気管支鏡検査(ブロンコ)|合併症など検査後の観察・看護(2016/04/04)
気管支鏡検査(ブランコ)は、比較的に安全な検査であるものの、合併症がないわけではありません。また、軽度な合併症でも観察を怠れば、重篤化することもありますので、検査中・検査後には入念な観察が必要不可欠です。
気管支鏡検査の看護では、合併症の予防・早期発見が軸となりますので、以下に説明する事項をしっかり念頭に置き、よりよい看護を実践していってください。
1、気管支鏡検査とは
気管支鏡検査(ブランコ)とは、咽頭・喉頭、声帯、気管支の病気を診断するための検査のことであり、口や鼻からファイバースコープを挿入して病変のある(または可能性のある)部分を直視下で観察したり、鉗子を用いて組織の採取やブラシを用いての細胞診などを行います。
気管支鏡検査が適応となるのは、気管支から肺にかけて何かしらの疾患を有する兆候がある場合で、主に以下のような症状がある時に施行されます。
■気管支鏡検査の適応症状
また、以下のように、「気道異物」「吸引・洗浄」「癌治療」「気道出血時」「難治性気胸・気管支婁」などの治療にも施行されることがあります。
■気管支鏡検査の治療
2、気管支鏡検査の合併症
気管支鏡検査は手技だけで10分程度、前後の麻酔・安静を含めると30分程度で終わる容易な検査ですが、「出血」「気胸」「発熱・肺炎」「アレルギーショック」などの合併症が起こることもあり、全体的には約0.2%~0.5%の確率で発生します。
①気管支・肺からの出血
細胞や組織の採取時には少なからず出血が伴いますが、稀に出血量が多く、止血剤の注入バルーンによる圧迫止血が必要となることがあります。
②気胸
組織採取時に肺を包む胸膜に傷がつき、そこから空気が漏れることがあります。気胸が発生しても通常は2~3日の安静のみで軽快しますが、肺気腫が合併している場合には空気の漏れが多いことがあり、胸腔ドレナージが必要となることがあります。
③発熱・肺炎
検査後に稀に発熱・肺炎を起こすことがあります。ほとんどは一時的なものですが、状況に応じて抗菌薬の投与を行うことがあります。
④麻酔によるアレルギーショック
局所麻酔に使用するリドカインに対するアレルギーショックや、過量による中毒症状(不安・興奮・不整脈など)を呈することがあります。アレルギーショックに対しては検査の中止と薬物の投与を行い、中毒症状に対しては概ね経過観察を行います。
⑤その他
頻度は少ないものの、喘息・呼吸不全・心筋梗塞・気管支閉塞・気管支穿孔などの合併症が起こることがあり、予期しない偶発症の発生による死亡例も報告されています。
3、気管支鏡検査後の看護
気管支鏡検査は簡易な手技ですが、上述のように合併症の発症率は比較的高いため、術後の綿密な観察は必要不可欠です。また、安静保持や飲食制限を怠ると、それに伴う二次的合併症を発症することがありますので、指導・管理を行ってください。
①バイタルサイン測定
バイタルサインを測定、一般状態を観察します。検査前と比べて何かしらの異常がある際には注意深く観察を行ってください。
②合併症の有無の確認
検査中に出血・気胸・麻酔によるアレルギーショックなどの合併症が発生していれば、血痰の有無や呼吸音などを注意深く観察し、症状が増悪するようなら担当医に報告してください。また、検査後に発熱・肺炎徴候・咽頭痛・呼吸困難などの症状を呈していれば同様に注意深く観察し、症状が増悪するようなら担当に報告してください。
③安静保持
局所麻酔は検査後も効いており、体が正常に動かない(フラフラするなど)ことによる転倒の危険性があります。麻酔が完全に抜けるまで安静にする旨を指導してください。
④飲食物の摂取制限
飲食物の刺激による炎症や出血、麻酔による咳やむせなどが起こることがあります。検査後2時間程度は飲食物の摂取を控えるよう指導してください。また、処方される抗生剤や止血剤の服薬指導も同時に行ってください。これらは患者自身が積極的に行う(遵守する)必要がありますので、アドヒアランス向上に向けて取り組んでください。
まとめ
気管支鏡検査は内視鏡検査などその他の検査と比べて患者の侵襲は決して軽微なものではありません。また、気管支や肺の粘膜は薄く弱く、合併症の発症率もそれほど低いわけではありません。
起こりうる全ての合併症は経過観察で軽快しますが、場合によっては重篤化し死亡するケースもありますので、術後は注意深く患者の状態を観察し、少しでも違和感や異常がある場合には医師に報告し指示を仰いでください。
京都府出身、大阪府在住。大阪府内の一般病院で呼吸器科に8年間就業の後、現在はフリーの看護師として、さまざまな医療現場で働きながら、看護分野に関する取材や執筆活動を精力的に行っている。座右の銘は「健康第一」。過酷な看護業務に耐えうるため、また患者に対する献身的な看護を実施するため、自身の健康も必要と考え、2012年からマラソンを始める。現在では各地のイベントや大会に参加するなど、活躍の場は看護のみにとどまらない。
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