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導尿の看護|目的と男女別手順、間欠的・持続的導尿の種類、看護計画・問題(2017/06/15)

公開日: : 最終更新日:2022/03/10 看護計画 兵庫県 腎・泌尿器科 

導尿看護

導尿は、急性期慢性期、科を問わずに求められる基本的な看護技術です。また、尿閉の解除や検査・処置のために一時的に行うものから、長期的に留置するものまであります。ここでは確実におさえておきたい持続的導尿(膀胱留置カテーテルの挿入)手技をまとめました。

 

1、導尿とは

導尿とは、主になんらかの理由によって排尿できなくなってしまった患者に対し、尿道口からカテーテルを挿入して尿を排出する方法です。導尿には、感染予防のための清潔操作に加え、苦痛や羞恥心に対する患者への配慮が求められます。

 

2、導尿の目的

導尿は、主に自排尿が得られなくなってしまった患者に対し、尿を排出する目的で行います。また、検査や全身管理のために行うこともあります。下に、導尿を行う目的とそれぞれの適応をまとめました。

 

<導尿の目的と適応>

目的 適応
尿閉の解除 前立腺肥大症、神経因性膀胱、膀胱タンポナーデによる尿閉時
残尿測定 残尿(排尿後に出しきれなかった量)測定時
無菌的採尿 外陰部の細菌混入を防いで(主に女性)無菌尿を採取するとき
創部の安静と汚染防止 オペ後や褥瘡による創が尿によって汚染されるのを防ぐ
水分出納の管理 術中・術後・心不全など、厳格な尿量測定が必要なとき
安静 術後・重症者など、ベッド上安静が必要なとき
薬剤注入 膀胱癌に対する膀胱内BCG注入療法時
排尿時膀胱尿道造影 膀胱尿管逆流症に対し、排尿時の膀胱・尿道造影時
膀胱洗浄 血尿による尿路閉塞時

 

2-1、前立腺肥大症による尿閉

上の表では9つの目的を挙げましたが、主に導尿を必要とするのは「尿が出せなくなったとき」です。尿が出せなくなる理由として多いのは、前立腺肥大症と神経因性膀胱です。男性は加齢により、前立腺が肥大します。個人差はありますが、これは生理的な現象なので努力によってどうにかなるものではありません。いきなり尿が出なくなる尿閉になるのではなく、いくつかの症状が先に現れます。

 

<前立腺肥大の症状>

・尿の勢いがない

・尿が出るまでに時間がかかる

・一度に出しきれず、チョロチョロと尿が出る

・残尿感がある(出しきれた感じがしない)

・尿が漏れる

こういった症状がまず現れ、年単位で進行します。そして、市販の風邪薬を服用したときや、アルコール摂取などの要因が加わることで、突然尿閉を起こします。前立腺肥大の内服薬は、服用しても急に排尿できるようにはなりません。このように突然起こった尿閉は数日で軽快することが多いので、内服治療をしながら数日はカテーテルによる尿、もしくは一時的にカテーテルを留置し、頃合を見て抜去します。

 

2-2、神経因性膀胱による尿閉

近年多いのが、神経因性膀胱です。膀胱内に尿を溜めて排尿するためには、脳・脊髄・末梢神経の機能が保たれていなければなりません。近年、生活習慣病が増加するに連れ、脳血管疾患(脳梗塞脳出血くも膜下出血)や糖尿病による神経障害によって神経因性膀胱になる患者が増加しています。この場合はカテーテルを留置し、この先ずっとカテーテルによる排尿管理が必要となります。発症後に内服治療をすることで改善し、カテーテルを抜去できることもありますが、中には出しきれずに膀胱内に貯留してしまう人もいます。これらの残尿は、膀胱炎や腎盂腎炎を引き起こす原因にもなります。そのため、残尿の多い患者もカテーテルでの排尿管理が必要となります。

また、子宮癌などの骨盤内の術後など、治療が終了しても排尿障害だけ残ってしまう患者もいます。このような場合には、本人が1日数回の導尿を行う必要があります。

 

3、導尿の種類

導尿には大きく分けて2つの方法があり、目的やADLに応じて使い分けます。

3-1、間欠的導尿(一時的導尿)

カテーテルを挿入し、尿を出したらすぐに抜いてしまうもので、一時的な処置や検査の場合に採用される方法です。留置してくる必要がないため、バルーンのないネラトンカテーテルを使用することが一般的です。また、本来は持続的導尿が必要な場合でも、患者自身や家族が手技を覚えることで、間欠導尿で管理している人もいます。不快感や移動動作のじゃまにならないことから、自宅で行う人も増えています。1日数回、決まった時間に行うことで、尿を出しきることができます。

 

3-2、持続的導尿(バルーンカテーテル)

24時間カテーテルを挿入したままにする方法です。常にカテーテルを挿入している状態のため、行動範囲の狭い患者や寝たきりの患者に多く行います。しかし、足に小さい蓄尿バッグを取り付けたり、キャップをして一定時間で開放するように工夫すれば、いままで通りの社会生活を送り、移動を楽にすることもできます。この場合には、夜間のみ蓄尿バッグを取り付けることになります。持続的導尿の場合はカテーテルが抜けないようにする必要があるため、蒸留水でバルーンを膨らませて膀胱内に留置(固定)します。カテーテルは4週間ごとの交換が基本ですが、汚染具合によっては閉塞してしまうことがあるため、適宜膀胱洗浄や交換が必要となります。バルーンカテーテルは患者や家族は挿入しません。交換は医療機関を受診するか、訪問看護師が自宅で行います。

 

4、導尿の手順

4-1、男性の場合

➀患者へ導尿の必要性、手技について説明する

導尿する目的、留置するのであればその必要性について説明し、患者の同意を得ます。

➁部屋の準備をする

プライバシーの保護、羞恥心への配慮を行います。カーテンを閉め、照明は明るくして陰部がしっかり見えるようにします。看護師はディスポーザブルエプロンを着用します。

③掛け物をかけてから、寝衣と下着を下す

タオルケットなどの掛け物を腹部にかけます。その下で寝衣と下着を下ろし、羞恥心をできるだけ感じないように配慮します。

➃陰部を露出する

掛け物で腹部から片足を覆い、もう1枚で反対の下肢を覆い、露出する範囲を極力狭くします。

➄処置用のシーツを下に敷く

消毒をすると陰部をつたって寝衣・寝具を汚染してしまうため、ディスポーザブルの処置用シーツを敷きます。

➅カテーテルキットを開く

ワゴンの上などで、滅菌されたカテーテルキットを開きます。

⑦カテーテルキットを移動する

足を少し開いた状態にして、清潔操作になるため動かないように患者に声をかけます。キットに付属している滅菌処置シーツを足の上に敷き、清潔エリアを確保します。その上(足の間)にキットを乗せます。

➇手袋を装着する

キットに付属している滅菌手袋を装着します。以後は処置が終わるまで清潔操作が必要になるので、物品の配置や掛物などを先に整えておきます。

⑨物品の準備をする

綿球に消毒液を垂らし、トレーの空いている場所に潤滑剤を垂らします。蓄尿バッグのクレンメが閉じていることを確認します。

➉バルーンの確認をする

清潔エリア内でカテーテルを包装から出してバルーンに蒸留水を入れ、バルーンの破損がないか確認します。(膨らみが均一で、漏れがないものが正常)確認できたら一度蒸留水をシリンジに戻し、カテーテルにそのまま接続しておきます。

⑪患者に声をかけ、外尿道口を露出する

患者に声をかけてから左手で陰茎を把持し、外尿道口を広げます。陰茎は真っ直ぐ上(天井の方)に向けます。

⑫消毒をする

付属の鑷子で綿球を持ち、外尿道口の中心から円を描くように消毒します。綿球は1回ごとに交換し、2~3回行います。

⑬カテーテルに潤滑剤を塗布する

左手は陰茎を把持したまま、カテーテルの先端10㎝に潤滑剤を塗布します。鑷子は使用せず、手袋をした手で直接カテーテルを持ちます。

⑭カテーテルを挿入する

患者にカテーテルを挿入していくことを伝え、口で深呼吸をするように促します。(若干引っ張り気味に)陰茎を上に向けたまま、カテーテルを15㎝ほど挿入します。尿の流出を認めたら、さらに2~3㎝奥へ挿入します。

⑮バルーンを膨らませる

左手を離し、カテーテルが抜けないように注意しながら蒸留水を注入します。シリンジを押すときに抵抗を感じるようであれば、蒸留水をシリンジ内に戻してさらに奥へ挿入し、もう一度蒸留水を注入します。

⑯バルーンが抜けないか確認する

軽くバルーンを引っ張り、抜けないことを確認します。引っ張ったあとは、2~3㎝奥へ進めておきます。消毒液を付属のガーゼで拭き取ってから、カテーテルを固定します。皮膚に1枚土台のテープを貼ってから、2枚目のテープでカテーテルを包むようにし、陰茎を頭側に向けて土台に貼り付けます。

⑰蓄尿バッグをとりつける

蓄尿バッグを、膀胱より低い位置かつ床に付かないところ(ベッド柵など)に取り付けます。院内規定によっては、バッグに挿入日を記入します。

⑱片付け、記入

患者の寝衣・寝具を整え、処置が終わったことを伝えます。蓄尿バッグを上げないこと、移動する際にはカテーテルを引っ張らないように説明する。その後、カテーテルの種類・太さ・挿入した時間・流出してきた尿の性状などを記録します。

 

4-2、女性の場合

男性の手技と違う⑪~⑭のみ説明します。

⑪外尿道口を確認する

女性は上から尿道・膣・肛門となっています。しっかり足を開き、小陰唇を開き、尿道がわかるように明るく照らします。

⑫消毒をする

付属の鑷子で綿球を持ち、上から下に向けて左右1回、最後に真ん中を消毒します。綿球は1回ごとに交換して行います。

⑬カテーテルに潤滑剤を塗布する

左手で小陰唇をしっかり開いたまま、右手でカテーテルの先から10㎝ほどのところを持ち、先端4~5㎝に潤滑剤を塗布します。このときは鑷子を使用せず、手袋をした手で直接カテーテルを持ちます。

⑭カテーテルを挿入する

患者にカテーテルを挿入していくことを伝え、口で深呼吸をするように促します。しっかり小陰唇を開いて、カテーテルを4~5㎝ほど挿入します。尿の流出を認めたら、さらに2~3㎝奥へ挿入し、バルーンを膨らませます。

 

上記の手技を勤医協中央病院看護技術マニュアル2012 版 膀胱留置カテーテル にて詳しく説明されているので、参考にするとよいでしょう。

 

5、導尿(バルーンカテーテル)の看護問題

バルーンカテーテルが長期にわたると、カテーテルからの感染を起こす可能性があります。感染を起こさないこと、感染徴候に早期に気づくことが、バルーンカテーテルを留置している患者への看護になります。

 

6、導尿(バルーンカテーテル)の看護計画

O-P)

➀尿の流出状態、色、性状、量

➁カテーテル挿入部の状態、漏れの有無

③バイタルサイン(熱型)

➃患者の自覚症状(違和感、疼痛

➄カテーテルの状態、蓄尿バッグの位置

 

T-P)

➀訪室する時は毎回尿の流出と蓄尿バッグの位置・カテーテルの状態を観察する

➁蓄尿バッグを、患者が足を下す方向(床頭台側)に下げる

③移動時にすぐ呼べるよう、ナースコールを手元に置く

➃4週間ごと交換する

➄漏れ・汚染が顕著な場合は、交換もしくは医師の指示により膀胱洗浄を行う

 

E-P)

➀カテーテルの必要性を説明する

➁カテーテルによる感染の可能性を説明する

③バッグは常に膀胱より下にすること、カテーテルを引っ張らないことを説明する

➃退院後も定期的な交換が必要であることを患者・家族に説明し、退院後の施設や外来、訪問看護師等に引き継ぐ

 

まとめ

導尿は、臨床でよく行う基本的な手技です。清潔操作や感染対策を怠るとカテーテルからの感染症を起こし、場合によっては腎盂腎炎や敗血症を引き起こすこともあります。挿入に伴う羞恥心や苦痛をできる限り小さくするような配慮と、挿入後は感染管理に努めることが看護に求められます。

大野明子 看護師

兵庫県神戸市出身。兵庫県内の一般病院(泌尿器科)で5年勤務の後、キャリアアップのために同県内の大学病院へ転職。泌尿器科で2年、透析科で3年勤務し、出産を機に離職。現在は3児のママとして、専業主婦をしながら空いた時間にライター業務を行っている。

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