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黄疸症状を呈する成人および新生児患者の看護とケアにおける注意点(2016/11/21)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護計画 愛知県 内科 外科 消化器科 小児科 

黄疸

皮膚全体や白目の部分が黄色っぽくなったり、尿の色が濃くなったりする症状が現れると、黄疸が疑われます。黄色人種である日本人では、皮膚の色を見るだけで黄疸があるかどうかを判断するのは難しいので、通常は白目の部分で判断します。

黄疸といっても、体質的なものでは他に症状がほとんど見られず、特に治療の必要はありません。また、生後2、3日で発症する通常の新生児黄疸は、1週間ほどで症状が消えるため、やはり治療の必要はありません。

しかし病的なものの場合は様々な症状を伴い、重篤な病気の兆候である可能性が大きいため、即刻治療が必要となります。ここでは黄疸の原因や症状、黄疸患者さんの治療や看護ケアについてご説明します。

 

1、黄疸とは

寿命を終えて破壊される赤血球中のヘモグロビンは、一部が再びヘモグロビンとなりますが、残りはビリルビンという物質に変えられ、肝臓で胆汁の主成分となって排泄されます。排泄に異常が生じて血液中のビリルビンが増加し、皮膚などがビリルビンの黄色に染まったり、尿の色が濃くなったりする状態を黄疸と呼びます。

黄疸は、内科的治療が中心の「内科的黄疸」と、外科的処置が必要な「外科的黄疸」に大きく分類されます。「内科的黄疸」の原因には、体質性・溶血性黄疸、急性・慢性肝炎や代謝性肝硬変の他、甲状腺機能低下、慢性心不全などが挙げられます。「外科的黄疸」は閉塞性黄疸と呼ばれ、胆管や胆嚢の結石、胆道狭窄、胆管腫瘍や種々の癌などから胆管系が閉塞や狭窄して起きます。

 

2、黄疸患者の看護ケア

黄疸には倦怠感や疲労感・悪心・嘔吐・発熱・掻痒感など、辛く苦しい症状が出るので、患者さんの不安を取り除き、苦痛を和らげる事が大切です。

また、黄疸には様々な原因があるため、医師の指示に従った計画的なケアが必要です。特に手術が必要な患者さんは、術前・術後共にできるだけ快適に過ごせるようにしてあげてください。

 

基本的な看護ケア

1.   肝臓の血流を良くして肝細胞の再生を助けるために、安静が必要である事を説明します。

2.   肝細胞の再生にはバランスの取れた食事が必要なため、食事療法や嗜好品の制限について説明します。

3.   手術が必要な場合は、医師の説明に加えて患者さんが納得するまで説明し、患者さんの不安を軽減してあげます。

4.   施術時に胆管にドレーンを挿入する間、肝臓を損傷しないよう呼吸を止める必要があるので、10~15秒間呼吸を止める練習をさせます。

5.   溜まったビリルビンの排泄には、便秘が大敵です。特に安静にしていると便秘になりやすいので、便通調整の必要性と方法を説明し、安静保持のため床上での排泄を訓練します。

 

2-1、黄疸による搔痒感のケア

黄疸の患者さんの多くは、掻痒感を訴えます。皮膚の下から痒くなるような耐えがたいかゆみは、ビリルビンが皮膚や白目に沈着し、その毒素が末梢神経を刺激して起きます。現在は有効な薬が無いと言えるので、掻痒感を抑える対処が必要です。

・    体をぬるま湯などで絞ったタオルで優しく拭いてあげてください。口腔や鼻腔などの粘膜なども、清潔に保ちます。

・    重曹を水に対して2%に薄めてタオルに含ませ、よく絞って体を拭いてあげると、重曹のアルカリ性成分がかゆみを抑えます。

・    皮膚の乾燥はヨモギ・ローション、または0.5%メントールと0.25%フェノールを含むローションなどを使用して保湿します。

 

3、黄疸の治療

黄疸には、治療の必要の無いものから、早急に手術が必要なものまで、原因によって様々なものがあります。

 

■内科的黄疸

体質性黄疸は、遺伝的影響によるビリルビンの増加が原因ですが、日常生活に支障をきたさないので、特に治療の必要はありません。但し新生児のクリグラー・ナジャール症候群は要注意です。

溶血性黄疸は、肝臓で処理しきれなくなったり、薬剤や敗血症などから肝臓に取り込めなくなったビリルビンが血中にあふれている状態なので、免疫グロブリンやアルブミンの投与や、光線療法(後述)が行われます。薬剤の副作用の場合は、即刻薬剤服用を中断し、感染症による場合は抗生剤を投与します。

急性・慢性肝炎、代謝性肝硬変、甲状腺機能低下、慢性心不全などは、通常入院して安静にし、内科的処置を施します。

 

外科的黄疸(閉塞性黄疸)

閉塞性黄疸は肝臓や腎臓障害などの合併症を併発したり、重症胆管炎へ移行する場合もあるため、黄疸の早急な改善が必要で、胆汁を体外に出すためにドレナージを行います。

内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBDまたはPTCD)、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(胆管チューブステント留置‐ERBD)などの方法がありますが、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ以外は体外に排泄された胆汁を溜める袋が装着されます。

外科的黄疸(閉塞性黄疸)

出典:胆のう・膵臓疾患の内科的治療 市立貝塚病院

 

3-1、ドレナージ術後のケア

術中・術後に起きる合併症の種類が多く、発症率も高いため、患者さんのバイタルサインを細かく観察し、異変を早期に察知して対処する必要があります。

1.   術中・術後の合併症とそのケアの詳細については、「PTCDの手技と合併症、看護における管理・観察項目」をご覧ください。

2.   患者さんが安静を保つようにし、安定期に入っても気を抜かずに注意深く観察してください。患者さんの精神的ストレスの緩和も大切です。

3.   廃液を観察する事で、合併症の発症やドレナージ不良などの情報を得られます。

 

≪廃液観察の目安≫

  正常時 異常時 原因
黄褐色 緑色 胆管炎、感染胆汁、逆行感染など
血性 胆道系腫瘍からの出血、損傷など
350~850ml/日 過多 ドレーン挿入直後、鬱滞した胆汁の急激な排出、腸液の混入など
過少 ドレナージ不良(チューブ逸脱・閉塞・屈曲)、胆汁生成機能低下など
性状 やや粘稠性 砂混じり 結石粉砕後など
膿性 腫瘍、胆管炎(膿性)など

 

4、新生児における黄疸

新生児の皮膚や白目が黄色くなるのは、ごく普通のことですが、新生児黄疸の中には治療が必要なものもあるため、注意が必要です。

 

生理的な黄疸

新生児は酸素を取り込む量が少なく、これを補う為に大量の赤血球が作り出されます。肺機能が整い始めて酸素供給が効率化されると余分な赤血球が破壊され、ヘモグロビンがビリルビンに変化します。肝機能が未熟な新生児ではビリルビンの排泄が追い付かず、ビリルビン値が一時的に上昇して黄疸の症状を呈します。新生児の約9割は生後2、3日からを発症し、10日後頃に落ち着きます。

 

■母乳性黄疸

母乳だけを飲んでいる場合、母乳中の脂肪酸がビリルビンの分解酵素の働きを抑制して、通常よりも黄疸が長引く事があります。生後3週間から1ヶ月以上続く場合がありますが、特に治療の必要はありません。

 

■新生児溶血性黄疸

母子の血液型が異なると、赤ちゃんの赤血球に対する抗体が母体内で発生し、赤血球を分解してビリルビンが増加します。生後すぐから黄疸がある場合や貧血状態になっている場合には、この新生児溶血性黄疸の可能性があり、治療が必要です。

 

■胆道閉鎖症からの黄疸症状

胆道が閉鎖し、胆汁がうまく十二指腸へ流れず黄疸が進行する病気で、治療が必要です。生理的な黄疸が落ち着く生後10日頃を過ぎても黄疸の症状がある場合は、血液検査や腹部エコーで検査を行います。

 

■核黄疸

黄疸が強い場合、ビリルビンが脳に沈着し核黄疸を引き起こす可能性があります。中枢神経に異常をきたすため、生後3、4日頃からぐったりしたり、母乳やミルクの飲みが悪かったりなどの症状が現れます。

核黄疸になると治療は困難であるため、予防が大切です。脳に障害が起こったり生死に関わる場合があるので、血液中のビリルビン値をこまめに測定すると同時に、赤ちゃんの状態を良く観察する事が重要です。

 

非常にまれですが、クリグラー・ナジャール症候群では、ビリルビンを毒性の少ないものに変換する酵素の活性が低下し、生後まもなくから黄疸が長引きます。活性がゼロの場合には特別の注意が必要です。通常光線療法が行われますが、 必要な場合は肝移植を行います。

 

4-1、新生児黄疸の治療

新生児黄疸に対しては現在、光線療法で治療を行うのが一般的となっています。そのほか、重度の黄疸(高ビリルビン血症)を呈する新生児に対しては、交換輸血を行うこともあります。

 

■光線療法

特別な光線を当てる事で、ビリルビンを水に溶けやすい状態にして排泄を容易にします。裸にした赤ちゃんに目の保護のためのアイマスクを着け、光線が出る保育器の中に寝かせます。基本的に24時間継続します。血液中のビリルビンの数値が下がったら終了ですが、下がらない場合でも何度か繰り返すと下がっていきます。検査結果で数値が下がっても、定期的に様子を見る必要があります。

 

■交換輸血

赤ちゃんの血液中のビリルビン値が非常に高かったり急激に値が上昇したりして、早く値を下げる必要があると判断された場合は、交換輸血を行います。

 

まとめ

黄疸は重篤な病気の兆候であったり、新生児の場合には命に係わったりしますので、異常の早期発見が重要です。入院中は注意深く観察するのは勿論ですが、合併症の予防のためと患者さんができるだけ気持ち良く過ごせるように、体位や体動の制限を指導したり、患者さんの精神的不安を取り除くよう努める事も大切です。また、退院後の在宅療養期間の過ごし方なども援助し、患者のQOLの向上に努めてください。

豊田仁美 看護師

愛知県名古屋市在住、看護師歴5年。愛知県内の総合病院(消化器外科)で日勤常勤として勤務する傍ら、ライター・ブロガーとしても活動中。写真を撮ることが趣味で、その腕前からアマチュア写真家としても活躍している。

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