ブランク看護師の復職|復職支援研修や自己勉強でスムーズな復帰を(2016/08/26)
平成24年時点において、潜在看護師数は約70万人で、看護師免許取得者(准看護師含む)の30%以上にものぼっています。そんな中、平成18年に新設された「7対1配置(7対1入院基本料)」に伴い、各医療機関における看護師不足がより顕著なものとなりました。
そこで現在では、多くの医療機関・医療施設がブランクのある看護師向けに復職支援研修や職業紹介の実施、受け入れの強化などを積極的に行っており、徐々にではありますが、年々復職率は高まってきています。
復職するにあたって、看護技術などに不安を感じ、復職へ向けて一歩を踏み出せないという方が多いのが実情ですが、研修の参加や自己学習などで、以前の技術の大半は取り戻すことができるため、復職をご希望の方は不安を取り除くためにも、しっかりと準備しておくことが大切です。
1、潜在看護師の実情
出産を機に離職する方、他分野への興味により離職する方、責任の重さ・医療事故への不安により離職する方など、離職理由は人それぞれで、多くの方が離職を機に看護の道から離れています。
平成26年3月に、小林美亜(現:千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)が提出した報告書によると、平成24年末時点における潜在看護職員数は699,566人、潜在看護職員率はなんと32.5%にものぼっています。
潜在看護職員数推計結果
1)平成22年末推計 平成22年末時点において、看護師・准看護師の免許取得者数は2,110,240人、就業者看護職員数は1,395,571人であり、潜在看護師職員数は714,669人と推計され、潜在看護師職員率は33.9%であった。 2)平成24年末推計 平成24年末の潜在看護職員数は699,566人であり、潜在看護職員率は32.5%であった。潜在看護職員率を性別にみると、男性が19.3%、女性が33.2%であった。年齢階層別では25歳未満が34.2%、25~29歳が31.6%、30~34歳が34.7%、35~39歳が29.4%であり、40~54歳は約30%であった。 |
引用:第七次看護職員需給見通し期間における看護職員需給数の推計手法と把握に関する研究
潜在看護師とは、看護師免許の保有者のうち看護職に就いていない人のことを言います。女性の割合が大きいことや多忙な業務、不規則な業務形態などにより、離職率が高く、他の職種と比べて潜在者数は非常に多いと言えます。
しかしながら、看護職はすべての職種のうち最も安定性があり、求人倍率が非常に高いために、近年では求職者が増えてきています。特に40代以降の求職者が増加傾向にあります。
■年代別の求職者数の推移(ナースセンター登録者)
参照:潜在看護職員の就業に関する報告 日本看護協会 2014年1月時点
看護師の人材不足に伴い、多くの医療機関・医療施設がブランクのある看護師向けに復職支援研修や職業紹介の実施、受け入れの強化などを積極的に行っているため、潜在看護師のうち求職者は約3割にのぼっています。
2、看護職復職支援研修
1年や2年という短期ならまだしも、ブランク期間が5年以上にもなると、それまで習得した看護技術の大半は忘れており、このような状態では患者に対して質の高い看護を提供できるわけはありません。また、看護師自身においては、復職に際して不安に感じてしまうものです。
そこで現在では、ブランクのある看護師がスムーズに復職できるよう、日本看護協会が運営する「eナースセンター」が看護職復職支援研修を積極的に実施しています。
各都道府県の看護協会(ナースセンターまたはナースバンク)にて、研修を無料で受講することができるため、復職に際して不安のある方は、必ず研修を受けておきましょう。(都道府県ナースセンター一覧)
各都道府県によって多少の違いはありますが、基本的には、①看護師資格(准看護師含む)を有している、②研修受講申込時において離職中である、③就職先が決まっていない、④ナースセンターに登録している、の4つの要件を満たしていれば誰でも研修を受けることができます。
研修の内容も各都道府県によって多少の違いはありますが、基本的には、①最新の医療に関する講義、②採血・注射・吸引など看護技術全般、③病棟体験、というように、復職に際して不安に感じやすいことを中心とした内容となっています。
研修の参加にあたっては、各都道府県のナースセンターに問い合わせ、登録を済ませておきましょう。研修はナースセンターと提携している医療機関や医療施設で行われますが、日程や募集人数などはさまざまですので、受講を希望される方は、少しでも早く就業希望の都道府県にあるナースセンターに問い合わせを行いましょう。
3、復職へ向けた自己学習について
ブランクが長い方で、看護に関する多くの知識・技術を忘れてしまったという場合には、研修を受ける前に教本などを参考に勉強しなおすことをお勧めします。およそブランク期間が3年以上となると、看護の大半を忘れているため、一から勉強しなおす必要があります。
最新の医療については研修で学ぶことができますが、手技となると研修ですべてを補うことはできません。それゆえ、入職時に慌てないためにも、しっかりと準備しておく必要があるのです。
ご自身で勉強をする場合には、まず臨床で最も重要となる「看護技術」に特化した教本を用いましょう。看護技術は日進月歩しているため、最新の看護技術が詳しく書かれている、以下のような教本を参考にすると良いでしょう。
看護技術がみえる vol.1 基礎看護技術 出版社:メディックメディア
【収録内容】
①環境整備(ベッドメーキング)、②活動援助(体位変換・移動介助)、③食事援助(食事介助・口腔ケア)、④清潔ケア(入浴/清拭・足浴/手浴・陰部洗浄・洗髪・寝衣交換・整容)、⑤排泄ケア(おむつ交換・床上排泄・ポータブルトイレ)、⑥与薬(経口与薬・直腸内与薬・吸入療法・経皮与薬・点眼/点鼻/点耳)、⑦罨法(温罨法・冷罨法)、⑧創傷管理(創および創周辺の洗浄・外用薬/ドレッシング材・褥瘡予防・包帯法) |
看護技術がみえる vol.2 臨床看護技術 出版社:メディックメディア
【収録内容】
①感染予防(手指衛生・個人防護具・洗浄/消毒/滅菌・無菌操作)、②採血(静脈血採血・血液培養検査・動脈血採血)、③注射(皮内注射・皮下注射・筋肉注射・静脈注射)、④輸液(末梢静脈路確保・点滴静脈注射・ヘパリンロック/生食ロック・輸液ポンプ/シリンジポンプ・中心静脈路確保の介助)、⑤輸血(輸血の実施)、⑥血糖管理(インスリン注射・簡易血糖測定)、⑦吸引(口腔吸引・気管吸引)、⑧酸素療法(中央配管からの酸素吸入・酸素ボンベからの酸素吸入)、⑨栄養管理(経鼻経管栄養・胃瘻からの栄養剤注入)、⑩排泄ケア(導尿・浣腸・摘便)、⑪救急蘇生法(一次救命処置(BLS)) |
精神科や透析科、オペ室など、病棟とは異なる領域への復職をお考えの方は、各領域に特化した教本を参考にしてください。
まとめ
昨今では、復職を希望する看護師が増えてきており、また多くの医療施設で復職者の受け入れを強化しています。ブランクが長くなればなるほど、習得した技術や知識は失われ、不安感も大きくなっていきますが、自己学習の後に復職支援研修を受講すれば、多くの知識・技術を取り戻すことができ、スムーズに復帰することができます。
パートやアルバイトなどの非常勤で働くという道もありますので、復職に際してどうしても不安があるという方は、勤務形態に関しても一度検討してみてはいかがでしょうか。
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします
こちらの記事もおすすめ
- 看護技術
-
GE(グリセリン浣腸)の看護|必要な物品と仕組み、看護手順のポイント
看護の基本技術である浣腸。いまさら浣腸を安全に実施するためのポイントなんて周囲に聞けない!と
- 看護技術
-
急変は、臨床看護師のほとんどが遭遇するといわれている病院内最大のアクシデントになります。急変
- 看護技術
-
無菌操作は、感染のリスクが非常に高い医療行為において必須となる手技です。一見コメディカルや家
- お役立ち
-
内臓脂肪が蓄積すると、メタボリックシンドロームになり、動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中のリ
- 看護師あるある
-
一番キレイな辞め方は寿退社だ!という結論に至るも相手がいない|看護師あるある【vol.61】
辞めたいけど、なかなか辞めさせてくれない職業。それは看護師。 わたしたち看護師は、人手不足