帯状疱疹の看護|原因や症状、薬、看護計画・ケアのポイント(2017/05/23)
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスが体内で活性化することで、疼痛や紅斑、水疱などの症状が起こる疾患です。帯状疱疹の基礎知識や原因、症状、薬、看護計画やケアのポイントをまとめました。今後、帯状疱疹の患者の看護をする時の参考にして下さい。
1、帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、身体の中に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで起こる皮膚疾患です。身体の左右のどちらか一方にピリピリとした痛みや紅斑、水痘が帯状に現れるのが特徴です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘の後に皮膚の発疹から神経を伝わって、脊髄近くの後根神経節の中に潜伏しています。その潜伏していたウイルスが、何らかの原因で活性化し、神経を刺激したり、皮膚に出てくることで、帯状疱疹を引き起こすのです。
2、帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで、帯状疱疹を発症するのです。
では、なぜ水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜んでいるのでしょうか?このウイルスの名前からもわかるように、帯状疱疹を引き起こすウイルスは、水痘を引き起こすウイルスと同じものです。
子どもの頃に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、水痘を発症します。通常、水痘は1週間から10日程度で治癒しますが、治癒した後も体内のウイルスは完全に消失することはなく、後根神経節の中に潜伏しています。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、潜伏中は特に症状が出ることはありませんが、体内で再び活性化すると、帯状疱疹を発症するのです。
出典:帯状疱疹の原因 | 健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団
水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化する原因は、免疫力の低下です。通常時は、免疫機能の働きでウイルスの活性化を抑えていたのに、免疫力が低下することでウイルスが働きやすい体内環境になり、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化して、帯状疱疹を引き起こすのです。
水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化する要因は、次のようなものがあります。
・加齢
・過労
・ストレス
・全身性疾患(悪性腫瘍や糖尿病、重症感染症)
・薬剤投与(ステロイド薬、抗がん剤、免疫抑制剤
・放射線治療
このような要因で免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症します。
出典:帯状疱疹って? | 帯状疱疹 | マルホ株式会社
帯状疱疹は若い世代でも発症しますが、50代以上で発症することが多いのです。これは、加齢によって免疫力が低下するだけでなく、悪性腫瘍や糖尿病など免疫力を低下させる疾患を発症するのは50代以上の人が多いことも一因と考えられます。
水痘は一度感染すると、二度と発症しないとされています。でも、水痘が原因で帯状疱疹を発症します。ただ、帯状疱疹を一度発症すると、免疫力が大きく低下しているケースを除けば、再発することはほとんどありません。
水痘は一度だけ、帯状疱疹も一度だけしか発症しないということです。
3、帯状疱疹の症状
帯状疱疹の代表的な症状は、次の3つです。
・チクチクとした刺すような疼痛
・浮腫性の紅斑
・紅斑上の水疱
帯状疱疹は身体の一部分に、チクチク・ピリピリした疼痛や知覚異常、掻痒感が数日から1週間程度続き、虫刺されのような浮腫性の紅斑が現れます。
それから、紅斑に水疱が生じ、黄色の膿疱へと変化していきます。嚢胞は1週間程度で、びらんや潰瘍になり、2~3週間で痂皮化し、1ヶ月~1ヶ月半で痂皮が脱落して治癒します。
帯状疱疹の症状の特徴は、体の片側にしか症状が出現しないことです。水痘・帯状疱疹ウイルスは神経節に潜伏しているので、その神経節に沿った部分にしか症状が出ないのです。
帯状疱疹の好発部位は、体幹です。12対の胸髄神経節の領域である体幹は、帯状疱疹の症状が出やすいのですが、顔や目の周りに出ることもあります。顔や目の周りに帯状疱疹が出ると、角膜炎や結膜炎を発症したり、耳鳴りや難聴などの合併症が起こることもあります。
帯状疱疹は1ヶ月~1ヶ月半程度で治癒する疾患ですが、治癒した後もチクチクとした痛みが残ることがあります。これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスが神経を刺激したり、神経をたどって皮膚に出てくることで起こりますが、この時に神経を傷つけて炎症を起こします。
帯状疱疹が治癒しても、神経にダメージが残ると、痛みだけが残ってしまうのです。若い患者の場合、神経が傷ついても回復が早いので、帯状疱疹後神経痛が長く残ることは少ないのですが、高齢の患者は1年以上痛みが残るケースが少なくありません。
4、帯状疱疹の薬や治療法
帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬の使用が基本になります。
・内服薬=アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル
・注射薬=アシクロビル、ビタラビン
抗ウイルス薬を使用することで、体内でのウイルスの増殖を抑えて、治療を行います。抗ウイルス薬以外には、対症療法のために消炎鎮痛薬、二次感染予防のために化膿疾患外用薬などを用いることがあります。疼痛が強い場合は、神経ブロック注射を行うこともあります。
帯状疱疹は早期に治療を始めることが重要になります。早期に抗ウイルス薬を服用することで、ウイルスの増殖を抑えて、症状が悪化せずにすぐに治癒しますし、神経のダメージを最小限にできるので、帯状疱疹後神経痛のリスクも少なくすることができるのです。
5、帯状疱疹の看護計画・ケアのポイント
帯状疱疹の看護問題は、帯状疱疹による疼痛があること、二次感染のリスクがあることの2つです。この2つの看護問題に対して、看護計画を立てていきましょう。
■帯状疱疹による疼痛
看護目標 疼痛コントロールができ、活動制限が見られない
OP(観察項目) ・痛みの部位や程度、持続時間
・表情や言動
・睡眠状態
・食事摂取量
・活動制限の有無
・バイタルサイン
・検査データ
・薬剤使用による疼痛の変化
TP(ケア項目) ・医師の指示に基づいた薬剤の投与
・患者の訴えを傾聴する
・患部の保護
・安楽な体位への援助
・安静保持への援助
・患部の温罨法
・気分転換を促す
EP(教育項目) ・疼痛がある時には、早めに伝えてもらう
・安静の必要性を説明する
・安楽な体位を指導する
帯状疱疹の痛みが強いと、睡眠障害や食事摂取量の低下などが現れますので、看護師は痛みを軽減するようなケアを行いましょう。また、疼痛コントロールを行うと共に、安静の保持への援助も大切です。
帯状疱疹は免疫力が低下することが引き金になって発症しますので、安静にして体を休めることが早期回復のためには大切です。そのため、看護師は安静を保持できるような援助を行うようにしてください。
■二次感染のリスク
帯状疱疹は水疱ができて、それが破れて痂皮化して治癒しますが、水疱が破れると、そこから細菌性の二次感染を起こす可能性がありますので、看護師は二次感染が起こらないように注意する必要があります。
看護目標 二次感染が起こらない
OP(観察項目) ・バイタルサイン
・患部の皮膚の状態
・患部の臭い
・バイタルサイン
・血液検査データ(WBC、CRP)
・掻破行動の有無
・頭痛、発熱などの症状の有無
TP(ケア項目) ・清潔操作を心がける
・水疱は破らないようにする
・ガーゼ交換時は摩擦が起こらないようにする
・病衣やシーツが汚れていたら交換する
・シャワー浴など清潔ケアを促す
・指示に基づいた抗生剤の投与や塗布
EP(教育項目) ・感染予防法を指導する
・水疱を掻破しないように説明する
帯状疱疹は、患者自身が細菌感染するリスクがありますが、患者自身が感染源になる可能性もあります。
出典:帯状疱疹って? | 帯状疱疹 | マルホ株式会社
帯状疱疹は、第三者に感染させるリスクはあまり高くありませんが、水痘を発症したことがない人には水痘として感染させる可能性があります。そのため、帯状疱疹を発症している患者には小児や妊婦を近づけないように配慮すると良いでしょう。
まとめ
帯状疱疹の基礎知識や原因、症状、薬や治療、看護計画やケアのポイントをまとめました。帯状疱疹は早期に治療して、ウイルスの増殖を抑えることが大切です。入院患者には確実に薬を投与し、外来患者には服薬指導をして、早期治癒ができるように援助していきましょう。
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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