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乳がんの看護|術前・術後・終末期における乳がん患者への看護計画(2016/12/13)

公開日: : 最終更新日:2020/07/01 茨城県 看護計画 外科 

乳がん看護

乳がんは日本人の女性の部位別がんの発症数第1位です。1年間に9万人近くの人が乳がんに罹患し、1万3000人以上の人が乳がんで亡くなっています。

乳がんの患者に質の高い看護を提供できるように、乳がんの基礎知識や乳がんの看護計画を確認しておきましょう。また、乳がん看護を深めていくために認定看護師になる方法やスキルアップのための看護セミナーの情報をまとめています。

 

1、乳がんとは

乳がんとは、乳房の乳腺に発生するがんのことです。乳房には乳腺組織と脂肪組織がありますが、脂肪組織からはがんは発生しませんので、「乳がん=乳腺のがん」になります。

乳がんについて

出典:乳がんについて|相良病院

 

乳がんはがんの広がりや特徴によって、3つの種類に分けることができます。

 

■非浸潤がん

非浸潤がんは、乳管や小葉の中だけにがん細胞がとどまっていて、それ以外にはまだ広がりを見せていないがんのことです。非浸潤がんは乳がんの中でも早期のがんで、転移などは起こしていないため、この段階で治療をして、手術を行えば完治します。

非浸潤がんはマンモグラフィーや超音波などのがん検診で発見されたり、乳頭からの血性分泌物で発見されることがほとんどです。乳がん全体の5~20%程度を占めます。

 

■浸潤がん

浸潤がんは、がん細胞が乳管や小葉の外にまで広がった状態のがんです。乳がんは胸のしこりで発見されることが多い傾向にありますが、しこりで発見される乳がんのほとんどが、この浸潤がんになります。浸潤がんはリンパ節転移を起こします。

 

■パジェット病

パジェット病は乳頭のびらんで発見される乳がんです。がん細胞が乳管を通って表皮に達したために乳頭にびらんが起こります。パジェット病は乳がん全体の1%未満しかありません。

 

乳がんの治療は手術療法、化学療法、内分泌療法、放射線療法の4つがありますが、手術療法を基本として、乳がんの種類や進行度に応じて治療法が選択されます。

 

2、乳がんの看護計画

乳がん患者は、がんになってしまったという恐怖や不安と共に、女性のシンボルともいえる乳房を失うことで、ボディイメージが変化するという恐怖や不安を抱えています。そのため、身体的な問題への看護だけでなく、精神的な看護がとても重要になります。

 

2-1、術前の看護計画

術前の乳がんの看護計画は、乳がんという病気や手術への不安の軽減、手術後の肺合併症の予防、身体的苦痛の緩和、家族の不安という4つの看護問題に沿って看護計画を立てます。

 

①疾患や手術に対する不安や恐怖の軽減

看護師は患者に対して、疾患や手術の情報提供を十分に行い、必要であれば、医師からの説明を何度でも受けられるように調整する必要があります。また、常に受容的な態度で接することで、患者さんが術前の不安を表出できるように心がけていきます。

 

②手術後の肺合併症の予防

乳がんの手術後は、創部の痛みや術後の圧迫、麻酔後の気道内分泌物の増加から、術後肺炎無気肺などの肺合併症などを起こしやすいので、腹式呼吸やトリフローを用いた呼吸訓練や排痰訓練、禁煙指導などを行います。

 

③身体的苦痛の緩和

皮膚への浸潤やリンパ節への転移などによって、身体的な苦痛があること、疾患や手術への不安による食欲低下や無気力が起こることで体力の低下が起こり、手術までに全身状態が整えられないという問題が起こります。

身体的苦痛を緩和するために、全身状態の観察や鎮痛剤の使用、ADL介助による苦痛の軽減などのケアを行うと同時に、気分転換を促して不安を軽減できるように援助する必要があります。

 

④家族の不安

乳がん患者の家族は、乳がんへの不安や家族の役割の変化への不安、経済的な不安などを抱えているので、家族にも情報提供を行い、積極的にコミュニケーションをとって、不安の表出を促す必要があります。

 

2-2、術後の看護計画

乳がんの術後は、術式によって患者さんの状態が変わってきますが、基本的には術後の管理と精神的なサポートに重点を置いて看護を行います。

 

①全身管理

乳がんの手術は全身麻酔下で行いますので、全身麻酔後の全身管理を行います。

 

②呼吸の管理

乳がんの手術後は疼痛や麻酔後の影響、創部の圧迫などで肺合併症が起こりやすいので、疼痛コントロールを行いながら、痰の喀出や腹式呼吸などを促します。

 

③疼痛コントロール

術後の疼痛は呼吸抑制が起こったり、心血管系への負担をかけることになりますので、痛みのアセスメントをして、疼痛コントロールをする必要があります。

 

④創部やドレーンの管理

術後はドレーンからの排液量や性状を確認しつつ、創部感染が起こらないように観察します。また、創部周辺は皮膚トラブルが起こりやすいので、皮膚トラブル予防のためのケアも行います。

 

⑤患側上肢の保護

患側の上司は挙上制限・運動制限があることが多いので、患者さん本人にきちんと説明すると同時に、患側上肢への点滴血圧測定は行わないように注意します。

 

⑥精神的なケア

女性のシンボルである乳房を切除した場合、患者さん本人の精神的なショックは計り知れないほど大きいので、少しずつそれを受容できるようなケアが必要になります。

 

2-3、末期の看護計画

乳がんの末期の看護計画は、終末期における患者さんの苦痛を緩和させることに重点を置いた看護計画を立てます。乳がんの末期になると、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、霊的苦痛(スピリチュアルペイン)の4つの苦痛が生じてきます。

乳がんの末期の看護計画

出典:2 ガイドラインを理解するための基礎知識 – JSCCR | 大腸癌研究会

 

患者さんが苦痛や不安を表出できるように受容的な態度で接しながら、情報収集を行い、アセスメントをして、苦痛を1つ1つ緩和させるケアを行っていきます。

終末期の患者・家族に対する看護計画と適切なケアの実施

 

3、乳がん看護認定看護師について

乳がん看護認定看護師は、乳がんの予防から終末期に至るまでの患者と家族のQOL向上のために、質の高い看護を提供できる看護師のことで、乳がん看護のプロと認められた看護師と言えるでしょう。

乳がん看護認定看護師になるためには、看護師免許を取得して、臨床経験が5年(うち乳がん看護の経験が3年以上)あり、さらに次の条件を満たす必要があります。

 

1.         通算 3 年以上、乳がん患者の多い病棟または外来等での看護実績を有すること。

2.         乳がん患者の看護を 5 例以上担当した実績を有すること。

3.         現在、乳がん患者の看護に携わっていることが望ましい。

 

この条件を満たして、認定看護師の教育機関の入学試験に合格し、6ヶ月以上の総時間数615時間(+45時間)の研修を受けて、認定試験に合格する必要があります。

乳がん看護認定看護師は5年ごとに更新が必要になります。更新が認められるためには、5年間で看護実践時間が2000時間以上に達していて、学会や研究会への参加や発表等の研究実績が一定以上(50点以上)あることが条件になります。

 

4、乳がんの看護セミナーや研修について

乳がん看護をもっと専門的に学びたい、将来的に乳がん看護認定看護師の資格を取得したいという方は、院内の乳がん看護に関する研修に参加するのも良いのですが、外部の看護セミナーや研修会に積極的に参加しましょう。

日本乳がん看護研究会では、乳がん看護Webセミナーや年に1回の総会(日本乳がん看護研究会)が開かれていて、最新の乳がん看護を学ぶことができます。また、日本がん看護学会特別関心活動グループ(SIG)に乳がん看護のグループがありますので、そこに参加することで、交流集会や情報交換会に参加できます。

このほか、民間企業が主催している乳がんの看護セミナーもありますので、乳がん看護を学びたい方は、外部の看護セミナーや研修会に積極的に参加することをおすすめします。

 

まとめ

乳がんは女性にとってのシンボルである乳房を切除しなければいけないこともありますので、一般的ながん看護に加えて、ボディイメージの変容を受け入れられるような精神的なケアも重要になります。

乳がん看護を専門にしたいなら乳がん看護認定看護師の資格を取得したり、日本乳がん看護研究会のセミナーに参加するなど外部の看護セミナーや研修会に参加すると良いでしょう。

岡崎里奈 看護師

茨城県出身で、看護大学への入学を機に上京。東京の大学病院に就職し、救命救急センターに配属になる。6年間働いた後、出産を機に退職して、現在は育児に奮闘しながらライターとして活動中。救命救急センター以外に、派遣やバイトとして一般病棟や療養型病棟、介護施設、健診センターなどの経験あり。

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