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化膿性脊椎炎の2つの基本的治療、抑えておきたい看護のポイント(2018/08/27)

公開日: : 最終更新日:2021/03/17 看護師 看護計画 埼玉県 整形外科 

化膿性脊椎炎の看護

化膿性脊椎炎は、細菌が脊椎に入り込んで炎症を起こす疾患です。40~50代に多く、男性が女性の2倍の発生頻度があるとされていましたが、近年は高齢者の発症も増加傾向にあります。化膿性脊椎炎の病態生理と基本的な治療、看護師に求められることをまとめました。

 

1、化膿性脊椎炎 とは

化膿性脊椎炎は細菌が脊椎に入り込んで炎症を起こし、重症化すると膿が神経を圧迫して麻痺を呈し、重篤なケースでは敗血症を併発する疾患です。感染症であることから、感染性心内膜炎や糖尿病などの基礎疾患を有する人に多いとされていますが、近年は高齢者やがんの術後など、免疫力の低下した易感染性宿主(compromised host)の増加が問題になっています。まずは化膿性脊椎炎の症状・原因から理解を深め、基本的な治療方針とそのために必要な看護を検討し、看護計画に発展させていきましょう。

 

1-1、化膿性脊椎炎の症状

・発熱

腰痛、頸部痛(発症部位の多くが腰椎と頸椎であるため)

・殴打痛

・圧痛

・運動痛

・下肢のしびれ

・下肢の筋力低下、麻痺

主な症状は発熱と疼痛で、痛みは感染部位(病巣)に起こります。感染部位は腰椎が半分以上を占め、頸椎・胸椎がその後に続きます。多くの感染部位が腰椎であることから、化膿性脊椎炎の症状としては腰痛が多くを占めています。

しかし、発熱については腰痛緩和のために鎮痛薬を使用しているケースや高齢者では典型例を示さないことから、発熱がいつから起きているかや熱型などの詳細がはっきりしないことも多々あります。

痛みの種類は殴打痛・圧痛・運動痛があり、初期から訴える患者がいる一方で、はっきりしないこともあります。診断と治療が遅れて、膿瘍が脊柱管内に侵入した場合や椎体破壊によって脊柱管が圧迫されると、下肢のしびれや麻痺などの神経症状を呈するようになります。重篤な場合では敗血症を併発し、易感染性宿主にとっては致死的となるケースもあります。

 

臨床現場では腰痛という症状からすぐに化膿性脊椎炎と診断することは難しく、IDSA(米国感染症学会)のガイドラインでは、病歴・身体所見・血液検査を“総合的にみて疑うべき”と提言しています。

化膿性脊椎炎の診断には、同じように脊椎に炎症を起こす「結核性脊椎炎」や類似する所見を呈する「転移性脊椎腫瘍」との鑑別診断も含め、CTやMRIなどの画像検査が有効です。とくにMRIでは90%の診断率があるとされています。

化膿性脊椎炎

出典:化膿性脊椎炎(徳山貴人|2013年11月1日)

 

上の写真では、化膿性脊椎炎の所見として以下の内容が見られます。

・椎間板腔の狭小化

・椎体上下縁の不整像

・椎間板上下の椎体の信号変化

 

化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis、椎体炎)のMRI画像診断はこちらの動画でも詳しく説明されていますので、参考にしてください。

 

https://youtu.be/gcQp0ktluOg

出典:化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis、椎体炎)のMRI画像診断

 

化膿性脊椎炎は、腰痛や発熱といった自覚症状に加え、ガイドラインにのっとった採血・各所見による診断と画像診断を総合して初めて確定診断がつくものと言えるでしょう。では、今度は化膿性脊椎炎を発症してしまう原因について考えていきましょう。

 

1-2、化膿性脊椎炎の原因

化膿性脊椎炎の原因は、脊椎の細菌感染です。基礎疾患として感染性心内膜炎などの先行する感染症や、易感染状態となる糖尿病やがんがあります。また、近年は高齢化によって高齢者の罹患も増加しています。感染経路の主たるものは血行性で、黄色ブドウ球菌が約半数を占めます。

 

<化膿性脊椎炎の感染経路>

・血行性(他の病変から流れてくる)

・外傷や手術による直接感染(尿路感染など)

・近くの組織からの浸潤・連続感染

 

<化膿性脊椎炎の起因菌>

・S.aureus(黄色ブドウ球菌)

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

・E.coli(大腸菌)

・Streptococcal species(連鎖球菌)

CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)

・Pseudomonas auruginosa(緑膿菌)

 

化膿性脊椎炎は更に、発症時の熱型や自覚症状によって3つに分類することができます。

<Kulowski分類>

急性型 高熱、強い腰背部痛など典型的な急性症状で発症するもの
亜急性型 37度台の微熱で発症するもの
慢性(潜行)型 発熱がなく、腰背部痛をきたすもの

化膿性脊椎炎は、なかなか早期診断の難しい疾患です。腰痛症の患者は整形外科受診者の多くを占めますし、安易な鎮痛薬の使用によって発熱を確認できないこともあります。

また、化膿性脊椎炎と症状が類似する転移性脊椎腫瘍との鑑別も重要です。診断の遅れは感染による重篤化や治療の遷延を招き、更に悪化すると麻痺や敗血症を引き起こし致死的な状態を招くこともありますので、早期の診断と起因菌の同定が治療の要となります。

典型的な症状を示す急性型と違い、亜急性型や慢性型は確定診断をつけるまでに時間を要することがありますが、早期に診断して以下に述べる治療につなげることが、重症化予防にとって重要です。

 

2、化膿性脊椎炎 の治療

化膿性脊椎炎の治療は、抗菌薬の適切な投与と、装具の使用を含めた局所の安静です。しかし、抗菌薬に抵抗性を示し、高度な椎体破壊や急性に麻痺が進行するケースでは手術が適応となります。

治療は血液培養で陽性を確認するとともに、感受性検査も行うことから始まります。抗菌薬は起因菌に対して感受性のあるものでなければ効果が得られないため、治療前の血液培養では起因菌同定が必須となります。そのため、検体は2セット(感染性心内膜炎の合併が疑われる場合は3セット)採取することが望まれます。血液培養の結果が陰性の場合、確定診断には針生検が必要となるため、血液培養よりも侵襲度は高くなります。

 

3、化膿性脊椎炎の看護過程

化膿性脊椎炎の基本的治療は適切な抗菌薬投与と安静です。そのため、化膿性脊椎炎の患者に対する看護の必要性は、疾患の理解や安静の徹底、ADLの制限に伴う介助など多岐にわたります。

①化膿性脊椎炎の重症化予防と早期発見の必要性がある

②化膿性脊椎炎に伴う疼痛がある

③化膿性脊椎炎の治療による安静から、筋力低下を起こす

 

4、化膿性脊椎炎  看護計画

上に挙げた化膿性脊椎炎の患者が抱えている問題に対し、ここでは①に注目して、看護計画を立案していくことにします。

 

①化膿性脊椎炎の重症化予防と早期発見の必要性がある

目標:疾患を理解して安静が保持できる

疼痛や神経症状などの症状を、医師・看護師と共有することができる

 

OーP(観察)

1、疼痛の有無・程度、部位

2、神経症状の有無(しびれや脱力感・麻痺など)

3、バイタルサイン(発熱の有無)

4、血液データ(CRP・WBC・血沈などの炎症所見)

5、血液培養の結果

6、化膿性脊椎炎に対する患者の理解度

7、患者の訴え

 

TーP(実施)

1、医師の指示により抗菌薬・鎮痛剤を適切に使用する

2、安静期間は必要に応じて清潔・排泄等のADLの援助を行う

3、ADLの援助を行う際には、プライバシーを確保する

4、呼びやすいようにナースコール(ボタン)の場所を配慮する

 

EーP(教育)

1、化膿性脊椎炎の疾患について説明する

2、安静の必要性、治療計画を説明する

3、異常を感じたときやADLの介助が必要なときは、遠慮なく言うように説明する

 

まとめ

化膿性脊椎炎は症状だけで鑑別診断することが難しい疾患ですが、治療が遅延すればするほど重症化します。入院患者には安静をしっかり守るように教育していくことに加え、神経脱落症状の出現など症状増悪時にはすぐに訴えるように説明し、重症化を防ぐ必要があります。

更に、ADL制限に伴う苦痛を少しでもやわらげること、安静による下肢筋力低下などの二次的な障害の発生を予防するようにリハビリ等コメディカルと連携することも、看護師には求められます。

 

参考文献

・化膿性脊椎炎(徳山貴人|2013年11月1日)

整形外科疾患ビジュアルブック(学研メディカル秀潤社|落合慈之、下出真法|2018年1月29日)

沢田希望 看護師

埼玉県在住。埼玉県内の大学病院(整形外科)で正看護師として5年勤務した後、結婚・出産を機に離職。現在は2児のママとして、育児をしながらライターとして活動している。趣味はヨガ。産後の体型維持のために始めたものの、今では体幹トレーニングなど、スポーツとしての楽しみを感じている。

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