ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の看護|適応・原理・合併症とその要点(2017/08/17)
ESWLは衝撃波で体内の結石を破砕させる治療法になります。内視鏡での治療に比べて、侵襲が少なく、場合によっては外来通院での治療が可能になります。
ESWLの基礎知識や適応、原理、合併症、看護のポイントをまとめました。ESWLの治療を受ける患者の看護をする時の参考にしてください。
目次
1、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)とは
出典:体外衝撃波結石破砕術のご案内|三郷中央総合病院
ESWL(Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy=体外衝撃波結石破砕術)とは、体の外から衝撃波を結石に当てて、結石を粉々に砕く治療法です。
体外衝撃波結石破砕術の読み方は、「たいがいしょうげきはけっせきはさいじゅつ」です。
ESWLは、体にメスを入れることなく結石の治療を行えることがメリットです。治療時間は1時間程度になります。
そのため、基本的には1泊2日の入院、場合によっては外来通院での治療が可能です。外科的手術ではありませんので、治療が終わったらすぐに日常生活に戻ることができます。
また、痛みも強くありませんので、治療前に鎮痛薬の内服薬や座薬を使用しますが、麻酔を使わずに治療をすることが可能です。
ESWLは自然排出困難な5mm以上の結石を、尿や便と一緒に排泄される大きさである4mm以下に粉々に砕く治療になりますが、ESWLを複数回行っても結石を砕くことができない場合は、TUL(経尿道的尿管結石術)やPNL(経皮的人尿結石破砕術)を行うこともあります。
2、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の適応
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の適応は、尿路結石、胆石、膵石になります。
■尿路結石
出典:体外衝撃波結石破砕術のご案内|三郷中央総合病院
尿路結石は明らかな原因は不明ですが、リン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムなどが結晶化して、大きくなったものです。
尿路結石は小さな結石の場合は飲水を励行して、自然に尿と一緒に排出されるのを待つのが治療の第一選択になります。
でも、自然排出が期待できないほど結石が大きかったり、何度も強い痛みが出たり、水腎症や腎盂腎炎などを起こし腎機能が低下してきた場合は、ESWLでの治療の適応になります。
■胆石症
ESWLは一部の胆石症にも適応になります。胆石は胆のうや胆管に結石ができる病気で、心窩部を中心とした疝痛発作が症状の特徴で、右肩痛や背部痛などが現れることがあります。
胆石は胆汁成分の偏りや細菌感染が原因で胆汁成分が分解されることで、成分が結晶化して起こりますが、結石が発生する過程によって、様々な性状の結石が作られます。
その中でもESWLの適応となるのは、コレステロール結石です。純コレステロール胆のう結石でないと、ESWLでは粉砕できません。日本人の胆石は石灰化混合胆石が多いため、ESWLの適応にならないことも少なくありません。
また、直径2cm以下で3個程度まで、さらに胆のうの機能が正常でないと、ESWLの適応にはなりません。
■膵石
膵石は膵管内に作られた結石で、膵液の流出障害が起こるため、腹痛や急性膵炎を引き起こす原因になります。
膵石は慢性膵炎の患者の40%に見られるもので、アルコールの多飲や喫煙、高カルシウム血症、膵管奇形、低栄養などが原因です。
ESWLは膵石にも適応になります。以前は保険適用外だったのですが、2013年秋に保険適用が認められるようになりました。
膵石の場合は、ESWLを1回2時間、合計4~5回行わなければならず、施行時の痛みが強いことがあり、全身麻酔で行うこともあります。
■ESWLの禁忌
ESWLは侵襲は少ないものの、誰でも適応になる治療方法ではありません。次のようなケースはESWLの禁忌となっています。
・妊婦
・閉経前の女性の下部尿管結石 ・幼児や小児 ・抗凝固剤服用の患者、出血傾向がある患者 ・ペースメーカー装着患者 ・高度肥満患者 ・インプラントを装着している患者 ・腎機能が廃絶している患者 ・尿路感染症を合併している場合 |
このようなケースではESWLで治療をすることができませんので、そのほかの治療方法を選択することになります。
3、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の原理
出典:泌尿器科の病気:尿路結石症 病気の治療 | 徳洲会グループ
ESWLは破砕装置から衝撃波を発生させて、結石のみに当てることで、体の組織を損傷させることなく、結石のみを破砕する治療法になります。
レントゲンやエコーで結石に焦点を合わせて、1分間に約60回、1度の治療で3000~4000回の衝撃波を結石に当てます。結石にしっかり焦点を合わせることで、衝撃波が通る筋肉や皮膚、骨、内臓などの組織は損傷することはありませんし、皮膚への痛みも少ないのです。
衝撃波が結石に当たると、結石の表面で反射が起こりますので、高い圧力が発生し、その直後に通常の圧に戻ります。この時に、手前では陰圧になります。そうすると、外側に引っ張る力が生まれます。
高い圧力が発生することで、結石がいったんギュッと圧縮され、その後すぐに外側に引っ張る力によって膨張しますので、その力で結石の内部でひび割れができます。それを何度も繰り返すことで、結石が破砕され、細かく粉砕されるのです。
結石が細かくなることで、尿路結石は尿と一緒に排出され、胆石や膵石は消化管に流れて、便と一緒に排出されます。
4、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の合併症
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)は、侵襲が少ない治療法になりますが、それでも合併症が起こるリスクはあります。ESWLの代表的な合併症を説明していきます。
■血尿
尿路結石の場合、結石が破砕されることで、尿路の粘膜が傷つき、血尿が出ることがあります。血尿は尿路結石でESWLの治療を受けた患者のほとんどのケースで発生しますが、多くは数時間から数日でおさまります。
■皮下出血
衝撃波が当たる部位に皮下出血が見られることがあります。ただ、ほとんどの場合は軽症で、経過観察のみとなり、数日で消失します。
■尿管の閉塞
破砕した結石が尿管内に詰まり、疼痛が生じることがあります。この場合は、疼痛が落ち着くまで鎮痛剤を使用し、飲水量を増やして、尿と一緒に排泄するようにします。
■急性腎盂腎炎
ESWLで割れた結石から細菌が飛び散って、尿や腎臓に感染が起こり、腎盂腎炎を発症することがあります。38℃以上の発熱や背部痛などが症状で、入院して抗生剤の投与が必要になることもあります。
■腎被膜下出血
衝撃波の影響で腎臓の表面の毛細血管が傷ついて、腎臓周囲に血腫が生じることがあります。腎被膜下出血が起こると、血尿・疼痛の持続の症状が現れます。
■膵炎の増悪
膵石をESWLで治療すると、膵炎が悪化することがありますが、軽症の場合がほとんどで、重症化することは少ないです。
このほか、腹痛や頭痛、腰痛、嘔気・嘔吐、血圧上昇・低下、不整脈などの合併症が起こることがあります。
5、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の看護のポイント
ESWLの治療を受ける患者の看護をする時のポイントを説明します。
■合併症の観察
ESWLの治療は侵襲は少ないですが、合併症が起こるリスクがあります。心電図等のモニターを装着して治療を行いますが、モニターに異変はないか、患者の様子に変化はないかを観察するようにしましょう。
■疼痛の観察
ESWLの治療の前には、座薬等の鎮痛薬を使ったり、ソセゴンを筋肉注射で投与します。もともと痛みは少ない治療法ですし、治療中に疼痛を訴えるケースは少ないですが、人によっては強い疼痛を感じることがあります。
疼痛が強い場合は、追加で鎮痛薬を投与する必要がありますので、患者の疼痛の訴えだけでなく、脈拍数や血圧、表情などを観察して、疼痛の有無や程度を確認しておきましょう。
■治療後の安静
ESWLの治療は1時間程度で終わりますし、外来通院での治療が可能ですが、治療後は2時間程度安静にしてもらって、異常がないことを確認してから、帰宅することになります。
使用した鎮痛薬によっては、ふらつき等が見られることもありますので、転倒などに注意しなければいけません。
■生活上の注意の指導
ESWLの治療後は、すぐに日常生活に戻ることができますが、生活上の注意点がありますので、安静にしてもらっている間に、看護師は注意点の指導をしなければいけません。
・水分は多めに摂取すること
・結石の排出を促すために、軽い運動・体操を心がけること
・血尿が見られる場合、また治療後1~2日は腎臓に負担をかけるため、アルコールは控える
・帰宅後、疼痛や血尿が強くなる時には受診してもらう
結石を破砕した後は、体外に排出する必要がありますので、水分摂取を促すようにしてください。
■入院なら畜尿
入院してESWLの治療を受ける患者には、入院中は畜尿をしてもらいましょう。尿はガーゼ等で濾して、結石が排出されたかどうかを確認し、結石分析に出して、成分を確認します。
まとめ
ESWLの基礎知識や適応、原理、合併症、看護のポイントをまとめました。ESWLは尿路結石などの結石を衝撃波で破砕できる治療法です。
侵襲が少ないというメリットがありますが、合併症がありますので、看護師は合併症の有無を確認し、合併症について患者にきちんと指導しておくようにしましょう。
参考文献
体外衝撃波結石破砕術(ESWL) (社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院聖隷浜松病院)
膵石症の内視鏡治療ガイドライン2014 (厚生労働省難治性膵疾患調査研究班・日本膵臓学会|2014)
ESWL(公益財団法人星総合病院結石破砕センター|佐々木和哉)
身体を傷つけない治療(体外衝撃波結石破砕術)(医療法人社団太公会 我孫子東邦病院)
兵庫県神戸市出身。兵庫県内の一般病院(泌尿器科)で5年勤務の後、キャリアアップのために同県内の大学病院へ転職。泌尿器科で2年、透析科で3年勤務し、出産を機に離職。現在は3児のママとして、専業主婦をしながら空いた時間にライター業務を行っている。
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