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熱傷・火傷(やけど)の看護|分類、9の法則、ガイドラインに基づく治療・処置、看護計画(2017/07/24)

公開日: : 最終更新日:2022/09/09 看護計画 静岡県 ICU 皮膚科・美容外科 

熱傷は熱によって皮膚が損傷した状態のことです。熱傷は重症度によって治療法が異なります。熱傷の患者は重症になると、全身管理が必要になり、長期間の治療を行う必要があります。

熱傷の基礎知識や分類、9の法則、ガイドラインに基づく治療・処置、看護計画をまとめました。熱傷患者の看護をする時の参考にして下さい。

 

1、熱傷・火傷(やけど)とは

熱傷とは熱によって皮膚が損傷した状態のことを言います。一般的には「やけど」と呼ばれています。

熱傷は高温のものに皮膚が一定時間以上接することで起こりますが、場合によっては高温のものではなく50℃前後のものに皮膚が長時間接することで、熱傷が起こることもあります。また、化学薬品や放射線などによる損傷も「化学熱傷」として、熱傷に分類されることがあります。

熱傷の範囲が小さければ、全身に影響が出ることはありませんが、熱傷が広範囲に及ぶと全身に影響が現れ、さらに年齢と熱傷範囲の割合の合計が100を超えると、死に至るリスクが高くなるとされています。

例えば、65歳の人が体表面積の40%の熱傷を受傷すると、65+40=105になり、100を超えるので、死亡のリスクが高くなるのです。

2、熱傷の診療ガイドラインによる分類

熱傷はその深度によってⅠ~Ⅲ度に分類されます。

出典:熱傷深度とその鑑別法が説明できる 帝京大学救命救急センター

 

■Ⅰ度

Ⅰ度の熱傷は表皮のみの浅い熱傷(表皮熱傷)で、有痛性の紅斑や発赤、浮腫疼痛が起こるのみになります。3~4日で治癒し、瘢痕は残りません。

 

■Ⅱ度

Ⅱ度は真皮層にまで達した熱傷で、真皮浅層熱傷(浅達性Ⅱ度熱傷=SDB)と真皮深層熱傷(深達性Ⅱ度熱傷=DDB)の2つに分類されます。

真皮浅層熱傷は真皮の有棘層・基底層にとどまる損傷で、真皮深層熱傷は真皮の深層部である乳頭層や乳頭下層にまで及ぶ熱傷になります。

分類 所見 治癒までの期間 瘢痕の有無
真皮浅層熱傷 紅斑、水疱、発赤、強い疼痛、灼熱感、知覚鈍麻 2週間前後 瘢痕なし
真皮深層熱傷 白色の水疱、著しい知覚鈍麻、強い疼痛、灼熱感 3~4週間 残る可能性が高い

 

■Ⅲ度

Ⅲ度熱傷は皮下組織や骨まで達した熱傷で、水疱はできず、皮膚は灰白色または褐色に変化し、場合によっては炭化して壊死します。

Ⅲ度の熱傷は疼痛はなく、知覚もなくなります。治癒までには1ヶ月以上を要し、ケロイドになったり、瘢痕拘縮が残ります。

3、熱傷の9の法則

熱傷の重症度を判定するためには、熱傷の深度も大切ですが、熱傷面積もとても重要になります。一般社団法人熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン〔改定第2版〕」によると、熱傷面積は予後推定因子として、最も基本的なものであるとされています。

熱傷面積をすばやく推定するために、救急現場では9の法則が用いられています。この熱傷面積の推定にはⅠ度の熱傷は含めません。Ⅱ度とⅢ度の熱傷面積で計算します。

出典:「熱傷」一覧 : 救命救急センター 東京医科大学八王子医療センター

 

9の法則とは成人に適用される熱傷面積の推定方法です。頭部と右上肢、左上肢を9%、体幹部の前面を18%、後面を18%、右下肢、左下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として、熱傷面積を推定します。

小児の場合は、5の法則と言います。乳児は頭部と体幹前面、体幹後面を20%、四肢はそれぞれ10%として計算します。幼児は頭部を15%、右上肢、左上肢はそれぞれ10%、体幹前面を20%、体幹後面と右下肢、左下肢はそれぞれ15%で計算します。

4、熱傷のガイドラインに基づく治療・処置

熱傷の治療や処置は、一般社団法人熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン〔改定第2版〕」に基づいて行われることが多いです。

 

4-1、外用剤での局所療法

受傷直後は流水で30分程度の冷却をして、鎮痛や消炎、浮腫の抑制を行います。

 

■Ⅱ度熱傷

湿潤環境を維持するためにワセリンを塗布することを基本とし、熱傷の状況によっては抗生剤やステロイドなどを用います。また、ハイドロコロイドなどの創傷被覆材を用いることも推奨されています。

 

■Ⅲ度熱傷

Ⅲ度熱傷では、広範囲の場合は壊死部分を外科的に切除する必要がありますが、それまでは感染予防を目的にゲーベンクリームの使用が推奨されています。

また、小範囲のⅢ度熱傷の場合、壊死組織の除去のために、ブロメライン軟膏やソルコセリル軟膏を塗布することが多いです。Ⅲ度熱傷には創傷被覆材はあまり用いません。

 

■外科的局所療法

30%TBSA(体表面積の30%)以上の熱傷に対しては、早期にデブリードマンを行い、創の閉鎖を行うことが「熱傷診療ガイドライン〔改定第2版〕」では推奨されています。

また、死亡率が低下したり、再建手術の減少、合併症の減少、入院期間の短縮などが報告されていますので、デブリードマンと同時に同種皮膚移植(スキンバンクや家族の皮膚)を行うこともあります。

 

■全身療法

成人で15%TBSA以上、小児で10%TBSA以上では、熱傷受傷後2時間以内に輸液を開始することが推奨されています。基本は乳酸リンゲル液などの等張の電解質輸液を尿量やCVP(中心静脈圧)、ナトリウム濃度、カリウム濃度などをモニタリングしながら、輸液します。また、状態によってはアルブミンなどのコロイド輸液を併用することもあります。

そして、広範囲の熱傷の治療には、感染対策が欠かせません。感染対策のために、標準予防策を実施し、水治療や排便管理チューブの使用、予防的抗菌薬の投与などを行います。

 

■気道熱傷

気道熱傷は気道閉塞のリスクがあります。気道熱傷は高温の気体やススを吸い込むことで起こります。

気道熱傷が起こると、気道に浮腫が生じて徐々に気道が狭窄し、気道閉塞が起こりますので、気管挿管を行い、気道確保を行います。気道熱傷があるかどうかは、判別しにくいのですが、口腔・咽頭内にススが付着していたり、嗄声が見られたり、ラ音が聴取された時には、気道熱傷を疑います。

 

■栄養管理

熱傷の受傷直後は、代謝異化亢進状態が続いていますので、それを補うためのエネルギーを供給しないと、治癒遅延や感染リスクが高くなります。

そのため、成人は低脂肪炭水化物栄養を、小児患者は高たんぱくの栄養を受傷後24時間以内に、経腸栄養で投与することが推奨されています。

 

5、熱傷の看護計画

熱傷の患者の看護は重症度によって異なりますが、ここでは広範囲の熱傷を負った重症の熱傷患者の看護計画をご紹介します。

 

■循環血液量が減少して、ショック状態に陥りやすい

熱傷患者は創部から浸出液が多く、体液が喪失していきますので、それに伴い循環血液量が減少して、血圧低下などのショック状態に陥って命の危機に瀕する可能性があります。看護師は循環血液量が維持できるように看護介入をしていく必要があります。

 

看護目標 循環血液量が維持できて、ショックを起こさない
OP(観察項目) ・バイタルサイン(血圧、心拍数、CVP、肺動脈圧、呼吸数、体温)

・水分出納

・尿量の減少、尿比重の変化の有無

・意識レベル

血液検査のデータ

・浮腫の状態

・浸出液の量(ガーゼカウント)

TP(ケア項目) ・指示通りの輸液を正確に投与する

・こまめに水分出納を計算する

・バイタルサインを継時的に測定していく

EP(教育項目) ・本人や家族に病状を説明する

 

低栄養になりやすい

熱傷後は代謝異化亢進状態になり、タンパク質が浸出液とともに流出しますので、低栄養になりやすく、肉芽の形成不良や感染リスクの増大などが起こります。

 

看護目標 低栄養にならない
OP(観察項目) ・バイタルサイン(血圧、心拍数、CVP、肺動脈圧、呼吸数、体温)

・創部の状態

・血液検査データ

・栄養摂取状況

・水分出納

・腹部症状

・全身状態

TP(ケア項目) 経管栄養IVHは医師の指示に基づいて確実に投与する

・経口摂取ができる時には高たんぱく高カロリーの食事の中に、本人の好みのメニューを取り入れる

・便通を調整する

EP(教育項目) ・栄養摂取の必要性を説明する

・栄養指導をする

 

■感染リスクがある

広範囲の熱傷は、感染リスクが高いため、感染が起こらないように援助していかなければいけません。

 

看護目標 感染兆候が見られない
OP(観察項目) ・創部の状態(色調、状態、臭い、浸出液の量・性状、創の周囲の皮膚の状態、熱感、疼痛)

・ドレッシング材の交感頻度

・バイタルサイン

・血液検査データ(WBC、CRP)

・栄養状態

TP(ケア項目) ・標準予防策の実施

・熱傷部位の清潔操作の徹底・清潔保持

ルート刺入部の清潔の保持

・ルートが床につくなど不潔にならないようにする

・必要があれば、バルンカテーテルや肛門内留置型排便管理チューブを用いる

・薬剤を確実に投与する

環境整備を行う

EP(教育項目) ・易感染状態であることを説明する

・清潔保持について説明する

 

まとめ

熱傷の基礎知識と分類、9の法則、ガイドラインに基づく治療・処置、看護計画をまとめました。

熱傷は重症になると命の危機に瀕しますし、本人の苦痛がとても大きく、治療も長期間に及びますので、看護師はご紹介した看護計画以外にも、患者の状況に応じて、精神的なケアも行っていくようにしましょう。

 

参考文献

最新の熱傷臨床-その理論と実際-(平山峻、島崎 修次編|克誠堂出版株式会社|p.89|1994)

熱傷診療ガイドライン〔改定第2版〕(一般社団法人 日本熱傷学会|2009年3月31日)

佐藤良子 看護師

1965年生まれ、静岡県静岡市在住。スタッフナース歴11年、看護師長歴2年。静岡県内の大学で教育を学び、卒業後は小学校教諭として勤務。後に看護師の道に目覚め、看護学校へ入学し、同県内の総合病院(循環器科)へ就職。現在はイベントナースやツアーナース、被災地へのボランティアなど、幅広い分野で活躍している。

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