膀胱留置カテーテルの看護技術|目的や種類と感染合併症、抜去後の観察項目(2017/07/27)
膀胱留置カテーテルはカテーテルの先端についているバルーンを膨らませて、膀胱にカテーテルを留置することで、持続的に尿を排出することができます。
膀胱留置カテーテルは安全に持続的に尿を排出できるというメリットはあるものの、尿路感染症などの合併症がありますので、きちんと看護ケアをしていく必要があります。
目次
1、膀胱留置カテーテルとは
膀胱留置カテーテルとは、膀胱にカテーテルを入れて、そのカテーテルを留置することで、尿を持続的に排出するためのものです。
出典:バードI.C.シルバーフォーリートレイB(ラウンドウロバッグ) | 泌尿器科関連 | 医療関係者の皆様( 株式会社メディコン)
膀胱留置カテーテルは、カテーテルの先端についているバルーンを膨らませることで、膀胱にカテーテルを留置します。膀胱留置カテーテルは、バルーンカテーテルと呼ばれることもあります。
自力で排尿することができない患者に使用されることが多く、間欠的導尿を何度も行う場合に比べて、苦痛が少なく、尿量を正確に把握できるなどのメリットがあります。
2、膀胱留置カテーテルの目的
膀胱留置カテーテルは、膀胱内に24時間カテーテルを挿入しておくことで、持続的かつ安全に尿を排出する目的で用いられます。
導尿には間欠的導尿と持続的導尿の2種類があり、どちらも自力で排尿できない患者に用いられます。詳しくは「導尿の看護|目的と男女別手順、間欠的・持続的導尿の種類、看護計画・問題」を参照してください。
膀胱留置カテーテルは、間欠的導尿とは異なり、持続的に尿を排出できるという特徴があります。そのため、次のような患者に適応となります。
1.萎縮性膀胱で膀胱容量が50ml以下の患者
2.膀胱機能不全が原因で残尿がある患者 3.長時間の手術を行う患者 4.泌尿器科の手術を受ける患者 5.術中に大量の輸液や利尿剤を使用する患者 6.重症で尿量の正確な計測が必要な患者 7.尿失禁があり会陰部や仙骨部に開放創がある患者 8.骨盤骨折など長期的に体動制限を強いられる患者 9.尿道の閉鎖を解除する必要がある場合 10.ターミナル期の快適さの改善 |
尿失禁がある患者はオムツで対応すれば良いですし、排尿障害がある患者は間欠的導尿で対応可能です。膀胱留置カテーテルはこの10個の適応に当てはまるような患者に用いられるものになります。
3、膀胱留置カテーテルの種類
膀胱留置カテーテルは、いろいろな種類があり、患者の状態によって使い分ける必要があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
出典:マスク・ウロ・ガーゼなら | コンファウロシステムⅡ(カテーテル単品/先端開孔型/チーマン型)(株式会社 エフスリィー)
■サイズ
成人用の膀胱留置カテーテルのサイズは12Fr~26Frまでありますが、一般的には14~18Frのものが用いられることが多いです。
■バルーンの容量
成人用は10~30mlまでバルーンの容量がカテーテルによって異なります。一般的には10mlのものを用いますが、止血目的の場合には30mlのものを用います。
■2wayか3wayか
膀胱留置カテーテルには、2wayと3wayの2種類があります。通常は、感染予防の観点から外界とつながる部分が少ない2wayのものを用います。ただ、カテーテル留置中に結石や凝血塊結成の予防目的などで膀胱洗浄を行う可能性がある時には、3wayのカテーテルを用います。
■先端部
通常は、尿道や膀胱を損傷しないように丈夫で滑らかなシリコン製はラテックス製の先端になっています。
チーマン型は先端部が少し曲がっていて、尿道が狭窄していても無理なく挿入できるように作られています。
先端開口型はガイドワイヤーを使って挿入することができますので、尿道が狭窄していて、カテーテルの挿入が困難な患者でも、膀胱留置カテーテルの挿入・交換をすることができます。
4、膀胱留置カテ―テルの感染・合併症
膀胱留置カテーテルは、安全に持続的に尿を流出することができますが、合併症のリスクもあります。どのような合併症のリスクがあるのかを説明していきます。
■尿路感染症
膀胱留置カテーテルを挿入していると、膀胱と外界がカテーテルで常につながっている状態ですので、尿路感染が起こるリスクが非常に高くなります。
■膀胱結石
膀胱留置カテーテルを長期間挿入したままにしておくと、カテーテルの周囲に膀胱結石が形成されることがあります。
■尿道の損傷
無理にカテーテルを挿入したり、膀胱に達していない状態(尿の流出を確認できない状態)で、バルーンを膨らませることで、尿道を損傷して、出血や炎症が起こることがあります。
■膀胱痙攣
長期的に膀胱留置カテーテルを使っていると、排尿菌が発作的に痙攣して、恥骨の上部が疼痛が起こり、尿意を感じることがあります。
■膀胱萎縮
膀胱留置カテーテルを用いると、尿が膀胱に溜まることがありません。その状態が長期間続くと、膀胱の廃用性症候群が起こり、膀胱の機能が低下して、萎縮が起こります。
■膀胱刺激症状や尿漏れ
カテーテルやバルーンによる尿道や膀胱粘膜への刺激や尿路感染症が原因で、膀胱の無抑制収縮が誘発することで、下腹部痛や尿意などの膀胱刺激症状や尿漏れが起こることがあります。
5、膀胱留置カテーテルの看護技術
膀胱留置カテーテルの挿入方法を確認していきましょう。
5-1、必要物品
・バルンカテーテル
・畜尿バッグ ・ガーゼ ・イソジン綿球 ・攝子 ・キシロカインゼリー ・蒸留水 ・10mlシリンジ ・固定用テープ ・ディスポの手袋 ・防水シーツ ・陰部洗浄に必要な物品 |
膀胱留置カテーテル挿入セットが全部入ったキットが用意されていることもあります。
■挿入手順
1.患者に膀胱留置カテーテルの挿入を行うことを説明して、同意を得る
2.陰部洗浄を行う 3.手洗いをして、カテーテルと畜尿バッグを接続しておく 4.バルーンに蒸留水を注入して、破損などの漏れがないかを確認する。確認後、蒸留水は吸い取っておく 5.防水シーツを患者の臀部に敷く 6.陰部を消毒する 7.患者に口で呼吸してもらいながら、キシロカインゼリーをつけたカテーテルを尿道口から挿入する 8.男性は20cm、女性は5~6cm程度すすめ、尿の流出があったら、そこからさらに2~3cm進めて、蒸留水を注入して、バルーンを膨らませる 9.カテーテルを軽く引っ張って、抜けないことを確認したら、バルーンを固定する |
6、膀胱留置カテーテルの看護計画
膀胱留置カテーテルを挿入している患者の看護計画を留置中の観察項目とケアのポイント、抜去後の観察の注意点の3つに分けて説明していきます。
6-1、観察項目
膀胱留置カテーテルを挿入している患者の観察項目を確認していきましょう。
■尿量
膀胱留置カテーテルは尿量を正確に計測できるというメリットがあります。尿量は患者の疾患や使用している薬剤によって増減がありますが、インアウトバランスを計算して、異常かどうかを判断する必要があります。
尿量が少なくなれば、脱水のリスクがあり、尿路感染を起こすリスクが上がります。また、突然尿が出なくなった場合は、カテーテルの閉塞のリスクがあります。
そのため、尿量のチェックは数時間に1回は行うようにしましょう。
■尿の性状
尿の性状を観察することで、尿路感染症の有無や出血の有無などがわかります。尿の色調や浮遊物の有無などを観察していきましょう。
■皮膚の状態
カテーテルを固定しているテープでかぶれたり、皮膚に押し付けて固定することで潰瘍ができたりしますので、皮膚に異常がないかを観察しなければいけません。
■尿漏れの有無
膀胱留置カテーテルを挿入いていても、膀胱の無抑制収縮や尿漏れをすることがあります。また、蒸留水が抜けて、バルーンが縮小していたり、カテーテルが閉塞していて、膀胱内に尿が溜まりすぎた場合も、尿漏れを起こすことがあります。
■尿の流出の有無
カテーテルから尿の流出が見られない場合、カテーテルが屈曲していたり、閉塞している可能性があります。
■感染兆候
尿の性状に異常が見られなくても、血液検査のデータや全身症状から感染兆候が見られることがあります。WBCやCRP、体温などを観察しましょう。
6-2、膀胱留置カテーテルのケアのポイント(固定・管理・陰部洗浄)
膀胱留置カテーテルを挿入している時のケアのポイントを説明していきます。
■固定方法
男性は下腹部に固定し、女性は大腿部に固定するのが一般的です。この時、テープかぶれを起こさないように、テープを貼りかえる時には、少しずつずらして固定するようにしましょう。
また、しっかり固定しようとして、カテーテルを皮膚に押し付けた状態で固定すると、そこに潰瘍を起こす可能性がありますので注意してください。
■管理のポイント
・畜尿バッグは逆流しないように膀胱よりも低い位置に取り付ける
・畜尿バッグが床につかないようにする ・飲水制限がない患者には飲水を勧める ・カテーテルが屈曲しないようにする ・患者さんが引っ張らないように、固定場所などに留意する ・移動する時には、カテーテルが引っ張られないように気を付ける |
■陰部洗浄
膀胱留置カテーテルを挿入している間は、基本的に毎日陰部洗浄を行って、感染予防・尿路結石予防に努めます。
6-3、膀胱留置カテーテルの抜去後の観察
膀胱留置カテーテルを抜去した後は、次のことを観察しましょう。
・排尿時痛 ・尿量・尿意の有無・陰部の違和感・排尿回数・残尿感 |
膀胱留置カテーテルを長期間挿入していると、膀胱の萎縮などから尿意がなかったり、頻尿になったり、残尿が残ることがあります。患者さんの状態によっては、抜去前にカテーテルをクランプして膀胱訓練をすることもありますが、クランプをすると尿路感染を起こすリスクが高くなりますので、基本的には行わないことが多いです。
まとめ
膀胱留置カテーテルをの基礎知識や目的、種類、感染・合併症、看護技術、看護計画をまとめました。膀胱留置カテーテルは持続的に尿を流出できるというメリットはあるものの、尿路感染のリスクが非常に高いですので、陰部洗浄をしっかり行い、感染予防に努めるようにしましょう。
参考文献
ICTとしての感染対策(一般社団法人 日本感染症学会)
勤医協中央病院看護技術マニュアル2012版 17-1.膀胱留置カテーテル(公益社団法人北海道勤労医療協会 勤医協中央病|2012年)
在宅での膀胱留置カテーテル管理の実際(公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団|2005年7月)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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