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いまさら聞けない!看護計画

便秘の看護計画|便秘の原因・観察項目とその看護問題を学ぶ(2017/07/23)

公開日: : 最終更新日:2021/04/01 看護計画 東京都 全科共通 

便秘とは、ひと言で言っても原因や発生機序によって分けられ、その種類によっても看護ケアが変わってきます。便秘は生活習慣によって起こるものや、疾患によって起こるものもあります。便秘は単純なもののように思えますが、便秘によっての肛門疾患や結腸癌のリスクの増加もあると言われており、また看護を行う上でよく関わるものでもあるので、ここで原因や治療方法など便秘について再度確認して、看護に役立てましょう。

 

1、便秘とは

便秘とは排便の回数や量が減り、排便することが困難な状態のことをいいます。排便の回数や習慣は個人差があり、1日に1回排便がないことでも便秘であったたり、もともと3日に1回の排便習慣の人もいます。便秘について回数や量での明確な定義はありませんが、規則的排便は健康の一要素であり、排便回数や量が減って不規則となり排便習慣を逸脱した排便を便秘とすることもあります。

便秘には、急性便秘と慢性便秘という大きく2種類に分けられ、さらにその原因によって分類されます。

 

1−1、急性便秘

急性便秘は一過性便秘とも呼ばれ、旅行や生活環境の変化などで起こる短期間での便秘のことをいいます。この一過性の便秘は機能性便秘と言われますが、疾患によって急に起こる器質性便秘もあります。

 

①機能性:消化管に異常はないが腸過敏性症候群、生活習慣などでの機能低下によって排便の回数や量が減少するもの

②器質性:消化管そのものの病変が原因であるもの

 

1−2、慢性便秘

一般的に便秘というのはこの慢性便秘のことをいいます。慢性便秘は原因によって、症候性、薬剤性、器質性、機能性と分類されます。

 

①症候性:神経疾患、内分泌疾患が原因であるものや、腫瘍、憩室の形成と進行にともなう症状によるもの

②薬剤性:薬物中毒、重金属中毒、薬の副作用によるもの

③器質性:消化管そのものの病変が原因であるもの

④機能性:消化管に異常はないが腸過敏性症候群、生活習慣などでの機能低下によって排便の回数や量が減少するもの

 

2、便秘の原因

便秘の原因をそれぞれの分類に沿ってみていきます。

 

2−1、機能性便秘

機能性便秘は胃結腸反射の低下や排便排出機能の障害などが原因で起こります。生活習慣が主な原因で起こるものをいいますが、その原因は、食物繊維不足、水分摂取不足、運動不足が要因とされ、大腸の機能低下が要因に挙げられますが、疾患が原因となっているものではありません。またストレスや食事内容の変化も原因となっています。

機能性便秘には、大腸通過遅延型と排便機能障害型があります。

 

①大腸通過遅延型:胃結腸反射の低下により大腸内や全消化管の通過時間が千円することによって起こります。大腸の筋肉が弛緩することによって、便を押し出すことができないために起こります。高齢者や女性に多いのが特徴です。

②排便機能障害型:肛門括約筋の排出力低下やストレスが要因となっていると言われているもので、自律神経のバランスの乱れによって大腸が正常に動かなくなり、肛門括約筋の協調不全や大腸が痙攣したようになるために起こります。

出典:おなかのはなし.com

 

2−2、器質性便秘

器質性便秘は、胃、小腸、大腸、肛門に疾患があり、または狭窄や閉塞によって発症する便秘です。原因となる疾患は次の通りです。

 

①閉塞:大腸直腸腫瘍、炎症性腸疾患

②腸管壁の障害・蠕動運動障害:全身性硬化症、発達障害パーキンソン病多発性硬化症糖尿病、甲状腺機能低下症など

③圧迫:腸管癒着、ヘルニア嵌頓、巨大腹腔内腫瘍(子宮筋腫など)

 

2−3、症候性便秘

症候性便秘は、何らかの疾患が原因となって合併症として起こる便秘で、内分泌疾患、代謝性疾患、神経疾患、精神疾患、循環器疾患などで起こります。このような疾患によっての便秘は、腸管運動機能の低下によって起こります。腸管運動機能の低下は、例えば、糖尿病なら神経障害によって、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌低下、低カリウム血症では筋肉障害、神経系疾患では中枢神経系の障害で起こるとされています。

 

■症候性便秘を起こす疾患

内分泌疾患 糖尿病・甲状腺機能低下症・副甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫・汎下垂体機能低下症・グルカゴノーマ
代謝性疾患 ポルフィリン症・低カリウム血症・高カルシウム血症
神経疾患 パーキンソン病・脳血管障害・多発性硬化症・脳腫瘍・脊髄障害・筋ジストロフィ
精神疾患 うつ病統合失調症
循環器疾患 急性心不全・急性心筋梗塞
その他 膠原病・アミロイドーシス・肺気腫・尿毒症・鉛中毒

 

2−4、薬剤性便秘

薬剤性便秘は、腸管運動機能を低下させるまたは抑制させる薬剤によって起こります。

 

■便秘を引き起こす薬剤

薬の種類 一般名 便秘のメカニズム
制酸薬 ・水酸化アルミニウム

・カルシウム塩

収斂作用によって起こる
高脂血症治療薬

鉄剤

・コレスチラミン

・硫酸鉄

腸管運動機能低下、脱水、水分制限による
抗コリン薬(パーキンソン病治療薬)

アトロピン様薬剤

ドパミン作動薬

・ビベリデン塩酸塩

・レボドパ

平滑筋に対するアセチルコリンの作用を抑制し、消化管の緊張や運動性を減少させる様に作用する
抗うつ薬(三環系) ・アミトリプチリン塩酸塩

・ノルトリプチリン塩酸塩

・イミプラミン塩酸塩

腸管壁の平滑筋細胞に対して抗コリン用の作用をする
抗精神病薬(フェノチアジン系) ・クロルプロマジン塩酸塩

・マレリン酸トリフロペラジン

腸管の筋層間神経叢障害が起こる可能性があり、慢性便秘の原因となる。

便嵌頓は局所の炎症や、潰瘍、出血、先行の原因となる。

抗がん薬 ・ビンクリスチン硫酸塩 上部結腸の便嵌頓を起こすことがある。

麻痺性イレウスを起こしやすい。

麻薬系鎮痛薬 ・リン酸コデイン 腸管の推進力や蠕動収縮力の減少に関与する腸平滑筋の静止緊張を上昇させる
抗ヒスタミン薬 ・ジフェンヒドラミン

・プロメタジン塩酸塩

内在性の抗コリン作用
緩下薬 ・センナ

・ビサコジル

長期使用(濫用)は正常の蠕動を抑制するような平滑筋の緊張と収縮性の消失(無緊張)を導く
利尿薬(非カリウム保持性) ・クロルタリドン

・サイアザイド

・フロセミド

脱水による硬い便塊形成の原因となる。

カリウム保持製剤の抗利用は虚血性海洋の原因となる。

降圧薬

不整脈

・Ca拮抗薬(ベラパミル塩酸塩など)

・クロニジン塩酸塩

・ジソピラミド

平滑筋の運動を抑制
止痢薬 ・ロペラミド塩酸塩

・ベルベリン塩化物水和物

腸管運動抑制作用

 

3、便秘の薬について

便秘時に使用する薬剤は、生活習慣の改善と併用することが大切です。また、便秘薬の種類は多くありますが、その特徴を知って使用することも必要です。便秘薬としてよく使用されるのは酸化マグネシウムなどの緩下薬やセンノサイド系の刺激性下剤がありますが、依存性が強い薬剤なので、連日使用は避けるようにします。また、酸化マグネシウムは併用する薬剤に注意が必要であり、高マグネシウム血症の患者には注意が必要です。

このような薬の他に、漢方もよく使われます。麻子仁丸や潤腸湯、大建中湯などが便秘時によく使用される漢方です。

 

4、便秘の看護問題

便秘の看護問題は「排便の変調:便秘」として大きくまとめられますが、細かく分けると次のようなものが挙げられます。

 

①食事摂取量・水分摂取量の減少によって便秘となっている

②術後の安静や運動不足によって腸管運動機能の低下がある

③薬の副作用による腸管運動機能の低下がある

④精神状態や、認知症による便意認識の欠如がある

⑤疾患により腸管閉塞、または狭窄がある

⑥排便痛や怒責時の疼痛があり、排便困難である

⑦ストレスや環境の変化により、腸管運動機能の低下がある

⑧疾患によって排便機能に障害がある

 

5、便秘の看護目標

上記の看護問題に関する看護目標としては、次のようなものが挙げられます。

 

①腸管運動機能が改善し、排ガスや排便がみられる

②規則正しい排便習慣となる

③排便コントロールを自己管理できる

 

6、便秘の看護計画

■観察項目(OP)

・排便状況(排便の回数、量、性状、間隔)

・排便時の疼痛、出血など苦痛の有無

腹部膨満感の有無

・使用薬剤と使用頻度

・食事量

・水分摂取量

・検査データ(腹部X-P、腹部CT、内視鏡検査など)

・排泄環境、方法

・排便についての知識、言動

 

■ケア項目(TP)

・排泄しやすい環境を整備する

・腹部マッサージや温罨法を行う

・便秘の原因をアセスメントし、必要なら医師へ報告して指示を仰ぐ

・水分摂取を促す

・医師の指示に基づいて、便秘薬を与薬する

・必要時、医師の指示に基づいて浣腸摘便を行う

・術後、早期離床を行い、離床が難しい場合は体位変換を適宜行う

・思いを傾聴する

 

■教育項目(EP)

・水分摂取の必要性を説明する

・食物繊維を含む食事を指導する

・便秘薬の使用方法を説明する

・適度な運動の必要性を説明する

・排便方法を患者とともに考える

・排便は決して我慢しないように説明する

 

まとめ

便秘は生活習慣で起こるものや疾患や薬剤が原因で起こるものなど、様々な要因によって発生します。看護ケアの中でも便秘は日常的なもので、大切な援助項目でもあります。看護によって薬を使用しなくても便秘を改善することができることもあります。便秘の知識を改めて知ることは、看護の質を高めることにも繋がることでしょう。

 

参考文献

排便と健康(順天堂醫事雑誌Vol.60 No.1 p.16-24|浦尾正彦| 2014)

便秘の定義と便秘体質(中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要第5号P.49-54|徳井教孝、三成由美|2012年9月発行)

慢性便秘の診断と治療最前線(日本内科学会|中島淳)

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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