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【2024年最新】ノロウイルスの看護|症状と潜伏期間・看護計画とポイント(2017/08/24)

公開日: : 最終更新日:2023/01/17 北海道 看護計画 内科 

ノロウイルスの看護

ノロウイルスは感染力が高く、感染すると強い消化器症状を起こすウイルスです。その感染拡大を防止すること、また予防することは看護師の役割ともいえます。ノロウイルスの基本的な特徴と正しい対処方法、さらに看護計画を知って看護に役立ててください。

 

1、ノロウイルスとは

ノロウイルスは、非細菌性急性胃腸炎を引き起こす小型球形ウイルスで、牡蠣などの二枚貝や井戸水などのノロウイルスによって汚染された水、さらには、ノロウイルス感染者の糞便や吐物、手などからの感染があります。感染力は非常に強く、わずかな摂取(10〜100個)によっても感染します。特にノロウイルス感染患者の吐物や糞便には多量のウイルス(1g中の吐物に100万〜1000万個、糞便に1000万〜1000億個)が含まれており、乾燥にも強くて浮遊しやすいために、二次感染の危険性が高く、感染者の吐物や糞便の扱いを注意する必要があります。

ノロウイルスは小腸粘膜で増殖して感染性胃腸炎や食中毒を引き起こしますが、流行は特に冬季に流行する傾向があります。しかし、冬季だけではなく年間を通しても感染があります。ノロウイルスは、施設や学校、飲食店などでウイルス性胃腸炎の集団感染を起こす原因となり、その拡散力はとても強く、ノロウイルス感染流行時期には感染予防や感染の拡散を防止することが重要になります。

出典:東京都福祉保健局

 

2、ノロウイルスによる感染の症状

ノロウイルスに感染すると、激しい嘔気嘔吐下痢といった症状があり、それに伴った腹痛や倦怠感、咽頭痛などがあります。発熱は軽度ですが、発熱時に頭痛悪寒があることもあります。感染し潜伏期間が経過すると激しい症状が出現しますが、健康で体力のある成人であれば2〜3日ほどで軽快しますが、小児老人などは嘔吐下痢による脱水誤嚥性肺炎などの合併症によって死亡することもあります。止痢剤は症状を長引かせるために基本的には使用せず、ウイルスの排泄を促します。ノロウイルスには、現在、効果のある抗ウイルス薬やワクチンがなく、感染者の体内からノロウイルスが排出されて症状が軽快するまで、経口での水分摂取が難しい時は点滴などの水分補給による対症療法を行い、脱水症状を予防します。ノロウイルス感染による胃腸炎や食中毒は、嘔吐や下痢が主な症状であり、これによっての脱水症状を予防することが治療には特に重要になるのです。

 

3、ノロウイルスの潜伏期間

ノロウイルスの潜伏期間は12時間から48時間で、汚染された食品の摂取や感染者の糞便や吐物からのウイルスを吸い込むことで感染します。二枚貝にノロウイルスが付着していることがあるとされていますが、ノロウイルスが付着した手から他の食品へ付着し、それを食することでの感染もあります。また、感染患者の糞便や吐物の処理が不適切であった場合や感染患者の飛沫によって、ノロウイルスが浮遊し、周囲に散らばることで感染する塵埃感染もあります。ノロウイルスは乾燥に強い性質であるために、周辺環境にとどまって、そこに触れた人の手から感染するということもあるのです。

感染すると症状は2〜3日ほどで軽快しますが、ノロウイルスの排泄は1ヶ月ほど続くとされています。二次感染を気にして、ノロウイルスの出勤停止期間は法律では定められていません。出席停止期間も同様です。ただ、嘔吐や下痢の症状が続いている時はウイルスをまき散らしますので、出勤・出席はしないほうが良いです。発症してから1週間程度は自宅安静が良いとされています。また、調理従事者の場合は、「検便検査においてノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な措置をとることが望ましいこと」と厚生労働省の『「大量調理施設衛生管理マニュアル」の改正について』1)に記載されています。

 

4、ノロウイルスの看護師の対応

ノロウイルスには主に、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気感染の4つの感染経路があります。

 

■経口感染

食品による感染で、十分に加熱していない食品を摂取することで感染します。

 

■接触感染

感染者の吐物や糞便の処理時に接触したり、不適切な処理によって浮遊したウイルスに接触することでノロウイルスが口の中に入り感染します。

 

■飛沫感染

感染者のウイルスを含む飛沫を吸い込むことで感染します。

 

■空気感染

ノロウイルスが飛沫核となって空気中に浮遊し、吸い込むことで感染します。

 

経口感染以外は、いずれも感染者の吐物や糞便の不適切な処理によって引き起こされています。また、ノロウイルスに感染している患者がいない場合は、外部からノロウイルスを持ち込むことを防ぐ必要があります。

 

4−1、ノロウイルス患者の隔離

ノロウイルスに感染している可能性がある場合は、医師の指示によってノロウイルス迅速検査キットを使用して感染の有無を確認します。検査の結果が陽性であれば、患者を隔離し、できればトイレも患者専用にします。オムツを使用している場合は、患者のベッドサイドで排泄物を処理できるように環境を整備します。ベッドサイドで使用したものは、隔離した場所から持ち出さず、必ずベッドサイドで処理します。

 

4−2、個人防護具の使用

ノロウイルスの個人防護具は、ガウン(エプロン)、マスク、ゴーグル(フェイスシールド)、手袋です。

手指衛生の後にガウン→マスク→ゴーグル→手袋の順に着用します。使用後は患者のベッドサイドで処理して、移動するようにします。

 

4−3、吐物の適切な処理

ノロウイルス感染患者の吐物には大量のウイルスが含まれています。さらに、ノロウイルスは浮遊しやすいので、迅速に対応する必要があります。病棟にはノロウイルス吐物処理キットを準備します。吐物の処理方法は次の通りです。

 

ノロウイルス吐物処理キットのセット内容例

①マスク

②グローブ

③エプロンまたは、ガウン

④シューズカバー

⑤嘔吐物凝固剤

⑥ビニール袋

⑦次亜塩素酸ナトリウム

⑧ペーパータオル

 

吐物処理手順

①防護具(エプロン、マスク、シューズカバー、グローブは二重に装着)を装着します。

②吐物の周囲2メートル以内は汚染区域として立ち入り禁止とします。

③吐物の上を覆うようにペーパータオルを優しく載せ、その上から次亜塩素酸ナトリウムを吐物と同量程度注ぎます。(あれば吐物凝固剤を使用)

④吐物を外側から内側に向かって拭き取ります。

⑤拭き取ったペーパータオルをビニール袋に入れて、使用したグローブの1枚目を外し、袋に入れて密封します。

⑥吐物があった場所に次亜塩素酸ナトリウムをかけて、10分ほど置きます。

⑦ペーパータオルで拭き取り、シューズカバーを外し、靴底を次亜塩素酸ナトリウムで浸したペーパータオルで拭きます。

⑧吐物があったところを再度水拭きし、グローブ、エプロン、マスクの順で外しビニール袋に入れて密封します。

⑨ビニール袋を二重にし、破棄します。

⑩十分に手洗いをします。(擦式消毒用アルコールは無効のため、液体石鹸を使用し流水で洗う)

 

 

個人防護具の脱着手順

出典:職業感染制御研究会

 

5、ノロウイルスの看護計画

ノロウイルス感染時の看護は、症状に対する看護、感染の拡散の防止やその教育などが挙げられます。

 

観察項目(OP)

嘔気、嘔吐、下痢の有無、回数

②尿量

③飲水量

④腹痛、頭痛、倦怠感の有無と程度

⑤手洗いの方法と習熟度

⑥ノロウイルスの感染拡大を防ぐ方法の知識の有無

⑦家族の協力度、知識の程度

⑧バイタルサイン

 

ケア項目(CP)

①脱水となっているようなら、水分摂取を促す

②必要時、医師の指示により点滴による補液を行う

③洗濯物の扱いなど、家族の協力を得る

④患者の隔離を行い、吐物や排泄物は適切に処理する

 

教育項目(EP)

①手洗い方法を指導する

②洗濯物は破棄するか、次亜塩素酸ナトリウムを使用して洗濯する、または、85度以上の熱湯をかけて消毒するように指導する

③症状があるときは、遠慮せずに伝えるように指導する

④トイレの使用方法、排泄後に手が触れた部分の消毒方法を指導する

 

6、ノロウイルスの看護のポイント

ノロウイルスの看護のポイントやノロウイルスのケア方法を確認しておきましょう。

これらを確認しておけば、適切な看護ケアができるはずです。

 

■異常の早期発見

ノロウイルスに感染した場合の治療方法は、対症療法になります。ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬はありませんので、対症療法を行うことになります。健康な成人なら、重症化することなく回復することがほとんどですが、体力がない高齢者小児では重症化するリスクがあります。

嘔吐や下痢による脱水だけではなく、嘔吐による窒息・誤嚥性肺炎を起こすこともありますので、看護師は経時的にバイタルサインや水分出納を確認するようにしてください。

 

■家族看護をする

ノロウイルスで入院する患者は小児が多いです。小児は重症化しやすく、家族の付き添いが必要になります。家族は自分の仕事や家事、その他の日常生活と並行しながら、入院の付き添いをしなければいけませんので、心身ともに疲労していきます。

看護師は家族に寄り添い、精神的な看護をするとともに、家族が付き添いやすいような環境整備、必要な情報提供、セルフケアの支援などを行っていく必要があります。

 

■二次感染を徹底的に防止する

前述のようにノロウイルスの感染力は非常に強いです。

そのため、外来でも病棟でも二次感染を徹底的に防止しなくてはいけません。

ノロウイルスの病院対応は、次の7点が重要になります。

・発生者に対して標準予防策と接触予防策

・発生した病室に新規患者を3~5日は入院させない

・発生した病室の患者をほかの病室に移動させない

・発生状況を所属長としかるべき責任者に報告する

・発生状況を正確に把握する

・嘔吐物の処理に気を付ける

・トイレなどの消毒を行う

隔離や嘔吐物の処理については前述に記載していますので、参考にしてください。

 

■安楽の提供

ノロウイルスに感染したら、対症療法で様子を見ていきますので、特効薬はありません。

看護師は安楽な体位のアドバイス、環境整備などをして、少しでも患者さんが安楽に過ごせるようにケアをしましょう。

 

まとめ

ノロウイルスの看護は、感染患者の治療を行う他に、他の患者や医療従事者の安全を確保し、感染を拡大させないということが大切になります。ノロウイルスは感染力が高いため、その知識を深めて対策を正しく行うことは看護師の重要な役割ともいえるのです。

 

参考文献

1)厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の改正について 

ノロウイルス −概要と感染対策−(丸石製薬株式会社|2016)

食品微生物学辞典(中央法規出版|田中智之|2010年)

ノロウイルス感染症 (日本内科学会雑誌 Vol.102 No.11 p.2801-2807|吉田正樹|2013)

岡本麻衣 看護師

1986年生まれ。北海道札幌市出身・在住。同市内の看護学校を卒業後、北海道大学病院の内科で2年勤務。その後、同市内の個人病院で6年間勤務し、結婚・出産を機に離職。現在は育児をしながら、看護師としての経験を生かし、WEBライターとして活動中。

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