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膀胱がん看護|術前・術後における精神的安楽へのサポート(2016/12/21)

公開日: : 最終更新日:2017/12/15 看護用語 兵庫県 腎・泌尿器科 

膀胱がん看護

膀胱がんは数ある悪性腫瘍の中でも低頻発であり、死亡者数も他と比べてそれほど多くはありません。また、早期の段階(ステージⅠ)で発見され、適切な治療がなされれば、ほとんどの場合、再発の可能性は高いのですが、予後良好となります。

しかしながら、予後良好となると分かっていても、多くの患者さんが大きな不安を呈し、精神障害へ移行するケースも多々ありますので、直接的な看護ケアはもちろん、患者さんの精神的安楽を図るのも看護師の大きな役割です。

 

1、膀胱とは

膀胱とは、みなさんご存知の通りに尿をためる機能がある臓器ですが、それと同時にある一定以上の尿がたまることで、尿意を催させ、排出を促す機能も持っています。一般的には、成人ですと膀胱には500ml~1000mlの尿をためることができるとされています。

骨盤の内部にある膀胱は、腎臓の働きによりつくられた尿が腎盂、尿管を通り運ばれてきたあとに到着する臓器です。膀胱を含めてこれらの腎盂や尿管、そして尿道の一部は「尿路上皮」という粘膜で覆われていることでも知られています。

 

2、膀胱がんとは

膀胱がんは、腎盂や膀胱、尿管などを覆う「尿路上皮」ががん化してしまうことによって引き起こされます。膀胱がんのうちの多くは「尿路上皮がん」という種類ですが、まれに扁平上皮がんや腺がんの可能性もあります。

膀胱がんの症状で最も一般的なものは、赤色や茶色の肉眼でも判断できる血尿です。ほかにも、尿意をいつも以上に頻繁に感じるようになったり、排尿するときに痛みを感じるなど、膀胱炎に似た症状が出ることもあります。

 

3、膀胱がんの検査

一般的に、膀胱がんの検査には膀胱鏡検査と尿細胞診が採用されています。膀胱鏡検査により、がんの疑いのある部分が筋層非浸潤性がんか、筋層浸潤性がんかの判断を下すことができます。そのあと、状況に応じて超音波での検査やCT検査などの精密検査、細胞診などにより診断を確定します。

筋層非浸潤の場合は、ほとんどは他の部位へと転移したり、局所での浸潤を起こすことはありませんので、全身転移しているかどうかの検査をする必要はありません。一方、筋層浸潤性がんの場合は、全身転移の可能性も疑われるため、全身のCT検査や骨シンチグラフィが行われます。

 

■膀胱鏡検査

膀胱用の内視鏡を尿道から膀胱へ挿入し、肉眼でがんの部位や大きさ、形状などを確認します。

 

■尿細胞診検査

尿を顕微鏡で検査するものです。実際にがんであっても陽性の結果を得られないこともあるため、他の検査と並行するのが一般的です。

 

■腹部超音波(エコー)検査

体に超音波を照射し、反射した超音波を画像で観察する検査です。がんが隆起している場合に診断可能です。

 

■CT検査

膀胱がんが他の臓器に転移しているかどうかを診断するものです。一般的にヨードを造影剤として、X線との反応で体の内部を照射します。造影剤を使用する際にはアレルギーを引き起こす可能性もあるので、注意が必要です。

 

■骨シンチグラフィ

ラジオアイソトープを用い、骨への転移を調べるものです。

 

■TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

内視鏡を用いて切除を行います。腰椎に麻酔(下半身麻酔ともいいます)もしくは全身麻酔をおこない、尿道から手術用の内視鏡を挿入し、膀胱がんの疑いがある部分 (病巣部)を電気メスで切除します。それと並行して、がんの疑いがある部分以外の膀胱の粘膜を数カ所適当に採取し、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で検査します。これを「粘膜生検」といいます。

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)は、開腹手術に比べると比較的簡単で身体への負担(侵襲)を少なくおさえられることが特長です。その一方で、内視鏡手術である以上、膀胱壁の外側まで切除することが不可能です。その上、リンパ節などを摘出することもできません。

ですので、まずCT検査やMRI検査や膀胱鏡検査などを行った後にリンパ節への転移がなく、がん組織の深さも比較的に表面までしかないと判断された場合に、TURBTが実施されます。

 

4、膀胱がんの原因

膀胱がんの原因には3つの要素があるとされています。

 

①喫煙

ほかのさまざまな種類のがんとの関係性も強い喫煙ですが、膀胱がんの発がん因子にもなります。非喫煙者に対して、喫煙者の膀胱がんリスクは2~4倍にもなるとの調査1)もあり、注意が必要です。

また、日本泌尿器科学会のデータベース解析2)によると、喫煙者の膀胱がんの発症は、非喫煙者よりも平均して5から6年ほど早いことも判明しています。

 

②発がん性物質への暴露

現在ではさまざまな化学物質が、あらゆるがんを誘発することで知られていますが、ある化学物質が発がんを誘発することが確認された最初のがんが、膀胱がんです。特にβ-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、ベンチジンなどの化学物質が膀胱がんの発がんリスクを高めるとされており、織物・染料を扱う職業の人や塗装工、革職人、またアルミニウムに関連する職業に従事している人は注意が必要です。

 

③その他の要因

そのほかには、慢性尿路感染症も膀胱がんのリスクを高めます。このほかにも、骨盤周辺の臓器に対して放射線治療をおこなう場合に膀胱が被曝し、がんの発症リスクを高めることにもなります。

 

5、膀胱がん患者への看護

膀胱がんの患者さんは、手術によって、膀胱の全摘であったり、尿路変更(回腸導管)術を受ける方も多く、これらの施術を受けた患者さんは、排泄の方法が変化し、それに伴いライフスタイルもかなり大きく変わってしまうので、手術前の説明が肝心です。

 

5-1、術前の看護

全身麻酔での手術のため、全身の評価が必要です。また、尿路変更も必要になるため、手術前に患者や家族に十分な説明を行いましょう。

 

■看護目標

・   手術ならびに術後の身体機能の変化への不安を軽減します

・   家族の精神的不安の軽減に努めます

 

■患者さんのために手術前日にやること

・   検査の説明やオリエンテーションを確実に施行します

・   患者が思いを表出できるよう、プライバシーの保護を考えた場所の確保を行います

・   食事摂取や排泄、睡眠状況が障害されている場合はその解決をはかります

・   術前検査や術前・術後のオリエンテーションをわかりやすく説明します

 

■手術前の実務

・   患者や家族のもつ不安、悩み、疑問に対して情報やケアを提供します

・   術前から社会復帰までの回復経過とセルフケア計画を表示し、説明します

・   ストーマに関する知識やストーマ造設後の日常生活に関する知識を、VTRやパンフレットを使用し理解しやすいよう提示します

・   マーキングやパッチテストを行い、ストーマケア時の障害の予防をはかります

 

5-2、術後・退院前の看護

膀胱の全摘や尿路変更を行う場合には、術後の合併症の危険が高まります。合併症としては、吻合不全や逆行性感染、術後イレウスが多発しています。手術後のこれらの合併症を予防し、苦痛を少しでも軽減するために、援助しましょう。

・   術後合併症の予防、早期発見・早期治療

・   患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期等について家族に説明します

・   家族に患者のサポートの必要性を説明します

 

まとめ

膀胱がんでの手術では、膀胱の摘出や尿路変更の措置をとる場合もあり、患者さんは負担や不安を感じることも多いので、しっかりと説明をおこない、少しでも不安を解消できるようにしてあげましょう。

 

参考文献

1)Hoover R, Cole P. Population trends in cigarette smoking and bladder cancer. Am J Epidemiol. 1971;94(5):409-18

2)Hinotsu S, Akaza H, Miki T, et al.;The Japanese Urological Association. Bladder cancer develops 6 years earlier in current smokers:Analysis of bladder cancer registry data collected by the cancer registration committee of the Japanese Urological Association. Int J Urol. 2008;Nov 27.

大野明子 看護師

兵庫県神戸市出身。兵庫県内の一般病院(泌尿器科)で5年勤務の後、キャリアアップのために同県内の大学病院へ転職。泌尿器科で2年、透析科で3年勤務し、出産を機に離職。現在は3児のママとして、専業主婦をしながら空いた時間にライター業務を行っている。

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