EMR(内視鏡的粘膜切除術)やESDの目的と術後における看護・観察(2016/03/16)
ポリープ切除の際に施行される手術の一つ、EMR。ここでは、EMR手術の実際や術後の看護についてご説明します。
1、EMRとは
EMRとは「Endoscopic Mucosal Resection」の略で、内視鏡的粘膜切除術のことを言います。消化器官(食道・胃・大腸など)の悪性腫瘍やポリープを切除するために行われる手技の1つで、内視鏡を用いた切除術には「ポリペクトミー」や「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」などがあります。
これらの手技は、悪性腫瘍・ポリープの「形状」「進行の程度」「切除範囲」などによって使い分けられ、基本的にはポリペクトミー→EMR→ESDの順で頻回に実施されます。つまり、ポリペクトミーでは難しい場合にEMR、EMRで難しい場合にESDというように、悪性腫瘍の状態によって使い分けられます。
■ポリペクトミー
ポリペクトミーは、“キノコ状”の悪性腫瘍やポリープの切除に際して実施され、スネアと呼ばれる金属の輪に掛けて締め、高周波電流を流して焼く手技のことです。スネアの輪の形状や大きさは多く存在するため、さまざまな悪性腫瘍・ポリープの切除に実施されます。
■EMR
平べったい形をした悪性腫瘍・ポリープに対して行われるのがEMR。ポリペクトミーと同様にスネアを用いますが、EMRでは悪性腫瘍・ポリープのある場所の粘膜下層に生理食塩水などを注入し、切除しやすいように持ち上げてから(盛り上がった状態で)スネアを掛け、高周波電流を流して焼き切ります。
■ESD
EMRではスネアの大きさにより、大きな悪性腫瘍・ポリープにおいては数回に分けて切除する必要があります。そこで専用のナイフで病変の周辺を切開した後に粘膜下層をめくるように剥していくESDが実施されます。まだ確立されておらず技術的に難しいため、限られた医療施設でのみ実施されています。
2、EMRの目的
EMRにおける偶発症の発症率は0.01%と非常に低いため、安全かつ安楽に悪性腫瘍・ポリープを切除することができ、さらに患者は術後まもなく(1泊2日の入院経過観察は必要)、通常の生活に戻れます。
また、開腹や全身麻酔の必要がなく、手術時間は1時間程度であることから、患者の侵襲は低く、悪性腫瘍・ポリープ切除における根治性も損なわれないため、EMRは患者のQOLを考えた根治治療と言えるでしょう。
3、EMRの術後看護
EMRで切除した部分は人工的な胃潰瘍ができることで、稀に出血や穿孔になる場合があります。その際には、腹痛・嘔気・嘔吐などの腹部症状や血便などの症状が現れますので、特に術後・病棟帰室後1~2時間後のバイタルサインをしっかり確認し、絶対安静・絶飲食が守られているか監視してください。
また、床上安静が原則であるため、歩行はトイレ・洗面時にのみ可能とし、それ以外は許可しないようしっかり説明してください。
■留意点
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まとめ
EMRは侵襲の低い手技ですが、出血や穿孔の危険性はあります。それゆえ、術後には偶発症の発症リスクを下げるために床上安静や飲食・歩行制限などについてしっかりと説明し、バイタルサインや全身状態を都度観察することが大切です。
また、コミュニケーションを通して、がん告知に対する精神的ストレスの緩和を図り、患者のQOLを最大限に向上できるよう努めてください。
愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。
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