足浴の看護目的|看護的観点から見た計画と手順、またその留意点(2017/02/17)
全身浴やシャワー浴が困難な患者にとって、身体機能向上やリラックス効果が得られる入浴方法に「足浴」があります。足浴は、体への負担が比較的少なく安全性が高いため、高齢者の看護にもよく取り入れられています。足のみの入浴ですが、得られる効果は多数あり、積極的に取り入れていきたい看護の1つとなっています。正しい目的と方法を学び、患者に合わせた効果的な足浴を実施していきましょう。
1、足浴とは
足浴とは、足首から先を湯に浸して、全身を温め血行を促す温浴法です。足は体の末端にあるため冷えや血行不良になりやすい部位となりますので、足を温めることによって、血液に溜まった老廃物を流し、循環機能を向上させる効果があります。浴中の体力消耗や血圧の上昇も少ないので、特に心疾患などの身体機能が低下している患者にも比較的安全性の高い入浴方法となっています。
2、足浴の看護目的・目標
・皮膚の保清
・全身の血液循環の促進 ・血流障害の予防と改善 ・筋肉の疲労を軽減 ・痛みの緩和 ・入眠促進効果 ・リラクゼーション効果 ・ストレス緩和効果 |
全身浴やシャワー浴の困難な患者を主な対象として行われます。足のみを温める足浴であっても得られる効果は多数あり、以下のような目的をもって行われています。
3、足浴の看護計画
足浴の看護計画(看護目標、OP-観察項目、TP-ケア項目、EP-教育・指導項目)を作成していきます。
■看護目標:足の皮膚の保清を行い、爽快感を得てもらう。温浴刺激による血流促進によって、入眠効果を高める。
■OP:最終入浴や足浴の日付と頻度の確認。足浴への意欲を含め、介助可能な全身状態であるかを観察する。皮膚状態の確認。足浴中の表情や訴えに気を配る。
■TP:患者の意向に沿った足浴方法にできる限り沿って行う。体温の低下を避けるため、保温に気を付ける。無理のない体位を保ちながら、快適な足浴介助を行う。
■EP:足浴から得られる効果を説明する。
3―1、足浴の事前準備
足浴も他の入浴と同様に、事前観察や準備を整えた後に看護を実施していきます。
1、主治医の同意が得られているかの確認を行う。
2、患者の足浴に対する理解と同意があるかを確認する。 3、食後や検査時間を避け、本人と相談しながら、足浴の時間を設定する。 4、バイタルサインを測定し、足浴可能な状態であるかを観察する。 5、皮膚状態を丁寧に観察していく。 6、使用する着替えやタオル、洗面器、バケツなどの備品の準備を行う。 7、事前に排泄をすませて待機してもらう。 8、不快感や無理の無い体位を、患者と相談しながら確認する。 |
出典:医療法人社団 さいたま ほのかクリニック
4、足浴の看護手順と方法
以下のような手順で足浴を行なっていきます。
1、座位で行う際も、寝たまま行う際も足を固定するために、ひざ下にタオルや布団などを入れて足を固定する。
2、患者の衣服をひざ上まであげる。 3、看護師は手袋を着用する。 4、適正温度(約38~40℃)の入った洗面器やバケツからかけ湯をする。 5、数分間両足をお湯に浸し、保温を行う。 6、ガーゼに石鹸をつけ、足を洗っていく。 7、お湯の中で石鹸を洗い流す。 8、拭き残しの無いように、丁寧に水分を拭き取る 9、皮膚の乾燥が見られる際は、保湿を行う。 |
5、足浴を行う際の留意点
以下を注意し足浴を行なっていきます。
・患者の皮膚感覚に合わせた、お湯の温度に注意をする。
・水虫の有無を確認し、変化や異常が見られる際には医師に報告して診療を促す。 ・足浴中の体位や方法への違和感や不快感が無いかを観察する。 ・水分の拭き残しは、雑菌の繁殖や感染症の原因となる可能性があるので注意する。 ・足浴後の患者の変化に気を付けて観察する。 ・使用した石鹸やクリームなどの記載を行い、皮膚状態の変化が見られた際に報告できるようにする。 ・皮膚のふやけや体力の消耗を考え、足浴に要する時間は約10分程度で終了するようにする。 |
6、足浴についての看護研究
足浴によって得られる体への利点は多くあり、それを研究し発表している多くのデータや文献が存在します。多くの研究によって、足浴への更なる理解を深めていくことができます。
まとめ
入浴が困難な患者であっても、足浴であれば頻度を増やし保清を行っていくことができます。足のみの部分浴ですが、体温を上昇させ適切な血液循環を促すなど多くのメリットを身体・心理的にも感じることができます。また足浴は患者と看護師のコミュニケーションを図るいい機会でもありますので、足浴を通じて良好な関係を築き、日々の看護に役立てていきましょう。
参考文献
足浴のリラクセーション効果に関する検討(文京学院大学人間学部研究)
睡眠の援助としての足浴の効果に関する文献的検討(石川看護雑誌)
足浴が運動機能に与える影響(昭和大学保健医療学雑誌)
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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