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直腸癌の看護|ステージ分類と術式、起こりやすい合併症や看護ケア(2017/09/07)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護師 看護計画 愛知県 外科 消化器科 

直腸癌の看護

検診の際に見つかる場合が多い直腸癌は、初期には無症状であることが多いですが、血便、腹痛、便秘下痢など比較的早期から症状が出やすい癌です。癌の深達度、リンパ節転移、遠隔転移の3項目でステージ分類し、治療法が決定されますが、治療によっては人工肛門造設術などボディイメージが大きく変化し治療に抵抗がある方もいます。直腸癌の患者の治療法決定から術式、特有の術後合併症をわかりやすくまとめましたので、この機会に復習しましょう!

 

1、直腸癌とは

直腸癌とは、直腸粘膜から生じる悪性腫瘍のことです。直腸癌の発生には、正常粘膜から腺腫を経て癌になることが主ですが、正常粘膜から直接に癌を生じることもあります。

 

■好発年齢

50~70歳代に多く60歳代にピークを迎えます。

 

■危険因子

直腸癌の危険因子には、欧米型の食生活、遺伝的素因、炎症性腸疾患(慢性大腸炎、潰瘍性大腸炎に長期罹患している場合など)が挙げられます。現代の食生活は欧米化が進み、国内の悪性腫瘍の直腸癌の占める割合は増加しています。(2014年の人口動態の統計では男性3位、女性1位)

 

2、直腸癌の症状

初期では無症状のこともありますが、早期直腸癌では腹痛、腹部膨満感、排ガス停止、便秘、下痢、血便を起こすことがあります。直腸は腸管内容が固形で肛門に近く、血便や便柱狭小化などの便の性状変化や、便秘などの通過障害を起こしやすいため、比較的早期から症状が出現しやすいのです。

 

3、直腸癌のステージ

直腸癌が疑われる場合、癌の存在を確認した後、進行度の診断を行います。

 

■進行度(stage)分類

進行度は、壁深達度、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)のTMN因子に基づき決められます、0~Ⅳ期に分類され、各進行度に応じた治療をしていきます。

出典:大腸癌の進行度(ステージ)の表(国分寺鈴木医院)

 

■壁深達度(T)とは

壁深達度(T)は、進行度や治療方針を決めるうえで非常に重要な因子です。Tis、T1a、T1bはリンパ節転移の有無は問わず早期癌、T2~T4bは進行癌と定められています。

出典:大腸がん(国立がん研究センターがん情報サービス)

 

■リンパ節転移(N)とは

リンパ節転移は、転移の場所と転移の個数によってN0~N3に分類されます。領域リンパ節は腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節の3群に分類され、下部直腸では側方リンパ節が加わります。

出典:大腸とは(Minds(マインズ)ガイドラインセンター)

NX 領域リンパ節転移の程度不明
N0 領域リンパ節転移なし
N1 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が3個以下
N2 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が4個以上
N3 主リンパ節に転移を認める。下部直腸癌では側方リンパ節に転移を認める

出典:病気がみえるvol1消化器(株式会社メディックメディア|医療情報科学研究所|2016年3月26日)

 

領域リンパ節以外のリンパ節に転移がある場合はM1の評価になります。

 

■遠隔転移(M)とは

遠隔転移は、領域リンパ節以外のリンパ節に転移や、多臓器への転移の有無によって分類されます。

M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める
M1a 1臓器に遠隔転移を認める
M1b 2臓器以上に遠隔転移を認める

出典:病気がみえるvol1消化器(株式会社メディックメディア|医療情報科学研究所|2016年3月26日)

 

4、直腸癌の治療方針

直腸癌の治療の原則は、病巣を切除することです。遠隔転移がある場合は、原病巣を転移先の病巣を切除可能な限り切除しますが、手術を受ける患者の年齢や全身状態、起こりうる合併症を予測して決められます。

 

■遠隔転移がない場合

遠隔転移なし(M0) 病変 治療法
Tis、T1a癌などリンパ節転移の可能性がほとんどなく摘除できる病変 内視鏡的治療

ポリペクトミー

EMR

・ESD

・内視鏡敵に摘除が不可能なO期、I期の病変

・Ⅱ期以上

外科的治療

・腸管切除

+リンパ節郭清

(+人工肛門造設)

 

■遠隔転移がある場合

遠隔転移あり(M1) 原発巣の状態 治療法
原発巣の切除が可能 外科的治療

・原発巣切除

+リンパ節郭清

+転移巣切除

原発巣の切除が不可能 その他の治療

化学療法

・放射線療法

・緩和手術

 

5、直腸癌の術後合併症と看護のポイント

5-1、手術部位感染(SSI)

外科的手術部位感染SSI)は、手術操作が及ぶ部位の感染のことを指し、創部感染と臓器・体腔感染に分類されますが、直腸手術はSSI発生率が高いので注意が必要です。創部感染は術後4日目からリスクが上がります。毎日創部に感染徴候(発赤、腫脹、疼痛、熱感)がないか観察します。急な腹痛や発熱は臓器・体腔感染を疑いますので、画像所見から診断し、結果によってドレナージや抗菌薬投与が行われます。

 

5-2、イレウス

イレウスは、腸管内容の通過障害によって生じる腹痛、腹部膨満感、嘔気嘔吐、排便・排ガスの停止などの症状を呈する病態の総称をさします。発症のメカニズムにより機械的イレウスと機能的イレウスに分類されます。

 

■機械的イレウスと機能的イレウス

分類 原因
機械的腸閉塞

(機械的イレウス)

腸管膜血行障害のない単純性腸閉塞 腹腔内癒着、腫瘍、食事など
血行障害のある複雑性(または絞扼性)腸閉塞 腹腔内癒着による索状物、腸重積、ヘルニア陥頓など
機能的腸閉塞

(機能的イレウス)

麻痺性(麻痺性イレウス) 腹膜炎、開腹手術後、薬剤など
痙攣性(痙攣性イレウス) 鉛中毒など

 

イレウスの検査は、腹部X線、腹部CT、腹部超音波を行います。

 

■単純性腸閉塞の場合

基本は絶食管理になりますが、それでも改善しなければイレウス管を留置します。イレウス管を留置後も改善がなければ手術を行います。

 

■絞扼性腸閉塞の場合

急激に発症し激しい腹部症状を訴えます。壊死した腸管を切除する緊急オペを行います。

 

■機能的腸閉塞の場合

絶食管理をし、消化管蠕動運動促進薬を用いて腸管麻痺が改善するのを待ちます。それでも改善がなければイレウス管を留置します。

 

5-3、縫合不全

手術の際に縫合した組織が癒合せず、縫合組織の一部が離解してしまうことです。縫合不全が起こると、腸管内容物が腹腔内に漏れ出し重篤な腹膜炎を起こすため、ドレーンの廃液が変化してきていないか確認しましょう。

 

5-4、排尿機能障害

直腸周辺には、排尿にかかわる神経が分布しており、術中の操作により術後排尿障害を起こすことがあります。膀胱にたまった尿が十分に出せなければ尿路感染や腎障害を起こす原因となり得るため、必要時導尿し残尿確認を行いましょう。残尿が50ml以下になるまで導尿し、長期に続く場合は自己導尿が必要になります。

 

5-5、排便機能低下

直腸手術の中でも、低位前方切除術と、内肛門括約筋切除直腸切除術では排便機能低下がみられることがあります。排便回数が多かったり便失禁があったりする場合は便を固くする薬を使用し治療します。便失禁をしてしまう患者は皮膚トラブルを起こしやすいため皮膚保護剤を塗布するなどして皮膚炎を防ぎます。骨盤底筋の体操が有効な場合もあるので適時指導を行いましょう。

 

まとめ

直腸特有の重篤な術後合併症は多く、ドレーン排液の異常や腹部症状の確認が非常に重要です。また術後排便や排尿がうまくいかず羞恥心を覚えたり、落ち込んだりしてしまう方は多いので、術前から術後合併症の説明を入念に行い、疑問点や不安なことは少しでも解決して手術に臨めるようにしましょう。

 

参考文献

解剖生理からケアまで網羅!必修事項がサクッとわかる消化器外科看護まるごと図解ブック(毛利靖彦、楠正人|株式会社メディカ出版|2014年)

病気がみえるvol1消化器(株式会社メディックメディア|医療情報科学研究所|2016年3月26日)

豊田仁美 看護師

愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。

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