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PTCD(PTBD)の手技と合併症、看護における管理・観察項目(2016/02/04)

公開日: : 最終更新日:2022/12/09 看護師 看護用語 愛知県 消化器科 

PTCD

体内に貯留した胆汁を人工的に体外に排出させる目的で施行されるPTCD。合併症の種類は多岐に渡り、また発症率が高いことから細やかな観察のもと異常を早期に発見し、迅速に対処しなければいけません。

当ページでは、「1、PTCDとは」「2、手技」「3、術中合併症」「4、術後合併症」「5、観察項目(術中・術後)」の5つの項目をもとにPTCDの看護について詳しくご説明しますので、PTCDの看護に不安のある方は、各項目を熟読し、PTCDに関する知識を深めてください。

 

1、PTCD(PTBD)とは

PTCDとは、“Percutaneous Transhepatic Biliary Drainage”の略で、「経皮経肝胆道ドレナージ」のことです。総肝管や総胆管の閉塞、その結果生じた閉塞性黄疸に対して施行されることが多く、胆汁を持続的に体外に排出する治療法です。

まず、胆管の狭窄や閉塞が疑われる場合に、胆管の結石や腫瘍、腫瘍による胆管の圧迫、隣接臓器の炎症など原因を特定するために、PTC(経皮経肝胆管造影法)により、体外→皮膚→肝臓→肝内胆管の順に穿刺針を刺していき、造影剤の注入・レントゲン撮影を行います。その後、狭窄や閉塞によって胆汁が貯留し横断が生じた場合には、胆汁を体外に排出させるPTCDを行います。

PTCDの手技は超音波画像の誘導化で行い、PTCで用いた穿刺針を留置用のチューブに置き換えて、そのチューブを通して貯留している胆汁を体外に排出します。手技自体は簡単であり侵襲は少ないものの、合併症は多岐に渡り発症率も高いため、術中・術後において患者に対する適切な観察ならびに看護が不可欠です。

PTCDは「PTBD」とも呼称されることがあります。PTCDは商品名であり、広域ではPTBDの用語が使用されています。つまり、PTCDとPTBDは同義の意味を持っています。以下では、混乱を防ぐために“PTCD”の用語を用いて記載します。

 

2、PTCDの手技

PTCDを行うのは医師ですが、看護師も手技について熟知しておくことで、術中に異変をきたした場合にスムーズに対処することができます。それゆえ、PTCDはどのように行われるのか、しっかり把握しておいてください。

なお、PTCDは大まかに「前処置」→「穿刺部位決定」→「局所麻酔」→「穿刺」→「GW挿入」→「カテーテル挿入」の順に行われます。

 

①前処置

穿刺時には臓器の損傷を防ぐために呼吸を止めてもらう必要があるため、ジアゼパムやミダゾラムなどの鎮静剤を通常使用せず、鎮痛剤のみを前処置として投与し、鎮静剤の使用はGW(ガイドワイヤー)挿入後に投与します。また、前処置として、迷走神経反射を防ぐ目的で硫酸アトロピンの投与を行います。

 

②穿刺部位決定

胆管には、肝内胆管・肝門部・肝外胆管があり、狭窄・閉塞している部分によって穿刺部位を選択します。肝内胆管の場合には左肝または右肝より穿刺を行いますが、左肝の方が合併症のリスクが少ないため、右肝でなければならない理由がない限り左肝が選択されます。

また、肝門部が閉塞している場合には、胆管枝の抹消から穿刺を行います。ただし、ステント留置の必要がある場合には、留置位置を考慮して穿刺部位が選択されるため、全体像を把握した上で最終的に決定されます。

 

③局所麻酔

穿刺に際して痛みが伴うため、皮膚消毒を施したあと穿刺部位に表面麻酔を行います。シリニンジ内に空気が入っていると超音波画像が不良になり、適切に手技を実施できないため、脱気は厳重に行います。また、深部麻酔時には、肝臓に針先が刺入することがありますので、呼吸停止下に行い、苦痛軽減のために腹膜前組織まで十分に麻酔を施します。

局所麻酔の看護|術中・術後の観察と副作用・合併症

 

④穿刺

他の臓器の損傷・刺入を防ぐため、穿刺は超音波の誘導下で行います。胆管の目標となる穿刺部位を確実に描出した上で、患者に10~15秒ほど息を止めてもらい、その間に一気に針を進めます。胆汁の流出により穿刺の成功が確認できます。なお、皮切・皮下剥離は穿刺前に行う場合と穿刺後に行う場合の両方があり、施設によって、また医師によって異なります。

穿刺前皮切は針の穿刺が容易でズレが少ないなどの利点がある反面、穿刺点の変更ができない、空気の流入などの欠点が存在します。基本的には簡単で太い胆管に対して穿刺前に皮切を行います。

穿刺後皮切は穿刺点の変更が可能で空気の流入がないなどの利点がある反面、針の穿刺がズレやすい・皮膚のズレによる穿刺の可能性があるなどの欠点が存在します。基本的には細く難しい胆管に対して(何度も穿刺する場合)穿刺後に皮切を行います。

 

⑤GW挿入

PTCD時には、①穿刺時に針から出て胆管内へ入る時の誘導、②穿刺後の目的位置までの先進、③針を抜去しカテーテルを胆管内へ入れる時の誘導、④狭窄の突破などの目的でガイドワイヤーが使用されます。なお、ガイドワイヤー後には呼吸を止める必要がないため、鎮静剤の投与を行います。

 

⑥カテーテル挿入

放射線被爆を考慮しつつガイドワイヤーに沿ってカテーテルを挿入します。ドレナージチューブを留置し、皮膚固定を行い、PTCDが終了となります。

 

3、PTCDの術中合併症

PTCDの施行中には、疼痛に伴う「迷走神経反射」、穿刺部位不適当による「気胸」、静脈・動脈の損傷に伴う「出血」、造影剤による「ショック・アレルギー」など、起こりうる合併症は多岐に渡ります。

手技においては医師が担当し、超音波の誘導下で穿刺やカテーテルの挿入などを行い、胆管の様子は医師が確認しますが、患者の苦痛の有無やバイタルサインの確認は看護師の役割であるため、それぞれの合併症に熟知し、異変を早期に察知できるよう努めてください。

 

■迷走神経反射

穿刺や瘻孔拡張、胆管屈曲部を超えてチューブを挿入する時などに強い疼痛と伴い、また手術に対して強い不安がある場合に失神・徐脈血圧低下といった迷走神経反射が起こることがあります。これを避けるためには十分な局所麻酔(特に壁側腹膜・肝被膜)を行い、強い不安がある患者に対して抗不安剤や鎮痛薬の投与を行います。

なお、患者の反応低下、不穏嘔気などがみられた場合にはすぐにバイタルサインを確認し、徐脈や血圧低下が確認されれば硫酸アトロピンの投与、下肢挙上などを行い、必要に応じて酸素吸入を行います。

 

■気胸

主に右肺からのアプローチの場合で、超音波画像の不良などにより穿刺部位が不適当であった場合に気胸になることがあります。右前胸部での穿刺の際には出来るだけ前胸壁寄りから穿刺、右側腹部での穿刺の際には出来る限り尾側から穿刺を行うことで回避できます。

強い胸痛・背部痛、穿刺時にエアー音がみとめられる場合には気胸を疑い、すぐに透視で気胸の程度を確認し、中程度以上であれば胸腔穿刺による脱気、胸腔ドレーン挿入を行います。軽度であれば経過観察することもありますが、高度な気胸に移行する場合や胆汁性腹膜炎が生じることもあるため、注意深く観察する必要があります。

 

■出血(穿刺針から)

穿刺針から多くの出血がみられる場合には、肝静脈・門脈・冠動脈の損傷が疑われます。まず穿刺した部位(肝静脈・門脈・冠動脈)を造影で特定し、肝静脈であればそのまま抜去、門脈であれば外筒を血管外の肝実質内まで引き抜いて閉鎖し血栓化を待って抜去(細径針はそのまま抜去しても問題ない)。肝動脈であれば同様に処置後に抜去を行い、偽動脈瘤の形成を考慮して経過観察を行います。

 

■出血(穿刺部から)

穿刺部からの出血が見られる場合には、肝内血管・腹膜壁・胸腔内の肝外血管の損傷が疑われます。まず、出血の程度や血液の色などにより出血部位を特定し、太いチューブを用いて圧迫出血を行います。

 

■出血(ドレナージチューブから)

ドレナージチューブからの出血がみられる場合には、肝動脈・門脈の損傷、腫瘍出血、胆管壁からの出血が疑われます。基本的には自然に止血するため経過を見て排液の血液が薄くなるようなら放置します。ただし、経過をみても血液が薄くならない場合にはチューブ位置の変更やチューブを三方活栓などで閉鎖します。これでもダメなら、太いチューブに交換し圧迫止血を行います。なお、自然に止血した場合でも動脈性出血であれば遅発性の可能性があるため、厳重に経過観察する必要があります。

 

■エンドトキシンショック

造影剤圧入による感染胆汁の血管内移行が原因となりショックを引き起こすことがあります。悪寒や戦慄などの症状がみられる場合にはエンドトキシンショックを疑い、酸素投与・昇圧剤投与・ステロイド投与・抗生剤投与・輸液増量などを行います。術中だけでなく、術後2時間までに生じることが多いため、病棟帰室後も厳重な観察が必要不可欠です。

 

■造影剤アレルギー

症状が軽度(蕁麻疹・発疹など)でバイタルサインが安定している場合には経過観察を行います。呼吸困難意識障害・失神などのショック症状がみられる場合にはエピネフリンなどを投与し、下肢挙上、酸素投与を行いますが、バイタルサインが安定した後も厳重な経過観察が必要です。

 

4、PTCDの術後合併症

術中だけでなく、術後における合併症の発症リスクがあり、「脱水・電解質異常」「胆汁性胸膜炎・腹膜炎」「チューブ逸脱・閉塞・破損」が主な合併症です。患者のバイタルサインや全身状態の確認、チューブの確認などを適宜行い、異常の早期発見に努めてください。

 

■脱水・電解質異常

胆汁が大量に体外に排出されることが原因で、PTCDを施行する全ての患者に起こりえます。脱水や電解質異常になると、尿路減少、不整脈、口渇などが起こります。また、脱水によるショック(血液量減少性ショック)は特に注意しなければいけません。なお、脱水・電解質異常を避けるためには、PTCD排液量を含めた水分のIN-OUTバランス、血中電解質、クレアチン値などのチェックを行い、適宜補正を行います。また、同症状発現時には輸液ならびに電解質バランスの補正を行います。

 

■胆汁性胸膜炎

経胸腔のPTCDで生じ、横隔膜のチューブ刺入部より胆汁が漏出することで発症します。発熱や呼吸困難感、側胸部痛などの症状がみられた場合には胆汁性胸膜炎が疑われます。発症時には胸腔ドレーンを挿入するか、ドレナージの不良(チューブの狭窄・閉塞など)がないか造影で確認し、チューブの交換または位置の修正を行います。

 

■胆汁性腹膜炎

肝表と腹壁との瘻孔形成が未熟な場合に起こりやすく、発症時には発熱、強い腹痛、筋性防御・反跳痛などの腹膜刺激症状を呈します。腹腔ドレーンを挿入するか、ドレナージの不良(チューブの狭窄・閉塞など)がないか造影で確認し、チューブの交換または位置の修正を行い改善を図ります。なお、胆汁性腹膜炎は右側から深吸気息止めでPTCDを施行する場合に起こりやすいため、自然吸気息止めで行うことで比較的避けることができます。

 

■チューブ逸脱

自己抜去、事故抜去、肝表・腹腔間でチューブがたわむことにより起こります。排液量の減少や排液停止がみられる場合にはチューブ逸脱の可能性があり、胆管末梢・肝実質内にチューブの先端がある場合(不完全逸脱)には再留置します。完全に逸脱している場合にはPTCDの再施行が必要になることもあります。

 

■チューブ閉塞・破損

胆石・胆泥・腫瘍などによりチューブの閉塞が起こり、排液の脇漏れや排液停止がみられ、同時に胆汁性胸膜炎や胆汁性腹膜炎の症状が発現します。チューブの閉塞に際しては主にチューブの交換を行い、チューブ手元のハブが折れることによる破損・切断の場合にも同様にチューブの交換を行います。破損・切断に対しては起こりやすいチューブのハブ部を胸壁に固定することで防止することができます。

 

5、PTCDの観察項目

上記のように術中・術後における合併症は多岐に渡り、観察を怠ると時に重篤化することもあります。それに伴う死亡例も毎年報告されています。それゆえ、看護師は細やかな観察を行い、少しでも異変を感じたらすぐに担当医に報告し、起こりうる合併症の増悪を防止しなければいません。以下に術中・術後における観察項目をご説明しますので、しっかり確認しておきましょう。

 

5-1、術中の観察

PTCD施行中には、上述のように手技に伴うさまざまな合併症の発症リスクがあります。合併症発症時の処置は担当医が行いますが、症状の発見は看護師の役割であるため、バイタルサインや刺入部の感染兆候(発熱・腫脹・熱感・疼痛)、表情や全身状態を細かく観察し、異常時または異常の兆候がみられる場合には、直ちに医師に伝えます。

また、担当医が円滑に処置できるよう、体位の変換・固定を行うとともに、患者の精神的負担を軽減するために声かけを行うなど、さまざまな点に留意して観察・援助を行ってください。

 

5-2、術後の観察

■患者の状態

まず、平常時の状態を把握するために、バイタルサインをはじめとする患者情報を正確に取得します。そして、経過観察においてバイタルサインや疾患に伴う症状の有無、腹痛の有無、刺入部の皮膚状態(発赤や腫脹がないか)などを観察します。安定期に入っても気を抜くことなく、平常時の状態から何かしらの変化がみられる場合には注意深く観察し、合併症の早期発見に努めてください。また、PTCD処置後は体動制限・体位制限など生活において不快な面がでてくるため、患者の精神的ストレスの緩和に努めるのも非常に大切です。

 

■ドレーンチューブ

常時、チューブが固定されていることで、逸脱・閉塞・破損・切断などが起こる可能性があり、長期的に留置する必要がある場合は特に起こりやすいものです。これらは排液量の減少(または停止)によって確認することができますが、基本的にどれも新たにPTCDを行う必要があるため、平常時の排液量を正確に把握した上で、予防に努めなければいけません。また、自己抜去・事故抜去を防ぐべく、精神的ストレスの緩和、体位・体動における指導、ならびに各患者に合った工夫を行ってください。

 

■排液(色・量・性状)

排液により合併症(疾患)の発症やドレナージ不良などさまざまな情報を取得することができるため、しっかりと観察する必要があります。排液量においては350~850mlが正常ですが患者によって幅があるため、変化を素早く察知できるよう、必ず平常時の排液量を正しく把握しておいてください。また、異変がある場合には直ちに担当医へ報告し指示を仰いでください。

  正常時 異常時 原因
黄褐色 緑色 胆管炎、感染胆汁、逆行感染など
血性 胆道系腫瘍からの出血、損傷など
350~850ml/日 過多 ドレーン挿入直後、鬱滞した胆汁の急激な排出、腸液の混入など
過少 ドレナージ不良(チューブ逸脱・閉塞・屈曲)、胆汁生成機能低下など
性状 やや粘稠性 砂混じり 結石粉砕後など
膿性 腫瘍、胆管炎(膿性)など

 

まとめ

PTCD自体は簡単な手技ではあるものの、合併症の発症率は高く、重篤化するケースが多々あります。それゆえ、看護師の細やかな観察が非常に重要となります。

術後の管理は全体的に看護師が行いますが、術中においても異常を早期に発見できるよう、看護師も手技について知識を深めるとともに、起こりうる合併症の種類と対処法について精通することが必要不可欠です。

また、観察だけでなく、患者の精神的不安の軽減や体位・体動制限の指導、在宅療養時の管理指導など包括的に援助し、患者のQOLの向上に努めてください。

 

PTGBD(経皮経肝的胆嚢ドレナージ)の看護と観察項目

豊田仁美 看護師

愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。

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