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TUR-Pの看護|経尿道的前立腺切除術の手術後の合併症と9つの観察項目(2017/09/18)

公開日: : 最終更新日:2023/01/30 看護計画 兵庫県 腎・泌尿器科 

TUR-Pの看護

前立腺肥大は中高齢男性に見られる進行性の疾患です。前立腺が加齢とともに肥大し尿道を圧迫することによって、排尿障害をもたらします。TUR-Pは、前立腺肥大が進行し排尿状態に著名な問題が生じている患者に対して行われる治療法の一つです。精神的にもデリケートな分野であるため、病態や治療のみならず精神面も含めポイントをおさえた看護を行いましょう。

 

1、TUR-Pとは

TUR-Pとは、Transurethral Resection of Prostateの略で「経尿道的前立腺切除術」と言われる治療法です。前立腺肥大症や良性の前立腺腫瘍を原因とする排尿困難、血尿、尿の逆流による腎障害、頻繁に繰り返す尿路感染、膀胱結石などが認められる患者に対して行います。TUR-Pは尿道から切除鏡を挿入して行います。通常は肥大した前立腺が尿道の内側に突出しているため、その部分の尿道が非常に細くなって見えます。この箇所を電気メスで切除し狭窄を解除することで症状の改善を図ります。TUR-Pでは、腰椎麻酔が一般的に使用されています。

 

TUR-Pとは
引用:Greenlight Photoselective Vaporization of the Prostate

*TUR-Pの実際の映像を以下の動画で見ることができます

引用:Greenlight / Button TURP All Rights Reserved by The Urology Group

 

2、前立腺肥大症の診断

前立腺肥大症の診断には、世界共通で用いられている「国際前立腺症スコア(IPSS)」と「QOL評価」が用いられます。下記の表に基づいて症状を点数化して判定します。また、直腸診・尿検査・血液検査・尿流用測定・腹部エコーにより前立腺の大きさや硬さ、血尿の有無・尿路感染・腎機能等について調べてから治療方針を決定します。TUR-Pは中等度までの肥大症が適応とされています。

2−1、TUR-P適応の主な症状

①IPSSが13点以上ある

尿閉がある

③残尿が50ml以上ある

④出血がある

⑤第2期以上の症状がある

 

TUR-P適応の主な症状
引用:泌尿器科の病気について(坂泌尿器科病院)

 

3、TUR-P後の合併症

外科的治療は効果が高い反面、手術に関連する合併症が起こる可能性があります。TUR-Pを受けた患者にどのような合併症が起こる可能性があるのか、術後に観察するべきポイントをしっかりおさえておきましょう。

 

3−1、術中合併症

1、麻酔に伴う合併症 呼吸不全や心機能不全等

2、出血とそれに伴う輸血の可能性 前立腺を電気メスで削っていくため血管が損傷し出血する。止血しながら行うがすべての出血を止めることはできないため術中は出血が続く。出血量が多い場合は輸血を必要とすることもある。

3、TUR反応(低Na血症) 術操作中に視野を確保するため灌流液で血液を流しながら行うため、切除した前立腺の血管断端から灌流液が体内に入る。これにより血中のNa値が低下、低Na血症を起こす。体内に入った灌流液の量が心機能に影響を与えることで心不全を引き起こす可能性もある。

3−2、術後合併症

1、出血 膀胱留置カテーテルによる手術部位の刺激などにより再出血する可能性がある。このため、術後は安静が必要。術後1ヶ月程度は再出血の可能性があるので注意する。

2、感染症 前立腺症:切除部表面の炎症により排尿時痛・頻尿など、膀胱炎症状が見られる。数週間程度で治ることが多い。精巣上体炎:精巣上体の感染により起こる。抗生剤を使用する。

3、疼痛 カテーテルによる刺激などにより強い緊満感を感じる。鎮痛剤の使用にてコントロールする。

4、尿閉 カテーテル抜去後に切除した前立腺部尿道の浮腫や膀胱内に切除した腺腫が残っていることで生じる。カテーテルの再留置などの処置を行う。

5、尿道狭窄・膀胱頚部硬化症 尿道あるいは膀胱頚部に浮腫や虚血が生じて起こる。退院後しばらくしてから起こることがあるが、発生率は約10%といわれている。

6、逆行性射精 射精した精液が膀胱内に逆流する。TUR-Pにおいては必発。

7、失禁 カテーテル抜去後に失禁が見られることがある。

8、TUR症候群 嘔気嘔吐血圧低下意識障害などに注意する9、静脈血栓・肺血栓症 下肢の静脈に血栓ができ肺に飛ぶことがある

 

4、TUR-Pの看護計画

術中から術後にかけての観察ポイント、退院後の生活指導についてどのような点に注意して看護援助していけばよいでしょうか?特に退院後の指導については、患者がきちんと理解できているか確認しながら話を進めていきましょう。また、クリニカルパスを導入している医療機関もあると思いますので、積極的に使用していくとよいでしょう。

 

目標:①合併症の出現がない

OP1、バイタルサイン2、疼痛の有無と程度3、尿量・性状(血尿の有無と程度)4、水分バランス5、腹部膨満の有無6、血液検査7、排便状況8、意識レベル9、嘔気・嘔吐10、頭痛めまい
TP1、膀胱内留置カテーテルの管理(位置・強く引っ張られたりしていないか確認する)2、疼痛時、鎮痛剤の使用3、必要に応じて利尿剤、昇圧薬の投与4、血尿が増強した場合には医師に報告し指示を仰ぐ5、必要に応じて緩下剤を使用する6、安静が保てるよう援助する

EP1、安静の必要性について説明する2、疼痛時は我慢せずコールしてもらうよう伝える3、嘔気やめまい等TUR反応の症状が出現した場合はすぐに伝えてもらうよう説明する4、水分摂取の必要性を説明する。(1000ml/日の水分摂取を勧める)5、排便時の努責について説明、排便コントロールの重要性について説明する

 

目標:②退院後の注意点・合併症について理解できる

TP1、退院後の注意点や合併症について理解できているかの評価2、不安な事、質問があれば話をよく聞き不安の軽減・解決ができるよう配慮する

EP1、水分摂取の必要性についての説明・指導・尿路感染を防ぐため、1日に1〜2Lの水分を摂取してもらう2、運動についての説明・散歩などの軽い運動以外はしばらく行わないよう説明する(重い荷物を持つこと、激しい運動は避ける)・長時間の座位や自転車に乗ることは控えてもらう(自動車の運転は可)・患部への圧迫を避けるよう説明する・熱いお風呂への長時間の入浴は避けてもらう3、アルコール類の摂取について・術後2週間はアルコール摂取しないよう説明する4、排便コントロールについて・便秘をしないよう必要に応じて緩下剤でコントロールすることを説明する・出血の可能性があるため、排便時に努責をかけないよう説明する5、異常時の対応について・血尿の増強、排尿困難、発熱等の症状が出た場合は直ちに受診してもらうよう説明する・術後2〜3ヶ月は尿混濁が見られることが多いが、発熱、排尿時痛がなければ心配ないことを説明する

 

まとめ

前立腺肥大症に対する外科的治療は、標準的治療法であるTUR-Pですが、近年これよりもさらに安全で合併症が少ないとされるbipolar-TURP、「生理食塩水灌流経尿道的前立腺切除術を行う医療機関も増えています。しかし、どのような処置を行うにも合併症の可能性がゼロになることはありません。私たち医療者は常に『何かが起こるかもしれない』ということを想定して患者の看護にあたる必要があります。

 

参考文献

著明な低Na血 症を示 した TUR症 候群の一症例(昭和医会誌 第67巻 第5号 444-447|田中雅輝 遠井健司 他|2007年)

経尿道的前立腺切除術 ( TURP )の 合併症 とその対策に関する検討(北里医学 18巻 163~176|1988年)

大野明子 看護師

兵庫県神戸市出身。兵庫県内の一般病院(泌尿器科)で5年勤務の後、キャリアアップのために同県内の大学病院へ転職。泌尿器科で2年、透析科で3年勤務し、出産を機に離職。現在は3児のママとして、専業主婦をしながら空いた時間にライター業務を行っている。

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