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落屑の看護|高齢者など落屑の多い患者に対する看護問題と皮膚ケア(2017/01/16)

公開日: : 最終更新日:2021/04/01 看護計画 東京都 皮膚科・美容外科 

落屑の看護

高齢の患者に多い落屑は、命にかかわる問題ではないものの、皮膚の損傷のリスクを上げるものですので、積極的な看護介入が必要です。

また、落屑とは乾燥で皮膚の角質が剥がれ落ちたものなので、皮膚の乾燥に対する看護計画を立てて、ケアを行うことで、皮膚の損傷を予防することができます。

 

1、落屑とは

落屑とは、皮膚の表面が剥がれ落ちたものです。皮膚の垢のようなものと思ってください。

皮膚の構造

出典:皮膚がんのお話 利根保健生活協同組合 利根中央病院

 

皮膚の構造は、皮下脂肪からなる皮下組織の上にコラーゲンやエラスチンなどから構成される真皮があり、さらにその上に表皮がある三層構造になっています。

表皮はたった0.3mmしかない薄い組織ですが、基底層、有棘層、顆粒層、淡明層、角質層という5つの層から成り立っていて、角質層はいちばん外側の組織になります。

角質層は皮膚の層が薄く重なり合っていて、まるでパイやクロワッサンのように積み重なっていますが、少しずつ剥がれ落ちていくことで、皮膚が生まれ変わっていきます。落屑はこの角質層が乾燥して、ポロポロと剥がれ落ちたものなのです。

 

2、落屑の原因

落屑の原因は乾燥です。落屑は角質層が剥がれ落ちたものですが、健康な人でも角質は少しずつ剥がれ落ちて、皮膚が生まれ変わります。しかし、健康な人は落屑のようにポロポロと剥がれ落ちることはありません。

健康な人の皮膚と落屑がある人の皮膚の最大の違いは、乾燥です。落屑がある人は皮膚が極度に乾燥しているため、ポロポロと角質層が剥がれ落ちてしまいます。肌が乾燥すると白く粉が吹いたようになることがありますが、落屑が起こる皮膚はそれがさらにひどくなった状態です。

皮膚が極度に乾燥しているために、パイのように積み重なった角質層はボロボロになって、どんどん剥がれ落ちていきます。そうすると、肌の表面を守る角質層が失われますので、肌のバリア機能が低下して、さらに乾燥が進み、どんどん落屑が起こるようになります。

落屑の原因 落屑を起こす疾患
年齢によるもの 高齢者 年齢による皮膚の乾燥、老人性乾皮症
新生児 新生児落屑
皮膚疾患 アトピー性皮膚炎、紅皮症、乾癬、脂漏性皮膚炎
小児疾患 川崎病(膜様落屑)

これらの落屑の原因の中で最も多いのが、高齢者の年齢による皮膚の乾燥や老人性乾皮症です。高齢者は加齢が原因で皮膚表面の皮脂膜や角質層の細胞間脂質、天然保湿因子が減少するので、皮膚が乾燥して、落屑が起こりやすくなるのです。

 

3、落屑の看護問題

落屑の看護問題は、皮膚が乾燥していることで、皮膚トラブルが起こりやすいことです。看護診断だと、「皮膚統合性障害リスク状態」になります。

落屑の原因は皮膚の乾燥です。皮膚の乾燥によって、落屑が起こると、角質層が徐々に剥がれていきます。角質層は皮膚の水分を閉じ込めると同時に、外部の刺激から皮膚を守る役割を果たしていますので、落屑で角質層が失われることで、皮膚のバリア機能が低下します。

落屑の看護問題

出典:皮膚そうよう症 上杉皮膚科医院

 

皮膚のバリア機能が低下することで、掻痒感が現れます。落屑によって皮膚のバリア機能が低下すると、ホコリや化学物質、ハウスダストなどのアレルゲンが刺激となって、炎症が起こるからです。掻痒感があると、かき壊してしまって、皮膚を損傷するリスクがあります。点滴やチューブ、ドレーン類を固定するテープが刺激になって、炎症が起こることも珍しくありません。

また、皮膚のバリア機能の低下で、皮膚の乾燥がさらに進むと、皮膚に浅い亀裂が生じることがあります。亀裂が生じることで、皮膚が損傷し、そこから感染が起こることもあります。そのため、落屑がある患者には「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として、看護計画を立てて、看護ケアを実践する必要があります。

 

4、落屑の看護計画

落屑は、「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として、目標を設定し、看護計画を立てていきます。

看護目標 ・   皮膚の損傷がない
観察項目

(OP)

・   落屑がある部位

・   全身の皮膚の状態(乾燥・発赤、創傷の有無)

・   疼痛、掻痒感の有無

・   感染の有無

ケア項目

(TP)

・   皮膚の保清

・   皮膚の保湿

・   皮膚の保護

・   皮膚の異常が見られたら、医師に報告する

教育項目

(EP)

・   皮膚の保清・保湿・保護の重要性を説明する

・   皮膚を傷つけないように指導する

・   皮膚に異常が見られたら、すぐに知らせるように説明する

 

5、落屑を呈する患者への看護ケア

落屑では、「皮膚統合性障害リスク状態」を看護問題として看護ケアを行う必要があります。落屑で皮膚が乾燥した状態に対するケアは、保清・保湿・保護の3つが基本になります。

 

5-1、皮膚の保清ケア

保清は皮膚の表面についた感染源や異物、ホコリ、刺激物などを取り除くことを目的として行います。落屑がある患者は皮膚が乾燥して刺激に弱くなっていますので、保清をする時は丁寧に愛護的に行わなければいけません。

石鹸は弱酸性の刺激の少ないものを選んでください。一般的な石鹸はアルカリ性のものですが、アルカリ性は洗浄力が強く、皮膚の汚れや感染源、刺激物などをしっかり落とすことができますが、皮膚に必要な皮脂や保湿成分まで洗い流してしまいます。そのため、弱酸性の低刺激のものを選んでください。

そして、石鹸はしっかり泡立てて、泡で皮膚を洗うようにしましょう。皮膚についた落屑を無理に落とす必要はありません。ナイロンタオルなども刺激が強すぎるので使わずに、手と泡で愛護的に洗うようにします。

また、入浴後はしっかり洗い流してください。皮膚に石鹸成分が残っていると、いくら低刺激性の石鹸とはいえども、皮膚への刺激になって、炎症を起こす原因になります。この時にお湯が熱すぎると、さらに乾燥が進みますので、38~40℃のお湯を使いましょう。

 

5-2、皮膚の保湿ケア

落屑の患者の皮膚は極度に乾燥しており、皮膚のバリア機能が低下していますので、保湿剤を用いて皮膚のバリア機能を補う必要があります。

入浴後は必ず保湿を行いましょう。入浴すると、体温が上がって皮膚の水分が蒸発しやすくなっていますし、皮膚表面の皮脂も洗い流され、皮膚が乾燥しやすくなっています。

入浴後はできるだけ早く、15分以内には保湿剤を塗るようにしましょう。保湿剤にはワセリンやオリーブオイル、ヘパリン類似物質、尿素軟膏など様々なタイプのものがありますが、落屑がある時は保湿力が高く、刺激が少ないワセリンやヘパリン類似物質が良いでしょう。保湿剤を塗る時は、皮膚にまんべんなく、擦らずに優しく塗り拡げるようにしてください。

 

5-3、皮膚の保護ケア

落屑の患者に対しては、皮膚の保護も大切です。皮膚を保護は、刺激物や異物、感染源を取り除き、皮膚への刺激をできるだけ低減することが目的になります。

落屑の患者は皮膚が刺激に敏感な状態になっているので、紫外線やホコリ、花粉などのアレルゲンから遠ざけるようにします。また、点滴のルートやドレーンなどを固定するテープは低刺激性のものを使い、はがす時は専用のリムーバーを使うなど、できるだけ皮膚への刺激を少なくするように工夫してください。

患者の爪は短く切っておきましょう。落屑で皮膚が乾燥すると、掻痒感が起こりやすくなります。その時に爪が長いと、かき壊して皮膚を損傷してしまいますので、爪は短く切っておくようにしてください。下着や病衣は肌触りがよく、皮膚への刺激が少ないものを選ぶと良いでしょう。

 

まとめ

落屑の原因や看護問題、看護計画、ケアのポイントをまとめました。落屑は皮膚の乾燥が原因で角質がポロポロと剥がれ落ちる状態のことで、高齢者に多いという特徴があります。

落屑の看護ケアは、皮膚の保清・保湿・保護が重要になりますが、落屑がある皮膚は皮膚のバリア機能が低下していますので、愛護的にケアを行うようにしてください。

山岸愛梨 看護師

東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。

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