【2024年最新】GCUの看護|配置基準や役割・目的と看護目標・看護計画(2020/01/18)
大学病院や小児専門病院等には周産期医療センター・母子医療センターがあり、NICUやGCUを持っています。新生児の医療現場では、NICUやGCUといった病棟で各新生児に適した治療が行われています。全ての病院にNICUやGCUがあるわけではなく、NICUのみを保有する病院もあればその両方を保有する病院もあります。ここではGCUについて解説していきます。
1、GCUとは
GCUとは「Growing Care Unit」の略で、新生児回復治療室と呼ばれ早産や先天性疾患を持つ新生児にNICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)での集中治療を施したのち、状態が安定した児が引続きケアを継続して行う病棟のことをいいます。なかには出生後すぐにGCUに入る新生児もいます。出生時の体重や全身状態によってどちらに入るかが変わってくるということですね。出生後GCUに入院対象となる新生児や乳児には以下のような例が挙げられます。
・黄疸があり光線療法を必要とする児
・なんらかの先天性疾患が疑われ精密検査が必要な児
・急性期を脱し、全身状態が安定した児
・仮死状態で生まれ継続治療が必要な児
・重度の心身障害があり、長期入院が必要な児
・出生体重が2300g未満の低出生体重児
・退院に向けた準備を行う児
NICUに比べGCUは重症度が軽い赤ちゃんがいる病棟であるといえます。しかし、GCUに移ったからといって急変等がないわけではありません。順調に回復していた赤ちゃんの状態が急変することや検査中であった赤ちゃんの病状が増悪することもあります。そのような時は必要に応じてNICUでの治療が必要となる場合もあり得るということを心に留めておく必要があります。
GCUの退院目安は、低出生体重児や早産児の場合は修正在胎週数37週・体重は2300g以上で状態が安定していることです。
ただ、退院目安はあくまでも「目安」です。
赤ちゃん1人1人によって異なりますし、疾患の有無・疾患の種類・赤ちゃんの状態によって、退院の可否・退院の時期などは異なります。
GCUはNICUよりも自宅や病棟に近い環境であること。
病棟よりも高い医療を提供でき、手厚い看護が行われること。
この2つがGCUの特徴であると言えます。
2、GCUにおける看護体制・配置
厚生労働省による診療報酬改定に伴い、入院基本料における看護職員の配置基準が定められています。看護師一人に対して患者さんが何人つくかが定められており、各病院に看護職員の人数によって配置比率が変わってきます。病院は24時間体制で患者さんを看ている為、2交替または3交替の勤務状況により申請する配置人数が変わってくるからです。NICU・GCUにおける看護師の配置基準は、NICU3:1、GCU6:1となっています。しかし、病院によっては先の配置基準とは異なる所もあり、この基準がすべての施設で充たされているわけではないようです。
3、GCUの看護師の役割
GCUの看護師の役割には、次のようなものがあります。
・成長に合わせた育児環境の提供 ・児の成長発達の援助 ・退院支援のための育児指導 ・退院支援のための家族看護 ・退院後の在宅ケアに必要な指導 ・退院後の地域支援のための院内外の調整 ・感染対策 |
これらがGCUの看護師の役割です。
医師の指示に基づく適切な薬剤の投与や人工呼吸器の管理、医師の診察・処置の補助、オムツ交換や沐浴など基本的な看護業務も、もちろんGCUの看護師が行います。
4、GCUにおける看護目標
NICUでの急性期を乗り越え状態が安定して退院に向けての準備が進められる段階になるとGCUに移動します。家族は授乳や沐浴などの日常生活で必要な技術を習得し、退院後の赤ちゃんとの生活がイメージできるよう援助していく必要があります。また、退院後の家庭環境(住宅環境・家族構成など)をふまえ、個々に合わせた対応をしなくてはなりません。それぞれの児に合わせたGCU→退院までの看護目標・計画を設定し、「家族支援」を行っていくことが重要です。病院の中には、退院が近くなると退院後の生活がイメージできるよう母子同室を行う病院もあります。
■目標:個別性にあった育児指導が行え、退院に向けての準備ができる
OP:観察
1.児の状態(哺乳状況、全身状態、体重等)
2.授乳または哺乳の時間間隔
3.母親の児に対する愛着
4.母親の不安の有無・表情(どんなことに不安を抱いているか等)
5.育児に対する意欲・言動
6.家族構成・住環境
TP:ケア
1.抱っこ・おむつ交換
2.直接授乳とビン哺乳
3.痰の吸引
4.酸素管理
5.栄養チューブの管理
6.検温
7.出来た事を褒め、育児への自信につながるように介入していく
8.個々の一日の生活リズムや流れを記載したパンフレットを用いてケアを進める(一例でありその通りにいかない事もたくさんある為、臨機応変に対応していく事を伝える)
9.母親が必要としている育児支援についての検討
EP:指導
1.母乳・ミルクの飲ませ方や時間間隔、ゲップの仕方についての指導・説明を行う
2.上手に母乳やミルクが飲めない児への哺乳の仕方や適切な乳首の選び方の説明
2.適切なポジショニングについて説明し実際にやってもらう
3.沐浴を行う際の児の支え方やコツ、洗い方などを母親と実践しながら説明する
4.医療機器を持っての退院を必要とする場合は、危機の扱い方、トラブル時の対処方法や連絡先についての説明を行う
5.痰の吸引の仕方や酸素吸入方法の指導を行う
6.栄養チューブからの母乳・ミルクの注入方法の指導
7.継続したリハビリや医療的なケアが必要な児に対して、訪問リハや小児専門の訪問看護ステーション、療育センターの紹介・利用を検討する
8.退院後の受診についての説明
GCUから退院する児の中には退院後も継続した医療を必要とする児もいます。このような場合、母親・家族にとって退院後の生活は不安や精神的ストレスが更に大きくなる為、訪問看護等の社会支援を含めたサポートが重要です。
5、GCUとNICUの違い
GCUとNICUではどのような違いがあるのでしょうか。入院している赤ちゃんは、家庭とは異なる環境下で治療を受けているため、退院に向けて赤ちゃんが過ごす環境を整えていく必要があります。NICUの目的が未熟児の赤ちゃんを育て、全身状態を安定させるための治療としているのに対し、GCUの目的は退院に向けて家の環境に近づけ、昼間は明るく、夜は暗くというように1日の中でメリハリをつけた生活をしていくこと・母子関係の構築としています。
GCUのNICUから退院までの橋渡しと位置付けることができます。NICUで状態が安定した赤ちゃんとその家族が安心して自宅に帰れるように治療・ケアをして、退院指導を行っていきます。
■NICUとGCUの違い
NICU | ・各児に必要な専門的かつ高度な集中治療を行う
・音や光・温度などが整備された特殊な環境 ・両親の精神的なケア・病気についてや不安に対しての傾聴・相談 ・赤ちゃんの状態に合わせたスキンシップや母子関係の確立と家族形成への支援 |
GCU | ・退院に必要な育児指導
・母親の沐浴・授乳・おむつ交換等の育児参加により児への愛着形成を促す ・児への昼夜のメリハリをつけた生活 ・退院後の育児不安への相談 ・継続医療に必要な知識・技術の指導 |
NICUでは 様々な点滴や呼吸器等が装着されているため、簡単に触れたり抱っこをしたりできず母子分離状態にありますが、赤ちゃんの状態に合わせてディベロップメンタルケアやカンガルー抱っこ等の触れ合いを持つ時間を設けることで愛着形成を促す看護ケアが行われています。
一方、GCUでは、 授乳や沐浴などの練習を行い、母親主体で授乳時間を調整したりオムツを交換したりと育児技術の習得がメインに行われます。これは母親のみならず、父親の協力も得られるよう看護介入をしていくことで、母親の体力やメンタル面への助けにも繋がります。赤ちゃんと家族の絆をより深めてもらうための関わりをするのがGCUの役割と言えますね。
引用元:MSF medical guidelines
6、GCUの看護のポイント
GCUの看護のポイントを見ていきましょう。
■児の観察
GCUの看護師は、赤ちゃんをしっかり観察しましょう。
NICUに比べると重症度は低く、状態は安定していますが、それでもまだ治療が必要な状態です。
状態が急変することもありますので、看護師はしっかり観察して、異常の早期発見に努めましょう。
また、児を観察してその日の変化を家族に伝えることで、家族の児への愛着形成を助ける効果も期待できます。
■家族看護
GCUに入院している赤ちゃんの中には、長期入院を余儀なくされたり、退院後も在宅ケアが必要な赤ちゃんもいます。
そのような場合、母親・家族は精神的に疲労したり、自分を責めたり、精神的に不安定になることもあります。
また、我が子への愛着形成がうまくいかないこともあります。
看護師は家族・母親に寄り添い、看護介入していきましょう。
■退院支援
GCUの赤ちゃんは退院後も在宅ケアが必要な場合もあります。
看護師は家族にケア方法を指導・説明していきましょう。
この時、母親だけでなく家族全員を巻き込んでいく必要があります。
また、家族構成・自宅の環境なども踏まえた指導をすると良いでしょう。
■地域支援につなげる
GCUを退院する家族は、嬉しさ・喜びと同時に、医療者が近くにいなくなるという不安に襲われます。
看護師は院内外で連携調整し、退院後も困ったこと・不安なことがあれば、家族がすぐに相談・受診できる場を家族に紹介できるようにしましょう。
地域の保健師や訪問看護、病院の外来、その他社会福祉制度の利用などを伝え、連携・調整していくことで、家族と赤ちゃんは安心して退院していくことができます。
まとめ
GCUでは、出生後すぐに母子分離を余儀なくされ、十分な触れ合いをしてくることが困難であった状況から母子が長い時間を共に過ごす環境を作っていきます。様々な不安や精神的ストレスが出てくるであろうことを予測しながら私達医療者は患児を含めた「家族」を支えていく必要があります。一般病棟とはちょっと違う特殊な環境下で過ごしたのちに家族の元へ戻っていく赤ちゃんがすくすくと育っていけるための支援を行うとともに、家族への継続した看護を行っていくことが大切です。
参考文献
産科病棟管理者 交流集会(日本看護協会|2013年8月3日)
GCU病 棟における家族参加型看護計画の実践報告(日本助産学会誌 第18巻 第3号|木下千鶴、木保真希子、碇石和子|2005年3月)
平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅰ(厚生労働省保険局医療課|平成30年3月5日)
福井トシ子「NICU・GCUにおける家族看護」家族看護学研究第 14巻 第 3号 2009年
白坂真紀 山地亜希 桑田弘美「NICU/GCU実習における看護学生の学び研究報告-NICU/GCU実習における看護学生の学び一小児看護学実習記録の分析から一」滋賀医科大学看護学ジャーナル, 10(1), 22-27
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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