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看護必要度の評価基準(A・B項目)の解説、指摘される問題点(2016/01/27)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

看護必要度

看護職員の確保や提供する看護サービス料の増大を図るために開発・導入された「看護必要度」。現状では確立されておらず、多くの点で追加・修正・削除が行われています。

未だ多くの問題を抱えている看護必要度の評価ですが、適切な評価基準を設ければ、患者に対する看護の質向上のためのツールとなるでしょう。

また、すべての病院において看護必要度が導入されているため、すべての看護職員がしっかり把握しておく必要があります。看護必要度の知識を深めたいという方は、当記事を最後までしっかりお読みいただき、知識習得にお役立てください。

 

1、看護必要度とは

看護必要度とは、「入院患者に提供されるべき看護の必要量」のことを指し、看護サービスの質と量を表す基準として1996年に開発されました。

看護師の不足により、1人あたりの患者に対する看護の質の低下が懸念され、看護師1人あたりの患者数が多くなればなるほど必然的に各患者に対する看護の質は低下していきます。

そこで、厚生労働省は看護師1人あたり7人の患者を受け持つ体制を推奨し、その過程で患者の重症度や看護の必要量を評価することで、適切な人員確保を目的に「看護必要度」の導入に至ったのです。

 

2、看護必要度に係る評価

看護必要度を測るために用いられる評価基準(得点形式)はA項目・B項目から成り、患者の重症度を基準とします。A項目は「モニタリングおよび処置」、B項目は「患者の状態」で、処置や患者のADLを基に0点~2点と採点し、得点が高ければ高いほど患者に対する「看護必要度」が高く、診療報酬が多くなり、看護師など医療従事者の人員を多く配置することができます。また、人員を多く配置することで、患者に対する看護の質向上を図ることができるのです。

 

A項目(一般病棟)

モニタリング

および処置

定義 0点 1点 2点
創傷処置 創傷・褥瘡における処置があり、看護師など医療従事者が医師の介助をした場合、または自ら処置を施した場合、かつ記録があるか。 なし あり
呼吸ケア 人工呼吸器管理(気道内吸引、酸素吸引、口腔内吸引)、痰排出のための体位ドレナージ、スクウィージングのいずれかを実施し、その記録があるか。 なし あり
点滴ライン

(同時3本以上)

点滴ライン(ボトル、バッグ、シリンジバッグなどから抹消静脈、中心静脈、動静脈シャント、動脈、硬膜外、皮下への点滴、輸血、血液製剤の流入経路、持続注入による薬剤)を同時に3本以上、持続的に使用した場合、かつその記録があるか。 なし あり
心電図モニター 持続的に心電図のモニタリングを実施した場合、かつ記録があるか。 なし あり
シリンジポンプの使用 静脈注射、輸血、輸液、血液製剤に際してシリンジポンプを使用している場合、かつ記録があるか。 なし あり
輸血・血液製剤の使用 輸液(全血・新鮮凍結血漿・濃厚赤血球など)や血液製剤(アルブミン製剤など)の投与を実施した場合、かつ記録があるか。 なし あり
専門的な治療・処置 ①抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、②抗悪性腫瘍剤の内服の管理、③麻薬注射剤の使用、④麻薬の内服・貼付、⑤放射線治療、⑥免疫抑制剤の管理、⑦気圧剤の使用(注射剤のみ)、⑧抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、⑨抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用、⑩ドレナージの管理、のいずれかを実施し、かつ記録があるか。 なし あり

 

■B項目(一般病棟)

患者の状態 定義 0点 1点 2点
寝返り 寝返りを自分でできるか、あるいはベッド付属品(ひも、ベッド柵、彩度レールなど)に掴まればできるか。 何かに掴まれば可 不可
起き上がり 自分で起き上がりができるか、あるいはベッド付属品(ひも、ベッド柵、彩度レールなど)に掴まればできるか。 不可
座位保持 上半身を起こして座位の状態を保持することができるか。 支えがあれば可 不可
移乗 自分でベッドから車椅子・ストレッチャー・ポータブルトイレなどへ乗り移ることができるか。 見守り・一部介助が必要 不可
口腔清潔 口腔ケアにおいて一連の行為を自分でできるか、あるいは看護師の見守り・介助を必要とするか。 不可
食事摂取 朝食・昼食・夕食・補食(経管・経口栄養を含む)などにおいて、自力摂取ができるか、あるいは介助を必要とするか。 介助なし 一部介助 全介助
衣服の着脱 パジャマ(上衣)、寝衣、ズボン、パンツ、オムツなど、衣類の着脱に際して介助を必要とするか。 介助なし 一部介助 全介助

 

3、看護必要度の問題

このように、看護必要度は患者の重症度をもとに得点化され、重症度に見合った人員確保(看護の質向上)を目的として導入されていますが、数々の問題点が指摘され、看護必要度の“必要性”は未だ議論の渦中にあります。以下に指摘されている3つの問題点についてご説明します。

 

■正確に反映できるわけではない

現在の看護必要度は計14項目から測定していますが、高齢者の増加や安全対策の強化など、現場の医療環境が大きく変化していることで、看護必要度の測定項目にはない重症度の高いケアが生まれてきています。

また、特殊な薬剤・機器の管理などの業務も評価に反映されていないため、現状においては看護必要度と“看護量”は比例していなく、患者の重症度からくる看護の必要度を正確に測ることが困難なのです。それゆえ、追加すべき評価項目や修正すべき評価項目、はたまた削除すべき評価項目についての検討が現在進行形で行われています。

 

■記録に際する労働時間の増加

看護師など医療従事者の業務は多岐に渡り、残業を強いられることも少なくありません。それに加え、看護必要度を測るために作成する評価シートへの記載にあたって、各項目の記録を残す必要があります。この作業は業務の負担となり、結果的に医療従事者の労働時間を増加させてしまっているのです。

看護必要度は患者に対する看護職員の適切な人員確保を目的として導入されているのにも関わらず、結果的に業務時間・残業時間の増加に伴う離職率の増加で、総体的な人員確保がさらに難しくなっているのも事実なのです。

 

■経営の視点から適切な処置が行われない

看護必要度が高ければ高いほど、つまり患者の重症度が高ければ高いほど診療報酬が増加します。病院は1つの会社として捉えることができ、経営のために収益性を考慮しなければいけません。

診療報酬が高いほど収益を得られることができることで、不必要な医療機器の使用など評価点数を無理やり上げる行為が横行することが懸念されます。これにより、患者が適切な看護を受けられない状況を生み出し、さらに患者にとって負担となり得るのです。

 

4、今後の動向

看護必要度の基準となる各項目は未だ適切ではなく、患者が求める最適な看護量に結びついていません。それに伴い、追加・修正・削除すべき評価項目が幾度も議論されており、今後は大きな見直しがなされることが予想されます。

また、現状では術後患者を評価する項目が一切定められていないことで、患者の重症度をタイムリーに測るために術後の項目(M項目)を新設する動きがみられるなど、これまでの評価基準が大きく変更されることが予想されます。

 

■M項目

手術などの医学的状況 0点 1点
  • 開胸・開頭の手術(術後5~7日間)
  • 開腹・骨の観血的手術(術後3~5日間)
  • 胸腔鏡・腹腔鏡手術(術後2~3日間)
  • その他の全身麻酔の手術(術後1~3日間)
なし あり

さらに、そもそも「看護必要度」の導入における必要性についての議論も行っています。というのも、これまで幾度となく追加・修正・削除が行われ、病院や看護師など医療従事者、患者を巻き込む1つの研究(実験とも言える)になっているからです。

しかしながら、看護必要度は数ある病院の患者傾向を把握する上で有益なツールであり、現状すべての病院で導入されていることから、廃止されることは非常に考えにくいのが実情です。よって、今後もさまざまな点において追加・修正・削除が行われることでしょう。

ただし、改定者と現場との意識の差は大きく、追加・修正・削除がなされても、それが果たして患者のためになるのか、医療従事者の負担が軽減できるのかという問題は残り続けるかもしれません。改定者と現場との温度差を少なくするのが、早期に行うべき課題なのではないでしょうか。

 

5、看護必要度を深く知るために

ここまで、看護必要度の概要や評価項目、問題点など簡単にご説明しましたが、実際には非常に細かく、また分かりづらい点も多々あります。詳細を把握するのはやや困難であるものの、すべての病院で導入されているため、看護管理者は特に看護必要度に熟知しておく必要があります。

なお、看護必要度については、研修やeラーニング(機器やインターネットを利用した学習)などにより深く学ぶことができます。研修・eラーニングのいずれも組織単位・個人単位で活用することができるため、看護必要度に関する知識習得のためにぜひ活用しましょう。

また、個人単位や院内指導において、書籍を活用する手もあります。以下に参考となる2つの書籍をご紹介します。看護必要度とはどのようなものなのか、よく分からないという方はぜひ一読してみてはいかがでしょうか。

 

看護必要度

看護必要度 第5版 日本看護協会出版会

看護必要度評価者院内指導研修における受講者必須のテキストであり、1章:看護必要度の開発、2章:看護必要度と政策動向、3章:看護必要度を評価するための項目、4章:看護必要度の評価者養成、5章:看護必要度と記録、から成り、看護必要度について包括的かつ詳細に、分かりやすく書かれています。

 

「看護必要度」評価者のための学習ノート

「看護必要度」評価者のための学習ノート 第2版 日本看護協会出版会

看護必要度における評価項目に焦点を当て、フローチャート形式で細かく、そして分かりやすく書かれています。評価のポイントなど、評価者が考慮すべき点について学ぶことができるため、新人看護師は特に読んでおくべき一冊です。

これら2冊により、看護必要度に関して深く学ぶことができます。しかしながら、看護必要度の追加・修正・削除は現在進行形で検討されており、各書籍においても改訂されていくため、改訂の都度、最新版をご購入ください。

 

まとめ

看護必要度は患者に対する看護師など医療従事者の人員確保を目的として導入されていますが、未だ確立されていません。そのため、多くの点で改定者と現場との溝があり、現状においては看護師など医療従事者に負担が大きいだけでなく、患者に対しても適切な評価基準とは一概に言えないのも事実です。

しかしながら、病院の全体像を把握する上で、また人員確保における統一化を図る上では重要なツールですので、今後は早期に病院・医療従事者・患者すべてにとって最適となる評価基準の確立を図ってもらいたいものです。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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