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【2024年最新】胸腔ドレーンの看護|仕組み・管理やエアリーク・抜去・観察項目(2015/04/27)

公開日: : 最終更新日:2023/08/03 看護技術 全科共通 呼吸器科 

胸腔ドレーン

多くの看護師が、胸腔ドレーンに触れる機会が多いと思います。しかしながら、熟練の看護師でも何となく扱っているのも事実。どのような病態に時に用いられ、どのように取り扱うのか、しっかり知っておくことで、患者さんにとってより良い治療を行っていけるのではないでしょうか。

胸腔ドレーンは繊細なので、注意を怠ると患者さんが重篤な状態に陥ることもあります。それゆえ、より良い治療を行っていけるよう、胸腔ドレーンの概要や病態の種類、挿入・抜去の手順・観察項目など、網羅してご説明していきたいと思います。

 

1、胸腔ドレーンとは

胸腔ドレーンは、気胸、開放性気胸、緊張性気胸、血胸(けっきょう)、血気胸(けっききょう)などの際に行われる治療法「胸腔ドレナージ」で用いられるチューブのこと。

通常、胸腔ドレーンは第5〜6肋間の前〜中腋下線から挿入され、胸腔に溜まった空気や血液などを体外に排出するために用いられます。常に圧を下界より低く保っていなければ呼吸障害が現れることがあるため、綿密な準備や管理が必要。細心の注意を持って扱わなければいけません。

 

1-1、胸腔ドレーンの目的

胸腔ドレーンの看護

出典:肺良性疾患 – 診療案内 – 信州大学 医学部外科学教室 呼吸器外科学分野

胸腔ドレーンは主に胸腔内に溜まった空気を体外に排出させるために用いられますが、手術などにより、滲出液、分泌液、血液が貯留した場合、胸水発生時にも用いられます。また、排気・排液だけでなく、胸腔内の陰圧を回復させる役割も果たします。

胸腔ドレーンの目的は、次の4点です。

・胸腔内の排気

・胸腔内の排液(胸水・血液・膿)

・治癒経過の観察

・薬剤の投与

 

■胸腔内の排気

胸腔内にたまった空気を胸腔ドレーンを挿入することで排気して肺の拡張を促し、さらに陰圧にして正常な呼吸ができるようにします。

 

■胸腔内の排液

胸腔内に貯留した胸水や血液、膿を排液します。

 

■治癒経過の観察

手術後に胸腔ドレーンを挿入しておくことで、排液の性状や量、排気の有無を確認でき、術後の治癒経過を観察・把握することができます。

 

■薬剤の投与

胸腔ドレーンは薬剤の投与にも使用されます。胸膜と壁側胸膜に人工的に炎症を起こして癒着させる胸膜癒着術を行う時には、胸腔ドレーンから胸腔内に薬液を注入します。

呼吸は横隔膜と肋間筋の動きにより胸腔内圧を下げることにより、肺に空気が入るようになっていますが、気胸時には圧が乱れ、肺が収縮することから呼吸障害を起こします。腹腔ドレーンを用いることで、胸腔内の陰圧が保たれ、正常な肺の機能を取り戻すことが出来るというわけです。

 

1-2、気胸とは?

胸腔ドレナージを必要とする病気に「気胸」が挙げられますが、気胸とは肺に穴が開いた状態(病態)のことを言います。ひとえに気胸といっても原因は様々あり、大別すると「自然気胸」、「外傷による気胸」、「生理による気胸」の3種類に分類されます。

 

■自然気胸

明らかな理由がなく発生する全ての気胸を自然気胸と言います。主に、10代~30代の痩せて胸板の薄い男性に多く発生し、原因は未だ解明されていません。肺がんや肺気腫のような病気でも発生することがありますが、これも外的な要因ではないため、自然気胸に分類されています。なお、これは「続発性自然気胸」と呼ばれています。

 

■外傷による気胸

交通事故などで肋骨が折れて肺に刺さることで、穴が開き気胸を起こします(外傷性気胸)また、針を用いた治療や検査時に起こることもあります(医原性気胸)

 

■生理による気胸

月経の前後において、子宮内膜症が横隔膜に広がり、横隔膜に穴が開くことによって気胸となるケースもあります。これは「月経随伴性気胸」と呼ばれ、主に右肺に起こります。

 

1-3、胸水とは?

胸水とは、胸膜腔に液体が異常に溜まった状態のことを言います。胸水が生ずる原因としては、心不全、肺不全、肝硬変肺炎などの病気に加え、外傷や感染症など多岐に渡ります。なお、胸水は「漏出性胸水」と「滲出性胸水」に大別されます。

 

■滲出性胸水

炎症性の胸水がこれにあたり、炎症、細菌感染、腫瘍などにより、胸膜が損傷することで、リンパ液灌流の低下や毛細血管透過性亢進によって生じます。

 

■漏出性胸水

非炎症性の胸水がこれにあたり、心不全、肺不全、肝硬変などの病気により、静水圧亢進や膠質浸透圧低下が起こることで生じます。中でも心不全から生じる割合が圧倒的に多く、全体の70%を占めています。

 

2、胸腔ドレーンの仕組み

ただ単にチューブを挿入するだけでは人工的に気胸を作っているだけであり、胸腔内の空気や血液を体外に排出することができません。そこで使用される一種の装置があり、これを「チェスト・ドレーン・バック」と呼びます。

 

■構造
胸腔ドレーンの構造

参照元:チェスト・ドレーン・バック(一体型) 医薬品医療機器総合機構

①注水口、②消音キャップ、③空気導入管、④吸引装置接続コネクター、⑤吸引装置接続チューブ、⑥胸腔ドレーン接続コネクター、⑦胸腔ドレーン接続チューブ、⑧陽圧逃し弁

⑨逆流防止弁、⑩検体採取部、⑪検体採取ポート、⑫過陰圧解除ポート、⑬水封止調節ポート、⑭排出口、⑮吊金具、⑯回転スタンド

 

■動作原理

チェスト・ドレーン・バックは、①排液ボトル、②水封室、③吸引圧制御ボトルの3つのチェンバーによって構成されており、これらの作動により胸腔内の空気や血液を体外に排出するとともに、持続的に陰圧を保つことができるのです。

胸腔ドレーンの動作原理
参照元:チェスト・ドレーン・バック(一体型) 医薬品医療機器総合機構

 

①排液ボトル(赤色)

胸腔内に溜まった血液など液体を貯留する役割を果たしています。

 

②水封室(水色)

吸引圧制御ボトルに入ってくる外からの空気が排液ボトルを通って体内に入り込まないようにする役割があります。水封室内には水位2cmほどの水が入っており、呼吸によって水位が上下します。この水位の変動は「呼吸性移動」と呼ばれており、チューブがきちんと開存して胸腔内と繋がっているかを確認する観察項目となります。また、空気漏れ(エアリーク)が起こった際にブクブクとした気泡が発生するなど、胸腔ドレーンに際する多くの異常は水封室で確認できます。

水封室に入れる水の量は24mlが基本ですが、メーカーによって異なることもありますので、必ず確認して正しい量を入れるようにしましょう。入れる水はもちろん蒸留水です。

 

③吸引圧制御ボトル(黄色)

水位10cm~20cmほどの水が入っており、壁吸引器を接続され、陰圧を調整する場所が吸引圧制御ボトルの役割です。大気吸引口先端から持続的に気泡が出るまで吸引圧を調整します。持続的に気泡が出る強度の範囲が陰圧の適正値に設定されています。この強度の範囲が適正でない場合には、肺や胸壁を損傷させる危険性があるため、必ず少量の気泡が持続的に発生するよう調節しなければいけません。

 

 

3、胸腔ドレーンの挿入方法

胸腔ドレーンを留置するためには手順に沿った方法で施行しなければなりません。また、留置後の不具合を起こさないため、感染症の確実に予防するためにも適切に挿入する必要があります。胸腔ドレーンのやり方・手順を以下に記載します。

  1. 挿入側の上肢を拳上するなど適した体位をとる
  2. 挿入部を入念に消毒した後、滅菌ドレープを塗布する
  3. 挿入部周辺に局所麻酔をする
  4. 胸腔ドレーン(チューブ)を挿入する
  5. 低圧持続吸引器とドレーンを滅菌操作で接続する
  6. 排液やエアリークの有無を確認した後、縫合する
  7. 挿入部にドレッシングを行い、固定用テープで固定する
  8. ドレーンの先端をX線画像で確認する
  9. バイタルサイン、呼吸音の左右差、皮下気腫、エアリークの有無など細かく観察する

 

胸水貯留か気胸かによって胸腔ドレーンの向きは変わります。胸水は胸腔の下の方から背側に貯留しますので、チューブは後方に向けます。気胸の場合は、空気が胸腔の上の方に溜まりますから、上向きにチューブを入れます。

 

4、胸腔ドレーンの観察項目・管理

胸腔ドレーンは留意するため、正常に動作しているか、患者に異常はないか、毎日観察する必要があります。また、感染症や合併症を予防するための管理も不可欠です。

 

4-1、患者の観察

バイタルサイン 血圧、脈拍、呼吸、体温などが正常か
検査データ 白血球値上昇、CRP上昇はみられるか
挿入部位の感染兆候 創部の腫れ、発赤、疼痛、熱感など
逆行性感染の兆候 混濁、浮遊物の有無、排液の透明度の変化など
呼吸状態 胸部症状、呼吸音の変化、呼吸苦など
皮下気腫の有無や変化 有る場合は広がりを確認・観察
出血量の変化 200ml/hを超える場合は医師に報告
体動制限 不眠や苦痛の症状の有無

 

4-2、胸腔ドレナージの観察

吸引圧制御の設定圧 少量のブクブク泡が保たれているか
呼吸性移動 水封室の水位が上下しているか
エアリーク 空気漏れによる水封室のブクブク泡の有無
ドレーンの屈曲・閉塞 ドレーン閉塞、ドレーン屈曲、圧迫の有無
正しい高さに設置されているか 胸腔ドレナージバックは身体よりも20㎝以上低くする
ドレーンの接続具合 ドレーンと接続バック、患者とドレーンの固定具合

 

4-3、胸腔ドレーンの管理

胸腔ドレーンに関する目的を患者に説明する

(肺の機能回復、血液の排出など)

 

胸腔ドレーンに関する注意点を患者に説明する

(圧迫による屈曲、排液パックの位置など)

 

チューブ閉塞時にはミルキングを行う

(閉塞兆候が見られる場合は随時実施すること)

 

毎日1回、無菌操作で包帯を交換する

(感染予防のため、常に清潔状態を保つこと)

※ミルキングとは・・・ドレーンの中に溜った血液や排液を、手で揉んだり専用のローラー等を使い、流してあげる作業のことを指します。詳しくは、「ミルキングとは|適切かつ効果的に行うための方法と注意点」をお読みください。

 

4-4、呼吸性移動とエアリークの関係性

呼吸性移動とは、呼吸に合わせて水封室の水の高さが上下する水位動きのことを指し、エアクリークは肺の穴もしくはドレーンの接合不一致による空気漏れ(ブクブク泡の発生)のことを指しますが、これらは異常に関する有益な観察項目となります。

エアリークはなぜ起こるのかを理解しておく必要があります。

エアリークは胸腔内に肺から空気が漏れている場合に起こります。

正常な肺ではエアリークは起こりません。

つまり、エアリークがある=気胸があるということになります。

呼吸性移動もエアリークも水封室において観察でき、互いに相関関係(正常・異常の関係)が存在します。呼吸性移動とエアリークの組み合わせは以下の通りになります。

①呼吸性移動(+) エアリーク(-)

②呼吸性移動(+) エアリーク(+)

③呼吸性移動(-) エアリーク(-)

④呼吸性移動(-) エアリーク(+)

①呼吸性移動(+) エアリーク(-)

呼吸性移動がみられ、エアリークがないのが望ましい状態です。ただし、胸部レントゲンで肺の再膨張がみられる場合には、※クランプテスト行います。

②呼吸性移動(+) エアリーク(+)

呼吸性移動がみられるものの、エアリークが発生している場合は、どこかで空気漏れが起こっています。各部位をチェックする必要があります。

③呼吸性移動(-) エアリーク(-)

呼吸性移動・エアリーク共にみられない場合には、チューブのどこかで閉塞が生じている可能性があります。屈折箇所がないか確認しましょう。

④呼吸性移動(-) エアリーク(+)

呼吸性移動はみられなく、エアリークがみられる場合、通常は発生しませんが、チューブが外れている場合に起こり得ます。

※クランプとは・・・クランプとは遮断のことで、ペアン鉗子と呼ばれるハサミのような道具を用いて胸腔ドレーンのチューブを遮断することを言います。

 

4-5、胸腔ドレーン挿入中の注意点

■移動や移送時の注意点

ドレーンを留置した状態で移動する、もしくは移送される場合、基本的にはクランプしません。排液の逆行性感染の予防のためにクランプが必要という情報がネット上に見られますが、フルクテーションが大きくない限り逆流は起こりません。また、長時間のクランプは緊張性気胸の原因になるばかりか、肺合併症を併発する恐れがあるため、持続吸引状態を維持します。歩行の際には、倒れて逆流が起こらないよう胸腔ドレーンを並行にし、患者さんより下に維持しておく必要があります。

 

■ドレーンが抜けた場合の注意点

何かの拍子にドレーンが抜けてしまった場合、エアが肺に流れ込まないよう、挿入部を押さえて閉塞します。その場を離れず、ナースコールもしくは助けを呼びましょう。当該発生後の処置としては、医師の指示のもと、抜去・再挿入または治療を行います。

 

■取扱いに関する注意点

胸腔ドレーンは外界と患者さんの体内を繋いでいるため、無菌操作が不可欠です。胸腔内で感染が起こると重篤な状態に陥るため、確実な無菌操作が必要です。看護師側だけでなく、患者さんにも入念に説明しておくことが大切です。

 

5、胸腔ドレーンの抜去

まず、ドレーンを抜去する前に、抜去が可能かどうか、抜去後に問題は生じないかを判断する必要があります。これらの判断は医師・看護師、双方がしっかり確認して異常がなければ医師の指導のもと抜去を行います。まずは、肺が完全に広がっていることをレントゲン写真で確認し、各病状における判断に移ります。

 

5-1、胸腔トレーン抜去の判断基準

気胸の場合

持続吸引していてもエアリークが生じない

 

血胸の場合

持続吸引していても新たな出血がない

 

胸水の場合

排出される胸水の量が200ml/日である

5-2、胸腔ドレーンの抜去の手順

  1. 固定糸を切断する
  2. 息を止めてもらう
  3. 抜去・縫合する
  4. レントゲン撮影を行う

 

 

5-3、抜去後の観察項目

自然気胸などの場合、ドレーン抜去後はすぐ退院になりますが、病気などにより継続入院が必要な場合、看護師は抜去後にもしっかりと患者さんを観察し、異常が起きた場合には迅速に対処しなければいけません。病態により観察項目は異なりますが、以下の項目が観察において重要な点となります。

  • 呼吸の状態(呼吸音の変化、呼吸苦など)
  • 創部の状態(感染徴候の有無や出血など)
  • バイタルサイン(血圧、脈拍、体温など)

 

6、胸腔ドレーンの合併症と観察ポイント

■再膨張性肺水腫

胸水や血胸、気胸で胸腔ドレーンを挿入すると、虚脱していた肺胞が一気に肺が膨張します。すると、肺血流の再灌流と血管浸透圧が生じ、肺水腫が起こることがあります。

再膨張性肺水腫が起こると、SpO2の低下や呼吸困難感、咳嗽血圧低下などが起こるので、看護師はバイタルサインや呼吸状態を観察しましょう。

 

■皮下気腫

肺やドレーン挿入部から皮下に空気が漏れて貯留すると、皮下気腫を生じます。

皮下気腫を生じた皮膚は、触れると「ぶつぶつ」とした握雪感を感じます。

皮下気腫が生じたら、その部位をマーキングして広がりがないかを観察していきましょう。


■疼痛・血管損傷・臓器損傷

ドレーン刺入部に疼痛が生じることがあります。

また、固定したことでも疼痛が生じることもあります。

疼痛が強い場合は、肺実質の損傷などの臓器損傷が起こり、気胸や血胸を生じることがありますので、看護師は排気・排液を観察しましょう。

また、刺入部の疼痛は薬剤などでコントロールしていく必要があります。

 

■逆行性感染

胸腔ドレーンは刺入部に感染を起こすことがあります。看護師は刺入部の清潔を保ち、感染徴候がないかを観察していきましょう。

 

■迷走神経反射

胸腔穿刺を行う時には、迷走神経反射が起こることがあります。迷走神経反射は疼痛やストレスが誘因になって、心拍数や血圧が低下します。迷走神経反射が起こった時には硫酸アトロピンを投与することがありますので、胸腔ドレーンを挿入する前には救急カートに硫酸アトロピンがあるかどうか、必ず確認しておきましょう。

 

まとめ

このように、胸腔ドレーンの管理や取扱いは非常にシビアなものとなっています。浅い知識が患者さんの命を危険に晒すことになりかねないため、分からないことがあれば先輩看護師や知りたい看護師に尋ね、教えてくれない場合には当ページを参考にして、胸腔ドレーンに関しての知識を深めていってください。

言葉や行動で誰かに教えられるようになるまで、しっかりと知識を深め、患者さんにより良い治療を行えるよう、邁進していきましょう。

 

参考文献

胸腔ドレーン取扱い時の注意について|医薬品医療機器総合機構 PMDA 医療安全情報
胸腔ドレーンの管理と気胸について|松山赤十字病院 呼吸器外科 桂正和
胸腔ドレーンの大気への開放|京大病院医療安全情報
再膨張性肺水腫 日本救急医学会・医学用語解説集

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