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看護師の夜勤事情|データからみる平均的な回数・人数・時間・手当(2017/10/15)

公開日: : 最終更新日:2021/05/31 お役立ち 東京都 全科共通 

看護師の夜勤

多くの医療施設の勤務形態の中に「夜勤」があります。夜勤を行うことの利点として手当がつくというのがありますが、生活リズムの乱れに伴う身体的疲労という大きな欠点も存在します。

看護師として働く以上、夜勤は避けては通れないものですが、すべての医療施設で夜勤があるわけではありません。また、そもそも夜勤がない領域も存在します。

今回は、看護師の夜勤事情について詳しく解説しますので、自身の現状や理想と照らし合わせて、夜勤を続けていくべきかなど、今一度考えてみてください。

 

1、夜勤の必要性

まず、なぜ夜勤が必要なのかについてご説明します。入院設備が整っている(病床のある)医療施設では、24時間体制で患者の観察・管理が必要になってきます。

万が一、観察・管理をする人材がいないと、患者の容態が変化した場合や、転倒・転落など事故が発生した場合などに対処することができません。そのため、必ず看護師を含めた医療関係者が24時間体制で常駐しなければならないのです。

一昔前では、医療・看護師体制が整っておらず、曖昧であったために、医療施設の中には夜勤1人というところが多く存在していましたが、現在では2人以上を必須とする動きが強く、ほとんどの医療施設では2人~4人体制をとっており、一昔前と比べて患者の安全面や看護師負担の軽減など、医療・看護体制はより良好になっています。

しかしながらその反面、看護師不足は今も昔も変わりないために、夜勤時間においては縮小する動きがほとんど見受けられません。24時間体制での患者の観察・管理は必要でありながら、夜勤体制の根本的な改善は未だに図られていないのが現状です。この解決には人員の確保が大きく関係しているため、看護師不足が続く限り、根本的な改善はみられないと考えておいた方がよいでしょう。

 

2、夜勤の勤務形態(2交代制・3交代制)

夜勤における人員の確保においては、一昔前よりも良好になったものの、交代制勤務の形態においては、実質的に悪化しているとも捉えることができます。1992年以前には、診療報酬制度上、3交代制が基本とされていました。しかし、1992年以降になってから、保険医療施設の実情に応じて2交代制の勤務形態があっても差し支えないという見解が強くなり、事実上の2交代制が容認されました。

通常、3交代制では準夜勤が16:30~01:00、深夜勤が0:30~9:00となり、一回あたりおよそ8~9時間で日勤と変わらない勤務時間となっていますが、2交代制では16:30~9:00となり、およそ16時間もの間、医療施設内に常駐しておく必要があります。

16時間もの夜勤が行われているのは国際的にもみても日本ぐらいであり、長時間の夜勤は身体的にも精神的にも負担が大きく、看護業務への悪影響はもちろん、看護師自身の健康にも悪影響を及ぼしているのが実情です。

3交代制では、「日勤―深夜」という短い間隔での勤務が組み組み込まれることがあり、これが2交代制導入の容認の背景となっていますが、労働基準法により最低2時間の仮眠が定められているものの、仮眠なし(実質的に仮眠がとれない)の医療施設が多いのも事実です。それゆえ、2交代制の容認に伴って、夜勤における看護師の負担が大きくなったとも捉えることができるのです。

 

3、夜勤を行うことの問題点

患者の命を預かる以上、24時間体制での観察・管理は必要不可欠ですが、上述のように、夜勤における根本的な改善は未だ図られていないために、現在でもさまざまな問題点が懸念されています。

特に、看護師自身の「心身への負担」や、生体リズムが乱れることによる「発がんリスク」、疲労・睡眠不足に伴う「患者へのインシデント・医療事故」、過労に伴う「離職率の増加」が問題視されています。

 

3-1、心身への負担

夜勤を行うことでの最大の懸念点が看護師自身の心身への負担です。人間には、朝から夜まで活動し、夜から朝まで睡眠をとるという生体リズムが存在します。

このリズムが崩れてしまうと、自覚症状はなくても知らぬうちに心身の負担が増大していきます。

24時間医療を提供する病院においては、夜勤・交代制勤務は避けては通れない。しかし、夜勤・交代制勤務は少なからず健康上・安全上・生活上のリスクを伴うものである。人間はそもそも昼間活動して夜には睡眠を取るようになっている。夜勤はその生理に反しており、同じ時間働いたとしても昼間に働く以上に心身への負担は大きい。夜間に睡眠が取れず、交代制で生活のリズムが作りにくいことから、睡眠不足となったり、睡眠を取れてもその質が悪く、十分に疲れが取れないまま次の勤務が始まってしまうことになる。こうして疲労が蓄積されることにより、注意力・判断力の低下が起き、安全面でのリスクも高まる。さらに中長期的には、循環器系機能への負担や発がん性のリスクも指摘されている。また、通常の日 勤者と違うサイクルで生活していることから、社会参加や家族との時間が確保できないなど社会生活上でのリスクもある。

引用:看護職員の労働時間問題に関する研究委員会報告書 連合総研 2013年10月

 

3-2、発がんリスク

また、発がんリスクに関しても懸念されています。WHOの専門機関であるIARC(国際がん研究機関)が公表している発がんリスクの一覧は、交代制勤務(夜勤)を行うことで、発がんリスクを高めると発表しています。

発がんリスク

出典:看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ 日本看護協会

 

さらに、Hansen JとStevens RGが行ったデンマーク看護協会の看護師会員(女性)を対象とした研究結果によると、日勤のみの看護師よりも夜勤を行う看護師の方が、乳がんの発生リスクが高くなるとしています。

夜勤看護師の乳癌発生リスク

出典:看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ 日本看護協会

表は、看護師の勤務による乳がん罹患のリスクを示しています。オッズ比は、ある疾患などの罹患しやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度を言います。表中の調整オッズ比は年齢等の調整後の値です。この表からは主に以下のようなリスクがあることが読み取れます。

<期間>

○「日勤-準夜勤」を1として比較すると、午前0時以降を含む夜勤の経験期間が長いほど オッズ比が高くなる傾向にあり、20 年以上では2.1倍のリスクがありますが、5~10年で  も2.3倍のリスクであることを示しています。

<累積回数(午前0時以降を含む夜勤回数)>

○上記同様に、夜勤の累積回数が多くなると「日勤-準夜勤」の2倍以上ものリスクがあることを示しています。

<交代性勤務> 

○「日勤-深夜勤(2 交代)」は「常日勤」と比較すると、その経験回数が多くなるほどオッズ比は高くなり、732 回以上では2.6倍ものリスクになることを示しています。

○また、「日勤-準夜勤-深夜勤(3 交代)」は経験回数の多い場合も少ない場合も、「常日勤」と比較し約2倍近くのリスクがありますが、2交代よりリスクが低いことを示しています。

引用:看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ 日本看護協会

 

3-3、患者へのインシデント・医療事故

看護師自身の身体的・精神的疲労による患者の安全性も懸念されています。2交代制にしろ3交代制にしろ、夜勤を行うことで生体リズムが狂ってしまい、睡眠不足となることが少なくありません。

睡眠不足に陥ってしまうと、集中力の低下などを招き、ヒヤリハットやインシデント、場合によっては医療事故を引き起こしてしまいます。

齋藤君枝らの調査報告によると、看護師の7割が睡眠不足によるヒヤリハットを体験しており、ヒヤリハットの発生には夜勤が大きく関与しているとしています。

 

3-4、離職率の増加

看護師の離職率を徹底リサーチ!」でも述べていますが、慢性的な看護師不足に伴い、離職する看護師が多く、その原因の一つに夜勤による過労が挙げられます。

夜勤看護師の過労

出典:夜勤・交代制勤務の問題点が浮き彫りに 日本看護協会

対象者のうち「現在の勤務先からの離職を考えている」人は、「日勤のみ勤務者」が33.5%に対し、「三交代制勤務者」が42.5%、「二交代制勤務者」が48.8%と割合が大きくなっています。

また、夜勤の時間が長くなればなるほど、心身への負担が大きくなる、睡眠不足に陥るなどの理由から、離職率が高くなる傾向にあります。

夜勤看護師の拘束時間

出典:看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ 日本看護協会

◆これは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の夜勤の拘束時間と長時間夜勤による「(現在の勤務先からの)離職」と「(看護職以外への)転職」のリスクを示したグラフです。

◆左のグラフは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の夜勤の拘束時間を表しています。三交代では、「8.5~9 時間未満」が最も多く75.0%となっています。一方、二交代では、「16~17 時間未満」54.2%、「17~18 時間未満」30.8%が多く、「16 時間以上」の長時間夜勤をしている割合が合わせて87.7%となっています。

◆右上のグラフは、交代制勤務者の長時間夜勤による離職のリスクを表しています。夜勤の拘束時間が 「12 時間以上」の場合をみると、現在の勤務先からの離職を「考えている」 割合(56.7%)が「12 時間未満」の場合(49.2%)より高くなっています。

◆右下のグラフは、離職を「考えている」と回答した者について、看護職以外への転職のリスクを表しています。グラフの中で拘束時間が長くなるほど、(転職先を)看護職で探している割合が低くなっています。

引用:看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ 日本看護協会

 

4、看護師の夜勤に関するデータ

最後に、看護師の夜勤における平均日数や人数、時間、手当などについてご紹介します。就業する医療施設によって夜勤の勤務形態は異なりますが、それほど大きな開きはないと考えてよいでしょう。

ただし、中には施設側の理由により、夜勤の勤務形態が劣悪なところも存在していますので、就業している医療施設、就業を考えている医療施設の勤務形態と照らし合わせてみましょう。

なお、以下に提示するデータは、医労連・日本医療労働組合連合会が実施した調査を参照しています。

 

4-1、夜勤日数

3交代制

看護師の夜勤日数(3交代)

このグラフは、計2321棟における医療施設の1か月の平均夜勤日数(1985年~2014年)を示しています。1980代においては平均夜勤日数が8日以上であったものの、医療・看護体制の見直しを受けて、2014年時点では7.68日まで少なくなりました。

しかしながら、これは医療・看護体制の見直しの中で、「3交代制の場合の夜勤回数は月8日以内を基本とする」という動きが強くなったことによるもので、看護師不足の現状を踏まえた最低ラインです。よって、人材不足が顕著な医療施設では、月10日以上になる場合も当然あります。特にICUでは、9日以上の医療施設が半数近くを占めています。

看護師の組合別夜勤日数

組合別にみた1か月の平均夜勤日数です。大学病院での夜勤日数が最も長く、次いで地場一般病院、自治体となっています。大学病院が最も長いのは、比較的に病床数が多いことが要因に挙げられます。

2交代制

看護師の夜勤日数(3交代)

計2321棟における医療施設の1か月の平均夜勤日数(1997年~2014年)を示しています。各年で多少の推移はみられるものの、2014年時点における平均夜勤日数と1997年における平均夜勤日数の開きはそれほど大きくはありません。このグラフから分かるように、看護・医療体制の改善は図られているものの、人材不足などにより、未だ2交代制勤務における改善はみられません。

看護師の組合別夜勤日数

組合別にみた1か月の平均夜勤日数です。最も平均夜勤日数が長いのが地場精神病院となっていますが、3交代制で最上位に位置していた大学病院は、2交代制においても上位に位置しています。ゆえに、大学病院での就業を考えている方は、夜勤についてしっかりと調べておいた方がよいでしょう。

 

4-2、夜勤人数

3交代制

看護師の夜勤人数(準夜勤)

上のグラフは、計2237棟の医療施設における準夜勤人数を示しています。2014年時点においては、1人が2.4%、2人が23.6%、3人が51.1%、4人が17.5%、5人以上が5.5%となっており、3人以上の医療施設は全体の74.1%を占めています。

看護師の夜勤人数(深夜勤)

計2221棟の医療施設における深夜勤人数を示しています。2014年時点では、1人が1.9%、2人が29.9%、3人が52.8%、4人が10.5%、5人以上が4.9%となっており、3人以上の医療施設は全体の68.2%を占めています。

2交代制

看護師の夜勤人数(2交代)

計856棟の医療施設における夜勤人数を示しています。2014年時点においては、1人が5.7%、2人が16.8%、3人が49.9%、4人が22.5%、5人以上が5.0%となっており、3人以上の医療施設は全体の77.5%を占めています。

 

4-3、夜勤時間

3交代制

一般的に、準夜勤の場合は16:30~01:00、深夜勤の場合は0:30~9:00となっており、開始時間や終了時間に多少の違いはあっても、勤務時間についてはそれほど変わりはなく、準夜勤・深夜勤ともに8時間30分となっています。

看護師の月平均夜勤時間は「72時間以下であること」というルール(通称「72時間ルール」)が存在するため、「4-1、夜勤日数」にあるように、2014年時点における3交代制の平均夜勤日数が7.68日となっているため、多くの医療施設では72時間ルールが守られています。

2交代制

2交代制の場合、16:30~9:00が一般的であり、うち休憩時間が30分~1時間、仮眠時間が2時間~3時間となっています。16時間が一つの指標であり、16時間以下に設定する動きがみられるようになったために、以前と比べて16時間の長時間夜勤は減ったものの、未だ半数以上の医療施設が16時間以上の勤務時間を設定しています。

 

4-4、夜勤手当

手当においては、基本的に医療施設によるところが大きいのが実情です。“22時~5時”の間に勤務した場合には、「対象給与額の25%相当の割増賃金を上乗せ支給すること」が労働基準法で定められていますが、「夜勤1回につき○○円」というように定額支払いを採用しているところが多いため、確認しておく必要があります。

一般的には、3交代制の場合が1回あたり5000円(準夜勤・深夜勤)、2交代制の場合は10000円程度支払われます。これよりも少ない医療施設もありますので、募集要項に記載されている場合はそれを参考に、記載されていない場合には電話や面接の際に、しっかりと確認しておきましょう。

 

以上が現状における看護師の夜勤データとなりますが、就業先を選択する際に夜勤を参考にする場合には、まず夜勤日数と夜勤時間の兼ね合いをみて、「72時間ルール」がしっかりと守られているかどうかを指標にするとよいでしょう。

また、現在では3交代制・2交代制ともに、3人以上が一般的となっていますので、就業先での夜勤人数についても確認しておきましょう。

 

まとめ

看護師の離職理由には、「看護師辞めたいあるある|新人,悩み,ストレス,人間関係,理由108選」に記載のようにさまざまですが、夜勤における過労も大きな比重を占めています。

2016年の診療報酬改定では、看護師の夜勤についての要件が大幅に改定され、軽減負担への取り組みが強化されましたが、看護師不足が顕著な現状において、そう簡単に改善されるものではありません。むしろ悪化する可能性だってありえます。

看護師の就職率は非常に高く、就業先の選択肢はたくさんありますので、辛い夜勤に悩み転職を考えている方は、転職先の夜勤状況をしっかりと確認しておきましょう。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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