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エイズ(HIV)とは?感染経路・感染確率や症状・治療を解説!(2021/07/08)

公開日: : 最終更新日:2021/07/15 北海道 看護用語 内科 

「HIVに感染するとエイズを発症し100%死んでしまう」、そんなイメージを持っている人は思います。でも、現代はHIVに感染しても、適切な治療を適切な時期に始めることができれば、エイズを発症せずに、HIVに感染していない人と同じくらいの寿命を期待することができるのです。

エイズ(HIV)の基礎知識と感染経路や感染確率、症状や治療方法などを詳しく解説していきます。

 

1、エイズ(HIV)とは

エイズ(Acquired Immunodeficiency Syndrome=AIDS)とは、後天性免疫不全症候群のことです。エイズは、HIV(Human Immunodeficiency Virus)に感染したことで起こります。

HIVが体内に侵入すると、CD4陽性リンパ球(Tリンパ球やマクロファージ)入り込み感染を起こします。HIVに感染すると、体内でリンパ球が次々に破壊されてしまうため、免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍を発症してエイズとなるのです。

2019年に日本で報告されたHIV感染者は903件、エイズ患者は333件です。これまでの累積報告数はHIV感染者は21,739件、エイズ患者は9,646件となっています。1

 

1ー1、エイズ指標疾患23種

エイズはHIVに感染したことで発症する後天性免疫不全症候群のことですが、厚生労働省が定める23疾患のどれか1つを発症することで、エイズと診断されます。

真菌症 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)

2.クリプトコッカス症(肺以外)

3.コクシジオイデス症

4.ヒストプラズマ症

5.ニューモシスチス肺炎

原虫症 6.トキソプラズマ症

7.クリプトスポリジウム症

8.イソスポラ症

細菌感染症 9.化膿性細菌感染症 (13歳未満)

10.サルモネラ菌血症

11.活動性結核

12.非結核性抗酸菌症

ウイルス感染症 13.サイトメガロウイルス感染症

14.単純ヘルペス感染症

15.進行性多巣性白質脳症

腫瘍 16.カポジ肉腫

17.原発性脳リンパ腫

18.非ホジキンリンパ腫

19.浸潤性子宮頸癌

その他 20.反復性肺炎(1年に2回以上)

21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成(13歳未満)

22.HIV脳症

23.HIV消耗性症候群

 

2、エイズ(HIV)の感染経路

エイズはHIVに感染することで発症しますが、HIVは血液・精液・膣分泌液に多く含まれています。この他には、母乳や髄液にも含まれていることが分かっています。

そのため、エイズの感染経路は次の3つに分けることができます。

 

■性的接触による感染

エイズ(HIV)感染で最も多いものが、性的接触による感染です。HIV感染者の精液や膣分泌液にはHIVが多く含まれています。その精液や膣分泌液が性器や口腔内、肛門などの粘膜に接触すると感染します。

 

■母子感染

母親がHIV感染者の場合、妊娠中や出産時に感染したり、出産後の母乳などを介して赤ちゃんに感染することがあります。

 

■血液感染

HIVは感染者の血液中もたくさん含まれています。そのため、注射器の使い回しや医療従事者の針刺し事故などによって、感染することがあります。

 

3、エイズ(HIV)の感染確率

エイズ、つまりHIVの感染力は非常に低いです。そのため、HIVに感染する確率はそれほど高くありません。ケース別にエイズ(HIV)に感染する確率をまとめました。

感染ケース 感染確率
膣のセックス(男性) 0.05%
膣のセックス(女性) 0.08%
アナルセックス(挿入側) 0.067%
アナルセックス(受け入れ側) 1.38%
フェラチオ(挿入側) 0.01%
フェラチオ(受け入れ側) 0.005%
輸血 90%
注射器の使い回し(含タトゥー) 0.67%
医療者の針刺し事故 0.3%
医療者の粘膜への暴露 0.09%
母子感染(予防策をしていない場合) 1%以下

輸血の場合は、感染確率は非常に高いですが、それ以外はHIV(エイズ)への感染確率は高くはありません。ただ、あくまでも「感染確率は高くない」というだけで、感染する可能性は十分にあります。それは、予防啓もう活動が進んでいても、エイズ患者・HIV患者がゼロにならないことでもわかりますね。

 

4、エイズ(HIV)の症状

引用:HIV・エイズについて|大阪府/HIV・エイズについて

エイズはHIVに感染してすぐに発症するわけではありません。HIVに感染すると、感染初期(急性期)→無症候期→エイズ発症という経過をたどります。

 

■感染初期(急性期)の症状

引用:HIV・エイズについて|性病専門のあおぞらクリニック新橋院・新宿院

HIVに感染して約2週間後から、風邪インフルエンザのような症状が現れます。

発熱

倦怠感

・咽頭痛

や鼻水

・筋肉痛

これらの症状は数週間~3ヶ月程度でなくなります。

 

■無症候期

感染初期に一時的にHIVが体内で増殖しても、感染初期は免疫機能が正常に働きますので、ウイルス量は減少します。そのため、感染初期の症状は消失し、無症候期に移行します。

この無症候期は個人差はあるものの、5~10年続きます。

無症候期は自覚症状こそありませんが、体内ではHIVは静かに増殖を続けています。

 

■エイズ発症期

無症候期の間にHIVが体内で増殖すると、免疫力が下がります。そのことで、急激な体重減少や寝汗、長く続く下痢、さらにカンジダ症や帯状疱疹を発症することがあります。

さらに免疫力が下がると、健康な人なら発症しない病原性の弱い真菌・原虫・細菌・ウイルスによる日和見感染(厚生労働省が定める23疾患)を起こします。

さらに、長期間続く発熱や下痢肺炎呼吸困難意識障害やけいれん、リンパ腫等の症状が現れ、全身が衰弱していきます。さらに、HIV脳症を発症し、運動障害や認知症のような症状・神経症状が現れて死に至ります。

 

5、エイズの最新治療方法

HIVに感染して、適切な治療を受けなかった場合はほぼ確実にエイズを発症します。

HIVに感染してから10年間の間にほぼ半数がエイズを発症し、最終的にはHIVに感染した人のほぼ全員がエイズを発症するのです。
しかし、治療法が開発されたことで、適切な治療を適切な時期に始めれば、エイズを発症せずに日常生活を送ることができ、寿命はHIV非感染者とほぼ変わらないところまで来ています。

 

■エイズを発症する前の治療

エイズを発症する前の段階では、ART(Antiretriviral Therapy)という多剤併用の抗HIV療法が行われます。

ARTでの治療の目標は血中ウイルス量を検出限界以下に抑え続けることです。検出限界以下に抑え続ければ、エイズは発症しませんし、日常生活内で他人に感染させるリスクも減少します。

ARTで核酸系逆転写酵素阻害剤2剤(バックボーンドラッグ)を基本として、その他1剤を組み合わせることが多いです。

引用:HIV感染症の治療は?|HIV・AIDS対策室|香川大学医学部附属病院 感染制御部

ARTの治療によって免疫機能の指標が改善しても、治療を中止せずに継続するのが原則です。日本エイズ学会もHIV感染症の治療の手引きの中で、治療の原則を次のように述べています。

・治療目標は血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続けることである

・治療は原則として3剤以上からなるARTで開始すべきである

・治療により免疫能のいくつかの指標が改善しても治療を中止してはならない

引用:HIV感染症 治療の手引き|日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会

抗HIV療法でエイズを発症させないためには、とにかく薬を飲み続けることが重要です。内服率が95%以下になると、薬剤耐性ウイルスができやすくなります。

以前は抗HIV薬は副作用が強いものが多かったですが、現在は1日1錠で良いもの、副作用が少ないもの等があり、無理なく飲める薬・ライフスタイルに合った薬などを医師と共に選んでいくことが重要です。

 

■エイズ発症後の治療

エイズ発症前に適切な治療を受けず、エイズを発症してしまった場合も、抗HIV療法は行われます。しかし、エイズ指標疾患の種類や症状の進行状況によっては、抗HIV療法よりも、エイズ指標疾患の治療を優先させる場合もあります。

 

まとめ

エイズ(HIV)の概要と感染経路や感染確率、HIV・エイズの症状と最新治療をまとめました。エイズ(HIV)は以前は不治の病でしたが、現在は適切な治療を受け、抗HIV療法を続ければ、エイズを発症せずに寿命を迎えることも可能になってきています。

ただ、治療方法が進歩していても、予防が一番重要であることは忘れないようにしたいですね。

 

参考文献

1)令和元(2019)年エイズ発生動向 – 概 要 –厚生労働省エイズ動向委員会

HIV感染症の治療は?|HIV・AIDS対策室|香川大学医学部附属病院 感染制御部

・HIV感染症 治療の手引き|日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会

HIV感染症/AIDS(エイズ)|慶應義塾大学病院 KOMPAS

HIV・エイズって何?|HIV検査・相談マップ 〜HIV・エイズ(AIDS)・性感染症の検査・相談窓口情報サイト|厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究」

HIV感染からエイズ発症まで|HIV基礎知識|北海道HIV/AIDS情報 北海道大学病院HIV診療支援センター

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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