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看護におけるQOLの意味とQOL向上に向けた取り組み(2016/02/29)

公開日: : 最終更新日:2017/12/09 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

QOL
看護の現場で非常に重要となるQOL。どのようにQOL向上に努めていけばよいのかについて、簡潔にまとめてご紹介します。

特に大切になるのが「苦痛の軽減」「コミュニケーション」「合併症の予防」「環境の整備」の4つ。細分化すると多岐に渡りますが、まずはこの4つを重点的に実施すれば、QOLを大きく向上させることができます。

 

1、QOLとは

QOLは「Quality Of Life」の略で、“生活の質”を意味します。看護とは、各患者がその人なりの最も健康的で質の高い生活を支援することであり、“生活の質(QOL)の向上”が看護の軸と言っても過言ではありません。

患者は、有する疾患や入院という環境の変化により、精神的な不安を抱え、また疾患の種類によってはそれまでの通常の生活を送ることができません。

これら患者が有する身体的・精神的苦痛を緩和させ、質の高い生活、つまりQOLを向上させることが看護師の役割なのです。

 

2、看護の現状

しかしながら、看護師という職業は多忙を極め、自身の業務に精一杯という方が多いのが現状です。この背景には就業者数が深く関係しており、今も昔も医療施設に従事する看護師の人数は全く足りておらず、看護師1人あたり多くの患者を受け持たなければいけません。

人材不足は看護師の業務の圧迫を助長するだけでなく、看護師1人あたり多くの患者を受け持つことにより、患者1人1人が援助されるべき看護量ならびに看護時間が少ないのです。

しかし、このような厳しい状況においても、疾患を有する患者の身体的・精神的苦痛を緩和させられるのは看護師だけであり、看護師という職業に携わっている以上、患者のことを第一に考え、献身的に患者のQOLの向上に努めならければいけません。

 

3、QOLを向上させるために

患者のQOLを向上させる看護は多岐に渡ります。というのも、患者が抱える疾患や症状は1人1人異なり、さらに何を思い何を考えているのか、いわゆる人間性も異なるからです。よって、QOLを向上させるためには、まずは綿密な「アセスメント」を実施し、患者について深く知る必要があります。

なお、一般的には「苦痛の軽減」「コミュニケーション」「合併症の予防」「環境の整備」の4つの事項を献身的な姿勢で実施することで、患者のQOLを向上させることができます。

 

■苦痛の軽減

疾患による頭痛・腹痛・背部痛・吐き気・悪寒、体動制限・体動困難による疼痛など、さまざまな苦痛が伴います。苦痛を呈する際には、原因を特定した上で最良となる対処を施すことで、患者の苦痛が軽減されQOLの向上に繋がります。ただし、中には苦痛を訴えない患者もいるため、バイタルサインや表情など多角的な情報をもとに苦痛を察知しなければいけません。

 

■コミュニケーション

患者は入院という環境の変化や孤独による不安、疾患に対する不安など、さまざまな精神的苦痛が伴います。また、入院生活において、看護師は患者にとって最も頼れる(頼るしかない)存在です。コミュニケーションにより、患者の不安が軽減され安心かつ集中的に治療に専念でき、結果的にQOLの向上に繋がります。

看護コミュニケーションの目的と意義、信頼獲得のための術

 

■合併症の予防

疾患の中には合併症の発症率が高いものがあります。特に感染症は多くの疾患に関与しています。現病に加え合併症を発症すると患者の身体的・精神的負担は増大し、QOLが著しく低下するため、清潔保持・栄養コントロール・転倒(転落)の防止など、各疾患・各患者に合わせた合併症の予防は非常に重要です。また、合併症の増悪を防ぐために、日々の入念な観察による早期発見、迅速な対処が不可欠です。

 

■環境の整備

病室はいわゆる患者にとっての生活スペースです。環境に何かしらの問題があると安らぎを獲得することができず、QOLの低下を招くだけでなく精神的不安の増大や睡眠不足などによる身体的負担の増大など悪影響が及びます。

騒音・臭気・室内温度の調整、シーツ・ベッド周辺・ゴミ箱の清潔管理、ラインやコード類の整理・転落や転倒の防止策、ベッド周辺の整理整頓など、安心・安全・安楽な環境の整備を行い、患者に安心できる生活スペースを提供してください。

環境整備|目標設定・観察をもとにした看護ケアの実践と手順

 

また、これら4つの事項以外にも、患者の状態によって、いわゆる「看護問題」が多々出てきます。アセスメント看護診断により抽出した看護問題を1つ1つ解決していくことでもQOLは大きく向上するため、患者に合った看護ケアを行うことが大切です。

 

まとめ

看護師の役割は、各患者がその人なりの最も健康的で質の高い生活を支援することであり、医師の役割とは異なります。また、入院生活において患者が最も信頼できるのは医師ではなく看護師です。つまり、患者のQOLを向上させることができるのは看護師だけなのです。

何に対して苦痛を感じているのか、何を思い何を感じているのかは患者によって異なるため、まずは基本となる「苦痛の軽減」「コミュニケーション」「合併症の予防」「環境の整備」を徹底した上で、各患者に合った看護ケアを実施し、QOLを最大限に向上できるよう献身的な姿勢で看護を提供してください。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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