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摂食障害の看護|分類(拒食症・過食症)と原因、看護問題、看護計画(2017/04/26)

公開日: : 最終更新日:2020/07/05 看護計画 広島県 精神科 

摂食障害看護

摂食障害とは食べる量が極端に少なかったり、食べても嘔吐してしまう精神疾患です。体重や体型に強いこだわりを持っているため、患者は積極的に治療を受けなかったり、治療を拒否する傾向にあります。

摂食障害の基礎知識や分類(拒食症・過食症)、原因、看護問題看護計画をまとめました。今後、摂食障害の患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、摂食障害とは

摂食障害とは、体重や体型に対して過度のこだわりを持ち、極端に食べる量が少ない、食べても嘔吐してしまうなどの食行動に異常が出る精神疾患です。

失恋のショックで食欲がなくなる、ダイエットのために一時的に食事を制限している、やけ食いをしてしまうなどの一過性の食行動の変化は、健康な人でも経験するものです。

ただ、摂食障害は一過性のものではなく、食行動の変化が長期にわたって続くため、健康状態が悪化し、最悪の場合は死に至ることもあるのです。

摂食障害の患者は体重や体型に対して過度のこだわりを持っていて、「痩せたい」という強い願望を持っています。「太りたくない、痩せたい」と強く思い、さらに「太っている自分には価値がない」と思い込んでいます。

そのため、患者本人は摂食障害の治療には積極的ではなく、治療を拒否するケースが多いのです。

また、摂食障害はただ食行動に異常が出るだけでなく、薬物依存やアルコール依存、うつ病、人格障害などの精神疾患を合併することが多いという特徴があります。万引きや自傷行為、自殺企図などの衝動的な行動も多くなるのです。

摂食障害の治療は、精神療法(認知行動療法や家族療法)や身体管理、薬物療法、行動制限療法などが行われます。基本は外来での通院治療になりますが、著明なるい痩や栄養失調、重篤な合併症がある場合は、入院して治療を行います。

 

2、摂食障害の分類

摂食障害は、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)に大きく分けることができます。

 

2-1、拒食症

拒食症は、制限型とむちゃ食い・排出型の2つに分類できます。

・制限型=食べないことを徹底する、食べ物を口に入れることを極端に制限するタイプ

・むちゃ食い・排出型=むちゃ食い(過食)をした後に、自分で嘔吐したり、下剤を使って排出することで、低体重を維持しているタイプ

むちゃ食い・排出型は「過食嘔吐」とも言われるタイプです。次に説明する過食症と似ていますが、過食症との違いは体重です。拒食症のむちゃ食い・排出型は体重が標準体重の80%未満を維持しています。

拒食症は体重がドンドン減少しているにも関わらず、「まだ自分は太っている、もっと痩せなくてはいけない、太ってしまうかもしれない」と思い込んで、不食や過食嘔吐を繰り返すようになるのです。

拒食症になると、次のような症状が現れます。

摂食障害の看護

出典:摂食障害の理解と治療のために/拒食症/理解・体の症状  EATファミリーサポートの会

症状
行動の異常 隠れ食い、偏食、盗み食い、むちゃ食い、嘔吐、下剤や利尿薬の使用、過活動、自傷行為、万引き
身体症状 低体重(標準体重の80%未満)、無月経、脱水、腹部膨満感徐脈、低体温、低血圧、浮腫、う歯、エナメル質妖怪、内分泌異常、、電解質異常、不整脈、骨粗しょう症、臓器不全

 

2-2、過食症

過食症はとにかくむちゃ食いを繰り返してしまう状態です。過食症は、排出型と非排出型の2つに分類できます。

・排出型=むちゃ食いをした後に、自己誘発嘔吐や下剤などで食べたものを排出するタイプ

・非排出型=むちゃ食いをするだけで、自己誘発嘔吐や下剤の乱用などは行わないタイプ

排出型の過食症は、拒食症のむちゃ食い・排出型とよく似ていますが、拒食症のむちゃ食い排出型は標準体重の80%未満であるのに対し、過食症の排出型は極度の体重減少は伴わず、標準体重を維持しているという違いがあります。

症状
行動の異常 過食(むちゃ食い)の反復、隠れ食い、嘔吐、下剤や利尿薬の使用、自傷行為、自殺企図、万引き、薬物乱用
身体症状 浮腫、う歯、エナメル質の溶解、食道の炎症、電解質異常、不整脈

 

3、摂食障害の原因

摂食障害は、様々な原因が複雑に絡み合うことで発症すると考えられています。摂食障害を発症する原因は、次の4つがあります。

・社会文化的要因

・心理的要因

・家族環境

・遺伝的要因

 

■社会文化的要因

現代社会では、痩せている女性が美しいともてはやされ、肥満=悪とされています。そのような環境の中で生活していると、痩せなくてはいけないと思い込むようになり、摂食障害を発症しやすくなるのです。

 

■心理的要因

摂食障害の患者は、自尊心が低いことが多く、「こんな私はせめて外見だけでもキレイにならないと、価値がない」と思い込み、摂食障害になることがあります。

また、ストレスも摂食障害の発症に大きくかかわっていて、ストレスの代償行為で過食をしてしまい、それでも痩せたいから嘔吐することがあります。周囲の人に太っていることをからかわれた場合も、そのストレスから摂食障害を発症することがあるのです。

 

■家族環境

幼少の頃に、両親の別居や離婚があったり、親との接触が乏しく愛情不足を感じている場合や、親から過度の期待をかけられたり、偏った養育態度で育てられた場合、摂食障害を発症するリスクが高くなります。

 

■遺伝的要因

双生児研究や家族内集積の研究で、摂食障害は遺伝的な要因が多いことがわかってきました。摂食障害を発症する遺伝子はまだ発見されていないものの、セロトニンや脳由来神経栄養因子、オピオイドなどに関連する遺伝子が関係しているのではないかと推測されています。

 

4、食障害の看護問題

摂食障害の患者は、拒食症による痩せすぎ(るい痩)という身体的な問題に加えて、精神的な問題を抱えています。

 

■著名なるい痩・栄養失調による生命の危険

摂食障害の拒食症では、標準体重の80%未満になってしまいますので、るい痩や栄養失調による生命の危険があります。また、栄養失調だけでなく、嘔吐などにより電解質のバランスも崩れていますので、不整脈を引き起こすリスクがあるのです。

 

■非協力的な治療態度

摂食障害の患者は、「痩せたい・太りたくない」という強い願望を持っていて、どんなに痩せていても、太ることへの危機感を持っています。そのため、摂食障害の患者は治療を拒否することが多く、治療が進まないことが多いのです。

 

■問題行動が出現する可能性

摂食障害の患者は自傷行為や万引き、性的に奔放になるなどの問題行動を起こすことがあります。また、入院中は同室の患者とトラブルになることも多いため、看護介入が必要になります。

入院中は行動制限を行うことがありますが、それを守れずに問題を起こすこともたびたびあります。

 

■社会生活への不安

摂食障害の患者は家族との関係に歪みが生じていたり、摂食障害に対する周囲の理解不足、問題行動等から社会復帰することへ不安を持っています。看護師は、自立した社会復帰ができるように援助していかなくてはいけません。

 

5、食障害の看護計画

先ほどの摂食障害の患者の看護計画をもとにして、看護計画を立案していきましょう。

 

■著名なるい痩・栄養失調による生命の危険への看護計画

看護目標 適切な栄養状態に回復し、生命の危険や合併症がなくなる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・全身状態(顔色、皮膚の色、四肢の冷感、爪の色、皮膚の乾燥、浮腫)

・体重

脱水症状の有無

・血液データ

・食事量、パターン、間食の有無

・体重(BMI

・消化器症状

・血液データ(電解質、TP、Alb)

・嘔吐の有無

TP(ケア項目) ・保温

経管栄養や高カロリー輸液の管理

・水分摂取の促し

・下剤や利尿剤は使わないように約束する

栄養サポートチームの介入の考慮

・排泄の記録

・分割して少量ずつ食べるように勧める

ADLの介助

EP(教育項目) ・患者や家族に食事の必要性を説明する

・安静度を守るように伝える

・食べやすいもの、栄養価の高いものなどを具体的に説明する

・水分出納のチェックの必要性を説明する

 

■非協力的な治療態度への看護計画

看護目標 入院の必要性を理解し、入院生活を送ることができる
OP(観察項目) ・精神状態の把握(行動、母子間・家族間の言動、表情、行動、病識、ボディイメージ)

・日常生活行動(排泄、保清、更衣、食事、睡眠、活動、コミュニケーション

・入院前の食生活の状態(拒食、過食嘔吐、摂取量、摂取パターン)

TP(ケア項目) ・患者の気持ちを尊重しながら、信頼関係を築く

・必要に応じ、ADLの介助を行う

・行動を把握しやすいように病室・ベッドの位置を決める

・治療に不必要なものは、家族に持って帰ってもらう

EP(教育項目) ・入院加療の必要性を何度も説明する

・分からないことや不安なことがあれば、その都度質問するように促す

 

■問題行動が出現する可能性への看護計画

看護目標 制限内で入院生活を送ることができる
OP(観察項目) ・制限が守れているか(安静度、清潔、面会、食事量、間食、嘔吐)

・食事中の態度や表情

・同室患者との人間関係

・治療に対する理解度や考え方

TP(ケア項目) ・行動制限の内容を確認する

・スタッフ間で治療の統一性を持っておく

・吐気や食欲不振、腹部膨満などの心気的な訴えに対しては、中立的な態度で接する

便秘が続く場合は、医師に報告し、下剤の使用の指示を受ける

・定期的に同一条件もとで体重測定をする

・体重増加が見られない場合は、むやみに理由を追及しない

・食事を捨てる、下剤を乱用するなどの行動がある場合は、医師に報告して話し合いの機会を持つ

・食事時間が長い時には問題行動がないかをチェックする

・頻回に訪室して、問題行動の予防に努める

・問題行動が改善した場合は、きちんと評価して一緒に喜ぶ

・同室者には治療を説明し、協力を得る

・食事に関することを話題にせず、情緒的な問題に焦点を当てる

EP(教育項目) ・行動制限事項を破った場合は、その場で必ず注意する

・家族には行動制限の必要性を説明し協力を得る

・食物、栄養、体重への誤った認知がある場合には、患者を指導する

 

■社会生活への不安への看護計画

看護目標 自立した行動ができ、社会復帰への準備ができる
OP(観察項目) ・他者とのコミュニケーションの取り方

・行動

・外泊中の様子の観察

・外泊前後の変化の観察

・自立や社会復帰への考え方

TP(ケア項目) ・レクリエーションへの誘導

・成功体験ができるように関わっていく

・成し遂げたことに肯定的な態度で関わる

・患者の長所や能力に関心を向ける

・家族との面接を行い、家族を治療に参加させる

・退院後の計画に家族と間屋を一緒に参加させる

・サポート資源を活用できるようにする

EP(教育項目) ストレスコーピングの方法を指導する

 

まとめ

摂食障害の基礎知識や分類(拒食症・過食症)、原因、看護目標や看護計画をまとめました。摂食障害は命の危険があるにも関わらず、患者は治療に積極的でないという治療が難しい疾患です。

そのため、看護師は看護介入をして、患者が治療に前向きに取り組めるように援助していく必要があります。

摂食障害の患者に適切な看護を提供できるように、摂食障害について正しい知識を持っておくようにしましょう。

高山千里 看護師

1983年生まれ、広島県広島市出身。看護学校を卒業後、広島県内の大学病院(精神科)に就職。夫の転職を機に退職し、妊娠していたこともあり、そのまま専業主婦の道へ。現在は2児のママとして、子育てに奮闘しながら看護師の知識を生かし、在宅ライターとして活動。復職を視野に入れ、看護ならびに心理学の勉強に精を出している。

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