介護施設・ケアハウスで働く看護師の5つのメリット(2017/10/25)
看護師の働く場は、総合病院だけにとどまりません。新人として勤務するのは総合病院の病棟が多いと思いますが、そこで基礎を身につけた後は様々な場所に活動の場を広げることができます。今回は、介護施設やケアハウスで働く看護師の仕事についてまとめました。
目次
1、介護施設やケアハウスで働く看護師の仕事内容は?
高齢者の増加により、介護を必要とする人の数も年々増大しています。在宅で介護をすることは家族の負担が大きく、独り暮らしの高齢者も増えているため、介護施設やケアハウスの需要は高まる一方です。介護施設やケアハウスでは、原則大きな治療を行うことはありません。では、介護を主とする場で働く看護師の役割は、何があるのでしょうか?
<介護施設やケアハウスでの看護師の役割>
・薬(投薬)管理
・バイタルサインの測定と入居者の健康観察 ・日常生活動作の介助(排泄・入浴・食事等) ・通院(入院)の付き添い ・医師から指示された処置(創部や褥瘡など) ・家族と利用者間の連絡調整 ・施設全体の管理業務 |
介護施設やケアハウスの入居者のケア度は、年々重度化しています。しかし、これらの施設では、看護師に一番求められることは直接ADL介助につくことではありません。看護師は利用者の健康状態を含む全ての把握と、施設の全体の管理が求められるのです。看護師が施設管理者となることも多く、日本看護協会でも介護施設における看護管理者の確保・育成について対応を始めています。
2、介護施設では、看護記録をどう書くの?
医療機関と違い、介護施設では看護記録の基準が定まっていません。看護師だけではなく、介護士や資格を所有しないスタッフも助手として勤務している中で記録を共有・記載するので(施設によっては、看護師のみが記録するところもあります)、総合病院のようにSOAP形式や専門用語で記録を書くことができないからです。
記録を簡素化すると、病棟勤務をしている看護師達の残業の原因でもある看護記録や看護計画に割く時間は少なくなります。それがよいかどうかは別として、記録に時間をとられることが減ると、勤務時間をより利用者のために使うことができるのです。
3、介護施設やケアハウスでの看護目標は、どう立てるべきか
医療機関では、標準看護計画に基づいて計画を立案して評価することが義務付けられており、これらを満たした記録ができていなければ病院機能評価における認定病院にはなれず、病院としての格や診療報酬につながりません。
一方で介護施設やケアハウスは、治療の場ではなく生活の場です。看護師の目標も当然、治療に伴う治療や症状の軽快などが目標になるのではなく、利用者が心穏やかに生活することができるように、またそのための健康状態の把握が目標となります。しかし、介護施設やケアハウスにおいては、記録も看護計画の立案も各施設の基準にゆだねられています。つまり、形ばかりの看護計画や看護目標ではなく、利用者の本当の生活に密着したものにできるのです。これは記録として残すのではなく、施設全体の目標としてどのように入居者の生活を支援していくのかという理念にもなるでしょう。
4、介護施設やケアハウスで働く看護師の、研修事情
管理者となると別ですが、介護施設やケアハウスでは研修や勉強会に勤務時間外で強制的に参加させられるようなことはほとんどありません。一方で、スタッフの数が少ないために研修に出すだけの人的余裕がなく、施設内全体でスキルアップする風習がないという事実もあります。
家事・育児とかけもちをして働くことの多い看護師にとって、記録と同様に研修で勤務時間が延長してしまうことはできるだけ避けたいものです。学ぶことも大切ですが、家庭とのバランスを考えると、子どもの小さいうちには一時的に割り切って研修などをセーブするのも、一つの選択ではないでしょうか。そして落ち着いた頃には学ぶことを忘れず、そして施設内で共有すれば「お互い様」になりますね。
5、介護施設やケアハウスで働くメリットは?
ここまで、介護施設やケアハウスでの勤務内容についてお伝えしてきました。では、医療機関と比較してどのようなメリットがあるのかまとめてみましょう。
<介護施設やケアハウスで働く5つのメリット>
・看護記録や看護計画の立案などが少ないので、比較的残業が少ない
・参加を強制される時間外の研修がない ・デスクワークの時間が少ない分、利用者と関わる時間を多くとることができる ・勤務時間など、家事・育児の都合によって融通をきかせられるケースがある ・組織が比較的小規模なので、自分達で自由に決定できる範囲が広い |
まとめ
介護施設やケアハウスは医療機関にはないメリットもありますが、その分責任や判断力など、1人の看護師に幅広い知識と臨機応変な対応が求められます。自分の性格上の向き・不向きだけではなく、長い看護師人生におけるどこかで経験しておくのも非常に意義があるといえるでしょう。
参考文献
訪問看護・介護施設における看護管理者確保・育成に関する方向性について(案)(公益社団法人 日本看護協会|2017年4月7日)
医療施設および介護施設等における看護記録の現状(日本看護協会出版会Vol.58 No.13 51-54|鄭桂紅|2006年11月)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
ナースのヒント の最新記事を毎日お届けします