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退院支援・退院調整の看護|看護師の役割、看護研究とその研修内容(2017/03/07)

公開日: : 最終更新日:2018/01/18 看護師 看護用語 東京都 全科共通 

退院支援看護

病院で入院をしている患者の多くは70歳以上の高齢者と言われており、高齢化は今後も進んでいくことが考えられます。入院中から介護が必要とされ、治療後も後遺症などにより元の生活に戻れないという人も多いです。

高齢化社会が進んできた現在、入院して治療を行い、退院後も地域の中で高齢者を支えていくため在宅医療や地域医療が重要視され、取り組みも活発に行われています。

そんな中、退院した高齢者が安心して地域の活動に復帰できるような取り組みを入院中から行い、退院までを支援する退院調整看護師が注目されてきています。

 

1、退院支援・退院調整とは

退院支援とは、患者とその家族が退院後に生活の場を変えて療養を続けるという選択肢があることを理解し、療養場所や生活の場を自ら選択ができるようサポートを行い、患者さんと退院調整部門とをつなぐことを指します。要するに、自宅での療養に向けたサポートや退院日の調節などを円滑に進めることが退院支援なのです。

また、退院調整とは、患者が自宅に戻った後も必要な医療を受けながら療養を継続していけるよう訪問看護や介護などのサービス提案、療養費の試算などを行うことであり、地域医療と病院をつなぎ調整を行なっていくことです。

このように、退院支援と退院調整は「患者の退院後の自立を直接支援すること」「社会保障制度などの支援制度、施設と患者を繋げ、間接的に患者の自立を支援すること」の違いがあるのです。最近ではこの2つのキーワードの意味は曖昧に使用されるようになってきています。

病院によっては退院調整部門が入院時から退院に向けて関わりを進めることで退院支援も同時に行なっているところもあります。

 

2、退院支援・退院調整を行う看護師の役割

少子高齢化が進み高齢者の病気は疾患の治療で終わりではなく、基礎疾患に対する継続的な治療が必要になってきます。病院で必要な治療を受けた後は自宅に戻って療養を受けたいと望む人も多く、そのような病気を抱えた患者さんが安心して生活ができるようサポートを行うことが退院支援を行う看護師の役割なのです。

退院支援を行う上で退院調整看護師は患者だけでなく家族とも関わりを大切にして、患者と家族の両方の希望や要望を聞いてどのような生活を送ることが良いのかを選択するサポートを行います。患者が在宅に戻って生活ができるのか、戻れる場合はリハビリや通院、在宅サービスの利用は必要かなどの課題を元に退院調整の計画を立案して実施していきます。

退院調整の計画を提案する際は、主治医や病棟看護師、MSW(メディカルソーシャルワーカー)、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士などのリハビリ部門、管理栄養士などのスタッフとカンファレンスで情報共有を行い課題について意見交換を行います。

カンファレンス内容と退院調整計画を元に地域医療を支えるケアマネージャーや訪問看護師を交えてカンファレンスを行い退院後の在宅ケアを調整していきます。退院調整看護師は患者の退院後の在宅療養生活を実現するために、病院と地域医療を調整してつなぐ役割を担っているのです。

 

3、退院支援・退院調整を行う看護師に必要なスキル

退院支援を行う看護師にはコミュニケーションスキルや社会サービスについての知識、各部門との調整能力などのスキルが求められます。

退院調整を行う上で大切なことが情報収集を行うことですが、患者本人だけでなく家族や主治医、病棟の担当看護師、リハビリを行う理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、管理栄養士など様々な部門と円滑なコミュニケーションを図ることが求められます。患者と家族が退院後にどのような支援を希望するのかなどの意思決定を支援を行い、医療者カンファレンスで患者の希望を説明するためにもコミュニケーションスキルは必要とされているのです。

退院調整看護師は患者とその家族が退院後にどのような生活を送りたいかをヒアリングしますが、意思決定を助けるためには患者に合った社会制度や福祉サービスなどを提案することも必要です。患者の退院後の生活に合わせた社会制度や福祉サービスなどをピックアップして調整を行なっていきますが、知識がなければ調整することができません。特に現在では在宅医療を希望する患者も多くなっており、様々なサービスも増えてきています。ケアマネージャーや訪問看護師との橋渡しの役割も担っているため病院での入院生活から在宅療養を行うにあたってアセスメントを行い、患者にとって最適な意思決定ができるよう様々な視点からサポートするスキルが求められています。

病院で入院生活を送る患者が安心して在宅療養ができるように様々なスタッフとの関わりが大切になる退院調整看護師ですが、調整力が特に重要になってきます。治療を終えた後も障害が残ってしまい退院後も在宅療養を行いながら生活したいと考えている患者に対しては在宅サービスが必要になりますが、医療保険や介護保険を利用できる限度がありサービスを受けられる回数などにも決まりがあります。もっと訪問看護を増やして欲しいなどの要望もあると思いますが、利用できるサービスの間で在宅療養を実現できるよう患者や家族に説明を行い理解してもらう調整も必要なのです。入院前は健康だった身体が退院後は障害が残ってしまい、入院前と同じような生活が送れないという不安を抱えた患者に対して、不安を緩和して安心して在宅療養が実現できるようなサポート、調整が求められています。

 

4、退院支援・退院調整を行う看護師のスキルアップ

現在病院の退院調整部門で働くスタッフとして看護師の他に介護福祉士も重要な役割を担っています。介護福祉士は身体上や精神上の障害があり日常生活を送ることが困人に対して福祉に関する相談や指導、福祉サービスの提供や、医師や医療スタッフとの連携や調整を行う者と定義されており、自宅に戻る患者のサポートを行なっているのです。病院の地域包括部署や退院支援部門に社会福祉士がいるのは自宅に戻る患者の福祉面でのサポートを行うためなのです。

退院支援を行う退院調整看護師もいますが、この退院調整看護師になるためには特別な資格はありません。しかし、介護サービスや社会制度などの専門的な知識が必要になってくるため、退院調整看護師を目指す人に向けての研修も開催されています。研修によっては誰でも参加ができるわけではなく条件があるものもあるので確認が必要です。中にはケアマネージャーの資格を持った看護師も退院調整に関わっている人も多くキャリアアップを目指して勉強している人が多いようです。

 

まとめ

高齢社会の中で入院患者の大半が70歳以上の高齢者という状況が現実であり、高齢化はこれからも加速すると言われています。退院支援と地域医療の連携を目指して病院で治療を進めていくという考え方から在宅での療養、そして自分らしく生活したいという患者の支援を地域全体で行う動きが活発になってきています。退院支援は退院するためのものではなく、病院全体で患者が地域に戻ってからも安心して生活が送れるよう関わっていくことが大切なのです。退院調整看護師や退院支援を行う看護師は患者の意思決定の支援と地域医療を結ぶ大切な役割を果たしています。退院調整の技術は今後の地域医療や在宅医療に欠かせない存在となり、ニーズは増えていくでしょう。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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