看護師求人ならジョブデポ看護師 腰椎麻酔の看護|方法や副作用・術後合併症の看護観察項目とその手順|ナースのヒント
ナースのヒント
いまさら聞けない!看護技術

腰椎麻酔の看護|方法や副作用・術後合併症の看護観察項目とその手順(2017/03/21)

公開日: : 最終更新日:2018/01/18 看護師 看護技術 福岡県 手術室 

腰椎麻酔の看護

麻酔には局所麻酔、浸潤麻酔、腰椎麻酔、全身麻酔など様々な方法がありますが、その目的は単に手術中に眠らせたり、痛みをなくしたりすることだけではありません。

手術によって生じる身体的・精神的ストレスから患者を守り、手術が円滑に行えるようにすることで、より安全に手術を受けることができるのです。

麻酔の方法は、全身状態や手術の内容により異なりますが、ここでは腰痛麻酔にスポットを当てて説明していきます。腰椎麻酔の特徴を理解し、実際の看護に生かせるように学習していきましょう。

 

1、腰椎麻酔とは

腰椎麻酔とは下半身麻酔のことで、脊髄くも膜下麻酔または脊椎麻酔とも呼ばれています。大腿や膝、足、膀胱、子宮、肛門、虫垂など下半身の手術に対し用いられます。

下半身だけに麻酔がかかるため、意識は保たれます。

 

1-1腰椎麻酔のメリットとデメリット

腰椎麻酔は、意識が保たれた状態で行われるため、呼吸・循環の管理が行いやすく、手技も比較的簡単です。全身麻酔に比べると麻酔薬の投与量や合併症のリスクが少なく、十分な無痛と筋弛緩を得ることができます。また、必要物品も少なく、薬品も安価なものが多いため経済面でのメリットもあります。

デメリットとしては、手術範囲が横隔膜以下に限られること、麻酔高が高くなると呼吸抑制が起こる可能性があること、長時間の手術には不向きで神経学的な合併症出現リスクがあることが挙げられます。

 

2、腰椎麻酔の方法と手順

脊椎のくも膜下腔に、注射針を穿刺して麻酔薬を注入します。脊髄神経の前根と後根を麻痺させることにより麻酔効果を得ることができます。実際に腰椎麻酔がどのような手順で行われるか説明します。

 

①患者を即臥位にします。両膝を抱えるような姿勢をとり、顔は臍のあたりを覗き込むような体

位をとります。患者の背部をなるべくベッドの端によせ、実施者が処置をしやすい位置で体位

保持します。

②穿刺部を確認し、マーキングします。穿刺部位となるL2~L4の棘突起にマジック等でしるしを

つけます。

③穿刺部位を消毒しドレーピングします。消毒は穿刺部位を中心に広く行うようにします。

④穿刺部位へ局所麻酔を行ったのち、くも膜下腔への穿刺を行います。穿刺針がくも膜下腔に

達すると、無色透明の脊髄液の流出が確認できます。

⑤脊髄液の流出を確認したのち、薬剤を注入していきます。麻酔の効果を判定するとともに、

麻酔高の確認を行います。予定麻酔高を得るために、頭低位や頭高位など、体位で調整して

いきます。

⑥麻酔高が十分で全身状態に問題がないことを確認し、手術準備に移ります。

 

3、腰椎麻酔の合併症

腰椎麻酔では、血圧低下頭痛、吐気・嘔吐尿閉、脊髄神経麻痺などの合併症が起こる可能性があります。

 

■血圧低下

交感神経を遮断し、骨格筋が弛緩されることにより、末梢に血液が停滞しやすくなるため、静脈環流が減少し、末梢血管抵抗が減少することにより血圧低下が起こります。

 

■頭痛

穿刺孔からの髄液漏出に伴い脳圧が低下し頭痛が引き起こされます。

 

■吐気・嘔吐

麻酔薬による呼吸抑制や血圧低下による低酸素などにより吐気・嘔吐が出現することがあります。

 

尿閉

麻酔により仙骨部の副交感神経が遮断されることにより、一時的に尿閉が起こったり、穿刺時の神経損傷により、排尿・排便障害が引き起こされることがあります。

 

■脊髄神経麻痺(馬尾症候群)

穿刺時の機械的刺激などにより脊髄神経根馬尾が圧迫され、膀胱直腸神経や会陰部から下肢の知覚や運動神経の障害が起こることがあります。

 

4、腰椎麻酔の観察のポイント

腰椎麻酔は意識のある状態で行われます。呼吸や循環などの一般状態の観察に加え、神経障害などの合併症の有無に注意して観察していきましょう。また、意識のある中での処置や手術は、患者に大きな不安を与える可能性があるため、患者の精神的状態についての観察も必要となります。

 

まとめ

腰椎麻酔は、全身麻酔に比べて簡便で、患者に与える身体的ダメージも少なく、術中・術後の管理がしやすいとされていますが、腰椎麻酔に伴う合併症のリスクはゼロではありません。腰椎麻酔によるリスクをあらかじめ把握した上で、患者の不安や精神的ストレスを最小限にとどめ、合併症の早期発見、予防ができるようしっかりと患者の状態を観察し、患者に合ったケアの提供をめざしていきましょう。

加藤裕子 看護師

福岡県福岡市在住、看護師歴8年。福岡市内の一般病院でICUとして2年、手術室看護師として6年就業。現在はツアーナースとして各地で看護業務を行いながら、九州各地の病院・クリニックへの取材、ライター活動などを行っている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします

こちらの記事もおすすめ

看護研究 お役立ち

看護研究(論文)のテーマの決定法と効果的な書き方

どのように看護研究を進めたらいいのか、どのように論文を書けば良いのかなど、初めての方は特に試

記事を読む

中国人 お役立ち

中国人看護師を呼び込み ドイツ

将来の看護師不足が懸念されるドイツで、中国人看護師をドイツ国内に呼び込む実験プロジェクトが開

記事を読む

統合失調症 看護計画

統合失調症の看護|陽性・陰性症状と各治療に基づく看護計画

統合失調症はさまざまな症状が存在し、患者さんによって発現する症状が異なり、さらに原因もさまざ

記事を読む

助産師資格看護 お役立ち

助産師|養成学校の概要と助産師資格に関する試験・過去問

助産師の就業人数は、平成27年(2015年)時点で38,486人、同年の出生数が1,008,

記事を読む

特別養護老人ホーム お役立ち

特別養護老人ホームで働く看護師に求められるのは、7つの役割とピンチの対応!

特別養護老人ホームは要介護高齢者のための施設で、ADL介助の全般に加え機能訓練や療養上の世話

記事を読む

風疹・麻疹看護 看護用語

【2023年最新】麻疹・風疹の看護|予防接種や症状・合併症、発熱時の看護

麻疹(はしか)や風疹は予防接種がありますので、そこまで感染者数

授乳看護 看護技術

【2023年最新】授乳の看護|目標や姿勢、観察項目と看護ポイント

産科病棟で勤務している看護師は、出産後の母親の授乳の看護ケアを

食中毒看護 看護用語

【2023年最新】食中毒の看護|原因・症状・看護・予防

食中毒は腹痛や嘔吐、下痢などを引き起こす疾患です。 以前

スキンケアの看護 看護計画

【2023年最新】スキンケアの看護|看護目標・計画と手順・資格

あなたはスキンケアに力を入れて看護していますか?入院中の患者さ

腹痛の看護 看護計画

【2023年最新】腹痛の看護|観察ポイントやアセスメント・部位別疾患と看護計画

腹痛の患者さんを看ることは多いと思いますが、あなたはきちんと腹

看護師求人 ジョブデポ