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インフルエンザと看護|感染予防と患者が発症した場合の対処(2016/12/16)

公開日: : 最終更新日:2017/12/15 北海道 看護用語 内科 

インフルエンザ

例年冬になると流行するインフルエンザは、看護の現場においても要注意な存在です。患者がインフルエンザにかかったり、重篤化する危険を少しでも減らすために予防策を徹底し、現場で発症者が出た際には速やかに感染拡大を防ぐ対策を進めることができるように、万全に備える姿勢が求められます。

 

1、インフルエンザとは

インフルエンザは空中に浮遊しているウイルスが、体内に入り込んで発症します。日本では12月~3月が発症しやすい時期と言えます。

季節性インフルエンザのウイルスにはA(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、2系統のB型という4種類があります。ウイルスの型によって流行しやすい年齢層が異なっており、インフルエンザを発症しやすい時期は特に、世代を問わず感染しないように注意することが肝心です。

診断には、インフルエンザウイルス抗原検出キットを使って迅速に調べることができます。抗インフルエンザウイルス薬には、タミフルやリレンザ、イナビルが用いられます。ただし、抗インフルエンザウイルス薬は症状が出てから48時間以降に服用した場合は十分な効果は期待できないと言われているほか、耐性獲得という問題点も指摘されています。

 

2、インフルエンザの症状

インフルエンザはくしゃみ、せき、のどの痛み、頭痛、発熱、全身の倦怠感、筋肉や関節の痛みなどの症状が出てきます。高齢者の場合は高熱や全身倦怠感は出ず、微熱や呼吸器症状が長引くといった症状がみられるケースもあります。

肺炎や脳炎などの重篤な合併症にもつながりかねない病気ですので、お年寄りや基礎疾患のある人が罹患した場合は、特に注意が必要です。

 

3、インフルエンザの感染経路

インフルエンザの感染方法としては、飛沫感染と接触感染が多くを占めます。気道分泌物の小粒子(飛沫)はくしゃみ1回で約200万個、せき1回で約10万個生じると言われていますが、大きめの粒子であれば、患者から1~1・5センチほどの距離に居る他者の呼吸器に侵入し、中に含まれていたウイルスの感染が可能になります。

また、小さな粒子であっても、長時間空気中に浮遊している間に、患者と同じ空間で過ごしている人がウイルスを吸入することもあります。

接触感染の場合は、患者がウイルスを手に付着した状態で机やドアノブを触り、その部分を手で触った他者がその手で自身の目や鼻を触ることでウイルス感染を引き起こします。

インフルエンザの感染経路

出典:インフルエンザの感染予防策について 福岡県インフルエンザ関連情報

 

4、インフルエンザとワクチン

インフルエンザワクチンには、発症をある程度抑える効果や、発症した場合に重症化することを防ぐことに効果があると言われています。そのため特に、発症したら重症化しやすいと言われる高齢者や基礎疾患のある人などに対して、効果的であると考えられます。

看護に携わる医療従事者も、特定接種によって臨時的に予防注射を受ける機会がありますが、ワクチンを打ったからといって完全にインフルエンザを防げるわけではありませんので、しっかりと予防を徹底することが重要です。

 

5、インフルエンザの予防策

インフルエンザのシーズンになると、多数の人が訪れる病院内での感染を防ぐことも重要となってきます。病院来訪者に予防策を呼び掛ける必要性が生じることもあるでしょう。予防策のポイントをまとめてみました。

 

■手洗い

水のある場所では手洗いを徹底し、手に付着したウイルスを洗い流すことが肝心ですが、公共施設の出入口など水のない場所にも、手指消毒液が設置されていることがあります。洗うことを忘れがちな指と指の間にも、液をすり込むようにしてなじませることで、効果の浸透を図ることができます。

 

■うがい

うがいは、2段階で実行することがすすめられています。1回目はブクブクと音を立てて口をすすぎ、食べかすや細菌を洗い落とします。2回目で上を向いてガラガラと音を立てて、うがい液や水がのどの奥に届くようにゆすぎます。

 

■マスクとその代用

マスクは、繊維や糸を織らずに、熱や化学作用で接着した布で作られた不織布製やサージカルマスクの着用が、すすめられています。マスクを外す際には、内側のみを触って外すようにして、使い終わったマスクは破棄しましょう。

「せきが出るのにマスクを持っていなかった」という状況に陥った場合は、ティッシュや腕の内側部分で口と鼻を押さえ、周囲の人から顔を背けてからせきやくしゃみをするように、配慮しましょう。鼻汁や痰を含んだティッシュはすぐにごみ箱に捨てるようにしてください。また、手でくしゃみを受けた際は、直ちに洗うようにしましょう。

 

6、インフルエンザと看護

看護に携わる者がインフルエンザ患者もしくはインフルエンザウイルスに感染していると疑われる患者に接する場面としては、色々なケースが考えられます。この中から2つのケースをピックアップしてみましょう。

 

6-1、訪問看護での感染予防・観察

患者宅への訪問による看護活動をしているケースでは、自身や患者の家族がインフルエンザにかかって患者に感染させてしまわないように予防することや、患者がインフルエンザを発症した場合に速やかに発見して対処する必要があります。具体的には、インフルエンザシーズンには以下のような行動が求められます。

・   訪問開始時に手袋、マスクを着用する。

・   患者を訪問する前後には、手洗い、うがいを徹底する。

・   患者の血液、体液、分泌物、排泄物などに接触する場合は手袋を着用し、使用後は手洗いする。

・   患者の唾液や鼻汁、痰が付着した物は処理する。

・   患者に発熱、せき、下痢嘔吐があったり、食事や運動量の減少が無いかどうかを観察する。

・   患者および家族と接する人に感染の兆候が見られる場合は、主治医に連絡する。

・   患者の家族が発症した場合、患者のショートステイ利用などの対応も考慮する。

 

6-2、高齢者入所施設での感染予防

高齢者が集団で入所している施設に勤務している場合、入所者がインフルエンザを発症すると集団感染につながる危険性もありますので、感染予防策の徹底が重要です。地域のインフルエンザ発生状況を把握したり、面会者に対しても施設に入る前に手指消毒をして、マスクを着用するなど、予防に協力してもらうなどの対策が求められます。

もしも利用者がインフルエンザを発症してしまったら、発症者を個室で療養させるか、部屋に余裕がない場合は、インフルエンザ発症者同士を同室に集めて感染拡大を防ぐなどの手段をとります。

薬の使用については、厚労省の「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」では、「一般に発症早期の診断に基づく抗インフルエンザウイルス薬投与が有効な場合もあるが、本剤は、医師が特に必要と判断した場合にのみ投与する」としています。

また、患者が合併症を発症するなど医療機関への入院が必要となった時のために、速やかに入院の手続きができ、スムーズに患者の引継ぎができるように努めることがポイントとなります。そのためにも、患者の状態を継続的に把握しておくことや、日ごろから関係機関との情報交換などを通じて連携を密にしておく必要があります。

 

まとめ

インフルエンザは特に高齢者や基礎疾患のある人が発症して重篤化した場合、生命に危険が及ぶ可能性も考えられるため、まずは徹底的に予防することが肝心です。しかし、感染力が高いため、患者に発症が認められた場合は速やかに感染拡大を防げるよう、備えを万全にしておく姿勢も求められます。

看護師自身が発症してしまった場合も、その看護師と接触のあった患者や関係者への迅速な対応ができる体制が整えられている必要があります。

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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