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誤嚥性肺炎の原因と予防、食事・口腔ケアなど看護の実施要点(2015/05/15)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 看護計画 大阪府 呼吸器科 

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、全ての高齢者に起こりうる病気です。誤嚥性肺炎に関する深い知識を習得することは、患者さんの看護はもちろん、アナタのご家族の死のリスクも減らすことができるのです。

観察を怠ることなく予防策を講じれば誤嚥の可能性はかなり低くなるため、より良い看護ができるよう誤嚥性肺炎に関する知識を深めていってください。

 

1、誤嚥性肺炎とは

食べ物や飲み物を飲みこむ動作を生理学的に「嚥下(えんげ)」と言い、この動作が正常に働かないことを嚥下障害と言います。

食べ物や唾液というのは、口腔から咽頭と食道を経て胃へ送り込まれます。嚥下が正常に行われない場合や、何らかの理由により、食べ物などが誤って喉頭と気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言い、気管を通って肺に入った異物に含まれる細菌が原因となって起こる肺炎のことを「誤嚥性肺炎」と呼びます。

 

1-1、誤嚥性肺炎の死亡率

日本人の死亡原因として、1位の癌、2位の心疾患、3位の脳血管疾患に続き、4位に肺炎があります。肺炎による死亡者の96.5%が65歳以上だと言われており、高齢者であればあるほど死亡確率が高くなります。

肺炎は様々な原因により発症しますが、誤嚥が原因で起こる肺炎は全体の約70%を占めており、年齢と共に嚥下機能が低下するため、高齢者全てに起こりうる病気なのです。

 

1-2、誤嚥性肺炎が起こりうる病気

誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下により起こるため、嚥下機能の低下がみられる病気を発症することで誤嚥を起こし肺炎になる可能性が高くなります。

嚥下機能低下がみられる病気としては、脳梗塞や口内出血などの脳血管障害、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆症、その他にも口腔・咽頭・喉頭の疾患や食道疾患も挙げられます。

 

2、誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎は飲食物を口腔から摂り入れた際、嚥下機能の低下により誤って気道を通って肺に入ることで肺の内部で炎症を起こすことが第一原因となっていますが、実はそれ以外にも誤嚥性肺炎になり得る原因が存在しています。

 

■細菌を含む分泌物の誤嚥

口腔内には「嫌気性菌」と呼ばれる細菌が、歯や舌の表面に住み着いています。嫌気性菌を含んだ唾液などの分泌物を誤嚥し、肺に入ることで炎症を起こします。虫歯や歯周病がある人ほど嫌気性菌の数が多くなるため、誤嚥性肺炎の予防として、口腔内を清潔に保つことが挙げられます。

 

■胃食道逆流による内容物の誤嚥

胃内容物が逆流を起こし誤嚥することでも肺炎になります。胃内容物には酸や消化液が含まれていることから、粘膜を損傷させやすいため、ひとたび肺に到達すると瞬く間に炎症を起こします。主に夜間睡眠中に多く、高齢者が誤嚥性肺炎を発症する多くの原因が睡眠中による胃内容物の逆流によるものです。

 

2-1、高齢者が誤嚥しやすい理由

誤嚥の可能性は高齢になるほど高くなります。その理由は加齢に伴う嚥下機能または呼吸機能の低下によるもので、主に以下のような事項が関係しています。

  • 歯牙の欠損
  • 嚥下反射の遅延
  • 嚥下関連筋群の筋力低下
  • 咳反射の低下
  • 食道入口部開大時間の短縮
  • 喉頭位置の低下(C7相当まで低下)
  • 唾液分泌量の減少

 

2-2、注意が必要な人とは?

高齢者になれば誰もが発症する可能性のある誤嚥性肺炎ですが、20代・30代・40代の方でも十分起こる可能性があり、現に若年層の発症率は年々高くなっています。特に次のような方は注意が必要です。

 

■泥酔して寝ることが多い

泥酔した状態で寝ると、胃内容物が逆流を起こしやすくなります。また、肺炎に限らず、逆流により鼻や各器官に胃内容物が詰まることで窒息により死に至るケースもあります。

 

■強い睡眠薬を常用している

睡眠薬の多くは嚥下反射を低下させる作用を持っています。睡眠に対する効能が強ければ強いほど嚥下反射が低下する傾向にあるため、強い睡眠薬を常用している人は注意が必要です。

 

■虫歯や歯周病がある

口腔内の細菌が原因で誤嚥性肺炎を発症することがあり、細菌の数が多ければ多いほど発症確率は高くなります。虫歯や歯周病は細菌が繁殖した状態であるため、早期治療が得策です。

 

■急いで飲食する

口腔内から飲食物を素早く摂取すると、誤嚥する確率が高くなります。また、一度の摂取が多いと、むせることにより胃内容物または摂取中の食べ物が逆流を起こすことがあります。

 

■椅子にもたれて食事をする

前かがみの体勢で食事をするのではなく、椅子などにもたれた状態で食事をする場合、頭が上向きになり飲みこみにくい上に、気道の蓋が閉まる前に食べ物が滑り落ちてしまうため、誤嚥の危険性があります。

 

■食後すぐに横になる

食後すぐに臥床(床について寝ること)すると、胃内容物が逆流を起こすことがあります。中でも仰向けの場合に起こりやすいと言えます。

 

3、誤嚥性肺炎の診断基準

誤嚥性肺炎には臨床診断基準をもって発症の有無を特定します。その診断基準は以下の通りです。

 

≪肺炎の診断基準≫

  1. 胸部X線または胸部CT上で肺胞浸潤影を認める。
  2. 37.5℃以上の発熱、CRP異常高値、末梢血白血球数9000/µL以上の増加、喀痰など気道症状のいずれか2つ以上存在する。

 

≪確実例≫

  1. 明らかな誤嚥が直接確認され(食物・吐物等)、それに引き続き肺炎を発症した例。
  2. 肺炎例で気道より誤嚥内容が吸引などで確認された例。

 

≪ほぼ確実例≫

  1. 臨床的に飲食に伴って、むせなどの嚥下機能障害を反復して認め、肺炎の診断基準1および2を満たす例。
  2. 確実例の1または2に該当し、肺炎診断基準のいずれか一方を満たす例。

 

≪疑い例≫

①臨床的に誤嚥や嚥下機能障害の可能性を持つ、以下a~hの基礎疾患または疾患を有し、肺炎診断基準のいずれか一方を満たす事例

a.      陳急性ないし急性の脳血管障害

b.      嚥下障害をきたしうる変性脳疾患または神経筋疾患

c.      意識障害や高度の認知症

d.      嘔吐や逆流性食道炎をきたしうる消化器疾患(胃切除を含む)

e.      口腔咽頭、縦隔腫瘍およびその術後、気道食道ろう

f.       気管切開

g.      経鼻管による経管栄養

h.     その他の嚥下障害をきたす疾患

 

4、誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎には大きく分けて下記の5つの症状があります。

  • 38℃以上の高熱がでる
  • 激しい咳と膿性痰が出る
  • 呼吸が苦しい
  • 肺雑音がある
  • チアノーゼがでる

 

チアノーゼの看護|症状・原因からみる効果的な対処法

 

また高齢者の場合は普段の生活で、肺炎とは無関係のような次の症状が見られる場合でも、肺炎の可能性があります。

  • 元気がない
  • ぼーっとしていることが多い
  • 食事時間が長くなる
  • 食後に疲れてぐったりする
  • 口の中に食べ物をため込んで飲み込まない
  • 失禁するようになった
  • 体重が徐々に減ってきた
  • 夜間に咳込む

 

5、誤嚥性肺炎の予防・治療法

誤嚥性肺炎を予防するためには、「嚥下反射の改善」「口腔の清潔保持」「胃液の逆流防止」の3つの対策があります。これらは、日々の生活の中で少し気をつけることで多大な効果があり、特にお年寄りの方に有効な手段です。

また、治療法としては「薬物治療」がありますが、効率的に治療していくためには3つの予防策との同時進行が不可欠です。以下にそれぞれの予防法・治療法を詳しく紹介しますので、しっかりお読みください。

 

5-1、嚥下反射を向上させる

誤嚥性肺炎の大元となる原因が、食べ物を上手く飲みこめない、つまり嚥下反射が悪い場合です。嚥下がうまくいかない状態を「嚥下障害」と言い、加齢に伴い嚥下反射が悪くなるため、高齢者には避けては通れないものですが、食事姿勢や食事内容の改善を図ることで嚥下反射が良くなり、誤嚥性肺炎を発症する可能性が大幅に低くなります。

 

①食事姿勢に配慮する

口から物を食べる際、気道が広がっている状態が望ましいため、少し前かがみになって食事を摂ることが大切です。椅子にもたれかかった状態で飲食すると、気道の蓋が閉まる前に飲食物が滑り落ちて誤嚥する危険性があります。正常に座るのが難しい場合には、腰元にクッションを置くなど工夫しましょう。

 

②食事内容に配慮する

高齢になると食事がスムーズにいかないことにより誤嚥が起こることがありますが、これは大まかに3つのプロセスの内のどれかが原因となっています。そのプロセスというのは「咀「食塊形「嚥下」から構成されており、まずはどのプロセスが原因であるか突き止めた上で、それに応じた対処をしていかなければなりません。

しかしながら、全てのプロセスはスムーズに食事するために非常に重要であるため、特定が難しい場合には3つのプロセス全てに配慮して食事の改善を図ってください。

咀嚼に問題がある場合

咀嚼(そしゃく)というのは物を噛砕く動作のことを指し、顎の力が弱くなると咀嚼力が低下します。咀嚼力が低下すると唾液の分泌量も低下し、さらに舌の運動機能も低下するため、物を飲む込む力が減退し誤嚥する可能性が高まります。それゆえ、食べやすいように細かく刻んだり、柔らかくするという配慮が大切です。

食塊形成に問題がある場合

食塊形成とは、口腔内において噛んだ物を再びまとめる動作のことを指します。舌というのは物を飲み込む前に塊にし、それを歯側から食道側へ押し出す働きがあります。この機能が低下すると、咀嚼によってバラバラになった物が広範囲に食道を通るため、むせやすくなり、むせた際に胃内容物が逆流し肺に入ることがあります。食塊形成を助ける方法としては、一口大に切る、軟らかい状態にする、とろみをつけるなどが有効です。

嚥下機能に問題がある場合

咀嚼や食塊形成も嚥下機能と深い関わりがありますが、身体自体が弱っている場合や脳卒中などの後遺症がある場合には、飲みこむ力そのものが低下し、特に水分摂取が上手くいかず、すぐにむせてしまいます。水分は気道に入りやすく、また、むせることによる胃内要物の逆流により誤嚥性肺炎を発症しやすいため、お茶などの飲み物、味噌汁、スープ類はとろみをつけてあげましょう。

 

また、嚥下機能を向上させる訓練として“嚥下体操”が効果的であるため、可能であれば下図の体操を実施しましょう。

誤嚥性肺炎

放送大学教材 リハビリテーション 放送大学教育振興会、2007年より出典・引用

 

5-2、口腔の清潔を保つ

次に、口腔内の細菌が原因で誤嚥時に肺炎を起こすこともあるため、口腔内を清潔に保つことも非常に大切です。下図にあるように、口腔ケア実施の有無で10%以上も誤嚥性肺炎の発症率を下げることができます。

誤嚥性肺炎

要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究、日本歯科医師学会会報誌2001より出典・引用

 

口腔は肺や胃腸の入り口であり、適度な湿度と温度が保たれているため、細菌にとって非常に居心地がよい場所です。歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繁殖し、細菌の数が多ければ多いほど、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

専門的な口腔ケアを実施するのが最適ですが、専門的な口腔ケアを受けなくても歯磨きや義歯の手入れをしっかりすることで雑菌の繁殖が大幅に抑えられるため、出来る範囲で口腔ケアを実施するようにしてください。

口腔ケアの看護手順とケアのポイント

 

5-3、胃液の逆流を防ぐ

食後すぐに横にならず、最低30分~1時間ほど座って身体を起こしているだけで逆流の多くは予防することができます。また、ゲップ(げっぷ)を抑えることでも胃液・胃内要物の逆流を防ぐことができます。ゲップというのは空気を飲み込み、胃内に溜まった空気が気道へ逆流し口腔から体外へ排出されます。

ゲップは生理現象であるため完全に防ぐことはできませんが、急いで啜り込むように食べると、空気が食べ物と一緒に飲み込まれやすくなるため、急いで食べる傾向にある人はゆっくりと食事することで当該のゲップを防ぐことが出来ます。

 

5-4、薬物を用いる

薬物治療には2種類あり、誤嚥性肺炎を発症する可能性のある患者さんには「嚥下機能を向上させる薬」を、肺炎が発症している患者さんには「肺炎を治療する薬」が用いられます。

 

①嚥下機能を向上させる薬

嚥下と咳の反射を司っている神経伝達物質はドパミンとサブスタンスPで、これらの物質を増やす、あるいは分解を抑制する成分により嚥下機能を向上させ誤嚥を予防します。

ACE阻害剤

ACE阻害剤は降圧剤であるため主に高血圧の患者に用いられますが、サブスタンスPの分解を阻害する作用も持っているため、誤嚥性肺炎の防止にも有効です。主に、タナトリル錠(5mg)が使用されます。

シロスタゾール

抗血小板薬であるシロスタゾールは、血管拡張作用を持ち、ドパミンの合成を維持します。また、サブスタンスPの産生も維持されるため、誤嚥性肺炎の予防に効果があります。

葉酸

葉酸は神経伝達物質の合成に重要な役割を果たすことから、嚥下・咳反射の向上を促します。葉酸は緑黄色野菜などに多く含まれており、高齢者では不足がちになるため、栄養管理の上でも葉酸は非常に大切です。積極的に緑黄色野菜を摂取しましょう。

漢方薬

漢方薬の1つである半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、嚥下反射時間を短縮する効果があります。また、神経障害の改善にも効果を示しているため、鬱やパニック、不眠症などにも効果的です。

 

②肺炎を治療する薬

誤嚥性肺炎を治療する場合には、患者の病態に応じて慎重に実施しなければいけません。経口摂取ができる場合や点滴で治療する場合、グラム陰性桿菌が原因である場合など、それぞれの状況に応じて各種抗菌薬が選択されます。

経口摂取ができる場合

経口摂取が可能な場合には、クリンダマイシン(ダラシン®)またはクラブラン/アモキシシリン(オーグメンチン®)などにAMPC(サワシリン®)を併用して治療を行います。

点滴で治療を行う場合

点滴で治療を開始する場合には、スルバクタム/アンピシリン(ユナシン®)またはクリンダマイシン(ダラシン)を用いて治療を行います。

グラム陰性桿菌が原因の場合

緑膿菌などのグラム陰性桿菌による肺炎が考慮される場合には、タゾバクタム/ピペラシリン(ゾシン®)またはセフェピム(マキシピーム®)とメトロニダゾール(フラジール®)を併用。あるいはセフェピムとクリンダマイシンを用いて治療を行います。

 

6、誤嚥性肺炎の看護計画・目標

誤嚥性肺炎を発症する可能性がある患者さん、または既に発症している患者さんに対する看護計画・目標で第一となるのが“予防”です。「4、誤嚥性肺炎の予防・治療法」で述べたように、まずは初発・再発を予防することが最も大切です。

①嚥下反射の向上、②口腔清潔保持、③胃液の逆流防止、を主体とし、「2-2、注意が必要な人とは?」で挙げた例に当てはまる場合は、それらを考慮して看護していきましょう。

なお、患者さんの誤嚥性肺炎の発症を未然に防ぐためには、在宅におけるご家族の介護が非常に重要となります。入院時だけでなく、患者さんがより良い生活ができるよう、ご家族に予防策をしっかりと指導していきましょう。

 

7、誤嚥性肺炎の観察ポイント

最後に、誤嚥性肺炎の看護における観察のポイントをご説明します。誤嚥を起こす可能性が高いのは“食事時”であるため、ここでは主に「食事前」「食事中」「食事後」に分けて、重要となる観察項目を紹介します。

これらは「6、誤嚥性肺炎の看護計画・目標」に通じるため、重複事項がありますが、どれも非常に大切であるため、各セクターにおける観察ポイントをしっかりと熟知しておいてください。

 

7-1、食事前の観察ポイント

■覚醒状況の観察

患者さん、特に高齢者の方は覚醒せず朦朧とした状態では、嚥下反応や咳反応が鈍り、誤嚥する可能性が高くなります。眠気がある中、食事するのは危険であるため、完全に覚醒しているのを確認してから食事を摂らせてください。

 

■姿勢の観察

座位が上手く保てない患者さんは、前後左右にゆらゆらと揺れ、姿勢を保つために肩や首に余計な力が入っています。この状況下では嚥下機能が低下するため、安定した座位で食事が摂れているか観察してください。

 

■口腔内の観察

口腔内が汚染していると細菌量が増えるため誤嚥時に肺炎を起こす確率が高くなります。また、乾燥していると舌や頬、唇が動作しにくいため誤嚥の可能性が高くなります。

 

7-2、食事中の観察ポイント

■声質の観察

うがい時のようなゴロゴロという声に変化するのは、喉に飲食物が溜まっている証拠です。この状態で息を吸うと喉に溜まった飲食物が気道に流れこみ誤嚥します。水分が主な原因であるため、とろみをつける対応が必要です。

 

■鼻水の有無の観察

喉と鼻の間の閉まりが悪いと、嚥下圧が鼻に 漏れて鼻へ逆流し、鼻水となって出てきます。この鼻水が気管に入ることがあるため、水分にとろみをつけてあげましょう。

 

■食事時間の観察

食事時間が短い場合、いわゆる早食い傾向にある場合、窒息や誤嚥の危険があります。また、食事時間が長い場合には、味や風味が損なわれると共に、姿勢の維持が難しくなるため、同じく誤嚥の危険があります。よって、患者さんに合った適度な食事時間を見極めることが大切です。

 

■むせの観察

むせが嚥下前、嚥下中、嚥下後のいつ出 現するのかを観察します。また、嚥下反射がしっかりと起こっているか、喉仏が上下する動きをよく観察してください。

嚥下反射が起こる前にむせる場合

口の中で食べ物や飲み物を保持できないと起こります。水分にとろみをつけて誤嚥を予防してください。

嚥下反射の最中にむせる場合

嚥下の動きが不十分で喉頭蓋という気道の蓋が閉まらず、飲食物が隙間から気道に流入した場合に起こります。嚥下機能を向上させることで誤嚥を予防することができます。

嚥下後にむせる場合

嚥下の力が弱い場合、息を吸った時に飲みこみきれなかった飲食物が気道に流入し、むせが起こります。交互嚥下を行う、咳をさせて喀出させる、まとまりやすい食形態を選択するなどの工夫が必要です。

 

7-3、食後の観察ポイント

■口腔内の観察

食後には口腔内に食べカスが残る場合が多く、残った状態が続くと細菌が繁殖し、誤嚥時の肺炎のリスクが高まります。それゆえ、食後には入念な口腔ケアが必要になります。

 

■逆流の有無の観察

ゲップ時の胃液の逆流、咳き上げなどの少量の嘔吐などがないか観察します。胃ろうなどの経管栄養を実施している場合でも胃内要物の逆流は起こるため、食後2時間、最低でも30分~1時間は座位を保つようにしましょう。座位が無理な場合には臥床時にヘッドアップさせた状態で安静な体勢を保つようにしましょう。

 

まとめ

高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥によるものです。特に認知症などの精神疾患を患っている方は誤嚥のリスクが高いと言えます。それゆえ、看護師は的確かつ効率的な看護ケアが不可欠なのです。

患者さんの誤嚥の危険性を最小限に抑え、より良い生活を支援できるよう、誤嚥性肺炎に関する知識を深めて最大限の努力をもって看護ケアを行いましょう。患者さんによって状態は様々であるため、しっかりと観察を行い、少しでも誤嚥の可能性がある場合には早急に対処できるよう努めていってください。

横山香織 看護師

京都府出身、大阪府在住。大阪府内の一般病院で呼吸器科に8年間就業の後、現在はフリーの看護師として、さまざまな医療現場で働きながら、看護分野に関する取材や執筆活動を精力的に行っている。座右の銘は「健康第一」。過酷な看護業務に耐えうるため、また患者に対する献身的な看護を実施するため、自身の健康も必要と考え、2012年からマラソンを始める。現在では各地のイベントや大会に参加するなど、活躍の場は看護のみにとどまらない。

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