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パーキンソン病の看護|症状や原因などの観察項目から見るケアと看護計画(2017/01/26)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護師 看護計画 千葉県 脳神経外科 

パーキンソン病看護

50歳以上に発症する場合が多い「パーキンソン病」。運動症状や自律神経症状、精神症状などが現れ、患者には多くの不安が伴うことがあります。また、その治療は長期にわたるため、看護師には適切な看護ケアが求められます。

今回は、パーキンソン病の症状や原因などの基礎情報と、看護計画の参考になるポイントをまとめてみました。ぜひ日々の業務の参考にしてください。

 

1、パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、振戦(ふるえ)や動作緩慢(動作の速さが遅くなり、運動量が減ること)、筋強剛(筋肉が固く硬直した状態)、姿勢保持障害(立位と歩行においてバランスを崩しやすく転びやすくなること)を主な運動症状とする病気です。

50歳以上で発症する場合が多い傾向にありますが、40歳以下で起こることもあり、その場合は「若年性パーキンソン病」と区別されます。

有病率は人口10万人当たり100~150人と推定され、日本では高齢化に伴い有病率は増加し、全国で約15万人の患者がいるとされています。中には、遺伝子異常が明らかにされた症例もあります。

 

2、パーキンソン病の原因と症状

パーキンソン病は、大脳の下にある中脳と呼ばれる部位の「黒質神経細胞」の数が減る(変性)ために起こります。黒質神経細胞の減少によって、2つの神経細胞の連接部であるシナプスを形成する大脳基底核の線条体で神経伝達物質のドーパミンの放出が減少し、身体が動きにくくなり、運動調節がうまくいかない状態に陥ります。

 

図:パーキンソン病における脳の障害部分

パーキンソン病の看護

出典:パーキンソン病と関連疾患の療養の手引き 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班

 

パーキンソン病は、先述した「振戦」「動作緩慢」「筋強剛」「姿勢保持障害」の4つの症状を中核症状(四主徴ともいいます)とする病気です。その他にも、仮面顔貌(固い表情)や早口の小声、手振りの少ない小刻み歩行、前傾姿勢などの臨床症状を伴います。また、精神症状や自律神経症状などが発症することもあります。

四主徴のうち2つ以上の症状を兼ね備えた病気を「パーキンソニズム」あるいは「パーキンソン症候群」と呼びます。パーキンソニズムの原因疾患は多岐にわたりますが、脳の変性疾患によるものと、何らかの原因がはっきりした病気によるものに大別されます。

脳の変性疾患の多くが神経難病に指定されています。パーキンソン病は変性性のパーキンソニズムの1種です。また、原因が特定できる病気は「二次性(症候性)パーキンソニズム」と呼ばれます。

 

3、パーキンソン病の診断

パーキンソン病の診断は、1995年に厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班によって作られた「パーキンソン病診断基準」を目安に行われます。

自覚症状 ・   安静時のふるえ(四肢または顎に目立つ)

・   動作がのろく拙劣

・   歩行がのろく拙劣

神経所見 ・   毎秒4~6回の安静時振戦

・   無動/寡動(仮面様顔貌、低く単調な話し声、動作の緩徐・拙劣、臥位からの立ち上がり動作など姿勢変換の拙劣)

・   歯車現象を伴う筋固縮

・   姿勢/歩行障害(前傾姿勢、歩行時に手のふりが欠如、突進現象、小刻み歩行、立ち直り反射障害)

臨床検査所見 ・   一般検査に特異的な異常はない

・   脳画像(CT,MRI)に明らかな異常はない

鑑別診断 ・   脳血管障害性のもの

・   薬物性のもの

・   その他の脳変性疾患

 

次の①~⑤のすべてを満たすものをパーキンソン病と診断します。(診断の判定)

①   経過は進行性である

②   自覚症状で、上記のいずれか1つ以上がみられる

③   神経所見で、上記のいずれか1つ以上がみられる

④   抗パーキンソン病薬による治療で、自覚症状、神経所見に明らかな改善がみられる

⑤   鑑別診断で、上記のいずれでもない

引用:厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班「パーキンソン病診断基準」

 

4、パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療法としては、少なくなったドーパミンを補う薬物療法が基本となります。レボドパ(L-ドーパ)を含む薬剤を投与します。最近では、外科治療として、電極を埋め込んで症状の改善を図る「深部電極治療」も行われています。しかし、治療の中心は対症療法であり、疾患の進行を止めるものではありません。

 

5、パーキンソン病患者の観察項目

パーキンソン病は、「手がふるえる」「つまづきやすくなる」「動作が緩慢になる」「疲れる」などの症状から始まることが多く、その後、徐々に歩行困難や構音障害(発音が正しくできなくなる)嚥下障害排尿障害ADL(日常生活動作)の低下などが現れます。

パーキンソン病の観察項目には「運動症状」「自律神経症状」「精神症状」の3つに大別されます。

運動症状 ・   表情が乏しくなっていないか

・   声の抑揚はあるか

・   小字症(字が小さくなる)

・   寝返りができない

自律神経症状 ・   便秘の有無

・   起立性低血圧の有無

・   頻尿(過活動性膀胱)

・   発汗過多

・   性機能障害

・   手足のむくみの有無

精神症状 ・   睡眠障害(夜間の不眠)

・   抑鬱状態になっていないか

・   認知機能障害の有無

 

6、パーキンソン病における看護問題

パーキンソン病では、以下のような看護問題が挙げられます。

 

■転倒・転落

動作緩慢や歩行障害、前傾姿勢などがある場合、転倒・転落リスクが高くなります。上肢による保護伸展反応が出にくいため、特に大腿骨頸部骨折が起こりやすくなります。

 

拘縮

前傾屈曲姿勢を放置すると、股や膝、肘関節などの完全伸展位を保持できなくなります。そのため、洗顔や洗髪などのADL動作ができなくなります。

 

■嚥下障害

嚥下障害が重症化していくと、誤嚥性肺炎の可能性が高くなります。

 

褥瘡

無道で長期臥床の患者の場合、仙骨部に褥瘡を形成しやすくなります。また、栄養障害や感染症などが合併すると、褥瘡発生の可能性はさらに高まります。

褥瘡(じょくそう)|予防、処置・治療における看護ケア

 

■日常生活の不安

進行性の病気であることによって生じる日常生活に対する不安が発生することがあります。精神症状が悪化したり、意欲が減退したりすることもあります。

 

7、パーキンソン病患者に対する看護目標

パーキンソン病の治療は服薬やリハビリテーションが中心になりますので、コンプライアンスの向上を図ることや、ADLの維持・向上を目標に看護を提供します。

1.   薬効維持のため服薬コンプライアンスを良くしADLを保持できる

2.   リハビリテーションを行い、ADL機能の維持向上できる

3.   長期臥床による合併症予防のためADLの維持、向上を図る

4.   疾病と障害が受容でき、変化が認められ自分なりの「生き方」ができる

 

8、パーキンソン病患者に対する看護計画と看護ケア

パーキンソン病は、運動症状、自律神経症状、精神症状など、発現する症状が多岐に渡るため、包括的な看護ケアが必要不可欠です。日常生活への基本的な援助や訓練はもちろん、二次的障害の予防、精神的不安への援助、さらには患者家族への支援も必要となります。

 

■発現症状に応じた援助

運動症状と自律神経症状など出ている症状に対して適切な看護ケアを提供しましょう。例えば、転倒リスクが高い場合は付き添い歩行や車椅子で対応します。また誤嚥のリスクが高ければ、食事見守りが必要となります。振戦が強い場合は食事介助をすることもあります。

 

■日常生活の安全と自立の援助

パーキンソン病では病気の進行に伴って運動機能が低下し、日常生活行動に徐々に影響を及ぼします。日常生活の安全と自立を目指して援助します。また、予後に不安を感じる患者も多くいます。抑うつ的になってしまうこともあるため、患者心理を理解して接することが重要です。

 

ADL・訓練の援助

拘縮・肺炎などの二次的障害を予防することも重要です。拘縮の場合は、歩行練習や姿勢の保持、筋力・関節可動域の運動、発声練習などを実施していきます。

 

■患者家族に対する援助

患者の家族に対しても身体的や精神的、経済的状況などを把握しましょう。そのための必要な対策を患者やその家族と共に検討します。

 

まとめ

パーキンソン病は対症療法が中心となり、患者の運動症状、自律神経症状、精神症状は長期わたり続いていきますので、生活援助から家族への支援まで、包括的な看護ケアが求められます。

発現症状や悩み・不安などは、患者によって大きく異なります。患者のQOLを向上させることが重要になりますので、まずは患者の観察をしっかりと行いましょう。

高田典明 看護師

東京都出身、千葉県在住。高校卒業後、一般企業に就職。父が脳梗塞で倒れたのをキッカケに、脳血管障害を有する人の治療に携わりたいと思うようになり、看護師の道を志す。看護学校へ入学、看護師国家試験に合格の後、千葉県内の市立病院(脳神経外科)に就職。父の介護が必要になったことで5年の勤務を経て離職。現在は介護の傍ら、ライターとして活動中。同時に、介護の在り方や技術などにおける勉強も行っている。

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