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洗髪の看護|ケリーパッドなどの患者に合った洗髪方法や看護手順・留意点(2017/10/01)

公開日: : 最終更新日:2020/06/23 看護技術 東京都 全科共通 

洗髪の看護

洗髪は身体清潔ケアの一つで、人間が生活していく上で必要な日常清潔ケアです。髪の毛や頭皮を洗うことを私たちは毎日当たり前のように入浴シャワー浴で行いますが、闘病中やADLの低下した高齢者等には非常に負担がかかるものでもあります。患者さんへの負担を最小限に、感染予防・清潔保持・闘病生活への意欲向上を念頭に、無理のない範囲で看護計画に組み込んでケアしていくことが必要です。

 

1、洗髪とは

洗髪とは、髪の毛や頭皮を洗うことです。清拭と同様、闘病中やADLの低下、安静が必要とされることにより清潔の保持が困難な患者さんに対して行う清潔ケアの一つです。患者さんがシャワー浴や入浴が困難な場合、ストレッチャーやベッドに横になった状態、あるいは椅子に座った状態でケアが行え、気分転換や感染予防にもなります。

 

2、洗髪の目的

身体の清潔保持には頭皮や毛髪の清潔も含まれます。体幹のみならず、頭皮・毛髪の皮脂や汗、埃などの汚れを除去し皮膚を清潔に保つことで感染や皮膚炎、湿疹などの二次感染を予防することに繋がります。また、頭皮の汚れは悪臭やかゆみを引き起こす原因となり患者さん自身も不快感を伴います。定期的な洗髪により清潔保持のみならず爽快感や気分転換を図り闘病生活への意欲を高められるよう援助していく必要があります。

 

3、洗髪の方法

洗髪にはいくつか方法があります。洗髪台を使う方法、ケリーパッドを使用する方法、病院や施設によっては洗髪車が置かれている所もあると思います。患者さんの状態やその時の気分により洗髪の方法を使い分けると良いでしょう。

 

①洗髪台

ストレッチャーや車椅子に移り洗髪台まで行って洗う方法です。準備や片付けが簡単にできるため、患者さんを待たせる時間の短縮になります。ストレッチャーで洗髪を行う場合は洗髪台とストレッチャーの高さに注意する必要があります。また、車椅子で行う場合は患者さんが前屈した状態で洗髪を行うため、洗髪中の患者さんの呼吸状態に注意する必要があります。適宜声がけをしながら行うことで異常の早期発見ができます。

 

②ケリーパッド

ケリーパッドは空気を入れて使う洗髪用のパッドです。ベッド上で行うことができるため、安静が必要な患者さんに最適です。事前にお湯やタオル、ラバーシーツなどを準備しておきます。ベッド上で行うため、ベッドシーツや衣類が濡れてしまうと更衣やシーツ交換が必要となり患者さんに負担がかかるため、濡れない工夫をしていくことが大切です。

 

③洗髪車

洗髪に必要な物品がまとめられているため、患者さんが移動する必要がなく、寝たままでも車椅子に座ってでもできます。ベッドに寝たままで行う場合は、受水器の高さがベッドと同じになるように調節しましょう。受水器の頭部支持部にタオルを当てるなどして後頭部が痛くならないよう配慮します。

 

④その他の方法

オムツやビニール袋を使って洗髪することもできます。ケリーパッドがない場合は患者さんの頭が入るくらいのビニール袋と幅の広いパットやオムツで代用すると良いでしょう。オムツを使用することに抵抗感を感じる患者さんもいるかもしれませんので同意を得て行うようにします。また、薬局などで見かけるドライシャンプーを使用するのも一つの方法です。前もって蒸しタオルを頭に巻いて頭皮を温めておくと汚れが落ちやすくなります。ドライシャンプーをした後にも暖かいタオルでしっかりと拭き取ることが大切です。

 

4、洗髪の手順

基本的な手順はどの方法も同じですが、患者さんの体制や必要物品の一部は多少変わってくるため、各方法に合わせて行いましょう。

 

4−1、準備する物品

・タオル:バスタオル・フェイスタオル(必要に応じて首に巻く用、目隠し用など数枚)

・シャンプー・トリートメント、ドライシャンプー

・お湯:シャンプーやトリートメントをしっかり落とせる十分なお湯を準備する(ドライシャンプーの場合は蒸しタオルを準備する)

・ラバーシーツ・洗髪用のケープ

・ドライヤー

・ヘアブラシ

・耳栓(必要時)

 

4−2、手順

1.患者さんの状態を確認し、目的・方法を説明して了承を得る

2.衣類が濡れないよう洗髪用のケープやタオルを首に巻く。

ベッドシーツにも濡れないようラバーシーツをひいておく(ベッド上で洗髪する場合)

3.頭部側のベッド柵を外し患者さんの位置を調節、または対角線上に体を移動する

4.フェイスタオルを顔または目の上に乗せる

5.お湯の温度が患者さんにとって適温か確認しながら髪の毛、頭皮にお湯を浸透させる

6.シャンプーをする

7.洗い残しや痒いところなどがないか確認したらお湯で十分にすすぐ

8.トリートメントをし、十分にすすぐ

8.タオルで水分を吸い取ったら、頭部が冷えないようタオルを巻く

9.首元のタオル、ケープを外す

10.ドライヤーでしっかり乾燥させる

11.くしを通して髪の毛を整える

12.衣服・体位を整える(車椅子やストレッチャーで行なった場合は患者をベッドへ移し体制を整える、または介助する)

13.後片付けをする

引用元:頭・髪の清潔保持

 

5、洗髪時の留意点

患者さんに洗髪を行う際、以下の点に留意して行いましょう。また、洗髪前後や洗髪中に患者さんの状態に変化があった時、速やかに対処できるようにしておく必要があります。

①患者状態(バイタルサイン、病状経過、洗髪時の体調・気分など)

②洗髪に耐えられる時間はどのくらいか

③患者自身で洗える部分があるかどうかのアセスメント、ADLの評価

④清潔ケア習慣(ケアの頻度や患者の希望など)

⑤洗髪時間中にとっていられる体位

⑥ケリーパッドや洗髪車、ストレッチャーで洗髪台を使用する場合は頭部ができるだけ安定するよう、頭部支持用のベルトの位置や頸部の位置を調整する

⑦お湯の温度は40〜41℃位が良いとされていますが、患者さんの好みに合わせて調節する(準備するときは湯が冷めるので適温より少し高めの温度で用意する)

⑧生え際や後頭部は石鹸が残りやすいのでしっかりすすぐようにする(皮膚トラブの原因となり得る)

⑨排水ホースをしっかり取り付ける

 

引用元:Personal Hygiene  引用元:0-089-01 ケリーパット 【AXEL】 アズワン

 

6、看護計画

目標:皮膚疾患や感染予防ができ、頭皮を刺激して血行を促進し患者に爽快感を与えることができる

 

OP
1.バイタルサイン

2.頭皮の異常の有無(発赤・傷・掻痒感

3.ADLの確認

4.疲労感

5.訴え・表情

6.疼痛の増強の有無

7.清潔ケア全体に関する習慣や患者さん本人の希望

 

TP

1.洗髪中に気分不快などの訴えがあった場合は中止しバイタルサイン、症状の確認を行う

2.患者に異常がないか声をかけながら行う

3.点滴ルートやドレーンなどが入っている場合には誤抜去に注意して患者の体制を整える

4.自分で洗える・洗える箇所がある場合は必要な部分を援助しながら洗髪を行う

5.患者の疲労度を評価する

 

EP

1.洗髪の必要性や目的を説明する

2.洗髪中の気分不快やこうして欲しいという希望があれば遠慮せず言ってもらうよう伝える

3.前屈位で洗髪した場合は、洗髪が終了したらゆっくり頭をあげるよう声をかける (起立性低血圧を起こす可能性があるため)

 

まとめ

頭部は衣類を着用していないため、外部からの埃がつきやすく、皮脂腺も多いことから非常に汚れやすい部位です。清潔ケア習慣は、QOLの向上にもつながり、患者さんが闘病生活を送る上でも大切なケアの一つではあります。しかし、洗髪はエネルギー消費が多く負担もかかります。患者さんの状態をアセスメント・評価しながら適切な洗髪の方法を選択し、気分転換や闘病意欲の 向上につながるよう援助して行く必要があります。

 

参考文献

洗髪技術のエビデンスに関する研究 (福岡県立大学看護学研究6巻(1) 35-39|中野榮子 他|2008年)

臥床患者の洗髪用具に関する調査研究(大阪信愛女学院短期大学紀要47巻 11-20|江頭典江 他|2013年)

洗髪による頭皮の ATP値と皮脂量の変化(大阪府立大学看護学部紀要20巻1号|横山友子 他|2014年)

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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