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ミニトラックの看護|適応やキット、看護手順・方法、合併症など(2017/03/14)

公開日: : 最終更新日:2021/08/31 看護技術 静岡県 ICU 

ミニトラックとは輪状甲状間膜を穿刺して、カテーテルを入れることで、緊急時の気道確保や痰の喀出をするためのキットのことです。

ミニトラックは、気管挿管や気管切開と比べると、目にする機会は少ないと思いますが、ミニトラックが必要なときは緊急性が高いことがありますので、看護師はミニトラックについてきちんと理解しておく必要があります。

ミニトラックの基礎知識やキット内容、適応、看護手順・方法、合併症などをまとめましたので、参考にしてください。

 

1、ミニトラック(輪状甲状間膜穿刺)とは

ミニトラックとは緊急時の気道確保や痰の喀出のためにキットやチューブのことです。輪状甲状間膜を穿刺して、気管までチューブを通します。

ミニトラック(輪状甲状間膜穿刺)とは

出典:熊本宇城市の総合歯科吉永歯科医院 – いざというときの外科的気道確保手技

 

ミニトラックという名前はスミスメディカル・ジャパンというメーカーが販売している輪状甲状間膜穿刺キットの商品名で、正しくは「輪状甲状間膜穿刺」と言いますが、臨床現場では輪状甲状間膜穿刺ではなくミニトラックと呼ぶことがほとんどです。

ミニトラックは、気管切開カニューレのようにカフがついているわけではなく、ただチューブを気管に通すだけですので、呼吸は通常通り鼻や口から行います。そのため、ミニトラックを挿入していても、食事はもちろん会話も可能になります。

 

2、ミニトラックの適応

ミニトラックは、緊急時の救命処置として気道確保が必要な場合と自力での痰の喀出が困難な場合に適応になります。

■救命処置としての気道確保

ミニトラックは、緊急時の気道確保のために挿入されることがあります。急性咽頭蓋炎など上部気道閉塞があったり、交通外傷などで顔面の損傷が激しい場合、気管挿管ができません。

すぐにでも気道確保をしないといけない場合は、気管切開をしている時間はありませんので、ミニトラックで緊急的に気道確保をするのです。

輪状甲状間膜穿刺は、体表面から気管への距離が最短で、触診での位置確認が簡単であり、気管へアクセスしやすいこと、さらに輪状甲状間膜周辺には神経や血管が乏しいため血管損傷のリスクも低いため、迅速かつ安全に施行できるのです。

 

■自力での痰の喀出が困難

自力での痰の喀出が困難な場合も、ミニトラックの適応となります。痰の貯留があるけれど、自力での痰の喀出が困難な場合、看護師は経口や経鼻から吸引チューブを気管に挿入して、痰を吸引しなければいけません。

ただ、経口・経鼻から気管へ吸引チューブを挿入するのは患者への負担が大きく、手技も難しいので、しっかり痰が吸引できずに、痰がどんどん貯留してしまいます。

その場合、ミニトラックを挿入することで、簡単に気管に貯留した痰を吸引することができますので、呼吸状態を改善し、肺炎などを予防することができるのです。

 

3、ミニトラックキットの種類

ミニトラックは緊急時にすぐに使用できるように、必要最低限の物品が入ったキットになっています。ミニトラックのキットは3種類ありますので、それぞれどんな違いがあるのかを覚えておくと、緊急時でも適切に対処できるはずです。

■ミニトラックⅡセルジンガーキット

ミニトラックキットの種類

出典:輪状甲状膜穿刺キット スミスメディカル・ジャパン株式会社

 

<キット内容>

・ガード付きスカルペル

・16Gツーイ針

・10mlシリンジ

・ガイドワイヤ

・ダイレータ

・イントロデューサ

・気管カニューレ

サクションカテーテル

・15mmコネクタ

・ネックテープ

ミニトラックⅡセルジンガーキットは、セルジンガー法で輪状甲状膜穿刺を行うためのキットになります。セルジンガー法とはガイドワイヤーを通してから、ミニトラックのチューブを挿入する方法です。より確実に安全にミニトラックを挿入できるというメリットがあります。

 

■ミニトラックⅡスタンダードキット

ミニトラックキットの種類

出典:輪状甲状膜穿刺キット スミスメディカル・ジャパン株式会社

 

<キット内容>

・ガード付きスカルペル

・イントロデューサ

・気管カニューレ

・サクションカテーテル

・15mmコネクタ

・ネックテープ

ミニトラックⅡスタンダードキットは、セルジンガー法でミニトラックを挿入した後に、交換用のチューブキットとして用いられることが多くなっています。

■クイックトラックキット

ミニトラックキットの種類

出典:輪状甲状膜穿刺キット スミスメディカル・ジャパン株式会社

 

<キット内容>

・気管カニューレ

・ニードル

・ストッパ

・シリンジ

・ネックテープ

・カテーテルマウント

クイックトラックは成人用と小児用の2種類があり、穿刺針とチューブ(カニューレ)が一体化しているので、迅速に輪状甲状膜穿刺を施行することができます。

これらの3種類の特徴を考えると、緊急時の気道確保はクイックトラックキット、痰の吸引のためにはセルジンガーセット、ミニトラックの交換のためにはスタンダードキットを用意すると良いと思います。

 

4、ミニトラックの看護手順・方法

ミニトラックを挿入する時の看護手順や挿入方法を確認しておきましょう。ここでは、緊急時の気道確保のためではなく、痰の吸引のためにミニトラックを挿入する時の看護手順や方法を説明します。

■必要物品

・ミニトラックⅡセルジンガーセット

・滅菌手袋、マスク

・穴あきドレープ

・ドレープ

・処置台

・防水シーツ

・消毒セット(イソジン、綿球)

・1%キシロカイン

・10mlシリンジ

・23G針

・Y字ガーゼ

・肩枕

救急カート

 

■ミニトラックの手順・方法

①患者にミニトラックを入れることを説明し、仰臥位になってもらう

②患者の下に防水シーツを引いて、肩枕を入れ、頸部を伸展させておく

③医師がミニトラック挿入部を消毒する

④医師に滅菌手袋を渡す

⑤滅菌手袋をはめた医師に穴あきドレープを渡す

⑥医師が局所麻酔を行う

⑦ミニトラックキットを清潔を保ったまま開け、滅菌ドレープを敷いた処置台に出す

⑧医師が輪状甲状膜に穿刺し、カニューレを気管内に挿入する

⑨カニューレ挿入後、ネックテープで固定し、Y字ガーゼを挟む

⑩X線撮影を行い、挿入部位を確認

 

5、ミニトラックの合併症

ミニトラックの挿入によって、合併症が発生することがありますので、看護師は挿入介助をしながらも、患者に合併症が起こっていないかどうかを観察しなければいけません。

<ミニトラックの合併症>

・出血

・気管傍挿入

感染

・気管損傷

・食道損傷

皮下気腫

・縦隔機種

気胸

・低酸素血症

ミニトラックを挿入するとこれらの合併症が起こるリスクがあります。そのため、看護師はミニトラック挿入前はバイタルサインをチェックしておき、挿入中はモニターでバイタルサインに変化がないかを観察しながら、挿入介助を行うようにしてください。

また、皮下気腫は挿入後にジワジワと広がることがありますし、感染も挿入後に感染兆候が出てくるものですので、挿入後も継続して観察を続けていく必要があります。

挿入後に皮下気腫が見られた場合は、マジック等でマーキングし、拡大していないかどうかをチェックしていきましょう。

 

6、ミニトラックの看護の注意点

ミニトラックの患者の看護をする時は、次の2つのことに注意して看護を行うようにしましょう。

■閉塞予防

痰の吸引目的でミニトラックを挿入した場合、閉塞に注意しなければいけません。ミニトラックは気管切開のカニューレと比べると、とても細いので、痰の粘稠度が高い場合、痰がこびりつくことで、閉塞してしまうことがあります。

看護師は痰の量や性状を観察し、必要があれば、医師に報告して、ネブライザーなどを行うよう提案するなど、閉塞予防に努めてください。

 

■感染予防

ミニトラックから痰を吸引する時には、清潔操作を徹底してください。吸引チューブをミニトラックから入れるということは、気管内に異物を入れるということです。

吸引チューブが不潔だった場合、そこで感染を引き起こして肺炎に至ることもありますので、感染予防に注意しましょう。

また、Y字ガーゼが汚染されている時には、ルーティンで行うだけでなく、適宜交換するようにしてください。

 

■固定する時の注意

ミニトラックの固定は、キット内に入っている布製のネックテープで行いますが、しっかり固定しないとミニトラックの誤抜去につながりますので、Y字ガーゼを挟み、しっかり固定しましょう。病棟によっては、ミニトラックの固定のマニュアルがあると思いますので、それを参考にしてください。

ただ、しっかり固定しようと思って、ネックテープをきつく巻き過ぎると、顔面のうっ血やむくみが出てくることがありますので、患者にきつ過ぎないかどうかを確認しながら、固定するようにしましょう。

 

まとめ

ミニトラックの基礎知識や適応、看護手順・方法、合併症のポイントをまとめました。ミニトラックは、救急現場では緊急時の気道確保として、また病棟では痰の吸引のために使われます。

特に、救急外来や救命救急センターでは、1分1秒を争う中でミニトラックを挿入しますので、看護師は必要物品を理解し、迅速に挿入準備ができるようにしておきましょう。

佐藤良子 看護師

1965年生まれ、静岡県静岡市在住。スタッフナース歴11年、看護師長歴2年。静岡県内の大学で教育を学び、卒業後は小学校教諭として勤務。後に看護師の道に目覚め、看護学校へ入学し、同県内の総合病院(循環器科)へ就職。現在はイベントナースやツアーナース、被災地へのボランティアなど、幅広い分野で活躍している。

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