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採血の看護|採血の方法とコツ、内出血しないポイント(2017/01/24)

公開日: : 最終更新日:2018/01/18 看護技術 東京都 全科共通 

採血の看護

採血は看護師の基本となる看護技術ですが、どうしても苦手という人も多いと思います。採血が苦手だと、患者さんに苦痛を与えることになりますので、苦手意識を克服しなければいけません。

採血の血管の部位や血管の選び方、採血の方法とコツ、内出血しないポイントをまとめました。採血が苦手な看護師さんは、ぜひ参考にしてください。

 

1、採血をする血管の部位と選び方

採血を成功させるためには、どの血管で採血するのかがとても重要になります。採血をする部位は、基本的に前腕屈側の肘正中皮静脈が第一選択になります。

1、採血をする血管の部位と選び方

引用:採血時、末梢静脈ルート確保時の末梢神経損傷‐北海道訪問看護ステーション連絡協議会

もし、肘正中皮静脈が全く見えない、駆血帯をしても浮き出てこないという場合は、前腕の橈側皮静脈や前腕尺側皮静脈、前腕皮静脈などを選択します。

それでも、採血に適した血管が見つからない時は、手背の静脈や足背の静脈を選択することになります。

採血を成功させやすい血管を選ぶコツは、青紫色の血管が見えているかどうかではありません。太くて弾力性があるかどうかが、血管を選ぶ時の最大のポイントになります。

青紫色に浮き出ている静脈は皮膚表面の静脈で刺しやすいものの、弾力性があるとは限りません。弾力性がない血管は、刺そうとしてもすぐに逃げてしまって、採血を失敗しやすいのです。

駆血帯をしていると、深いところに位置する血管が浮き出てきます。その血管を触ってみて、プリッと弾力性があるのであれば、たとえ青紫色に見えていなくても、採血に適した血管ということになります。

採血をする時は、静脈が見えているかどうかで選ぶのではなく、太くて弾力性があるかどうかで選びましょう。

 

2、採血の看護技術・方法

採血の方法・手順を確認していきましょう。

 

①必要物品を準備する

まずは、採血に必要な物品を用意しましょう。

<採血の必要物品>

・シリンジ

・21~23Gの採血針

・ディスポーサプル手袋

・アルコール綿

・駆血帯

・肘枕

・採血管

・針捨て容器

・止血のためのテープやバンド

真空管採血の時は、シリンジの代わりに真空管ホルダーと真空管採血用の針を用意します。また、アルコール綿で皮膚がかぶれる患者さんには、イソジンやヒビテンなどの代わりの消毒用品を用意しましょう。

失敗した時のことを考えて、予備の針を1~2本用意しておくと安心です。

 

②患者に説明して、体位を整える

必要物品を持って患者のベッドサイドに行ったら、患者に採血の必要性を説明し、同意を得ます。また、患者にフルネームを名乗ってもらって、検査伝票や採血管に貼られたシールと合っているかを確認しましょう。

その後、仰臥位または座位を取ってもらって、肘枕の位置やテーブルの高さ等を調整して、採血しやすい状態にします。

 

③採血準備をする

シリンジに針を清潔操作で装着し、トレーの上で必要物品をすぐに使える状態にしておきましょう。

この時点できちんと準備をしていないと、真空管採血で採血管をスムーズに装着できない、抜針後にすぐに止血ができないという事態になってしまいます。

必要物品を適切な位置に配置しておくことは、とても重要なことですので、採血をする前には、必ず準備しておきましょう。

 

④血管を選択する

次に、採血する血管を選択します。採血する血管の選び方は先ほど説明したように、肘正中皮静脈が第一選択になります。

ただ、次のような部位はたとえ弾力のある血管が見つかったとしても、避けなければいけません。

・麻痺側

シャントがある

点滴をしている側

疼痛部位

麻痺側では神経障害を確認できません。また、シャントがある部位はシャントを潰す可能性があります。

点滴をしている腕で採血をすると、採血した血液に点滴の成分が混ざって、正しい採決結果が得られません。また、疼痛部位から採血すると、疼痛を増強させる可能性があります。

血管を選択する時は、焦らずにじっくり左右の腕を観察しましょう。

 

⑤駆血帯をする

採血する血管を決めたら、駆血帯を巻きます。採血する部位よりも7~10cmくらい中枢側に駆血帯を巻きましょう。

駆血帯は患者に窮屈な感じは与えるものの、疼痛を与えるものではありませんが、1分以上経つと血液の性状が変性する可能性があるため、1分以内に採血を終わらせるようにしてください。

 

⑥消毒する

アルコール綿で、採血する部分を中心に縁を外側に描くようにして消毒をします。この時に、採血部位を伸展して、消毒しましょう。また、きちんと乾くまで採血するのは待ってください。

乾かないまま採血すると、きちんと消毒効果が得られませんし、溶血する可能性もあります。

 

⑦穿刺する

消毒が乾いたら、いよいよ穿刺します。穿刺部位が動かないように安定させてから、血管が逃げないように、穿刺部位の少し下の皮膚を手前に軽く引いておきます。

そして、穿刺予定部位の1cm手前から、皮膚と採血の針の角度を15~20℃に保ちながら穿刺しましょう。穿刺したら、2~3mmほどさらに針先を進めます。

穿刺する時は、迷わずに一気に行きましょう。「大丈夫かな?」、「この部位で良いかな?」と迷いながら穿刺すると、針先がぶれてしまって、患者に苦痛を与えることになります。この部位に穿刺すると決めたら、迷わず一気に刺してください。

穿刺したら、しびれなどがないかを必ず確認しましょう。もし、しびれや電撃痛があったら、神経を傷つけている可能性がありますので、すぐに抜針してください。

 

⑧採血をする

針を穿刺したら、その部位を動かさないようにして、シリンジを引いて、必要量を採血します。真空管採血の時は、採血管をまっすぐ完全に差し込んで、採血をしましょう。

翼状針を使えば、刺した時点で逆血がありますので、血管内に入っているかどうかがすぐに分かりますが、直針の場合はシリンジを引く、または採血管を差し込まないと、血管内に入っているかは確認できません。

 

⑨駆血帯を外す

必要量を採血したら、針が動かないように注意しながら、駆血帯を外します。

 

⑩抜針して止血する

駆血帯を外したら、抜針して、穿刺部をアルコール綿で押さえて止血します。意識のある患者なら、患者本人にしっかり押さえておいてもらうように指導して、看護師は針捨て容器に安全に針を捨てて、片付けをします。

アルコール綿をテープ等で止めて、5分ほど圧迫してもらうように伝えて、採血終了です。意識がない患者には、止血バンドを使うと良いでしょう。

 

3、採血のコツや内出血しないポイント

採血を成功させられるかどうかは、採血に適した血管を見つけられるかどうかにかかっています。でも、どうやってもなかなか血管が出てこない、駆血帯を巻いてから探しても、なかなか良い血管が見つからないということもあると思います。

そういう時の良い血管の見つけ方のコツ、血管の出し方のコツを確認しておきましょう。

 

■腕をダランと下げてもらう

採血に適した血管が見当たらない時は、腕をダラン下に下げてもらいましょう。心臓よりも下にすることで、腕に血液が集まりやすくなりますので、血管の怒張を促すことができます。

 

■親指を中にして握ってもらう

親指を中にして握ってもらうと、腕の筋肉が収縮して、血管が怒張しやすくなります。

手をグーパーグーパーと握ったり開いたりしてもらうことで、静脈血が腕に停滞しやすくなりますが、これはクレンチングといって筋肉のカリウムが流出して検査結果のカリウム値に影響が出ることがありますので、おすすめはできません。

 

■腕を温める

肘正中皮静脈付近を蒸しタオル等で温めると、血管が拡張して、見えやすくなることがあります。

 

■駆血帯をきつく締めすぎない

血管が見えないからといって、駆血帯をあまりきつく締めてしまうと、動脈まで締めてしまって、血流を悪くしてしまい、さらに血管が見えにくくなります。そのため、駆血帯は橈骨動脈が触れる程度のきつさで締めるようにしてください。

 

■焦らない

血管が見つからないと、焦ってしまいますが、焦っても血管は見つかりません。そのため、じっくりと両腕の血管を探してみてください。

 

■患者さんに聞いてみる

良い血管が見つからない時は、患者さんに「いつもどの部位で採血していますか?」と聞いてしまいましょう。血管が見つからない患者さんは、いつも採血で失敗されているので、「この血管なら取りやすい」という部位を把握していることが多いのです。

何度も失敗して、変な脂汗をかいて「すみません」と謝りながら採血するなら、患者さんに採血しやすい血管はどこかを聞いて見ると良いでしょう。

 

■叩くのはエビデンスがありませんが…

血管が見つからない時は、肘正中皮静脈の部位を指で軽くパンパンと叩くと血管が浮き出てくるのは、看護師の間で有名な方法です。ただ、これはエビデンスがないのです。

でも、実際に軽くたたくと血管がプリッと浮き出てくることが多く、看護師の間では先輩から後輩へと受け継がれているものです。

叩いてはいけないというエビデンスもないので、患者さんに痛みを与えない程度の強さで叩くのはOKだと思います。

 

3-1、採血で内出血をしないポイント

採血の時に内出血をしないポイントは、針先を動かさないこと、しっかり止血をすることです。

 

①針先を動かさない

採血の時には、針は動かさないようにしましょう。穿刺しても逆血がない場合、またはイマイチ血液が引けない場合は、針を刺した状態で針先を動かして血管を探す人がいますが、血管を傷つけてしまって、内出血を起こすことがあります。

また、シリンジ採血で内筒を引く時、真空管採血を差し込むときにも針先が動きやすいので、きちんと固定して注意しなければいけません。

 

②患者さんにはしっかり説明

抜針後は、患者さんにきちんと止血をするように説明してください。「5分間は揉まずにグッと押さえてください」と説明しないと、30秒程度で止血を止める人も多いですし、採血部位を揉んでしまう人も多いんです。

そのため、5分間は止血すること、揉まずに指でグッと圧迫しながら押さえることをきちんと説明しましょう。

 

③出血傾向がある人は止血バンドを

検査データで出血傾向がある人は、採血後に内出血しやすいので、止血バンドを使って、しっかり圧迫止血をしましょう。

止血バンドを使うと、看護師にとっても患者さんにとっても自分で止血するという必要がなく、しっかりと圧迫止血をすることができますので、内出血を予防できます。

意識がない患者さんにも止血バンドを使うと良いでしょう。

 

まとめ

採血は看護師としての基本技術の1つですが、難しく奥深いものです。また、患者さんに苦痛を与えるものですので、失敗をできるだけ少なくするように、準備とイメージトレーニングをしっかり行ってから、採血をするようにしましょう。

採血が成功するかどうかは、採血に適した血管を見つけられるかどうかと「絶対に成功させる」という強い意志が大きな割合を占めますので、血管を見つけるコツはもう一度復習しておきましょう。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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