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アナフィラキシーの看護|症状と原因、発症患者への治療・対応(2016/05/26)

公開日: : 最終更新日:2020/06/05 北海道 看護師 看護用語 全科共通 

アナフィラキシーの看護

アナフィラキシーの発症者は10万人当たり5~50人(0.005%~0.05)と推計されており、死亡者数は年間で約50~60人にのぼっています。

アナフィラキシーの早期症状の断定は困難でありながら、症状の進行が急速であるため、重篤化を防ぐためにはアナフィラキシーに関する深い知識が必要不可欠です。

早期発見・早期改善を図れるよう、症状、診断基準、原因、治療・対処法、看護などについて熟知しておきましょう。

 

1、アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックとは、食物や医薬品、ハチによる刺傷の際に、アレルゲンなどが体内に侵入し、複数の臓器に全身性のアレルギー反応を引き起こす、アレルゲンの過敏反応のことを言います。

アナフィラキシーの主な抗原曝露の経路には、食物など経口摂取による曝露、医薬品など皮膚粘膜を介した非侵襲的曝露、ハチに刺される侵襲的曝露などがあります。

アナフィラキシーを引き起こす発生機序にはIgE抗体」が深く関係しており、IgE抗体は末梢血液中の好塩基球や組織に存在するマスト細胞の表面に結合していますが、食物・医薬品・ハチなどの原因物質が入ると、IgE抗体に結合します。

その結果、好塩基球やマスト細胞が活性化され、ブラジキニン、ロイコトリエン、ヒスタミンといったケミカルメディエーターが一気に放出されます。これにより、さまざまなアレルギー反応が引き起こされます。

このように、通常、IgE抗体と結合することにより発症するアナフィラキシーですが、その発症機序は未だ完全には解明されておらず、IgE抗体と関与せずに発症する場合も多々あります。この場合には、アナフィラキシーショックではなく、「アナフィラキシー様反応」と分類されています。

また、食物摂取後に運動することで同様の症状を発症する、食餌依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれる症例も報告されており、さらに原因不明の症例も多々報告されています。

原因不明による死亡例も多く、さらに原因不明の場合にはアナフィラキシーの治療薬の投与により、症状悪化を招くこともあるため、迅速かつ適切な原因・病状の特定に加え、患者状態の綿密な観察が非常に重要となります。

 

発生因子の死亡者数(人/年)

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
総数 66 48 51 51 71 55 77
食物 5 4 4 4 5 2 2
ハチ刺傷 19 15 13 20 16 22 24
医薬品 29 19 26 21 32 22 37
血清 1 0 1 0 0 0 1
原因不明 12 10 7 6 18 9 13

厚生労働省 人口動態統計「死亡数、性・死因(死亡基本分類)別」より作表

 

2、アナフィラキシーショックの症状と診断

アナフィラキシーが引き起こされると、まず発疹・痛痒・紅潮などの「皮膚症状」が発現し、その後まもなく、または数時間以内に、呼吸困難・気道狭窄・喘息・低酸素血症などの「呼吸器症状」血圧低下意識障害などの「循環器症状」、腹部疝痛・嘔吐などの「消化器症状」などがみられます。

特に呼吸困難と血圧低下の発症率が高く、死亡例の多くは気道閉塞・血圧の急激な低下に伴う呼吸停止・心停止によるものです。

 

発現症状

皮膚・粘膜 紅潮、痛痒感、蕁麻疹、血管浮腫、麻疹様発疹、立毛、眼結膜充血、流涙、口腔内腫脹
呼吸器系 鼻痛痒感、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛痒感、咽喉絞扼感、発生障害、嗄声、上気道性喘鳴、断続的な乾性咳嗽、激しい咳嗽、呼吸数増加、息切れ、胸部絞扼感、喘鳴、気管支痙攣チアノーゼ、呼吸停止
消化器系 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢嚥下障害
心血管系 胸痛、頻脈徐脈(まれ)、その他の不整脈、動悸、血圧低下、失神、失禁、ショック、心停止
中枢神経系 切迫した破滅感、不安、拍動性頭痛、不穏状態、浮動性めまい、トンネル状視野

Simons FER, et al. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 13-37に引用改変

 

アナフィラキシーが発症する臓器は多種であることから、発現する症状は人によって、また原因によって異なります。おおむね、皮膚粘膜・呼吸器系・消化器系・心血管系・中枢神経系のうち2つ以上の器官系に生じることが多く、WAO(世界アレルギー機構)の調査によると、皮膚粘膜が80~90%、呼吸器系が70%、消化器系が45%、心血管系が45%、中枢神経系が15%の割合で発現すると統計しています。

発現する症状だけでなく、進行速度も人によって原因によって異なり、症状発現から数分で死に至ることもあります。その原因となるのが呼吸停止または心停止であり、死亡例でみると、食物が30分、ハチが15分、医薬品が5分との報告があります。

なお、アナフィラキシーの診断基準は未だ曖昧ではあるものの、現時点で3つの診断基準が用いられています。ただし、所見での正確な鑑別が難しいことが多々あり、さらに初期診療における有用な検査は現時点で存在していません。

 

診断基準

診断基準① 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、皮膚粘膜の異常に加え、急性の呼吸器症状(呼吸困難・気道狭窄・喘鳴・低酸素血症)、循環器症状(血圧低下・意識障害)のいずれかを伴う
診断基準② 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、皮膚粘膜症状(全身の発疹・痛痒・紅潮・浮腫)、呼吸器症状(呼吸困難・気道狭窄・喘鳴・低酸素血症)、循環器症状(血圧低下・意識障害)、消化器症状(腹部疝痛・嘔吐)のうち、2つ以上を伴う
診断基準③ 推測されるアレルゲンへの曝露後、数分~数時間以内に、血圧低下(平常時血圧の70%未満)、または生後1~11か月で70mmHg以下、1~10歳で70mmHg+(2×年齢)以下、11歳~成人で90mmHg以下の場合

 

また、日本小児アレルギー学会より、以下のように重症度における評価基準が示されています。ただし、軽症の場合は特に類似する疾患が多いため、軽症段階での鑑別が困難なのが実情です。

 

重症度評価

グレード1

(軽症)

グレード2

(中等度)

グレード3

(重症)

皮膚粘膜 紅斑、蕁麻疹、膨疹 部分的 全身性
痛痒 軽い痛痒

(自制内)

強い痛痒い

(自制外)

口唇、眼瞼腫脹 部分的 顔全体の腫れ
消化器系 口腔内・咽頭の違和感 口・喉の痒み、違和感 咽頭痛
腹痛 弱い腹痛 強い腹痛

(自制内)

強い腹痛

(自制外)

嘔吐、下痢 嘔気、単回の嘔吐・下痢 複数回の嘔吐・下痢 繰り返す嘔吐・便失禁
呼吸器系 咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 間欠的な咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 断続的な咳嗽 持続する強い咳き込み、犬吠様咳嗽
喘鳴、呼吸困難 聴診上の喘鳴、軽い息苦しさ 明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、呼吸停止、SpO2≦92%、嗄声、嚥下困難
循環器系 脈拍、血圧 頻脈(+15/分)、血圧軽度低下、蒼白 不整脈、血圧低下、重度徐脈、心停止
中枢神経系 意識状態 元気がない 眠気、軽度頭痛、恐怖感 ぐったり、不穏、失禁、意識消失

日本小児アレルギー学会誌2014 : 28 : 201-10より引用、一部改変

 

3、アナフィラキシーショックの原因

第1項で述べたように、アナフィラキシーの原因の多くは、食物、ハチ刺傷、医薬品によるものです。また、血清や原因不明のものもあります。

食物やハチ刺傷は、医療従事者が直接関係のない日常生活の中で起こるものですが、医薬品や血清においては医療施設内で起こります。特に、全身麻酔局所麻酔時に起こることが多いのが実情です。

医療施設内で起こるアナフィラキシーは、迅速に対応できるために重篤化はしにくく死亡例が少ないものの、頻発するため、看護師は原因となる医薬品において精通しておかなければいけません。

 

発生機序と誘因

IgEが関与する免疫学的機序 食物 小児 鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマ、大豆、魚、果物など
成人 小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、魚、アニサキス、スパイスなど
昆虫 刺咬昆虫(ハチ、蟻)など
医薬品 βラクタム系抗菌薬、NSAIDs、生物学的製剤、造影剤、ニューキノロン系抗菌薬、麻酔薬など
その他 天然ゴムラテックス、職業性アレルゲン、環境アレルゲン、食物+運動、精液など
IgEが関与しない免疫学的機序 医薬品 NSAIDs、生物学的製剤、造影剤、デキストランなど
非免疫学的機序(マスト細胞の活性化) 身体的要因 運動、低温、高温、日光など
アルコール
薬剤 オピオイドなど
特発性アナフィラキシー(明らかな誘因が存在しない) これまで認識されていないアレルゲンの可能性
マスト細胞症 クローン性マスト細胞異常の可能性

Simons FER, et al. World Allergy Organization Journal 2011; 4: 13-37に引用改変

 

3-1、原因①(食物)

欧米においてはピーナッツやナッツ類、日本においては鶏卵、小麦、ソバが多く、食物による発症のほとんどが特異的IgE抗体が関与しており、多くは摂取後まもなく(数分後)に発症します。

同じ食物に対してアナフィラキシーを起こす場合でも個人差が大きく、加工品を少量摂取しただけでもショックを起こす人もいれば、多量摂取したときだけに起こす人もいます。

食物によるアナフィラキシーの多くが家庭内で発症しますが、レストラン、学校、職場など外出先で発症する人も多くいます。これを避けるためには、自身や家族のみが原因となる食物に熟知するだけでなく、たとえば学校であれば担任、栄養士、クラスの同級生などに知ってもらうことが大切です。

このように、関わりを持つ人に認知してもらうことで、食物によるアナフィラキシーの発症率は大きく下げることができます。また、発症した場合に備えて、アドレナリン自己注射液などを携帯しておくことで、重症化を防ぐことができます。

 

3-2、原因②(ハチ毒)

ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックは、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多く、短期間のうち2回の刺傷で発症しやすい傾向にあります。

ハチ毒はIgE抗体とマスト細胞とに結合し、これによりマスト細胞が活性化され、ヒスタミンなどの有害な化学伝達物質が体内で多量に放出されることで、さまざまな臓器に作用してアナフィラキシーを引き起こします。

 

ハチ毒成分

分類 原因物質 症状
痛みを起こす

毒成分

ヒスタミン 痛み、痒み、発赤
セロトニン、アセチルコリン ヒスタミンより強い痛み
アレルギーを起こす

毒成分

ホスホリバーゼAなどの酵素類 血圧低下、呼吸困難などのアナフィラキシー症状
その他の毒成分 メリチン、アパミン 溶血作用、神経毒
ハチ毒キニン 不明

林業・木材製造業労働災害防止協会 : 蜂刺されの予防と治療. 1996より作表

 

発現症状は人それぞれですが、多くは刺傷から数分~10分以内に全身性の蕁麻疹、咽頭浮腫・気道収縮に伴う呼吸困難、急激な血圧の低下、頻脈、顔面蒼白、嘔気などの症状が現れます。

小児の場合には軽症で済むことが多いものの、成人では早期のうちに重症化するケースが多く、少なくても1時間以内に緊急処置を行わないと死に至ります。

 

3-3、原因③(医薬品)

アナフィラキシーと関与する医薬品には、抗菌薬、解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)、抗腫瘍剤、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤と多岐に渡り、また輸血時の血小板製剤・血漿製剤。赤血球製剤により発症することもあります。

 

抗菌薬

ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系のβラクタム系抗菌薬による発症が多く、ニューキノロン系抗菌薬による発症率もわずかながら報告されています。抗菌薬による発症を防ぐためには何より徹底した問診が必要不可欠。また、投与後の綿密な観察のほか、万一に備えて治療薬(後述)を用意しておくことが大切です。

 

解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)

アスピリンなどのNSAIDsは、リノール酸を分解するアラキドン酸代謝経路に作用して、アナフィラキシーを引き起こす可能性があると考えられています。また、プロノプロフェンなどの鎮痛剤を服用後、運動や食事によって発症することもあります。ただし、これらの発生機序は未だ完全には解明されていません。

 

抗腫瘍薬

抗腫瘍薬によるアナフィラキシーは、タキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)や白金製剤(オキサリプラチン・シスプラチン・カルボプラチン)が主に関与しています。そのほか、L-アスパラギナーゼやリツキシマブによる発症も多々報告されています。

 

局所麻酔薬

局所麻酔薬によるアレルギー反応の多くは遅延型アレルギー性皮膚炎であり、アナフィラキシーの発症は1%程度です。ただし、局所麻酔薬そのものの関与による発症例は稀であり、ほとんどが保存薬や血管収縮薬、ラテックスなどが抗原となって発症します。

 

筋弛緩薬

主に全身麻酔時に起こることが多く、周術期のアナフィラキシーの50~70%は筋弛緩薬によるものです。意識消失時には主訴・意思表示ができないため、発見が遅れ重症化することも少なくありません。ゆえに、全身麻酔時においては特に注意し綿密に観察することが求められます。

 

造影剤

造影剤によるアナフィラキシーの発症は、数千件に1件と言われています。現時点では未だ発生機序は解明されておらず、症状が急速に進行することによる死亡例がいくつか報告されています。ただし、最近の研究で気管支喘息が重症化に起因していることが分かったため、現在では気管支喘息を有する患者に対しては慎重投与で行うことが原則となっています。

 

輸血など

輸血によるアレルギー反応は、患者血液中のIgEと輸血製剤中の抗原との反応の結果と考えられています。アナフィラキシーは、血小板製剤・血漿製剤・赤血球製剤のいずれにも起こりうるもので、発症率は0.01%~0.07%と報告されています。

 

4、アナフィラキシーショックの治療

アナフィラキシーの治療は、アドレナリン(エピネフリン)の筋注(または静注)が第一選択であり、アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合には、アドレナリンを大腿部に筋注し、同時に輸液と酸素投与を行い改善を図ります。

アナフィラキシー発症で特に問題となるのが血圧の低下と呼吸停止です。アドレナリンには、血圧の上昇、血管収縮作用の強化、気道の粘膜浮腫の抑制、気管支拡張の促進、心収縮力増大などの作用があり、アナフィラキシーの重篤化に起因する症状緩和に大きな効能を有しています。

アドレナリンには数多くの副作用が存在しますので、原則として前出した重症度評価のグレード3(重症)が適応となります。また、症状の進行が激烈な場合にはグレード2(中等度)でも投与することがあります。

呼吸困難や血圧低下などの重篤化に繋がる症状がないグレード1(軽症)においては、第二選択薬である抗ヒスタミン薬β2アドレナリン受容体刺激薬などを投与し、軽度症状の緩和を図ります。

 

治療薬の概要

  アドレナリン

(第一選択薬)

抗ヒスタミン薬

(第二選択薬)

β2刺激薬

(第二選択薬)

投与時期

(原則)

グレード2or3 グレード1or2 グレード1or2
薬理 血圧の上昇、血管収縮作用の強化、気道の粘膜浮腫の抑制、気管支拡張の促進、心収縮力増大など 痛痒痛、紅潮、蕁麻疹、くしゃみ、鼻漏の軽減に効果はあるが、気道閉塞や血圧低下には効果はない 喘鳴、咳嗽、息切れの軽減に効果はあるが、上気道閉塞や血圧低下には効果はない
副作用 ≪常用量≫

蒼白、振戦、不安、動悸、浮動性めまい、頭痛

≪過剰投与≫

心身性不整脈、高血圧肺水腫

≪常用量≫

眠気、煩眠、認知機能障害

 

 

≪過剰投与≫

錯乱、昏睡、呼吸抑制、神経系刺激

≪常用量≫

振戦、頻脈、浮動性めまい、びくつき

 

≪過剰投与≫

頭痛、低カリウム血症、血管拡張

 

アドレナリンの経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い重症時においては必要ですが、それ以外では高血圧や不整脈の有害作用を起こす可能性がありますので、原則として筋注で1:1000(1mg/ml)を投与し、必要あれば追加投与(最大量:成人0.5mg、小児0.3g)を行います。なお、皮下注射は効果が期待できません。

 

■輸液の投与

血圧の低下がみられる場合には、乳酸リンゲル液または生理食塩水による輸液を行い、血圧の維持または上昇を図ります。ただし、輸液のみでは血圧の維持が困難ですので、アドレナリンとの併用が原則です。

初期輸液としては5~10分の間に成人なら5~10ml/kg、小児なら10ml/kg投与し、血圧・心拍数・心機能・尿量などに応じて輸液量を増減します。

 

気道確保・酸素投与

気道の狭窄・閉塞に伴う呼吸困難が生じた際には、直ちに気道を確保し、フェイスマスクまたは経口エアウェイによる流量6~8L/の酸素投与を行います。アドレナリンの投与、酸素投与を行っても気道狭窄・閉塞が改善されない場合には気管内挿管、さらに気管切開が必要なこともあるため、万一に備え、アナフィラキシーの発見段階で救命医療チームや麻酔・蘇生専門チームの人員を招集しておく必要があります。

 

5、アナフィラキシーショックの対処と看護

アナフィラキシーの初期症状には、医薬品の副作用などに類似しているものが多く、初期段階での特定は容易ではありません。しかしながら、アナフィラキシーの症状進行を急速であるため、早期における迅速な対処が不可欠です。

症状が類似する場合でもアナフィラキシーの発症を念頭に置き、バイタルサインや全身状態を綿密に観察し、迅速な人員の招集に加え、気道の確保や下肢拳上を早期のうちに行ってください。

 

バイタル・全身状態の確認

医薬品の副作用においては投与後30分~3時間のうちに発現します。それに対して、アナフィラキシーではアレルゲン被爆後5分~30分に発現することが多いので、症状の発現時間や速度によってある程度推測することができます。起こりうるアナフィラキシーのすべての症状を念頭に置き、患者のバイタルサインや全身状態を綿密に観察しておきましょう。

 

人員の招集

グレード1またはグレード2における症状が発現した時点で、それが医薬品の副作用などに類似する場合でもあっても迅速に人員を招集してください。アナフィラキシーの症状進行速度は非常に速く、対処が遅れれば呼吸停止・心停止を招きます。早期に対処することで重篤化を防ぐことができますので、すぐにコールをかけてください。

 

気道確保・下肢拳上

グレード1またはグレード2の症状が発現した場合には、アナフィラキシーと特定できない場合であっても、万一に備えて、まずは「頭部後屈顎先挙上法」や「下顎拳上法」などによる気道確保を行ってください。

また、下肢拳上を行うことで血圧の低下を抑えることができます。仰向けの状態で下肢を15~30cm挙上させ、安静保持を行いながら人員の到着を待っておいてください。

 

まとめ

アナフィラキシーの進行速度は非常に速く、対処・治療が遅れれば命にかかります。蘇生に成功しても後遺症が残る例は多く、さらに毎年50~60もの死亡例がでていることから、今後ますますの早期対処・早期治療が求められます。

アナフィラキシーの初期症状は、さまざまな疾患や医薬品の副作用に類似するものが多いため、初期における診断は困難ですが、綿密な観察を行えば早期発見ができ、迅速な対応・治療により、重篤化を防ぐことができます。

重篤化を防ぐために、また死亡者数の減少のために、アナフィラキシーの症状や診断基準、対処に精通し、細やかな観察の上で、早期対処に努めてください。

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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