HCUの看護|看護必要度に応じた配置基準・体制と看護師の役割(2017/08/22)
HCU(高度治療室)での看護師の仕事は、一般の病棟とは違い集中的なケアが必要な患者を看護することであり、ICU(集中治療室)に準じた知識や技術が必要になります。ここでは、HCUの看護について詳しくご紹介していきます。
1、HCUとは
HCU(High Care Unit高度治療室)は、集中治療室と一般病棟との中間に位置する病棟で、集中治療室での緊急の状態から病態が落ち着いた患者や、一般の病棟で状態が悪化した患者、手術後の管理が必要な患者など、様々な患者のケアに当たります。ICUよりは集中しての管理やケアが必要ないとはいえ、HCUに入院する患者は一般の病棟と比べると生命に大きく関わるレベルの患者層であり、患者の状態について適切に観察し、正しくアセスメントし、処置や緊急時の対応をすることが必要になり、緊張感がある環境になります。一般の病棟とは違い、専門の科ではないために、幅広い総合的な知識も必要です。また、集中治療室からの緊急の状態を脱した患者の、一般病棟への転棟へ向けた支援も行うこともHCUの看護師の大切な役割となります。
2、HCUの看護必要度
看護必要度とは、患者の状態や処置の状況などを点数によって採点し、看護師の業務量を評価するものですが、HCUの場合、一般の病棟とは違って、「ハイケアユニット入院医療管理料」を算定するために、HCU用の評価表によって評価します。これは厚生労働省が定める診療報酬の評価ですが、2年ごとに見直されます。これによって評価の内容などが変更になることがありますが、看護必要度の基本的な考え方としては、患者それぞれにどのような医療や看護が行われているのかということを毎日評価する指標で、患者の状態を重症度、医療の高度レベルを数値化して評価するものということになります。また、看護必要度を評価することによって、どのような状況の患者がいて、どれくらいの業務量となっているのかということも評価できます。これにより、業務に携わる看護師の必要な人数や、適正な業務量を計ることができます。
平成28年度 看護必要度の評価表
出典:メディ・ウォッチ データが拓く新時代医療(2016年)
この表ではICUの算定条件ですが、HCUではA項目が3点以上、B項目が4点以上であることが算定基準になります。A項目については一般病棟の評価表と同じものになります。点数が高いほど重症であると判断され、看護ケアや処置、医療機器の管理などの看護必要度が高いということになります。このように、看護必要度の点数が高いほど看護ケアも重度になるため、HCUでの看護ケアはICUや一般病棟に比べて、全身管理や異常の早期発見に努めながら、一般病棟への転棟を目指しての日常生活の援助を行うため、看護業務は多岐にわたっていて多忙であり、幅広い知識や技術が必要になります。
3、HCUの看護配置基準・体制
HCUは高度治療室という位置にあり、一般病棟が7:1の看護配置であるのとは異なり、ハイケアユニット入院医療管理料の施設基準を満たすために4:1の看護配置が取られています。つまり、患者人数が4人に対して1人の看護師がつくように、患者と看護師のバランスを取るように決められています。HCUは看護師1人が受け持つ患者の人数が、一般病棟よりも少なくなっています。それは、HCUは一般病棟に比べて、全身観察や異常の発見、処置や検査など、より複雑で看護度が高いケアを必要とするため、1人の患者に対する看護度が高いため看護師1人が担当する患者の人数が少なくする必要があるからです。同じ考えとして、ICU(集中治療室)は2:1の看護配置を取っており、患者2人に対して看護師1人が担当するようになっているのです。
4、HCUの看護師の役割
HCUでの看護師の大きな役割は、一般病棟に転棟できるように身体的な回復のためのケアと日常生活の援助という、心と体のケアを行うことです。HCUの患者は、ICUでの病態が落ち着いたものの、引き続き集中的な治療が必要な患者や、急性期から脱して一般病棟や退院へ向けての支援を行う必要のある患者や、状況が悪化して集中的な管理が必要な一般病棟からの患者を受け入れています。そのため、状況的には身体的にも精神的にも不安定であり、患者本人やその家族にも不安が強いことが多いため、安全・安楽に努めながら不安を軽減し、身体的な回復のために治療に専念できるように関わる必要があります。また、様々な原因から集中的な治療を継続的に行う必要があるため、医療機器の取り扱いや状況の変化を見逃さないようにするという、ICUに近い高度な看護が必要であり、専門の科のみの患者と関わるというわけではないため、広い医療や看護の知識や技術、責任が必要になります。さらに、一般病棟への転棟のために、日常生活に戻るための援助も必要で、ICUよりも受け持つ患者の人数が多くなるために、業務は多岐にわたり、多忙なこともあります。
HCUの患者は入れ替わりも多く、短期間での関わりが主になります。その関わりの中で、急変の患者の管理や、一般病棟への転棟が間近の患者のケアなどそのレベルに合わせて看護を行っていきます。常に、緊急時や状況の変化に対応しつつ、患者の日常の援助を行っていくのがHCUでの看護業務といえます。長期にわたって関わる看護とは違い、HCUでの看護は短いある一時期を関わるものにはなります。その責任は重大ではありますが、急性期を乗り越えた患者の姿を見ることは、看護師としてとてもやりがいのあるものとなるのです。
5、HCUの看護師の勉強
HCUで働くためには、循環器系、呼吸器系の知識は基本的に必須なものとなります。心電図の読解や、バイタルサインのアセスメントはもちろん、循環や呼吸の管理の基本を勉強しておく必要があります。その他には、輸液ポンプやシリンジポンプ、人工呼吸器などの医療機器の取り扱い、循環器や呼吸器の疾患や、外傷、骨折などの整形外科的な知識、脳外科的な知識も必要です。まずは、基本的なバイタルサインや心電図などの部分から知識を深め、不明点や問題点があれば、その都度相談することでさらに知識を深めることができます。HCUでは先輩看護師や医師に相談することも大切なことであり、毎日勉強ができ、看護技術を習得できる場でもあります。様々な状況の患者の管理や看護を行うHCUは、様々な経験をすることで、看護師としての知識や技術を多く経験し、他の科では経験できないことが習得することができます。HCUの患者と関わる中で、必然的に資料や本で調べたりすることもあります。緊急的な状況や、幅広い知識が必要なためにハードに感じるかもしれませんが、看護師としてはとても勉強になる現場であり、キャリア形成にも有意義な経験になるとも言えるのです。
まとめ
HCUは一般病棟とICUとの中間的な位置付けであり、その看護業務はICUのような集中的な管理と、一般病棟のような日常生活の援助など、幅広いものです。また、異常の早期発見という役割も担い、重大な責任があるものでもあります。必要な知識は多岐にわたり、多忙な業務でもありますが、一般病棟では経験することができないような総合的な看護を経験することもできます。HCUでの患者の看護ケアは、全身観察や日常生活援助など、看護技術を深めることにもなるのです。
参考文献
看護必要度Q&A−あなたの疑問に答えます−(オーム社|田中彰子・筒井孝子監修|2015年)
中央社会保険医療協議会総会審議会資料(中央社会保険医療協議会総会審議会総会(第328回)|厚生労働省|2016年2月10日)
1965年生まれ、静岡県静岡市在住。スタッフナース歴11年、看護師長歴2年。静岡県内の大学で教育を学び、卒業後は小学校教諭として勤務。後に看護師の道に目覚め、看護学校へ入学し、同県内の総合病院(循環器科)へ就職。現在はイベントナースやツアーナース、被災地へのボランティアなど、幅広い分野で活躍している。
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