、病原体に感染した人(感染者)・動物・病原体で汚染された物や食品が感染源となります。
1-1、感染経路
感染を起こしていたとしても、感染経路を遮断できれば他に病原体が伝播することは防げます。感染においてとても重要となります。接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)の3つが大きく分けてあります。
接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触、手、ドアノブ、便座、スイッチなど表面を介しての接触で、病原体が付着していると感染となります。主に汚染された食品や汚物などが口から体内に侵入します。ノロウイルス、0-157、感染性胃腸炎などが代表となります。
飛沫感染とは、咳やくしゃみといった、飛んだ唾やしぶきなどの病原体を吸入することで、引き起こされる感染です。マスクの着用や距離を保つことが有効です。インフルエンザ、風邪などが代表となります。
飛沫に含まれる水分が蒸発した粒子を飛沫核といい、空間に浮遊して広範囲に広がります。病原体は埃と一緒に浮遊し、これらを吸入することで感染し、空気感染または飛沫核感染といわれています。ノロウイルスが代表となります。
2、敗血症とは
肺炎や腎盂腎炎など、ある部分が感染症を起こしている状態から、血液中に病原菌が入り込み、重篤な全身状態にしてしまう病状をいいます。
血液中に病原体が入りこむ病名としては、腎盂腎炎による尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症、胆管炎、胆のう炎、褥瘡感染などが挙げられます。また、中心静脈カテーテルなど、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に感染するケースもあります。
2-1、敗血症の症状と敗血症ショック
細菌が血液中で増殖し、その毒素によって高熱・悪寒戦慄などを起こします。血液中の細菌が、二次的に様々な臓器に定着して増殖を始めると、その臓器が障害された際の症状が出現します。
・肺が障害される | 気管支肺炎や肺梗塞の症状である咳や呼吸困難、胸痛など |
・心臓が傷害される | 心内膜炎や心不全症状など |
障害される場所によって症状は違いますが、基本的には重篤な症状を引き起こします。重症の敗血症の場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)と言われる皮膚や粘膜に出血斑が見られます。
重症化してしまうと、血圧低下・無尿といった敗血症性ショックを起こして、早いと数時間で死に至る場合もあります。
敗血症ショックは、下記の兆候が一つでも当てはまると敗血症ショックと診断され、迅速な対応が必要とされます。
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2-2、敗血症の治療
敗血症は、診断と治療が早ければ早いほど、生存確率は高まります。医師は、多くの薬剤を使用します。
■輸液
組織への酸素供給を改善するため、通常急速かつ十分な輸液療法を行う必要があります。脱水と血圧を保つために、大量の輸液製剤を行います。
■血管収縮薬・狭心薬
平均血圧が70以下など、明らかに下回る状態が続く場合、昇圧剤の投与を開始します。第1選択薬はノルアドレナリンです。ノルアドレナリンは、血管収縮作用に強力な力を持っています。
■輸血
造血作用が弱まっていれば、ヘモグロビン濃度も低下します。7.0以下など極端に減少している場合には、輸血を行う必要があります。
■血糖値のコントロール
極端な高血糖や低血糖にならないように、インスリンやブドウ糖液などを使用し、適正な血糖が保たれるようにします。
■ステロイド投与
高用量のステロイド投与は、易感染状態を作ります。感染リスクを高めるため、通常は推奨されていません。十分な輸液や昇圧剤、血管作動薬を使用しても、敗血症ショックが落ち着かない場合に限り、低用量のステロイド療法が推奨されています。
■人工呼吸器管理
全身状態が悪化すると、酸素化が保たれなくなり場合によっては必要になることがあります。
■腎補助療法
持続的腎補助療法や間欠的腎補助療法が、敗血症に合併した急性腎不全に対して行われます。
3、DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併した場合
DICを合併した場合には、深部静脈血栓予防が重要となります。過凝固状態を制御するために、抗凝固療法が必要となります。しかしヘパリンは、出血症状を助長する作用を持っています。
その軽減を目的とした低分子量ヘパリン(フラグミン)やトロンビンなどの活性化凝固因子の阻害作用をもつメシル酸ガベキサート(FOY)などを使用し、治療を行います。
⇒播種性血管内凝固症候群(DIC)|原因と症状、早期発見・治療のポイント
4、敗血症を患っている患者様への看護問題
敗血症の患者様のポイントは、基本的には体温、呼吸数、脈拍数などのバイタルサインを的確に捉え、生命に危機に陥っていないか見極めることが極めて重要となります。では、どのような看護問題があがるのでしょう。
1)体温が不安定な状態の場合には「敗血症に関連する発熱(低体温)が原因の身体的苦痛」と挙げてよいでしょう。
2)バイタルサインが安定せず、意識障害も伴う重篤な場合には、「血圧低下、意識障害による生命の危機リスク状態」と挙げてよいでしょう。
3)低酸素血症で酸素化が保てず、呼吸状態の悪化が見られる場合には「低酸素血症による呼吸苦出現が原因の身体的苦痛」と挙げてよいでしょう。
4)DICを併発している場合には、出血リスクが高まります。「DICを併発していることによる、身体損傷リスク状態または易出血リスク状態」と挙げてよいでしょう。
敗血症といっても、様々な症状があります。今、患者様にとって必要なケアは何かをよく観察し、個別性にあった看護問題を立案するようにしましょう。
5、敗血症を患っている患者様の看護計画
敗血症看護のアセスメントを行う際に、必要な観察ポイントや情報は何かを整理しましょう。
- 患者背景(身長、体重、年齢、現病歴、基礎疾患)
- 全身状態(体温や脈拍、呼吸などのバイタルサイン、皮膚の出血、尿量、意識レベルなど)
- 活動、休息(ADLの状況、休息がとれているか)
これらの情報をまとめ、現在の患者様の状態を把握する材料とします。
- 敗血症を患っている患者様の看護計画
では、先に挙げた各々の看護問題に該当する、看護計画を立案していきましょう。
5-1、OP
- 全身状態:発熱、低体温、白血球増加、白血球減少、呼吸数増加、脈拍数増加、CRP上昇、出血部位、SPO2低下、意識障害
- 泌尿器症状:血尿、細菌尿、尿混濁
- 呼吸器症状:咳や喀痰、呼吸困難
- 消化器症状:悪心、嘔吐、腹痛
5-2、TP
発熱に関連する内容の場合は、
- 高体温の場合、悪寒が伴っていなければ氷枕や腋窩、そけい部にクーリングを行い解熱する
- 悪寒がある場合は、温罨法を行いながら掛け物をかけて保温する
- 医師の指示に基づき、解熱鎮痛剤を使用する。ただし、血圧が低い場合は医師に相談とする
- 発熱で体内水分が失われていくので、水分補給を十分に行う。できない場合は、輸液製剤で補えるように医師と相談する
呼吸に関連する内容の場合は、
- 医師の指示に基づき、酸素療法を開始する
- 口呼吸の場合、口内が乾くので、経口摂取が可能であれば水分補給を行う
- 起坐位など、体位調整を行い本人の呼吸が楽な体位をとる
DICを併発し、易出血状態の場合は、
- 歩行可能の場合には、歩行状態を確認しスリッパから靴へと変更する
- 床上安静の場合には、ベッド柵には布団など保護できる柔らかい素材を使用する
- ベッド周りの身体を傷つける可能性のあるものは、除去し環境整備を行う
5-3、EP
- 理解力がある患者様や家族から協力が得られる場合に限る
- 体温上昇や息苦しいなど、身体の不調が合った場合にはナースコールですぐに呼ぶように伝える
- 家族が付き添いをしている場合、意識障害など異常を感じた場合にはすぐにナースコールなど看護スタッフを呼ぶように伝える
- DICを併発している場合には、身体中が出血しやすい状態であることを伝える
このように看護計画を立案しましたが、個別性を持って患者様の病状に合わせて立案していってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。重症化しやすい感染症の一つである敗血症になってしまうと、様々な重篤な症状を発症し、生命の危機に直面することが多い病気の一つです。患者様の様子をよく観察し、どのようなケアが今必要なのか正確な判断が必要とされます。
当ページで記載した敗血症の症状や治療、観察ポイントなどの基本的な知識をつけて、日々の看護実践の場で活用していただければと思います。
1965年生まれ、静岡県静岡市在住。スタッフナース歴11年、看護師長歴2年。静岡県内の大学で教育を学び、卒業後は小学校教諭として勤務。後に看護師の道に目覚め、看護学校へ入学し、同県内の総合病院(循環器科)へ就職。現在はイベントナースやツアーナース、被災地へのボランティアなど、幅広い分野で活躍している。
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